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特集:米中摩擦でグローバルサプライチェーンはどうなる?米中貿易摩擦の影響、マイナスがプラスを上回るも、経済への影響は軽微か(フィリピン)

2020年1月7日

通商環境の変化から、在フィリピン日系企業の約3割が「影響を受ける」と回答した。マイナスのみの影響を受ける企業は、ASEAN平均を下回っている。マイナスの影響が及ぶ対象については、調達・輸入コスト、海外売り上げと回答する企業が目立った。ただし、政府、国際機関ともに、米中貿易摩擦がフィリピンに及ぼす影響は軽微、とする。

マイナスの影響はASEAN平均を下回る

ジェトロが実施した「2019年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」によると、在フィリピン日系企業(回答社数:123社)のうち、「米国の関税引き上げ等の保護主義的な動きによる事業への影響」について、41.5%の企業が「わからない」、30.9%の企業が「影響がない」と回答した(図1参照)。一方、「マイナスの影響がある」と回答した企業は13.8%、「プラスの影響がある」企業は5.7%、「プラスとマイナスの影響がある」企業は8.1%だった。合計すると、27.6%の日系企業が保護主義的な動きから何らかの影響を受けているものの、大半の企業は「影響がない」「わからない」と回答している。マイナスのみの影響については、ASEAN平均が14.4%であることを考えると、わずかながらも下回っている。

図1:米国の関税引き上げ等の保護主義的な動きによる事業への影響(単位:%)
在フィリピン日系企業(回答社数:123社)のうち、「米国の関税引き上げ等の保護主義的な動きによる事業への影響」について、41.5%の企業が「わからない」、30.9%の企業が「影響がない」と回答した(図1)。一方、「マイナスの影響がある」と回答した企業は13.8%、「プラスの影響がある」企業は5.7%、「プラスとマイナスの影響がある」企業は8.1%だった。合計すると27.6%の日系企業が保護主義的な動きから何らかの影響を受けているものの、大半の企業は「影響がない」「わからない」と回答している。マイナスのみの影響については、ASEAN平均が14.4%であることを考えると、わずかながらも下回っている。

出所:ジェトロ「2019年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」

マイナスの影響があると回答した日系企業では、マイナスの影響が及ぶ主な範囲として、「調達・輸入コスト」を挙げた企業が41.2%と最も多かった(図2参照)。以下、「海外売り上げ(輸出での売り上げ)」(35.3%)、「投資の減少」(29.4%)との回答率が高かった。現地調達を行っている在フィリピン日系企業は元々多くないだけに、世界的な通商問題が起こった際に、調達面で影響を受けやすい。また、輸出型で輸出加工区に進出する日系企業が多いために、「海外売り上げ」にマイナスの影響が出ると回答した企業が目立ったとみられる。

図2:マイナスの影響が及ぶ主な範囲(単位:%)
「調達・輸入コスト」を挙げた企業が41.2%と最も多かった(図2)。以下、「海外売り上げ(輸出での売り上げ)」(35.3%)、「投資の減少」(29.4%)との回答率が高かった。現地調達を行っている在フィリピン日系企業は元々多くないだけに、世界的な通商問題が起こった際に、調達面で影響を受けやすい。また、輸出型で輸出加工区に進出する日系企業が多いために、「海外売り上げ」にマイナスの影響が出ると回答した企業が目立ったとみられる。

出所:ジェトロ「2019年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」

プラスの影響があると回答した日系企業は5.7%と、回答企業社数に占める割合は低い。そうした企業の中で、プラスの影響が及ぶ主な範囲について聞いたところ、57.1%の企業が「海外売り上げ(輸出での売り上げ)」、42.9%の企業が「国内売り上げ(現地市場での売り上げ)」、14.3%の企業が「投資の増加」と回答した。「生産コスト」や「事務コスト」と回答した企業はいなかった。フィリピンに進出する企業は輸出型企業が多いだけに、輸出面でのメリットを享受する企業が多い中、国内売り上げの増加に結び付いている企業もある。

図3 :プラスの影響が及ぶ主な範囲(単位:%)
プラスの影響があると回答した日系企業は5.7%と回答企業社数に占める割合は低い。そうした企業の中で、プラスの影響が及ぶ主な範囲について聞いたところ、57.1%の企業が「海外売り上げ(輸出での売り上げ)」、42.9%の企業が「国内売り上げ(現地市場での売り上げ)」、14.3%の企業が「投資の増加」と回答した。「生産コスト」、「事務コスト」と回答した企業はいなかった。

