高まる経済安全保障リスク、各国・地域の自律性向上と不可欠性確保に向けた戦略とは輸出管理と付加価値化
ザンビア、DRC、ジンバブエ重要鉱物(2)
2026年4月30日
アフリカの重要鉱物を巡る政策と競争を2回に分けて整理する。第2回の本稿では、アフリカ主要国における重要鉱物、特に銅・コバルト・リチウムを巡る輸出管理強化と国内付加価値化の動向について、ザンビア、コンゴ民主共和国(DRC)、ジンバブエを例に取り上げる。
アフリカにおける重要鉱物の輸出管理と国内での付加価値化
グローバルに脱炭素化、電動化の潮流がある中、また、経済安全保障を重視する観点から、アフリカが重要鉱物の世界的供給地として存在感を高めている。国際エネルギー機関(IEA)によると、アフリカ全体では2024年に世界全体の銅生産量の17%、コバルト生産量の7割、リチウム生産量の11%を占めた(注1)。特に、ザンビア・DRCは世界有数の銅生産国、DRCは世界最大のコバルト生産国、ジンバブエはアフリカ最大のリチウム埋蔵国として注目される。2025年8月のTICAD9で採択された「横浜宣言」でも、日本とアフリカが鉱物資源の安定供給や責任ある開発で協力を進める方向性が示された(注2)。
背景には、重要鉱物の戦略的重要性の高まりがある。電気自動車(EV)、蓄電池、再生可能エネルギー設備の普及により、銅、コバルト、リチウムなどへの需要は構造的に拡大している。こうした中、資源国は未加工鉱石・精鉱の輸出規制、市場価格調整を目的とした輸出一時停止、鉱物資源の採掘・生産に対して課せられる公課であるロイヤルティ引き上げなどを通じて、自国内でより多くの付加価値を確保しようとしている。OECDも、工業用原材料に対する輸出規制が2009年以降大幅に増加し、特にコバルトでは2021~2023年の間、世界貿易量の67%が何らかの輸出規制の影響下にあるとしている(注3)。
(1)ザンビア:銅増産と国内製錬・精製を軸にした産業政策
ザンビア政府は2024年公表の「National Critical Minerals Strategy 2024-2028
(6.8MB)」において、重要鉱物の生産拡大と地域経済との連携強化、付加価値の向上、現地調達率の促進、工業化および製造業の拡大、ならびに重要鉱物および半製品から完成品に至るまでの輸出を通じた収益源の拡大を掲げた(図参照)。狙いは、鉱石輸出依存から脱し、選鉱、製錬、精製、関連サービス業まで含む国内バリューチェーンを形成することだ。さらに、同国は銅生産を2024年の82万トン超から、2031年までに年300万トンへ引き上げる国家目標を打ち出しており、鉱業を成長戦略の中心に位置付けている(注4)。
ザンビアでは、銅鉱石の輸出は法令上輸出許可制の下で可能とされる一方、3月4日にジェトロが行ったザンビアの鉱山関係者への聞き取りによれば、運用上は国内での製錬・加工を優先し、銅精鉱の輸出は原則抑制されている(注5)。もっとも、処理能力を超える場合には、四半期単位で一時的な輸出が認められることがあるという。また、鉱物の輸出許可の取得には鉱物ロイヤルティ納付に基づくクリアランスの取得が必要だ(注6)。ロイヤルティ率は鉱種ごとに異なり、銅は銅価格に応じたスライド制(4~10%)、コバルトは8%、その他ベースメタルは5%だ(注7)。
また、同国は、鉱業ライセンスの管理・付与における効率性・実効性・透明性向上を政策目標に掲げる。2023年12月に採掘ライセンス申請のオンライン化への移行を開始し、2025年2月にはライセンス管理の透明性・効率性向上を目的とするデジタルプラットフォームZIMIS(Zambia Integrated Mining Information System)を正式に導入した(注8)。
出所:ザンビア鉱山・鉱業開発省「National Critical Minerals Strategy 2024-2028
(6.8MB)」
筆者が2026年3月4日に訪問したザンビアのMopani Copper Mines PLC
(以下、Mopani)は、この方向性を具体的に示す事例であった。Mopaniは現在、アラブ首長国連邦(UAE)系International Resources Holding(IRH)傘下のDelta Miningが51%、ザンビアの政府系鉱山投資会社であるZCCM Investment Holdingsが49%の株式を保有している。同国北部カッパーベルト州にあるムフリラ拠点では、選鉱、製錬、精製までの一貫工程を有し、高純度(99.999%)の銅カソード(銅板、電極)を生産している。同社によると、現状は年間約9万トン規模のカソード生産を、2026年に11.9万トン、さらに2031年にフル能力である22.6万トンへ段階的に引き上げる計画だ。

