中東情勢悪化がホルムズ海峡に与える影響

2026年4月10日

2026年3月以降、中東情勢悪化に伴い、ペルシャ湾とオマーン湾をつなぐホルムズ海峡が事実上の封鎖となり、世界の物流と貿易、資源調達に大きな影響を与えている。海上輸送のチョークポイントのリスクが再認識され、代替ルートの開拓にも関心が高まっている。

振り返ると、2025年6月には、イスラエルと米国がイランに対して攻撃し、イランが反撃していた。両国は同年6月末に停戦に合意し、その後、米国とイランによる核開発に関する協議が行われていた。一方、2026年2月28日にイスラエルと米国はイランに対して攻撃を開始した。これに対し、イランはイスラエルに反撃するとともに、周辺の中東諸国にある米軍施設やインフラなどへの攻撃も行っている。これを受けて、海運会社は既に予定されていた通航を見合わせたほか、今後のペルシャ湾向け貨物の引き受けを停止するケースもあった。4月8日(日本時間)には、米国のドナルド・トランプ大統領がイランと2週間の停戦をしたと自身のSNSに投稿し、緊張の緩和が期待されているが状況は流動的だ。

本稿では、ホルムズ海峡の事実上の封鎖状況とその影響について概観する。

近年のホルムズ海峡の状況

ホルムズ海峡は国際物流の要衝だ。米国エネルギー情報局(EIA)によると、2024年にホルムズ海峡を通過した原油は日量約2,000万バレルで、世界の石油消費量の約20%に当たる。また、通過する船舶のうち約6割がタンカーだったという。重要な物流ルートである一方、海峡の幅が狭い地形ゆえ、チョークポイントとして歴史的にもたびたび危機にさらされてきた。

近年では、2019年に安倍晋三首相(当時)のイラン訪問中にホルムズ海峡でタンカーが攻撃された事案や、2024年4月にイランのイスラム革命防衛隊がホルムズ海峡付近で貨物船を拿捕(だほ)した事案などがあった。さらに、昨年2025年6月のイスラエルとイランの軍事衝突後、停戦前にはイラン議会がホルムズ海峡の封鎖を承認する動きも見せていた。各種報道によると、2026年2月28日の軍事衝突前の2月17日には、イランがホルムズ海峡を「軍事演習」として一部閉鎖する動きもあった。一方、これらの事案後も、2026年3月までは、ホルムズ海峡における船舶通過数に大きな変動はなかった。

なお、アジアと欧州をつなぐ紅海においても、2023年以降、イエメンの親イラン組織であるフーシ派が、バブ・エル・マンデブ海峡近隣で船舶攻撃を実施し、多くの海運会社が紅海・スエズ運河を通らず、南アフリカ共和国の喜望峰ルートを選択していた(地域・分析レポート特集「地政学的影響を踏まえた中東・アフリカの物流動向」参照)。フーシ派は2026年4月、今回の武力衝突に関しイランを支持し、紅海での攻撃を示唆したことから、紅海にも再び注目が集まっている(図1参照)。

図1:中東地域を含む主要海上チョークポイントの位置関係図
ホルムズ海峡、スエズ運河、喜望峰など物流の要衝の位置および、ペルシャ湾、紅海、アデン湾の位置を示す。日本との距離間や、サウジアラビアは紅海側のヤンブー港、UAEのオマーン湾沿いのフジャイラ港の位置もします。

出所:ジェトロ作成 (地図は大まかな位置を指す)

ホルムズ海峡が実質的な封鎖に

2月28日のイスラエルと米国によるイランへの攻撃を受けて、イランは3月1日、ホルムズ海峡において船舶を攻撃し、その後、海峡の通航数は激減した。イラン政府はホルムズ海峡において、「敵国」の船舶の通航は認めないと発表する一方、イラン・イスラム革命防衛隊はホルムズ海峡を通過する船舶を攻撃すると警告していた。ロンドン国際保険引受協会(IUA)は2026年3月3日に「危険地域リスト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を更新し、ペルシャ湾などを危険地域に指定した。保険会社は海上保険などの適用範囲や保険料などを変更している。

国際海事機関(IMO)によると、4月2日時点でホルムズ海峡を通る船舶に対し、イランから合計21件の攻撃があったという。これらの攻撃件数の推移を示したのが図2で、3月1日から4月1日までに発生した事案の時系列が示されている。3月以降、海運会社はイラン側との交渉などにより、ホルムズ海峡の通航を試みる動きもある。

図2:ホルムズ海峡における事件件数の推移
3月1日 に4件、3日3日に2件、3月11日5件の事案が発生。そのほか21件事件があった。

出所:IMOを基にジェトロ作成

国際機関もホルムズ海峡での攻撃が発生後の船舶の動きを発表している。IMFと英国のオックスフォード大学が共同で開発した船舶自動認識装置(AIS)情報を基に船舶データを提供する「ポートウオッチ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」によると、2026年3月30日から4月5日まで1週間におけるホルムズ海峡における通航隻数(1日当たり)の平均は8.4隻だった。2025年の1日当たり平均の93.7隻、前年同期の109.3隻から激減した(図3参照)。

図3:ホルムズ海峡の通航隻数(1日当たり)の推移
2026年3月30日から4月5日まで1週間のホルムズ海峡における通航隻数(1日当たり)の平均は8.4隻だった。2025年の1日当たり平均の93.7隻、前年同期の109.3隻から激減した。

