EU、森林破壊デューディリジェンス規則の大幅簡素化と再度の適用延期で合意
(EU)
ブリュッセル発
2025年12月09日
EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は12月4日、森林破壊防止デューディリジェンス(EUDR、2023年6月13日記事参照)の簡素化法案で政治合意したと発表した(プレスリリース
)。今回の合意により、EUDRの適用開始が1年延期になるほか、デューディリジェンス(DD)実施義務などの対象事業者も大幅に削減される。
EUDRをめぐっては、適用開始まで約2カ月という段階で欧州委員会が突如、簡素化法案(2025年10月24日記事参照)を発表。内容が限定的な簡素化にとどまる一方で、新たなシステムの導入や適用延期でなく猶予期間の設定という中途半端なものだったことから関連事業者や農業界から反発を招いていた。今回、EU理事会と欧州議会が、欧州委案を修正し、再度の適用開始の1年延期に踏み切ったことから、新たな簡素化に対応する時間的猶予が与えられた格好だ。なお合意は、さらなる簡素化も示唆しており、引き続き動向を注視する必要がある。主な合意内容は次のとおり。
- 適用開始時期を現行規則の2025年12月30日から1年延期し、2026年12月30日からとする。また、零細・小規模事業者については、2027年6月30日からとする。
- DDを実施した上でDD宣言書を提出する義務については、EU市場に初めて輸入・供給する事業者(operator)に限定。EU市場に輸入・供給済み商品を扱う取引事業者(trader、注1)や欧州委案において新設された「下流事業者」(注2)に対しては、同義務を免除する。
- DD宣言書の参照番号の収集義務についても、サプライチェーン上の最初の下流事業者に限定し、それ以降の事業者に対しては免除する。
- 欧州委案において新設された「零細・小規模一次事業者」(注3)に対しては、DD宣言書の提出を免除し、代替として1回限りの簡易版宣言書の提出を求める。
- 書籍や新聞などの印刷物については、EUDRの対象品目から除外する。
- 欧州委に対し、小規模事業者などの規制対応負担を考慮し、さらなる簡素化に向けたEUDRの見直しを2026年4月30日までに求める。見直しの結果次第では、さらなる改正案の提出も求める。
(注1)EU市場のサプライチェーンで対象品目を輸入・供給する事業者以外の者。小売事業者など。
(注2)対象品目をEU域内の事業者から仕入れ、別の対象品目に加工し、EU市場に供給する事業者。例えば、対象品目のココアバターをEU市場に輸入する企業から、ココアバターを買い付け、別の対象品目であるチョコレートを製造し、供給する企業。
(注3)低リスク国の零細・小規模事業者で、自身の土地で栽培、収穫、飼育した商品をEU市場に供給、あるいはEU市場から輸出する農家や林業者など。
(吉沼啓介)
(EU)
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