高まる経済安全保障リスク、各国・地域の自律性向上と不可欠性確保に向けた戦略とは該非判定についての課題
中国のレアアース輸出管理(3)

2026年3月24日

近年、中国はレアアースをはじめとする軍民両用(デュアルユース)品目についての輸出管理を強化している。中でも、2025年4月4日に施行された7種のレアアースに係る輸出管理の強化を受け、関係する多くの日本企業が輸出許可申請の対応に追われる事態となった。

この輸出管理強化措置に関して、自社製品が輸出管理の対象か否かの判断(該非判定)が難しいことも日本企業の課題となっている。2025年4月に施行された「商務部 税関総署公告2025年第18号」に基づくレアアース7種の輸出管理強化の対象品目のうち、組み込み品や一定程度の加工を行っている品目については、特に該非判定が難しいという声を日本企業から聞いている(注1)

該非判定の参考となる商務部の見解

この公告の品目に関する該非判定の参考情報としては、商務部の産業安全・輸出入管制局のウェブサイトに掲載されている、「両用品目に関するよくある質問と回答」がある(表1参照)。同ウェブサイトでは、2024年3月6日に「黒鉛類」を公表、その後2025年2月28日に「タングステンとテルル」について、2025年4月8日に「参考とするHSコードなどの問題」について、2025年4月21日には「レアアース」について、2025年9月16日には「レアアース関連品目」について同様のよくある質問と回答を公表した。なお、本稿で記載している品目名称は商務部ウェブサイトに掲載された文章を抜粋・仮訳しているものとなるため、実際の輸出に当たっては商務部ウェブサイト掲載の中国語原文を参照することを推奨する(注2)

表1:両用品目に関するよくある質問と回答
公布日 タイトル 主な内容
2024年3月6日 両用品目に関するよくある質問と回答1(黒鉛類) 黒鉛関連品目に関する該非判定の説明(純度、強度、密度など)、エンドユーザーおよびエンドユース証明に係る説明、申請書記入にあたっての署名などの説明
2025年2月28日 両用品目に関するよくある質問と回答2(タングステンとテルル) タングステン、テルルの関連品目(混合物など)についての該非判定の説明
2025年4月8日 両用品目に関するよくある質問と回答3(参考とするHSコードなどの問題) 「無許可輸出」に該当する場合の説明、商務部への該非判定の照会に関する説明、HSコードは該非判定の根拠とならないとの説明
2025年4月21日 両用品目に関するよくある質問と回答4(レアアース) 永久磁石材料の管理範囲について、管理の対象外となるものの説明、蛍光体粉末、自動車用触媒などの触媒材など管理の対象外となるものの説明
2025年9月16日 両用品目に関するよくある質問と回答5(レアアース関連品目) モーター用ローター、センサーおよび関連部品、磁気吸着機能部品を組み込んだ川下製品などについて対象外となるものの説明

出所:商務部産業安全・輸出入管制局ウェブサイト

モーターなどの電子部品などは管理の対象外

レアアースについては、「両用品目に関するよくある質問の回答」に「レアアース」と「レアアース関連品目」が掲載されている(注3)。「レアアース」では、まず、合金とターゲット材に含まれるレアアース成分に関する具体的な要件が示されている。当該公告(商務部 税関総署公告2025年第18号)に記載されている合金やターゲット材の管理範囲には、同公告に記載された元素のみを含有する合金やターゲット材に加えて、同公告に記載された元素と記載されていない元素をともに含有する合金やターゲット材も含むとされている。

また、公告で示された永久磁石材料の管理範囲について、サマリウムコバルト永久磁石材料、テルビウム含有ネオジム・鉄・ボロン永久磁石材料、ジスプロシウム含有ネオジム・鉄・ボロン永久磁石材料を単純加工して成形されたシート、タイル、リング、関連磁性部品などの一次加工品(磁性鋼、磁性リング、磁石などさまざまな名称が関係する)は管理の対象とした一方、より踏み込んだ加工を行い成形したモーターなどの電子部品、スピーカー・イヤホンなどの電子製品は管理範囲には含まないと明らかにした 。

