EU、森林破壊防止のためのデューディリジェンス義務付けの規則発効へ

(EU)

欧州課

2023年06月13日

EUの森林破壊防止のためのデューディリジェンス義務化に関する規則が6月9日にEU官報に掲載外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされた。同規則は6月29日に発効し、大企業には2024年12月30日から、中小企業については2025年6月30日から適用が開始される。

同規則は、気候変動対策と生物多様性の保護のため、EU域内で販売、もしくは域内から輸出する対象品が森林破壊によって開発された農地で生産されていないこと(「森林破壊フリー」)を確認するデューディリジェンスの実施を企業に義務付けるもの。欧州委員会が2021年11月に規則案を提案し、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会が2022年12月に暫定合意(2022年12月14日記事参照)に達した後、欧州議会とEU理事会はそれぞれ2023年4月と5月に採択した(EU理事会プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

生産された農地まで追跡、報告が必要

同規則は、パーム油や牛肉、木材、コーヒー、カカオ、ゴム、大豆をEU市場に上市、供給、またはEUから輸出する全ての事業者、貿易業者に対して、デューディリジェンスの実施と報告を義務付ける。また、皮革、チョコレート、家具、印刷紙、一部のパーム油ベースの派生製品(例:化粧品の成分)など多くの派生製品にも適用される。対象製品のリストは規則の付属書1に記載されている。

同規則により、2020年12月31日以降に森林伐採や森林劣化が行われていない農地で生産された商品のみがEU市場での販売やEUからの輸出が許可されることになる。事業者は販売または輸出する対象商品について、生産された農地までさかのぼって確認し、デューディリジェンス宣言書を加盟国の管轄当局へ事前に提出することが求められる。中小企業などの小規模事業者は、大規模事業者にデューディリジェンス宣言書の作成を依頼することも可能。加盟国当局への宣言書の提出は、欧州委が2024年12月30日までに構築する情報システムを通じて電子的に行われる。また、宣言書に記載すべき内容については規則の付属書2に定められている。

各国の森林破壊リスクに関するベンチマーク導入

さらに、同規則では、EU内外の国の森林破壊・森林劣化に関するリスクのレベル分けを行うベンチマークシステムを構築。リスクレベルを「高・標準・低」の3つに区分し、事業者や加盟国当局が検査や管理を実施する具体的な義務のレベルを決定する。これにより、「高リスク国」には監視を強化し、「低リスク国」に対してはデューディリジェンスを簡略化する。2023年6月29日時点では全ての国を「標準」に設定し、欧州委が2024年12月30日までに「高・低リスク国」のリストを実施規則により定める。

デューディリジェンス義務に違反した事業者に対しては、各加盟国が別途規定する罰則が科される。罰則規定には、罰金の最高額は当該事業者のEU域内の年間売上高の少なくとも4%の水準で設定することや、当該製品の没収、公共調達プロセスや公的資金へのアクセスからの一時的な除外などを含むとしている。

同規則を巡っては、パーム油を多く輸出するマレーシアやインドネシアなどが既にEUに懸念を表明している(2023年6月2日記事参照)。EUは、特に高リスク国に分類されるパートナー国を中心に協力を強化するとしている。

(土屋朋美)

(EU)

ビジネス短信 e269eee14e52e454