高まる経済安全保障リスク、各国・地域の自律性向上と不可欠性確保に向けた戦略とは輸出許可取得プロセスにおける課題
中国のレアアース輸出管理(2)

2026年3月24日

近年、中国はレアアースをはじめとする軍民両用(デュアルユース)品目についての輸出管理を強化している。中でも、2025年4月4日に施行された7種のレアアースに係る輸出管理の強化を受け、関係する多くの日本企業が輸出許可申請の対応に追われる事態となった。本稿では、日本企業から寄せられる相談の中でも多くを占める、輸出許可取得プロセスについて解説する。

軍民両用(デュアルユース)品目の輸出管理制度の概要

中国の輸出管理制度は、大きく二つの体系に区分される。1つは一般貨物・一般技術を対象とした輸出管理規制であり、もう1つは安全保障の観点から、軍民両用(デュアルユース)物資、軍需品、核関連物資・技術などを規制対象とする体系だ(注1)

本稿で主に取り上げるレアアースの輸出管理強化に係る許認可取得手続きは、このうち安全保障の観点から両用品目の輸出を管理する体系に属するものだ。本稿においては、法令の内容について一般的な範囲で説明するが、個別企業の事情や具体的製品を巡る判断については、必要に応じて中国法に精通した弁護士や規制当局への相談・照会をすることを推奨する。

安全保障を目的とする輸出管理体系の基本法に位置付けられるのが「輸出管理法」だ。同法に基づき、より具体的な管理措置を定めるものとして、2024年12月に「両用品目輸出管理条例」が施行された。これらの法令により、中国政府は両用品目などについて、輸出時に許可が必要となる品目の管理リストを整備するとともに、リスト外品目にも適用可能なキャッチオール規制の枠組みを構築した。輸出管理リストまたは臨時管理措置の対象となった品目については、輸出主体が中国商務主管部門へ事前申請し、許可を得た上で輸出することが求められる。一部のレアアース関連品目については、2025年4月4日からこの手続きが必要となった。

輸出規制対象品目は「両用品目輸出管理リスト」に掲載されているほか、近年は追加措置も相次いでいる。なお、「両用品目および技術輸出入許可証管理目録」では「両用品目輸出管理リスト」掲載の品目の多くについて、輸出管理コードごとに参考となるHSコードが示されており、実務上における輸出品目の特定に役立つと考えられる(注2)

両用品目輸出許可証取得に係る手続き

両用品目の輸出許可証取得にあたっては、表に示した申請書、最終ユーザーおよび最終用途を証明する書類、輸入者および最終ユーザーの概要などをまず、企業所在地の地方の商務主管部門(商務庁など)に提出する必要がある。

両用品目の輸出許可申請の詳細については、商務部が「両用品目輸出許可」に関するWEBページ(注3)を設け、申請フローや申請資料、そのフォーマットなどを記載しているほか、2025年3月28日には「両用品目輸出許可申請記入に関するガイドライン(注4)」を公表した。ガイドラインには、申請表の記入項目に関する説明や、申請時の自己確認用チェックポイントとチェックリスト、個別品目の該非判定に関する考え方などのよくある質問と回答などが記載されている。

表:「両用品目輸出管理条例」輸出許可証取得に係る提出書類や要件
項目 提出書類や要件
輸出許可証取得に必要な主な書類
  • 申請書
  • 契約書、合意書、またはその他補足資料の写し
  • 輸出される物品の技術説明または試験報告書
  • 最終ユーザーおよび最終用途を証明する書類(中国語訳を含む)
  • 輸入者および最終ユーザーの概要(中国語訳を含む)
  • 申請者の法定代理人、主要管理者、および運営者の身元証明
  • 商務部が要求するその他の書類(申請者は審査を促進するその他の資料も提出できる)
最終ユーザーおよび最終用途証明書解説事項の例
  • 通常はテンプレートに従って発行し、ユーザー情報および主な約束事項を全て記載する必要がある。
  • 外国側の担当者が署名および押印した英語の原本を提出し、外国側に公印がない場合はその状況を説明する必要がある。
  • 中国語の翻訳文には輸出業者の公印を押印し、翻訳の正確性を確認する。
  • エンドユーザーが香港、マカオ、台湾の企業である場合は、香港、マカオ、台湾用のテンプレートに従ってフォームを記入すること。
輸入者およびエンドユーザーのプロフィールの解説事項の例
  • これには、法人、設立日、事業範囲、資産規模、従業員数、企業ウェブサイト、主要製品などの情報が含まれるが、これらに限定されない。
  • 実際の生産現場や製品の写真、過去の協力に関する情報も提供できる。