同社は生産したカソードのうち80%をアブダビの販売拠点に輸出し、残り20%は国内の現地系およびインド系のケーブルメーカーに販売している。国内で加工度を上げることで、雇用の創出だけでなく、副産物の回収・販売、さらには国内産業への波及効果が高まる。製錬工程の副産物としては硫酸を生産し、国内およびDRC向けに販売しているほか、将来的には肥料化やセメント向け資材利用の可能性も示した。
Mopaniでは過去にコバルトも生産していたが、2013年前後の価格下落で採算が悪化し、コバルトプラントを停止した。現状、コバルト処理設備がなく、副産物として十分に回収できていないが、カッパーベルト州主要都市のキトゥエにコバルト回収プラントを建設する予定という。将来的には、コバルト金属ではなく、コバルト水酸化物として生産する計画だ。
一方で、増産にはボトルネックも多い。Mopaniでは、道路や鉄道物流、電力といったインフラ面での制約や、設備更新などの追加投資を行う必要もある。銅の輸出拠点となるのはタンザニアのダルエスサラーム港であり、同港までの輸送に道路と鉄道を併用しているが、現状では約9割が道路輸送となっている。ザンビア政府所有の鉄道区間を走るのはディーゼル車で、路線が迂曲(うきょく)しているため速度が出ない。そのため、輸送効率の改善が目下の課題だ。加えて、深部採掘の拡大には巻上設備、電源、選鉱・製錬能力の増強が不可欠だ。
(2)コンゴ民主共和国(DRC):輸出停止とクオータ制による国家統制の強化
DRCでは2018年3月の鉱業法改正により戦略鉱物の区分が新設され、戦略鉱物のロイヤルティを10%へ引き上げ、同年11月にコバルトを戦略鉱物に指定した(注9)(銅はベースメタルのためロイヤルティは3.5%)。その後も国家の統制強化を進め、2025年2月には供給過剰で低迷したコバルト価格の下支え(引き締め)を目的に、4カ月間輸出を一時停止し、同年9月には輸出停止を10月15日まで延長し、10月16日以降輸出クオータ制を導入すると発表した(注10)。2025年分として21社に割り当てが行われ、2026年以降の年間輸出上限は9万6,600トンに設定された(注11)。これらの措置により、DRC政府は数量管理を通じて世界最大の供給国としての市場調整の姿勢を鮮明にした。実際、輸出停止後にコバルト価格が大きく反発し、市場に相応の影響を及ぼした。
もっとも、コバルトは銅やニッケルの副産物である場合が多く、生産そのものを厳密に調整することには限界がある(注12)。そのため、DRCの措置は生産抑制というより、輸出を絞って在庫を国内に滞留させることで国際市場における需給を調整する政策とみられる。その半面、同国のコバルト輸出の見通しが不透明な状況が続いており、グローバル企業の調達戦略に直接的に影響を与えている。
(3)ジンバブエ:リチウム輸出禁止の前倒しと現地加工誘導
ジンバブエは、アフリカで最も明確にリチウムの付加価値化政策を打ち出している国の1つだ。2022年にリチウム鉱石の輸出を禁止したのに続き、2026年2月にはリチウム精鉱を含む未加工鉱物の輸出を即時停止した(注13)。これによりリチウムは国内で中間製品として加工されなければ輸出できない体制になった。政府は本措置を通じて、国内での付加価値創出と選鉱、法令順守、および透明性の確保を図る。同国は2025年に112万トン超のリチウム含有スポジュメン精鉱(注14)を主に中国向けに輸出しており、今回の措置はグローバル市場にも影響を与えた。
この政策変更に対応するかたちで、中国企業は現地投資を加速させている。華友鈷業(華友コバルト業)や中鉱資源集団などが鉱山権益を取得し、選鉱設備および硫酸リチウム工場への投資を拡大している。政府が原石、さらに精鉱の輸出まで止めたことで、単純な原料持ち出し型モデルは成立しにくくなった。他方、既に権益と加工設備の双方を押さえた中国企業は、こうした政策環境に適応しやすい。輸出規制は新規参入障壁としても働くため、後発企業にとっては参入難度が高まるだろう。
ザンビア、DRC、ジンバブエの3カ国に共通するのは、重要鉱物を単なる輸出品ではなく、国内産業化の起点として位置付けている点だ。ザンビアは銅増産と国内製錬・精製の拡大、DRCは輸出停止とクオータ制による市場価格調整、ジンバブエはリチウム精鉱輸出停止による現地加工誘導を進めている。手法は異なるが、いずれも資源からより多くの価値を国内に残す方向で一致している。日本企業はこうした動きを調達形態の変化として捉え、今後は現地で一次加工された中間材をどう確保するか、さらには現地の製錬、精製、周辺産業にどう関与するかが重要になるだろう。