両用品目に関するよくある質問の回答の「レアアース関連品目」においては、加工を加えた品目である「モーター用ローター、ステーターコンポーネント」「センサーおよび関連部品、コンポーネント」「その他のレアアース関連の川下産品」について、商務部 海関総署公告2025年18号公告の管理対象外となるものを例示した。具体的には、「モーター用ローター、ステーターコンポーネント」については、磁石を鉄芯/鋼板に埋め込み、内蔵、または表面実装し固定して組み立てたコンポーネント、あるいは軸心、ベアリング、外側スリーブ、ファン、ギア、動平衡板、エンコーダーなどの部品を異なる程度に統合したコンポーネントは高度加工製品の範囲に属し、一般的に上記18号公告の管理対象外とした。加えて、「センサーおよび関連部品、コンポーネント」については、センサー、あるいはチップ・回路基板・ブラケット・リードピン・磁石などを異なる程度に集積したセンサー部品、もしくは組み立て品で、射出成形などの成形工程を経たものは、高度加工製品のカテゴリーに属し、一般的に18号公告の管理対象外であることなどを示した 。

商務部への相談制度の位置付けとその効力

該非判定にあたっては、これらの商務部が示した「両用品目に関するよくある質問の回答」において自社商品と同様あるいは類似の品目の該非判定の考え方を参照する方法のほか、商務部への事前相談制度を活用した該非判定の手法もとられている。この事前相談制度の法的根拠は、「輸出管理法」第12条と両用品目輸出管理条例の第14条だ。これらの条文により、両用品目の該非について商務部に相談する制度が設けられている。

なお、この制度の効力については、商務部が2025年4月8日に発表した「両用品目に関するよくある質問の回答その3」の解説が参考となる(注4)。それによると、「事前相談と本申請は異なるため、たとえ事前相談に対する回答が『両用品目に該当しない』との結果になったとしても、これは必ずしも輸出許可不要を意味するものではなく、輸出事業者が負う該非識別の義務と税関への正確な申告提出義務もこれによって免除されるものではない」とされている 。

これについて、金誠同達法律事務所(JT&N)は、「事前相談の結果には法的拘束力がないことがうかがえる」と指摘する一方、「これは事前相談制度の意味を否定するものではなく、該非判定ができない輸出事業者にとって、同制度を活用する価値は依然としてある」との見解を示した(注5)

なお、「両用品目輸出管理条例」第14条によると、相談の際に、輸出事業者は輸出対象物(貨物、技術またはサービス)の「性能指標、主要用途および両用品目への該非が分からない理由」を提出する必要があるとされる。商務部の回答の精度ができるだけ高くなるよう、事前相談にあたって、輸出事業者はできるだけ正確かつ詳細な情報を商務部に提出した方がよい面もある。ただし、提出にあたっては、法制度上必ずしも提出が明示的に義務付けられていない企業の競争力に直結する情報などの提供の可否や、取引先との秘密保持などの関係において外部提供が不可である情報などの有無を、経営上の判断ができる役職者も交え精査することが必要だろう。

同制度の利用にあたっては、どの程度の期間で商務部からの回答が得られるかという点も、企業がサプライチェーン上の予見性を確保するためには重要だろう。これに関し、両用品目輸出管理条例第14条では、「国務院の商務主管部門は速やかに回答しなければならない」との条文はあるが、具体的な処理日数は示されていない。ジェトロが把握する限りの事例においては、問い合わせの書類提出から回答の取得までに1カ月から3カ月程度を要している。また、一部の企業からは「回答の有効期限について6カ月などと記載されているケースがあり、効力に時限があるかたちとなっている」との報告もある点には注意が必要だ。なお、商務部が公表している両用品目輸出許可申請表作成ガイドラインによると、「回答レターの有効期間は、回答日から6カ月間」との記載がある(注6)

税関検査の根拠規定

税関総署公告2025年第123号」 に基づく中国税関の該非判定にも注意が必要だ(注7)。税関は同公告により、輸出者が税関に対して、国家輸出管理部門(商務部)が発行する許可証を提示せず、かつ、当該貨物が輸出管理対象に該当する可能性がある証拠を税関が有する場合、税関は輸出者に対して貨物の性能指標、主要な用途などの書類の提出を求めることができるようになったほか、法に基づいて判定または組織的鑑定が可能となっていた。

これについて、商務部は「両用品目に関するよくある質問の回答その3」において、「両用品目の輸出にあたって、通関申告時点で輸出許可証を取得していない場合は既に無許可輸出に該当する」との見解を示した。つまり、仮に税関の疑義確認手続きの結果、両用品目に該当すると認められた場合は、輸出事業者は無許可輸出により罰則を受ける恐れがある、ということになる。