出所:商務部 両用品目輸出許可申請表作成ガイドライン(2025年3月28日)、翻訳は安全保障貿易情報センター(CISTEC)を参考に作成

図では、商務部が公表している「両用品目輸出に係る許認可フロー」を示した。両用品目輸出許可に係る許認可フローに係る課題としては、許可申請から許可取得までの必要時間が必ずしも明確ではなく、企業の予見性が低い状態が続いていることがある。

図:両用品目輸出許可に係る許認可フロー

図:PDF版を見るPDFファイル(246KB)

1. 申請書類の提出(地方商務担当部門)。まず、申請企業(輸出企業)は、エンドユーザー情報などを含む申請書類を、自社所在地を管轄する地方の商務担当部門(商務庁等)に提出する。地方窓口では、提出書類の記載ミスや不足がある場合、修正や追加提出を求められることがある。2. 中央商務部による受理。地方窓口において書類が整っていると判断されると、申請情報が中央の商務部へ送付される。商務部でも再度、書類の完全性や記載内容を確認し、問題がないと判断された時点で「正式受理」となる。法令上、商務部は正式受理から原則45営業日以内に許可の判断を行うこととされている。ただし注意すべき点は、この45営業日のカウント起点が「中央商務部での正式受理日」であるということである。地方窓口でのチェック期間は45営業日の対象外である。3. 45営業日を超える審査に移行するケース。また、すべての申請が45営業日内に処理されるわけではない点にも留意が必要である。商務部が「国の安全・利益や外交政策に重大な影響を及ぼす可能性がある」と判断した場合、国務院や中央軍事委員会への報告や、専門家への意見聴取が行われる。この場合、審査は商務部内に留まらず、45営業日の枠外で処理されることとなる。

出所:商務部ウェブサイトからジェトロ作成

両用品目輸出管理条例第17条では、「国務院の商務主管部門は両用品目の輸出許可申請を受理した日から、単独または国の関係部門と共同で輸出管理法と本条例の規定に基づいて輸出許可申請の審査を行い、45営業日以内に許可または不許可の決定を下さなければならない」と定めており、原則的な審査期間は45営業日以内という事が分かる。

一方で、許可申請を行った企業からは、申請書類提出から45営業日以上の日数を要したという声が多く聞かれる。この要因としては、45営業日のカウントはあくまでも、中央の商務部が正式に「受理」してから始まるという点にある。則ち、企業所在地の地方の省級の商務主管部門(商務庁など)に提出し、地方の商務主管部門からの書類の修正や再提出の要求を満たした上で、中央の商務部に申請書類が伝送され、かつ中央の商務部が同様に書類に不備がないかなど、初期的な確認を経て正式に「受理」されてから、やっと45営業日のカウントが始まるという事になる。

なお、全ての申請がこの45営業日という処理期間内の対象というわけではない点にも注意が必要だ。両用品目輸出管理条例第17条では「国務院に報告して許可を求める、または国務院・中央軍事委員会に報告して許可を求めなければならない場合、前項に規定した輸出許可審査の期限の制限を受けない」との条文が存在する。また、「国務院の商務主管部門が輸出許可申請に対して行う審査において、法に基づいて鑑定を実施し、専門家に意見を求める、あるいは輸出者、エンドユーザーに対して実地検証を行う場合、必要な時間は第1項で規定する輸出許可審査の期限に算入しない」との条文もある。

従って、国の安全と利益、外交政策に重大な影響を及ぼす両用品目と商務部が判断した場合などにおいては、国務院や中央軍事委員会への報告や専門家に意見を求めるプロセスをたどることとなる。ジェトロが把握する限り、磁石については、商務部内での審査で許認可の判断がなされていることが多い。一方で、ガリウム、ゲルマニウムなどについては、専門家の意見聴取などのフローをたどる場合があり、その場合は6カ月以上の期間を要したケースもあった。また、複数の企業から2025年の9月頃以降新たに、専門家の意見聴取や関連部門との共同審査のフローに入るケースが増えたとの声も出ている。

輸出許可取得上の予見性確保に向けた取り組み

企業がこの許可取得のプロセスにおける予見性を確保する方法としては、上述の45営業日のカウントの起点が中央の商務部が正式に受理した時点であると認識し、日数カウントを行うほか、商務部内のみ(45営業日の範囲内)でのプロセスに乗っているか確認することが挙げられる。これらの確認方法としては、許認可を提出する際に使用する商務部のオンラインシステムにおいて進展のステータスを確認するという事になる。日本企業のサプライチェーンの多くにおいて、申請主体は磁石を製造する中国企業というケースが存在するが、その場合は、申請主体にこのステータスの表示の変化についての定期的な確認と報告を依頼することが1つの方法だ。

