欧州委、防衛投資拡大に向けた防衛産業の簡素化オムニバス法案を発表

(EU)

ブリュッセル発

2025年06月23日

欧州委員会は6月17日、加盟国の防衛力強化に向け、域内防衛産業の製造能力の増強とそのための投資拡大を促進すべく防衛産業オムニバス法案を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。オムニバス法案は、欧州委が3月に発表した2030年までの域内防衛力の再構築を目指す防衛白書「準備2030」(2025年3月21日記事参照)に基づくものだ。オムニバス法案は防衛産業における行政手続きの簡略化、予見性の確保、EU予算へのアクセス改善などに関するもので、防衛投資を加速させる狙いがある。オムニバス法案は今後、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会で審議される。法案の主な内容は次のとおり。

  • 防衛関連許認可の迅速化:原則60日以内に決定。加盟国ごとに単一窓口を設置。
  • 財政支援策の改善:EUの防衛支援策「欧州防衛基金(EDF)」への応募企業や参加企業の行政負担軽減と迅速な実施に向け、支援基準を明確化・簡素化。投資促進策「インベストEU」の支援対象の合理化。サステナブルファイナンス枠組みのパリ協定ベンチマークから除外される「禁止された武器」の明確化。
  • 防衛調達指令の簡素化:防衛調達指令の適用基準を2倍に引き上げることで、適用範囲を削減。これにより小規模調達における行政負担を軽減。
  • 複数の加盟国間での共同調達の推進:共同調達ルールの簡素化。EDF支援事業向け許可の導入など加盟国間での一般移転許可の対象拡大。
  • 環境・化学品規制の簡素化:防衛産業のサプライチェーンで使用される化学物質に対する、REACH規則における加盟国ごとの適用除外の拡大など。

投資拡大に向けた防衛予算の拡充策も進展

EUでは、「準備2030」に基づく防衛力強化に向けた防衛予算拡充に向けた取り組みが進んでいる。「準備2030」と同時に発表された防衛投資策「欧州再軍備計画」(2025年3月21日記事参照)では、加盟国全体で最大8,000億ユーロの追加の防衛投資が可能と試算する。EU理事会は5月、同計画で提案された加盟国向けの新たな融資制度「欧州の安全保障行動(SAFE)」の設置法案を採択。欧州委も6月に過半数の加盟国が適用を申請するEU財政規律枠組みにおける過剰財政赤字手続きの一時的な適用停止措置(2025年5月7日記事参照)の発動に向けた手続きを正式に開始している。

(吉沼啓介)

(EU)

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