欧州議会、持続可能性関連規制の適用延期法案を採択、CSDDDは1年延期、CSRDは2年延期へ

(EU)

ブリュッセル発

2025年04月07日

欧州議会は4月3日、企業持続可能性デューディリジェンス指令(CSDDD、2025年3月7日記事参照)と、企業持続可能性報告指令(CSRD、2025年3月7日記事参照、注)の規制内容を軽減するオムニバス法案のうち、適用時期を延期する法案を採択した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。既にEU理事会(閣僚理事会)も適用延期法案を承認していることから、正式な採択を経て施行される見込み。なお、オムニバス法案のうち、DD実施義務の内容、開示義務の内容、対象企業の基準などに関する法案(簡素化法案)については、EU理事会と欧州議会で引き続き審議される。

CSDDDについては、適用開始時期を1年間延期する。まず、加盟国による国内法化の期限を2027年7月26日に延期する。その上で、CSDDDは3段階での適用開始を予定していたが、第1段階の適用開始時期を1年間延期し、第2段階と同時期とする。これにより、第1段階と第2段階の対象企業の全世界での年間純売上高が9億ユーロ超、かつ平均従業員数が3,000人超のEU企業と、EU域内での年間純売上高が9億ユーロ超の域外企業には、2028年7月26日から適用する。第3段階の対象企業である上記以外の対象企業(全世界での年間純売上高が4億5,000万ユーロ超、かつ平均従業員数が1,000人超のEU企業と、EU域内での年間純売上高が4億5,000万ユーロ超の域外企業)には、従来どおり2029年7月26日から適用する。

CSRDについては、適用開始時期を2年間延期する。CSRDは4段階での適用開始を予定していたが、第2段階と第3段階の適用開始時期をそれぞれ2年間延期する。非財務情報開示指令(NFRD)の対象でない上場企業(中小企業除く)と、大企業(第2段階)は2027年1月以降開始する会計年度から、EU 域内で上場している中小企業(第4段階)は2028年1月以降開始する会計年度から適用となり、それぞれ翌年からその報告を行う。なお、既に適用が開始されているNFRDの対象企業(第1段階)には引き続き適用される。また、対象域外企業(第4段階)については、適用開始時期の変更はなく、2028年1月以降開始する会計年度から適用し、2029年からその報告を行う。

EPPとS&D、欧州委案の簡素化水準維持の方針で合意

適用延期法案は、欧州議会の最大会派の欧州人民党(EPP)グループ(中道右派)と第2勢力の社会・民主主義進歩連盟(S&D)グループ(中道左派)を含む親EU中道会派の賛成により採択された。ただし、適用延期法案の採択に際し、両会派は当初、簡素化法案の方針を巡って対立していた。S&Dは、簡素化により規制基準を大幅に下げないことや、右派(一部極右)の欧州保守改革(ECR)グループと協力しないことをEPPに求めていた。一方で、大幅な簡素化を主張するEPP(2025年1月23日記事参照)は、ECRと協力することでS&Dの賛成なしに採択する姿勢も見せていた。両会派は最終的にECRと協力する余地を残しつつ、欧州委案以上に規制内容を弱めないことで合意している。

(注)CSRDの詳細は、ジェトロの調査レポート「CSRD適用対象日系企業のためのESRS適用実務ガイダンス」(2024年5月)を参照。

(吉沼啓介)

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