競争力重視にシフトする欧州延期相次ぐ規制簡素化のポイント
EU人権・環境政策の転換点(1)
2026年6月12日
EU域内の産業競争力の強化を最優先課題に掲げる欧州委員会の第2次フォン・デア・ライエン体制は、企業の規制対応負担の軽減に向け、2025年2月26日に持続可能性関連のデューディリジェンス(DD)(注1)実施義務や開示義務を大幅に簡素化するオムニバス法案を発表した(注2)。
対象基準を満たす域外企業も規制の対象となることから、日系企業も対応を進めてきた(2025年4月11日付地域・分析レポート参照)。しかし2026年3月に施行した簡素化指令により、企業持続可能性DD指令(CSDDD)・企業持続可能性報告指令(CSRD)の対象企業基準が大幅に引き上げられ、一部の大企業を除き、日系企業の多くも対象から外れるとみられる。規制の不確実性が高まる一方、欧州の消費者や取引先の要求、投資家の要請などさまざまな要因で、欧州でのビジネスには持続可能性に向けた取り組みが必須となっている。前編となる本稿では、CSDDD、CSRD、森林破壊防止DD規則(EUDR)の簡素化による変更点を整理する。後編(「日系企業はどう対応すべきか」参照)では、在欧日系企業への影響や今後の注目点を概観する。
EUは企業負担軽減と持続可能性の両立を模索
2024年12月に発足した第2次フォン・デア・ライエン体制は、持続可能性関連の第1弾(2025年2月)を皮切りに、2025年に10のオムニバス法案を発表し(表1参照)、119億ユーロの対応コスト削減を見込む。2029年までに、各種の報告義務を25%削減、中小企業に対しては35%削減を目標に掲げる。
欧州委は一貫して、持続可能性関連の規制簡素化はコンプライアンスや書類作成のための事務的・金銭的な対応コストや規制同士の重複を削減し、EU企業の競争力を強化する目的であり、企業活動による人権侵害や環境破壊を防止する企業責任を後退させ、EUの持続可能性に関する目標を引き下げるものではないと位置付けている。
| No | 発表時期 | 対象分野 | 主な内容 | 施行時期 | 削減効果(ユーロ) | 参考情報 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2025年2月26日 | 持続可能性 | 企業持続可能性報告(CSRD)、企業持続可能性デューディリジェンス指令(CSDDD) |
適用開始の延期:2025年4月17日 対象企業の削減など:2026年3月18日 |
45億 | 2025年4月7日付ビジネス短信参照 |
| 炭素国境調整メカニズム(CBAM):重量ベース(50トン)の適用除外基準を設定 | 2025年10月20日 | 12億 | 2025年3月4日付ビジネス短信参照 | |||
| 2 | 2025年2月26日 | 投資 |
|
2025年12月24日 | 120万 | ー |
| 3 | 2025年5月14日 | 農業 | 共通農業政策(CAP)簡素化、小規模農家の直接支払制度の申請簡素化、行政手続きコスト削減、デジタル化、環境要件緩和など | 2026年1月1日 |
15億8,000万 (うち行政手続きコスト2億1,000万) |
2025年5月22日付ビジネス短信参照 |
| 4 | 2025年5月21日 | 小規模ミッドキャップ(SMC)導入 | 中小企業以上大企業未満の企業の規制対応負担軽減、製品の安全性や品質基準などの手続きのデジタル化、EU統一規格がない場合の共通仕様導入など | 2025年7月31日 | 3億8,000万 | 2025年5月27日付ビジネス短信参照 |
| 5 | 2025年6月17日 | 防衛産業 | 防衛関連許認可の迅速化、財政支援策の改善(支援基準の明確化・簡素化)、防衛調達指令の簡素化、複数の加盟国間での共同調達ルールの簡素化など | ー | 7億1,000万 | 2025年6月23日付ビジネス短信参照 |
| 6 | 2025年7月8日 | 化学産業 | CLP規則、化粧品規則、肥料製品規則の一部簡素化、REACH規則の簡素化案など | ー | 2億9,000万 | 2025年7月17日付ビジネス短信参照 |
| 7 | 2025年11月19日 | デジタル | 人工知能(AI)法の簡素化、サイバーセキュリティー報告の簡素化、データ関連規則の統合案など | ー | 年間12億(2029年までに50億) | 2025年12月1日ビジネス短信参照 |
| 8 | 2025年12月10日 | 環境 | 許認可のための環境影響評価、産業排出指令(国単位での環境管理システム)簡素化、拡大生産者責任(EPR)の簡素化(設立国以外の加盟国での認定代理人任命義務化免除)など | ー | 8億9,000万 | 2025年12月22日付ビジネス短信参照 |