出所:ジェトロ「2019年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」

影響を受ける具体的な政策については、「米国の通商法301条に基づく追加関税」が26.7%、「米国の通商法301条に基づく追加関税 第4弾」の16.7%、「米国の鉄鋼・アルミニウムを対象とした追加関税賦課(通商拡大法232 条)に対する各国・地域の報復関税 」16.7%、「中国の米国に対する報復関税(通商法301 条に対する対抗措置)」13.3%、の順に多かった(表参照)。また、「米国の鉄鋼・アルミニウムを対象とした追加関税賦課(通商拡大法232 条)」を挙げる企業も13.3%だった。通商摩擦の中でも、米中貿易摩擦がフィリピンの日系企業に与える影響が大きいものの、特に企業は中国の政策よりも米国の政策から影響を受ける企業が多い特徴がある。

表:影響を受ける具体的な政策
回答項目 回答率
米国の通商法301条に基づく追加関税 26.7%
米国の通商法301条に基づく追加関税 第4弾 16.7%
米国の鉄鋼・アルミニウムを対象とした追加関税賦課(通商拡大法232 条)に対する各国・地域の報復関税 16.7%
中国の米国に対する報復関税(通商法301 条に対する対抗措置) 13.3%
米国の鉄鋼・アルミニウムを対象とした追加関税賦課(通商拡大法232 条) 13.3%
米国の自動車・自動車部品の輸入安全保障調査(通商拡大法232 条)に基づく措置 6.7%
米国の輸出管理・投資規制強化 3.3%
その他 10.0%
わからない 40.0%

出所:ジェトロ「2019年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」

中国からの代替生産でメリットも

ジェトロ・マニラ事務所が電話取材したところ、経済特区に入居して輸出加工型貿易を行っている日系製造業A社は、メインの顧客が中国であるため、米中貿易摩擦の影響を受けて受注量が減少しているという(A社社長)。一方、日系商社B社は、米中貿易摩擦の影響を受けて同社の顧客である在フィリピン製造業が全体として受注量が減少しているためか、同社の受注量も間接的に悪影響を受けているとした(B社社長)。また、日系物流C社も、米中貿易摩擦による世界経済の収縮により貿易量が低下し、貨物量が落ちこむことで同社の収益に影響が出ているという(C社担当者)。

プラスの影響を受けているという日系企業も、少なからず存在する。在フィリピン日系製造業向けに各種サービスを提供する日系D社は、同社の主要顧客である在フィリピン日系企業は米中貿易摩擦が売り上げ拡大につながるメリットを受けており、従って同社の業績も上向いているという(D社担当者)。また、日系製造業E社は、同社が中国とフィリピンで製造する製品が、米国による中国に対する制裁関税対象に含まれているために、中国での生産品目のフィリピンへの一部生産移管を検討中で、フィリピン工場にとっては生産量の向上につながるという(E社担当者)。

米中貿易摩擦による経済下押しは限定的

フィリピンの2019年1~9月の経済成長率は5.7%で、6.1%を記録した前年同期から0.4ポイント低下したものの、他のASEAN諸国と比較して堅調だ。例えば、タイやマレーシアは成長率がもっと減速している。政府は2019年の経済成長率の目標を6.0~7.0%に置く。目標を達成するためには、第4四半期に6.7%以上の経済成長率を達成する必要がある。

1~9月期の減速の主因も、米中貿易摩擦の影響ではない。フィリピン政府は、2019年予算の成立が3カ月半遅れて公共投資が伸び悩み、予算執行が滞り国内投資が落ち込んだことや、5月の中間選挙キャンペーン期間中に公共事業が禁止されたことも重なり、上半期の経済成長率が5.5%にとどまった点を、2019年の経済成長の鈍化の主な理由としている。米中貿易摩擦の影響については、国家経済開発庁(NEDA)が9月に、フィリピンの経済成長率を0.1ポイント減少させるにとどまるとの見通しを発表した(2019年9月12日付ビジネス短信参照)。

国際機関は、フィリピンの2019年の経済成長予測を軒並み下方修正している。アジア開発銀行(ADB)は9月、2019年のフィリピンの経済成長率の予測を6.2%から6.0%に(2019年10月2日付ビジネス短信参照)、IMFは10月、6.0%から5.7%に下方修正した(2019年10月23日付ビジネス短信参照)。しかし、両機関ともに米中貿易摩擦を下方修正の主な理由に挙げておらず、国家予算成立の遅れによる国内投資の落ち込みによるところが大きい、としている。

執筆者紹介
ジェトロ・マニラ事務所
坂田 和仁(さかた かずひと)
2007年、ジェトロ入構。産業技術部、沖縄事務所、ソウル事務所、企画部企画課などを経て、2017年より現職。

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