TICAD特集:アフリカビジネス5つの注目トレンドラゴス国際見本市出展者に聞く、女性市場の可能性

2019年7月31日

アフリカ最大の人口と経済規模を誇り、有望新興市場として期待が高まるナイジェリア。近年では購買意欲の高い女性が消費市場を牽引し、ヘアケア用品や化粧品、ベビー用品などの市場が有望視されている。ジェトロはこうした動きを背景に、ナイジェリア女性市場への日本企業の参入支援を目的として、西アフリカ最大の総合見本市「ラゴス国際見本市」に6年連続で出展している。2018年には、従来の企業ごとの個別ブースに加え、新たな試みとして「女性市場コーナー:Made in Japan, Made for Women」と称した特別ステージおよび展示ゾーンを設置した。女性関連の商材を扱っている日本企業11社が自社製品を展示、また8社がステージパフォーマンスを行い、多くの来場者の注目を集めた。今回は、女性市場コーナーに参加した、世界各国で無線システム機器や車載用デバイス、音響機器などを展開しているJVC KENWOODの鳥越龍亮氏に話を聞いた(5月26日)。


ジャパンパビリオンの様子(ジェトロ撮影)

見本市出展で女性市場の手応え感じる

質問:
西アフリカへの本格的な進出を検討し始めたきっかけは。
答え:
以前と比べて、政治経済リスクなどが低減していることから、急速な成長を遂げているナイジェリア市場に挑戦することになった。アフリカの他地域(南アフリカ共和国、エジプト、ケニアなど)へはすでに進出をしており、これまでにも、ドバイや現地のトレーダーを通して、商品をナイジェリア市場に入れていたものの、消費者に届くまでの商流が不透明であった。そこで、実際に「市場を理解し、商売のチャンス」をつかむべく、ラゴス国際見本市に2018年度に参加するに至った。
質問:
ラゴス国際見本市に出展した成果と今後の展望は。
答え:
見本市の成果は3つ。1つ目は「一般消費者のニーズを把握できたこと」、2つ目は「JVCKENWOODブランドの再認知を図れたこと」、そして3つ目は「女性市場のポテンシャルを理解できたこと」だ。
具体的には、消費者との対話により、デザインへのフィードバック、人気のカラーなど、駐在地であるドバイからでは知り得なかった情報やトレンドを把握できた。また、女性市場コーナーでは、パステルカラーや子供用のヘッドホンを紹介できたことで、若い女性や子育て世代にもPRでき、ブランドの再認知を図れたことも良かった。実際に、当初想定していなかったが、会期中は絶えず一般消費者から注目を集め、持ち込んだ商品は全て完売した。今後、価格設定などの課題はあるものの、ラゴス国際見本市出展により、手応えを感じることができたため、販路拡大に取り組んでいる。現在は、現地のスタッフからタイムリーに市場の情報を収集中。すでに商品を輸入にしてくれる現地流通パートナーも見つけることができているため、今後もさらなる販路の拡大を行っていきたい。
質問:
女性市場コーナーについて、次回に期待することは。
答え:
初出展だったが、ラゴス国際見本市は、ナイジェリア市場を知る非常に良い機会となった。特に、女性市場コーナーがブース付近にあったおかげで、来場者の関心を集めることができ、ブースへの誘導にも役立った。次回への参加も前向きに検討したい。

トレンドの変化で市場の拡大に期待

ナイジェリアの経済を牽引しているのは、消費性向の高い女性だ。景気の悪化に伴い、女性の社会進出が促され、所得が上がり、女性全体としての購買力が拡大している。さらに、モバイルマネーや電子商取引の普及を背景に、農村女性の取り込みも可能になったことで、女性市場は拡大傾向にある。これに伴い、マーケティングトレンドにも変化が見られる。所得階級に関係なく、共働きの世帯が増加したため、「便利」「時短」という言葉がナイジェリア女性たちを引きつけている。

また、文化的背景や価値観も、女性市場のポテンシャルの高さを示唆する。ナイジェリア女性にとって外見を磨くことは、自信を持つための手段であると同時に、社会的ステータスを向上させる手段でもある。それゆえ、「オシャレ」への投資におカネを惜しまない傾向がある。

以前は、富裕層は海外でショッピングするのが主流だったが、新たな動きもみられる。同国最大の都市ラゴスでは、海外でデザインを学んだデザイナーが展開する現地ブランドが並ぶ。最近では、SNSを通じて世界で有名になったブランドも出てくるなど、現地発のトレンドの発信地もみられる。買い物の場所が、伝統的な青空市場から、大規模小売店に移行していることも、女性市場の拡大を後押しする。ナイジェリアでは依然として、伝統市場が小売りシェアの8割以上を占める。大規模小売店のシェアは約12~15%だが、ここ5年間で5ポイント程度拡大し、今後5年間で25%まで拡大するとの予測もある。青空市場と比較しても、価格に大差はない。人混みがなく安全、快適に買い物できることを実感・経験する人々が増えるにつれ、大規模店での買い物が増加していくと見られる。さらに、今後は健康志向の高まりとともに、化粧品や美容・ウェルネス市場も拡大すると期待されている。

取材後記

ラゴス国際見本市は、一般的な見本市と異なり、即売も可能となっているため、一歩踏みこんだ消費者のニーズ把握ができる。来場者も約17万人(前回実績)と老若男女問わず多く訪れ、商談のみならず、ブランドの認知向上にも役立つ展示会だ。女性市場コーナーには健康食品やヘアケア商品、ミシンなどの商材を扱う企業が見本市に出展した。今回インタビューしたJVCKENWOODのほか、自社の女性向け商品に手応えを感じる企業も多く、その後、商談を継続しているケースもある。

ジェトロでは2019年度も、ラゴス国際見本市にジャパンパビリオンを設置する予定で(会期:2019年11月1日~11月10日)、さらに募集社数を増やす。

執筆者紹介
ジェトロ市場開拓・展示事業部 市場開拓・展示事業課
岸野 美奈(きしの みな)
2017年、ジェトロ入構。ラゴス国際見本市、FOODEX JAPAN、一村一品マーケットなど、途上国関連業務を担当。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部中東アフリカ課 課長代理
高崎 早和香(たかざき さわか)
2002年、ジェトロ入構。海外調査部アジア大洋州課、ジェトロ熊本、ジェトロ・ヨハネスブルク事務所(2007~2012年)を経て現職。共著に『FTAガイドブック』、『世界の消費市場を読む』、『加速する東アジアFTA』など。

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