| 9 | 2025年12月16日 | 自動車 | 試験・評価手法の簡素化(低温試験などラボ条件依存の手法廃止など)など | ー | 5,800万 | 2025年12月25日付ビジネス短信参照 |
| 10 | 2025年12月16日 | 食品・飼料 | 植物保護製品、飼料規則などに関する簡素化、農薬や飼料添加物の更新要件の緩和、輸入品への残留農薬EU基準適用の検討など | ー | 9億3,900万 | ー |
| ― | 2026年に提案を予定 | エネルギー関連製品、税制、市民 | ー | ー | ー | ー |
出所:欧州委員会
CSDDD・CSRDの適用開始時期を延期
CSDDDは、企業活動による人権や環境への悪影響を予防・是正するDD義務を企業に課す。CSRDは、2014年の非財務情報開示指令(NFRD)を強化し、ESG(環境・社会・ガバナンス)の影響に関する非財務情報の開示を義務付ける。いずれも一定規模以上の企業に適用される。オムニバス法案のうち、CSDDDとCSRDの適用時期を延期する「Stop-the-Clock」指令が2025年4月に施行した(2025年4月7日付ビジネス短信参照)。
CSDDDは2024年7月に施行され、2027年から企業規模に応じて3段階での適用開始が予定されていたが、簡素化指令により2年間延期され、全ての対象企業が同時に2029年7月26日から適用開始となった。加盟国による国内法化期限も2年間延期され、2028年7月26日となった。
CSRDは2023年1月に施行し、2024会計年度分から4段階での適用開始を予定していたが、第2段階と第3段階の適用開始時期がそれぞれ2年間延期された(表2参照)。既に適用が開始されている企業は、後述する簡素化規則による対象基準引き上げによって対象外となる場合、2025年度分から報告義務が免除される。CSRD簡素化指令の国内法化期限は2027年3月19日となった。
今後各加盟国で、簡素化指令を反映したかたちで両指令の国内法化が進められる。
表2:CSDDD・CSRDの適用開始時期
| 区分 |
CSDDD (2024年7月施行) |
Stop-the-Clock指令 (2025年4月施行) |
簡素化指令 (2026年3月) |
|---|---|---|---|
| 加盟国による国内法化期限 | 2026年7月26日まで |
1年延期 2027年7月26日まで |
さらに1年延期 2028年7月26日まで |
(1):
|
2027年7月26日から適用 |
1年延期 2028年7月26日から適用 〔(2)と同時期〕 |
さらに1年延期 2029年7月26日から 〔全ての対象企業が同時に適用開始〕 |
(2):
|
2028年7月26日から適用 | 変更なし | 対象基準引き上げ(表3参照)により対象外 |
(3):
|
2029年7月26日から適用 | 変更なし | 対象基準引き上げ(表3参照)により対象外 |
| 区分 |
CSDDD (2024年7月施行) |
Stop-the-Clock指令 (2025年4月施行) |
簡素化指令 (2026年3月) |
|---|---|---|---|
| 加盟国による国内法化期限 | 2024年7月6日まで | 変更なし |
変更なし ※CSRD簡素化指令の国内法化期限は2027年3月19日 |
| (1):非財務情報開示指令(NFRD)対象企業 | 2025年(2024年会計年度分)から適用 | 変更なし | 対象基準引き上げ(表3参照)によって対象外となる企業は、2025年度分から報告義務が免除 |
| (2):NFRD対象外の上場企業(中小企業除く)と大企業 | 2026年(2025年会計年度分)から適用 |
2年延期 2028年(2027年会計年度分)から適用 |
2年延期 2028年(2027年会計年度分)から適用 |
| (3):EU域内で上場している中小企業 | 2027年(2026年会計年度分)から適用 |
2年延期 2029年(2028年会計年度分)から適用 |
対象基準引き上げ(表3参照)により対象外 |
| (4):対象域外企業 | 2029年(2028年会計年度分)から適用 | 変更なし | 変更なし |
出所:ジェトロ調査レポート「『サプライチェーンと人権』に関する法制化動向(全世界編 第3版)(2026年3月)」、Directive (EU) 2025/794(「Stop-the-Clock」指令)、Directive (EU) 2026/470(簡素化指令)を基にジェトロ作成
CSDDD・CSRDの対象企業数を大幅に削減