- 注1:
-
国際エネルギー機関(IEA)「Global Critical Minerals Outlook 2025
」参照。 - 注2:
-
TICAD 9横浜宣言は外務省ウェブサイト
参照。 - 注3:
-
OECD(2025)「Inventory of Export Restrictions on Industrial Raw Materials 2025
」「Export restrictions on critical raw materials
」参照。 - 注4:
-
鉱山・鉱物開発省声明“MEDIA STATEMENT BY THE MINISTER OF MINES AND MINERALS DEVELOPMENT HONOURABLE PAUL C. KABUSWE, MP AT THE PRESS BRIEFING ON THE PERFORMANCE OF THE MINING SECTOR IN 2024
”参照。 - 注5:
-
「Zambia Trade Information Portal:View Measure
」参照。 - 注6:
-
「Zambia Trade Information Portal:View Procedure
」参照。 - 注7:
-
PwC「Zambia:Corporate - Taxes on corporate income
」参照。 - 注8:
-
ザンビア鉱山・鉱業開発省プレスリリース「TRANSITION FROM MANUAL TO ONLINE APPLICATION OF MINING LICENSES UNDER THE MINING CADASTRE SYSTEM
」「ZAMBIA UNVEILS ZIMIS: A Digital Leap for Mining Transparency and Growth!
」参照。 - 注9:
-
DRCの2018年鉱業法改正(フランス語)241条
(1.2MB)および2018年11月首相令(フランス語)
(497KB)参照。 - 注10:
-
DRCのコバルト輸出停止およびクオータ制移行については、ARECOMS(戦略鉱物市場規制・監督庁)のコミュニケ(フランス語)
(489KB)(COMMUNIQUE N° 2025/001, Suspension temporaire de l’exportation du cobalt de la République Démocratique du Congo)を参照。クオータ制移行については、IEA“Temporary suspension of cobalt export from the Democratic Republic of Congo
”参照。 - 注11:
-
ロイター通信“Congo to allow cobalt quotas for 2025 to be executed until March 31
”(2026年1月1日)参照。 - 注12:
-
JOGMECカレント・トピックス「2025年 金属鉱物資源をめぐる動向
(2026年1月13日)」参照。 - 注13:
-
Statutory Instrument 213 of 2022“Base Minerals Export Control(Lithium Bearing Ores and Unbeneficiated Lithium) Order, 2022”
(421KB)およびロイター通信”Zimbabwe bans exports of all raw minerals and lithium concentrates, cites malpractices
”(2026年2月25日)を参照。リチウム精鉱は、リチウムを含む鉱石を加工・濃縮した高純度の原材料。 - 注14:
-
リチウム含有スポジュメン精鉱は、リチウムを含む鉱物のうち、スポジュメンを主成分とする精鉱を指す。
ザンビア、DRC、ジンバブエ重要鉱物
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- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部国際経済課
馬場 安里紗(ばば ありさ) - 2016年、ジェトロ入構。ビジネス展開支援部ビジネス展開支援課/途上国ビジネス開発課、ビジネス展開・人材支援部新興国ビジネス開発課、海外調査部中東アフリカ課、ジェトロ・ラゴス事務所を経て、2024年10月から現職。





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