欧州委、自動車産業支援パッケージを発表、新たな小型車規格の導入も表明

(EU)

ブリュッセル発

2025年12月25日

欧州委員会は12月16日、EU自動車産業のクリーンモビリティへの移行支援策として、新たな政策パッケージを発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同パッケージは、(1)新車の乗用車・小型商用車(バン)の二酸化炭素(CO2)排出基準に係る規則および自動車表示指令の改正案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、(2)社用車のグリーン化に係る規則案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、(3)政策文書「バッテリー産業の振興戦略」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、(4)事業者の規制順守に伴う負担軽減のための規制簡素化(オムニバス)法案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、(5)新車の大型車のCO2排出基準に係る規則の改正案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから成る(添付資料表参照)。

(1)乗用車・バンのCO2排出削減目標(2025年11月20日記事参照)については、「2021年比で100%削減」としていた2035年目標を「90%削減」に引き下げるなど緩和し、2035年以降の新車の内燃機関搭載車販売の実質禁止の方針(2023年3月30日記事参照)を転換した。残る10%はEU域内産の低炭素鉄鋼または合成燃料(e-fuels)やバイオ燃料の使用により相殺可能とした。

欧州委はメーカーに排出削減手段のさらなる柔軟性を与えるが、ゼロエミッション車の普及を基軸に2050年の気候中立を実現する方針は維持すると説明。例えば、EUにおける自動車の型式認証と市場監視に関する規則〔(EU〕2018/858〕を改正し、全長4.2メートル以下の小型電気自動車(EV)の規格を導入する。そのうえで、2034年まで域内産小型EV1台につき1.3台分の排出クレジット「スーパークレジット」を付与し、より手頃な価格のEV生産や域内生産の維持に向けた加盟国などによる支援を後押しする。

さらに、(2)乗用車の新車登録台数の約6割、バンの約9割を占める社用車は、加盟国ごとに2030年と2035年について、新車登録における大企業が調達するゼロ排出・低排出車(ZLEV)のシェアを目標値として設定し、加盟国に達成を義務付けることで、ZLEVの普及を促す。社用車は個人所有車と比較し、より早期に中古車市場に流れるため、手頃な価格のEV購入を考える消費者のニーズにも沿うとしている。

(3)バッテリー産業に関しては、世界生産の約83%(2024年)を占める中国の過剰生産や対外直接投資の拡大に強い危機感を示し、価格や原材料の確保などについて脆弱(ぜいじゃく)性を解消すべく、早急に域内バリューチェーンの発展に資する確固とした産業政策が必要と、新たな戦略の意図を説明した。具体的には、投資や研究開発支援として約18億ユーロを拠出し、うち約15億ユーロをバッテリーセル生産者への無利子の融資に充てる。このほか、域内産業の付加価値の創造につなげるべく、外国企業の投資に要件を設ける方針などを表明した。

また(4)オムニバス法案では、関連法令を改正し、バンやトラックの認証試験の簡素化、電動バンに設置が義務付けられている装備の削減などを通じ、事業者の規制順守や手続きに係るコストを年間約7億600万ユーロ節約するとしている。

各規則案(改正案を含む)は今後、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会で審議される。

(滝澤祥子)

(EU)

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