また、DD実施義務の内容、開示義務の内容、対象企業の基準などに関する簡素化法案については、2026年3月18日に簡素化指令が施行した。適用対象基準を大幅に引き上げ、CSDDDの対象企業数を約7割削減、CSRDは約8割削減する。EU域外企業については、CSDDDはEU域内純売上高15億ユーロ超の企業、CSRDはEU域内純売上高4億5,000万ユーロ超、かつEU子会社・支店の純売上高2億ユーロ超の企業のみが対象となる(表3参照)。日系企業が対象となるのは、主に(1)EU域内子会社単体で域内企業基準を満たす場合、または(2)日本の最終親会社を頂点とするグループとして域外企業基準を満たす場合が考えられる。(1)日系企業のEU域内子会社がCSRDの対象となる場合、2026年(2025年会計年度分)からの適用開始を想定し、準備を進めていた企業が多かった。しかし簡素化指令により、多くの在欧日系企業もCSDDD・CSRDの適用対象外になるとみられる。
表3:CSDDD・CSRDの適用対象条件
| 区分 |
CSDDD適用対象条件 (2024年7月施行) |
欧州委簡素化案 (2025年2月) |
簡素化指令 (2026年3月) |
|---|---|---|---|
| EU域内企業 | 全世界純売上高4億5,000万ユーロ超、かつ平均従業員数1,000人超の企業 | 変更なし |
全世界純売上高15億ユーロ超 かつ平均従業員数5,000人超(注) |
| EU域外企業 | EU域内純売上高4億5,000万ユーロ超 | 変更なし |
EU域内純売上高15億ユーロ超 (従業員数基準は設けていない) |
| 区分 |
CSDDD適用対象条件 (2024年7月施行) |
欧州委簡素化案 (2025年2月) |
簡素化指令 (2026年3月) |
|---|---|---|---|
| EU域内大企業 |
大企業(および大規模グループ) 次の条件のうち、2つ以上を満たす企業
|
次の要件のみ変更 従業員数1,000人超に引き上げ |
次の条件を満たす企業
|
| EU域内上場企業(零細企業を除く) |
零細に該当しないEU域内の上場企業 次の条件のうち、2つ以上を超えない企業
|
適用除外 | 適用除外 |
| EU域外企業 |
EU域内で次を満たすEU域外企業 (およびグループ)
|
|
次の条件を満たす企業 (およびグループ)
|
注:EU域内でのフランチャイズまたはライセンス契約のロイヤルティの閾値(しきいち)も、年間7,500万ユーロ超、かつ全世界純売上高(EU域外企業の場合はEU域内純売上高)2億7,500万ユーロ超に引き上げられた。
出所:ジェトロ調査レポート「『サプライチェーンと人権』に関する法制化動向(全世界編 第3版)(2026年3月)」、Directive (EU) 2026/470(簡素化指令)を基にジェトロ作成
CSRDの開示項目を6割削減
CSRDに基づく持続可能性報告書を作成するための報告基準は、欧州持続可能性報告基準(ESRS)で定められる。欧州委は欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)にESRSの開発を委任し、その草案を基に、欧州委が別途委任法令でESRSを規定する。セクターにかかわらず適用されるESRS第1弾は2023年12月から既に施行されていたが、簡素化指令を受け、ESRSの簡素化も進められている。
ESRS第1弾では、82の開示要件(DR)と1,000以上のデータポイントが規定されていたが、EFRAGが2025年12月に公表した簡素化ESRSの草案
では、開示が必須となるデータポイント数(注3)が61%削減され、任意開示項目は全て削除された。さらに、バリューチェーン上のデータ収集の負担を軽減し、ISSB基準(注4)との相互運用性を強化する方針だ。一方、CSRDの基本となる、持続可能性報告書で開示する「重要な(material)」項目を判断するにあたり、「ダブル・マテリアリティー評価(注5)」を必要とする点は維持される。加えて、横断的開示要求とトピック別ESRS(環境・社会・ガバナンス)から成る構造は、簡素化ESRSの草案でも引き継がれている(図1参照)。簡素化ESRSは、特定のトピックの削除や構造自体の変更を意図しておらず、各トピックの中でデータ収集が必要な開示項目を削減し、企業負担の軽減を図る方向性と言える。欧州委はEFRAGが提出した草案と技術的なアドバイスに基づき、2026年6月をめどに簡素化ESRSの委任法令の採択を進めている。また、タクソノミー規則の委任規則に関する簡素化法(2025年7月15日付ビジネス短信参照)も2026年1月に施行した。
図1:ESRSの基本構造
