アフリカでは課題もあるが、21カ国では2025年の経済成長率予測が5%超え

(アフリカ)

調査部中東アフリカ課

2025年06月05日

アフリカ開発銀行が5月27日に発表した「アフリカ経済見通し」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、アフリカの経済成長率は、2025年に3.9%、2026年に4.0%との予測だ。経済成長率の予測は、2025年2月の前回と比べ、2025年は0.2ポイント、2026年は0.4ポイントそれぞれ下⽅修正となった。これは、米国による新たな関税政策などによる世界のマクロ経済情勢の悪化などが、アフリカ経済へ与えうる影響などを踏まえている。アフリカの商品貿易全体の約5%を米国が占めるため、関税政策による貿易への影響が出る可能性が高い。また、アフリカ最大の貿易相手国である中国と米国の間の貿易政策などにおける不確実性の高まりが、見通しに影を落とす。

国別にみると、南アフリカ共和国では国内の政治・経済の停滞もあり、2025年の成長率は0.8%にとどまる見通し。一方で、アフリカの21カ国では成長率が5%を超え、特にエチオピア、ニジェール、ルワンダ、セネガルでは7%を超える見込みだ。

資源・資本を活用へ

同報告書は、アフリカでは資源・資本を活用し効率性を向上する政策を推進することで経済発展につながると主張する。十分に活用できていない資源・資本には次の項目が含まれるとする。

  • 天然資源:アフリカは世界の鉱物資源埋蔵量の30%を保有しており、グリーン分野で利用される重要鉱物からの収益を獲得できる可能性がある。
  • 人的資本:アフリカの平均年齢は19歳であり、労働力参加率の向上によりアフリカのGDPを470億ドル押し上げる可能性がある。
  • 金融資本:2035年までに、年金基金資産は1兆1,000億ドルまで増加、海外労働者からの送金は5,000億ドルに達する可能性がある。
  • ビジネス資本:アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の完全実施により、2035年までに輸出が5,600億ドル増加する可能性がある。

汚職の対策も必要

同報告書は、アフリカ域外への資金流出が域内経済の発展を阻害している、と指摘した。域外への資金流出のうち、2,750億ドルは多国籍企業による利益移転だが、900億ドルは不正な資金流出による損失、1,480億ドルは汚職による損失との推計だ。なお、良いガバナンスと制度的枠組みがなければ、資源があっても汚職などによって失われるという。

同報告書では、汚職以外にもインフレや債務などの課題も残ると指摘した。アフリカの15カ国が10%以上のインフレ率に見舞われている。また、アフリカ全体の政府の歳出に占める利払いの割合は、2019年の19%から2024年には27.5%まで増加したという。

(井澤壌士)

(アフリカ)

ビジネス短信 0df4b02d4ece895a