出所:IMF PortWatchを基にジェトロ作成

封鎖の影響、代替輸送は限定的

ホルムズ海峡では原油の輸送が多いが、封鎖された際に利用できる代替手段が少ないことが浮き彫りとなった。サウジアラビアでは紅海沿いのヤンブー港へのパイプライン、アラブ首長国連邦(UAE)にはオマーン湾沿いのフジャイラへのパイプラインなどがある一方、その輸送能力は限られるという。

物流の停止に加えて、イランやイスラエルは互いのエネルギー施設を攻撃したほか、イランから近隣の産油国へのエネルギー施設を攻撃する事案も発生し、国際的な石油やガス価格が上昇した。

代替輸送が少ない上、価格の高騰により、世界のエネルギー輸入国が特に大きな影響を受けることが国際的な話題となった。また、産油国であっても世界的なエネルギー価格上昇に巻き込まれることにも注目が集まった。資源以外にも、肥料、プラスチックの原料となるナフサ、ヘリウムやアルミニウムなどを中東から輸入する国への影響は大きく、ホルムズ海峡に依存しない他の国からの代替輸入についても議論が進んだ。

コンテナ貨物はホルムズ海峡を通らない港で荷揚げし、陸路で代替するほか、小口貨物については空路利用も検討できる。しかし、代替ルートや代替可能な量・商品は限定的であり、物流各社は対応策の模索を迫られている。各国政府や企業は、ホルムズ海峡を通らない国からの代替調達に動くほか、電力や資源の使用を制限する措置を取る国もある。国際エネルギー機関(IEA)は3月20日、中東情勢の悪化による石油市場の混乱が消費者に与える影響を緩和するため、石油・ガス使用量削減措置の提案も示した。

中東情勢悪化と世界各国の動きはジェトロ特集「イスラエル・米国とイランの衝突を巡る中東情勢関連情報」を参照。

日本は中東から鉱物性燃料を輸入し、自動車を輸出

2025年の日本と中東の貿易を見ると、輸入額は鉱物性燃料が9割以上、輸出額は自動車が5割以上を占める。日本から中東向けの自動車輸出額は前年比15.3%増の2兆4,483億円で過去最高だった(2026年2月3日付ビジネス短信参照)。主にホルムズ海峡を通るサウジアラビア、UAE、クウェート、カタールなど向けの輸出が多かった。

日本の資源輸入における中東依存度は高い。経済産業省によると、2025年の年間の原油輸入量は1億3,974万キロリットルで、中東のシェアは93.5%だった。国別では、UAEが最多でシェア42.3%、サウジアラビアが39.8%、クウェートが6.0%で続いた。いずれもホルムズ海峡を通過するタンカーでの輸送が多かった。一方、米国からの輸入量は前年比2.8倍で、シェアは前年の2.4%から4.3%まで上昇した。

日本は、イラン情勢を踏まえてエネルギー対策本部を設置したほか、主要な原油輸入元であるUAEやサウジアラビア、クウェートの閣僚らと地域情勢や資源の安定供給について協議した。合わせて、原油および石油製品の代替調達、国内での需給状況の把握、物資供給の確保などの対応を進めている(経済産業省「中東情勢関連対策ワンストップポータル外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」参照)。

各国が交渉、安全な回廊設置も議論

資源の調達に関して、国際的な協力による取り組みも進んでいる。国際エネルギー機関(IEA)は3月11日、中東での軍事衝突に起因する石油市場の混乱に対処するため、32加盟国が石油備蓄から計4億バレルを市場に放出することで満場一致で合意した。日本政府は3月16日から備蓄放出を始めた。経済産業省によると、国家備蓄と民間備蓄などを合わせて2026年1月末時点の248日分だったところ、4月7日時点で231日分の石油備蓄があると発表している。

日本政府は、ホルムズ海峡における安全な海上回廊に向け、IMOやG7、湾岸諸国、トルコなど関係国の外相級と相次いで会談し、事態の解決に取り組んできた(2026年4月3日付ビジネス短信参照)。また、国連もホルムズ海峡に関する専門タスクフォースを設立している(2026年3月31日付ビジネス短信参照)。今回の事態の沈静化に向けた動きを振り返ると、湾岸諸国に限らず、世界の関係国の協力が重要だとあらためて認識された。停戦の仲介においては、パキスタンやトルコ、サウジアラビア、エジプトなど関係国が連携して対応した(2026年4月7日付ビジネス短信参照)。今後も国際的な協力を強化し、地域の安定化に向けた各国の連携が求められる。

中東・アフリカのインフラや物流事情については、地域・分析レポート特集「地政学的影響を踏まえた中東・アフリカの物流動向」も参照

中東の物流インフラ状況については、地域・分析レポート特集「中東・アフリカにおける物流とインフラプロジェクトの動向を探る」を参照。

執筆者紹介
ジェトロ調査部中東アフリカ課 課長代理
井澤 壌士(いざわ じょうじ)
2010年、ジェトロ入構。農林水産・食品部農林水産企画課、ジェトロ北海道、ジェトロ・カイロ事務所を経て、現職。中東・アフリカ地域の調査・情報提供を担当。