出所:ジェトロ調査レポート「CSRD適用対象日系企業のためのESRS適用実務ガイダンス(2024年5月)」、EFRAGウェブサイト
2026年6月までにセクター特有の基準とEU域外企業向け基準(N-ESRS)の採択が規定されていたが、簡素化指令により、セクター特有の基準の策定に関する規定は削除された。EU域外企業向け基準(N-ESRS)の策定は、少なくとも2027年10月まで延期される見込みだ。
情報提供を求められる対象外企業の負担軽減
CSDDDは、基本となるDDのステップ(第5条)に変更はないが、DDの実施方法を「合理的に利用可能な情報」に基づく一般的なスコーピングへと簡素化し、よりリスクベースの原則が強化される。モニタリング頻度やステークホルダーの範囲についても簡素化されたほか、対象企業だけではなく、対象企業から情報提供を求められる対象外企業の対応負担軽減も狙った内容となっている。まず、ビジネスパートナーに深刻なリスクがあった際に、是正行動計画の実施などあらゆる措置を取っても改善されない場合の最終手段として義務付けられていた取引停止義務を廃止。従業員数が5,000人未満のビジネスパートナーからの情報提供の要請は、他の手段によって合理的に入手できない場合に限るとした(表4参照)。
| No | 項目 | CSDDD条文(2024年7月施行) | 簡素化指令(2026年3月施行) |
|---|---|---|---|
| 1 | DDの実施方法の簡素化 | 自社、子会社、活動の連鎖(chain of activities)上にあるビジネスパートナーの事業活動全体を対象にした包括的なリスクマッピングの実施が必須 | 対象に変更はないが、実施方法を「合理的に利用可能な情報」に基づく一般的なスコーピングへと簡素化 |
| 2 | ステークホルダーの範囲の限定 | 取引先や従業員、権利保持者、地域社会を含むあらゆる利害関係者(第3条で定義) | 労働者およびその代表、自社、子会社、取引先の製品、サービスまたは事業によって直接影響を受ける可能性のある個人とコミュニティに限定 |
| 3 | モニタリングの頻度の延長 | 負の影響の特定、防止、軽減、停止、最小化の実効性を、12カ月ごとに状況に応じて定性的・定量的指標により評価する必要 | 評価の頻度を、12カ月ごとから原則5年ごとに延長(注) |
| 4 | 取引関係の終了に関する義務の削除 | 取引の停止は、是正行動計画の実施などあらゆる措置を取っても改善されず、かつ負の影響が深刻である場合に限って義務付け | 最終手段としての取引停止の義務を削除 |
| 5 | 気候変動に関する移行計画の策定義務 | 気候変動に関するパリ協定に沿った移行計画の策定義務を規定 | 同規定を削除 |
| 6 | 対象外企業への情報要求の制限 | ― | 従業員数が5,000人未満のビジネスパートナーからの情報提供の要請は、他の手段によって合理的に入手できない場合に限る |
| 7 | 制裁金の上限の引き下げ | 制裁金の上限は、前事業年度の全世界の売上高の少なくとも5%以上に設定 | 全世界売上高の3%以下へと引き下げ |
| 8 | EUレベルでの民事責任の削除 | 故意または過失による負の影響の防止・軽減、停止・最小化の義務を不順守により損害を引き起こしたり助長したりした場合、民事上の損害賠償責任を負う |
EUレベルでの民事責任に関する規定を削除 (各EU加盟国の国内法で規定) |
注:負の影響に対する措置がもはや適切または有効でない、あるいは新たなリスクが生じている、または生じる可能性があるとの合理的な根拠がある場合は、例外的にその都度モニタリングが必要。
出所:ジェトロ調査レポート「『サプライチェーンと人権』に関する法制化動向(全世界編 第3版)(2026年3月)」、Directive (EU) 2026/470(簡素化指令)を基にジェトロ作成
CSRDにおいても、対象企業によるバリューチェーン上の対象外企業への関連情報の開示要求が、対象外企業への過剰な負担になることが懸念されていた。2025年2月の欧州委提案では、「中小企業向けの自主的な報告基準(VSME)を策定し、対象企業が対象外企業に要求できる情報を同基準に沿ったものに限定する」としていた。欧州委は2025年7月、自主的な報告基準に関する正式な委任法令が採択されるまでの一時的な措置として、VSMEを提示する勧告を採択した(2025年8月14日付ビジネス短信参照)。EFRAGはVSMEに基づき、簡素化指令により対象外となった非中小企業も含めた「対象外企業向けの自主的な報告基準(VS)」の開発を進めており、2026年7月までにVSを定める委任法令の採択を見込んでいる。
EUDR、バッテリー規則のDD実施義務も延期に
