欧州委、中小企業以上大企業未満の企業の規制対応負担軽減を目指す法案を発表

(EU)

ブリュッセル発

2025年05月27日

欧州委員会は5月21日、規制簡素化を目的に新たな企業規模の区分である「小規模ミッドキャップ(SMC)」の導入に向けたオムニバス法案を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

EU法では、企業規模の区分(2024年2月6日記事参照)に応じて異なる義務が課されている。オムニバス法案は、大企業に分類される企業の一部を、より小規模の区分として新たに導入するSMCに分類することで、中小企業と同様に義務免除などの規制負担軽減を認めるものだ。

欧州委は、域内産業の競争力強化(2025年2月6日記事参照)に向け、企業の規制対応費用の25%削減(中小企業については35%削減)を目標に規制の簡素化を進めている。既に炭素国境調整メカニズム(CBAM)規則(2025年3月4日記事参照)、企業持続可能性デューディリジェンス指令(CSDDD、2025年3月7日記事参照)、企業持続可能性報告指令(CSRD、2025年3月7日記事参照)のほか、農業分野(2025年5月22日記事参照)の規制簡素化オムニバス案を提案しており、今回の法案は規制簡素化オムニバス法案の第4弾となる。法案は今後、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会で審議される。

欧州委は、SMCを(1)純売上高1億5,000万ユーロ以下かつ従業員数750人未満、(2)総資産残高1億2,900万ユーロ以下のうち、いずれかの基準を満たす中規模以上の企業と定義。その上で、オムニバス法案において、SMCを対象に次のEU法が規定する規制を簡素化する。主な簡素化内容は、添付資料の表1を参照。

  • 一般データ保護規則(GDPR、規則2016/679)
  • ダンピング輸入品に対する保護に関する規則(規則2016/1036)
  • 補助金を受けた輸入品に対する保護に関する規則(規則2016/1037)
  • 金融商品市場指令(MiFID II、指令2014/65)
  • 目論見書規則(規則2017/1129)
  • バッテリー規則(規則2023/1542)(2023年8月21日記事参照
  • 重要事業体レジリエンス指令(CER、指令2022/2557)
  • Fガス規則(規則2024/573)

このほか、オムニバス法案には、EU法が規定する製品の安全性や品質の基準などの必須要求事項に関する適合宣言書や、当局とのやり取りをデジタル化するとともに、EU統一規格がない場合に必須要求事項への適合を容易にすべく、適合が推定される共通仕様を導入する法案も含まれる。改正の対象となるEU法は、添付資料の表2を参照。

(吉沼啓介)

(EU)

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