ジェトロのヒアリングによると、地方の商務部門への書類提出後、あるいは地方の商務部門から中央の商務部に書類が伝送された後に、「細かい」指摘により書類の修正や再提出を求められ、許可取得までの日数が延びたとの声が多く聞かれた。これへの対策としては、「両用品目輸出許可申請記入に関するガイドライン」の第39項目に記載されている許可申請におけるよくあるミスを参照し、少なくともこれに該当するものがあれば提出前に修正するという事が有効であろう(参考参照)。

参考:許可申請における「よくある誤り」

  1. 申請書類に不備がある、必要とされる補足資料のアップロードまたは添付漏れ、申請書に輸出者の印、割り印、法定代理人の署名または日付がない。
  2. 最終ユーザーおよび最終用途証明書に責任者の手書き署名がない、または手書き署名の代わりに署名スタンプが使用されている、事業内容の要点が一致していない、商品の名称が一致していない、最終用途の説明が不明確であるなど、中国語訳に翻訳ミスがある、最終ユーザー企業の名称および住所が要求通りに訳されていない、訳文に署名がない、輸出者が印鑑を押していない、中国語と英語の表現が一致していないなど、香港、マカオ、台湾が特別なテンプレートに従って発行されていないなど。
  3. 申請書および契約書の契約番号と契約日が一致していない。
  4. 申請書と契約書の金額が一致していない。
  5. 申請書の最終用途、最終ユーザー、最終用途証明の英語および中国語の最終用途の説明が一致していない、または最終用途の説明があいまいで、明らかな文法の間違いがある。
  6. 申請書に輸出者、輸入者、最終ユーザーの記載がない、またはアップロードした添付ファイルのユーザー紹介と情報が一致していない。輸入者および最終ユーザーの紹介が欠落している、または輸出量を合理的に説明できないほど説明の内容があいまい。
  7. 申請者の身元証明書が欠落、不完全、期限切れ、または法定代理人の署名のある委任状が発行されていない場合。
  8. 製品技術説明書およびその他の情報に「両用物資および技術の輸出入許可管理目録」に準拠した関連指標パラメーターが記載されていない場合。
  9. 輸入国と仲介国が一致せず、契約上の最終仕向け地とエンドユーザーの住所およびエンドユーザーの国が一致しない場合。

出所:商務部 両用品目輸出許可申請表作成ガイドライン(2025年3月28日)

具体的なミスとして指摘されているものは、例えば、(1)申請書に輸出者の印、割り印、法定代理人の署名または日付がない、(2) 最終ユーザーおよび最終用途証明書に責任者の手書き署名がない、または手書き署名の代わりに署名スタンプが使用されている、訳文に署名がない、輸出者が印鑑を押していない、中国語と英語の表現が一致していない、(3) 申請書および契約書の契約番号と契約日が一致していない、(4) 申請書と契約書の金額が一致していない、(5) 申請書の最終用途、最終ユーザー、最終用途証明の英語および中国語の最終用途の説明が一致していないなどがある。

これら書類上の工夫に加え、許可プロセスの運用上、在庫の確保が難しいとの指摘を踏まえた対応も重要となるだろう。輸出許可申請を行った一部の日本企業からは、商務部に申請した輸出量について、過去3年間あるいは5年間の輸出量の実績データの提出を求められたとの事例が確認されている。過去実績と比較し合理的でない多量の輸出許可を申請しているとみなされた場合、輸出許可対象となる量を減らされるといった処理がされているとの報告もある。このように在庫保有目的での申請については、申請した量の一部しか許可が出ない可能性がある。エンドユーザーの必要量に応じて都度こまめに輸出申請をすることを検討するなどの対応を考える必要があるだろう。


注1:
中国の輸出管理に係る法制度の概要についてはジェトロ調査レポート「中国の経済安全保障に関する制度情報PDFファイル(1.51MB)」参照。 本文に戻る
注2:
両用品目および技術輸出入許可証管理目録については、2026年1月13日付ビジネス短信「中国、両用品目および技術輸出入許可証管理目録の2026年版などを発表」を参照。両用品目輸出管理リストについては、ジェトロ調査レポート「両用品目輸出管理リストの概要―中国の安全保障貿易管理に関する制度情報専門家による政策解説―PDFファイル(417KB)」参照。 本文に戻る
注3:
中国商務部 両用品目輸出許可(中国語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。 本文に戻る
注4:
中国商務部 両用品目輸出許可申請記入に関するガイドライン(中国語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部中国北アジア課 課長代理
藤原 智生(ふじはら ともき)
2009年にジェトロ入構後、海外調査部中国北アジア課、企画部企画課、北京事務所などでの業務に従事。
現在は中国大陸、香港、台湾関連の調査を担当。ジェトロの媒体などで経済動向や制度情報などについて、情報発信を行う。