パーム油や牛肉など対象6品目について、森林破壊・森林減少によって開発された農地で生産されていないことを確認するDD実施を企業に義務付けるEUDR(2023年6月13日付ビジネス短信参照)についても、企業規模による適用対象基準が設けられていないことから、中小企業の負担軽減が議論されてきた。既に適用開始が1年延期されていた(2024年12月5日付ビジネス短信参照)が、さらに1年間の延期と対象事業者の削減を含む簡素化規則
(2025年12月9日付ビジネス短信参照)が2025年12月26日に施行。2026年12月30日から(零細・小規模事業者は2027年6月30日から)適用開始となる。 DDを実施しDD宣言書(DDS)(注6)を提出する義務は、EU市場に初めて輸入・供給する事業者(operator)に限定され、EU市場に輸入・供給済み商品を扱う取引事業者などは同義務を免除される(図2参照)。EU域内に製造拠点を持つ日系企業が、域外から対象品目を原材料として直接輸入し、域内で加工・販売する場合、日系企業の欧州子会社は引き続き「operator」としての義務を負う。
また、欧州委は5月4日、ガイドラインとFAQを更新し、対象品目を修正する委任規則案を公表した(2026年5月7日付ビジネス短信参照)。
図2:EUDR対象事業者の削減
注1:低リスク国の零細・小規模事業者で、自身の土地で栽培、収穫、飼育した商品をEU市場に供給、あるいはEU市場から輸出する農家や林業者など。
注2:対象品目を初めて域内市場に上市するoperatorから最初に供給を受ける第1下流事業者は、 operatorが実施するDDSの参照番号を収集し保管する義務を負う。それ以降の事業者に対してはDDSの参照番号の収集義務を免除する。
出所:欧州委員会プレスリリースを基にジェトロ作成
バッテリー規則(2023年8月21日付ビジネス短信参照)における責任ある原材料調達などサプライチェーンに対するDD義務についても、2年間の延期が決定し、2027年8月18日から適用開始となった。一方、強制労働製品の域内流通禁止規則(2024年11月22日付ビジネス短信参照)は2027年12月14日から適用開始を予定しており、2026年5月時点で簡素化や適用延期は提案されていない。2026年6月14日までに、強制労働リスクに関するデータベースや欧州委による各種ガイドラインが整備される予定だ。
こうした規制簡素化を受け欧州ビジネスに関連する日本企業は、自社がどの規制の対象となるかを整理した上で、持続可能性に向けた取り組みの見直しを迫られている。後編では、在欧日系企業への影響や今後の注目点を概観する。
- 注1:
-
デューディリジェンス(DD)とは、(1)事業活動によるリスクの特定・評価、(2)リスクの防止・軽減、(3)取り組みの実効性の評価、(4)取り組みに関する説明・情報開示、の一連のサイクルを継続して回していくことを指す。人権DDの詳細は、ジェトロ『ビジネスと人権』早わかりガイド
(2.1MB)を参照。 - 注2:
-
欧州委が2025年2月に発表した持続可能性関連のオムニバス法案の詳細は、「ジェトロ世界貿易投資報告2025年版」第III章第3節第2項参照。
- 注3:
-
開示要件(DR)は、ESRS 内で性質ごとに区切られた開示単位を意味しており、データポイントとは、具体的に開示すべき情報の単位を指す。詳細は、ジェトロ調査レポート「CSRD適用対象日系企業のためのESRS適用実務ガイダンス(2024年5月)」を参照。
- 注4:
-
ISSB基準の詳細は、2024年9月5日付地域・分析レポートを参照。
- 注5:
-
ESRSは「重要な(material)」サステナビリティー項目を開示することを求めており、この重要性(マテリアリティー)の判断は、インパクト・マテリアリティーまたは財務マテリアリティーという2つの観点から行う必要がある。これをダブル・マテリアリティー評価という。
- 注6:
-
EUDRのDD宣言書(DDS)には、事業者・製品の情報、製品の生産国および対象産品が生産された土地の位置情報、DDを実施した結果リスクが認められなかったことの宣言文を含める必要がある。
EU人権・環境政策の転換点
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- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部欧州課
川嶋 康子(かわしま やすこ) - 2023年、ジェトロ入構。調査部調査企画課を経て、2025年4月から現職。





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