欧州委、環境規制簡素化オムニバス法案を発表、拡大生産者責任や環境影響評価を合理化
(EU)
ブリュッセル発
2025年12月22日
欧州委員会は12月10日、環境規制の簡素化に関するオムニバス法案を発表した(プレスリリース
)。オムニバス法案は、企業の規制対応負担を軽減するため、循環型経済、環境影響評価、産業排出などに関連するEU環境法令を改正するもので、6つの改正案からなる。欧州委はオムニバス法案について、EUの環境目標や水準を変更するものではなく、あくまで規制の重複や複雑な要件を取り除くものだとしている。成立すれば、年間で約10億ユーロ相当の規制負担が軽減される見込みだ。法案は今後、EU理事会(閣僚理事会)および欧州議会で審議される。法案の主な内容は次のとおり。
〇拡大生産者責任(EPR)の簡素化:バッテリー規則(注1)、包装・包装廃棄物規則(PPWR、注2)、廃棄物枠組み指令(2025年2月21日記事参照)、使い捨てプラスチック指令(2021年6月7日記事参照)、電気電子機器廃棄物(WEEE)指令は、企業に対しEPRの一環として、自社の設立国以外の加盟国で製品を販売する場合、認定代理人を任命することを義務付けているが、法案はこの義務を免除する。
〇環境影響評価の合理化:許認可を得る際に必要な環境影響評価を、単一窓口の設置、関係当局間の協力強化、デジタル化、審査期限の設定などを通じて、手続きの簡素化と迅速化を図る。
〇産業排出基準の簡素化:産業排出指令は、企業に対し施設ごとに環境管理システムを策定することを義務付けているが、法案は企業が同一加盟国内に複数の施設を有する場合に、国単位で一括して環境管理システムを策定することを認める。また、環境管理システム自体も簡素化し、化学品在庫の作成、リスク評価の実施、独立監査といった要件を廃止するほか、準備期間を3年間延長する。
〇産業排出報告の簡素化:畜産業者と養殖業者の水やエネルギーなどの使用に関する報告義務を免除するほか、加盟国が個々の畜産業者や養殖業者に代わって報告できる範囲を拡大する。
〇製品中の懸念物質(SCIP)の報告義務の廃止:廃棄物枠組み指令が規定する対応負担が割高なSCIP報告義務を廃止し、より簡素な代替策を段階的に導入する。
このほか欧州委は、環境規制のさらなる簡素化を念頭に、REACH規則の一部改正、PPWRの適用に向けたガイダンスの作成、循環型経済法案(2025年2月6日記事参照)の策定などを進める方針だ。
(注1)詳細は、調査レポート「EU バッテリー規則とドイツを中心としたバッテリー生産・リサイクルの動き」(2023年11月)を参照。
(注2)詳細は、調査レポート「EU循環型経済関連法の最新概要」(2024年11月)を参照。
(吉沼啓介)
(EU)
ビジネス短信 7943401c521dde23




閉じる
