南ア有識者や企業は様子見、AfCFTA発効の見方

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2019年06月26日

5月30日に発効したアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)協定を現時点で批准している24カ国中、最大の経済規模を有する南アフリカ共和国の有識者や企業は、運用開始が現実となるまで冷静に見ている状況だ。協定の見方について、国際貿易に詳しい南ア国際問題研究所(SAIIA)のアスミタ・パショタム研究員に聞いた(注1)。

AfCFTAは発効したが、運用されない可能性も残されている。各国が運用ルールに合意するまで、相当な時間を要とするとみられるからだ。加えて、域内貿易の円滑化に不可欠なインフラ整備にも数年かかる見込みだ。

アフリカ域内には既に複数の地域共同体(REC)が関税同盟を形成しているが、その上にAfCFTAが覆いかぶさることにより、既存のRECとの重複が生じて、実効を難しくする恐れがある。また、資金が不足していることも課題だ。AfCFTAを長期的に運用していくためには、批准する各国の職員の能力開発や技術開発も必要となるだろう。

南アには、アフリカ域内に展開する多国籍企業が多く存在するが、AfCFTAの詳細が定まるまで様子見という印象だ。また、南ア政府による批准に当たっては、政府(貿易産業省)と産業界との対話が十分に行われたとはいえないと認識している。

域内13カ国に拠点を持つ南アの衣料品小売り大手ミスター・プライスのステュアート・バード最高経営責任者(CEO、当時)(注2)は「現在、当社が扱う部品・原材料の35%を南部アフリカ開発共同体(SADC)域内で調達している。SADC域外のアフリカ諸国からの調達はインド、中国、バングラデシュに比べて価格競争力がない。依然としてインフラ未整備による高い物流コストが大きな課題だ。しかし、AfCFTAの発効(により関税が下がること)は当社の助けとなるだろう」と述べた。

(注1)6月6日にジェトロが話を聞いた。

(注2)1月17日に開催された「2019年のアフリカ見通し会議」(デロイト主催)での発言内容。

(高橋史)

(南アフリカ共和国)

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