商務部は2025年7月24日の記者会見において、今後は典型的な摘発事例の詳細を適宜公表すると発表していたが、本稿執筆時点で、商務部から摘発事例の詳細はまだ公表されていない。中国各地の税関は日常的に違法輸出の処罰決定書を公開しているため、そこからレアアースとレアメタルに関する2025年の処罰事例をいくつか抽出し、表2に整理した。

表2:2025年における処罰事例(一部)
処罰日 対象品目 情状 処罰内容
2025年4月18日 黒鉛 上海市の某社が2023年3月12日に両用品目に該当する3,300ドルの黒鉛るつぼおよびタイ向け輸出用の輸出許可証を提出し、輸出申告をしたところ、税関は調査を経て、実際の仕向け地がタイではなくマレーシアと認定し、同社への処罰を決定した。 過料1,000元(約22,770円、1元=約23円)
2025年5月7日 ハフニウム(Hf) 上海市某社が2024年1月に両用品目に該当する12万9,910.6ドルの純度99.95%ハフニウム製品を輸出申告したが、必要な輸出許可証を提出できなかったため、税関は「輸出管理法」第34条などを根拠に、同社への処罰を決定した 過料46万元
2025年5月20日 ビスマス(Bi) 北京市某社が2024年11月25日に両用品目に該当する22万4,840ドルのビスマスをインド向けに輸出申告したが、必要な輸出許可証を提出できなかったため、税関は「輸出管理法」第34条などを根拠に、同社への処罰を決定した。 過料50万元
2025年5月28日 タンタル(Ta)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi) 江蘇省蘇州市某社が2023年2月~2024年12月の間に輸出許可を取得せずに、計1万1,294.5ドルのタンタル、インジウム、ガリウム、ゲルマニウム、ビスマスを誤って単純な「金属板」「金属箔(はく)」として申告し、米国・フランスなど向けに輸出した。税関は「税関行政処罰実施条例」第15条、第16条などを根拠として、同社への処罰を決定した。 過料8,000元
2025年6月12日 ネオジム磁石 福建省アモイ市某社が2025年4月10日に輸出許可を取得せずに、3万7,584.96ドルの「鉄成分の磁石」(HSコード:8505119000)を輸出申告したところ、税関は調査を経て、輸出許可が必要な両用品目であるジスプロシウムを含むネオジム鉄ボロン磁石材料(HSコード:8505111000)に該当すると判断し、同社の行為が「輸出管理法」第34条における管理対象品目の無許可輸出に該当すると認定し、同社への処罰を決定した。 過料8万1,000元

出所:金誠同達法律事務所(JT&N)調べによる

具体的な処罰事例を見ると、輸出者が必要な輸出許可を取得せずに両用品目を輸出申告したという理由で税関からの処罰を受けた事例が散見される(注8)。従って、企業においては、自社の製品が両用品目に該当するか判断がつかない場合には、商務部への問い合わせ制度の利用や、該否判定について知見のある弁護士などの専門家の意見を踏まえた慎重な対応が必要になるだろう。


注1:
2025年4月7日付ビジネス短信「中国、中・重希土類7種のレアアース関連品目で4月4日から輸出管理を実施本文に戻る
注2:
商務部産業安全・輸出入管制局ウェブサイト「よくある質問と回答(中国語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます本文に戻る
注3:
2025年4月28日付ビジネス短信「中国商務部、レアアース輸出に関するQ&Aを公表、輸出管理対象に含まないものを一部例示」、2025年10月8日付ビジネス短信「商務部、レアアース輸出に関するQ&Aを追加公表、センサーなどについて管理対象に含まない品目例示本文に戻る
注4:
2025年4月18日付ビジネス短信「中国商務部、両用品目輸出に関するQ&A公表本文に戻る
注5:
2025年12月付ジェトロ調査レポート「レアアースとレアメタルに関する中国の輸出管理の動向PDFファイル(616KB)本文に戻る
注6:
商務部産業安全・輸出入管制局ウェブサイト「両用品目輸出許可申請表作成ガイドライン(中国語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます本文に戻る
注7:
2025年6月18日付ビジネス短信「中国税関、両用品目輸出管理における疑義確認に関する詳細を発表本文に戻る
注8:
摘発事例は一覧できるかたちで掲載されておらず、検索範囲や検索方法によって把握できる事例が異なる点に留意されたい。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部中国北アジア課 課長代理
藤原 智生(ふじはら ともき)
2009年にジェトロ入構後、海外調査部中国北アジア課、企画部企画課、北京事務所などでの業務に従事。
現在は中国大陸、香港、台湾関連の調査を担当。ジェトロの媒体などで経済動向や制度情報などについて、情報発信を行う。