高まる経済安全保障リスク、各国・地域の自律性向上と不可欠性確保に向けた戦略とは予見性向上に向けた課題
中国のレアアース輸出管理(4)

2026年3月31日

近年、中国はレアアースをはじめとする軍民両用(デュアルユース)品目についての輸出管理を強化している。中でも、2025年4月4日に施行された7種のレアアースに係る輸出管理の強化を受け、関係する多くの日本企業が輸出許可申請の対応に追われる事態となった。

この輸出管理強化措置に関して、日本企業は、中国当局の許可プロセスや許可発行までの処理日数の運用が不透明であると指摘している。その結果、在中日系企業などが安定的に必要量の両用品目の輸出を継続することが難しく、サプライチェーンを断絶させないためのさまざまな対応が求められている。

予見性確保が難しい要因

両用品目の輸出許可については、2026年2月時点においても、発行されたもののほとんどが「個別許可」とみられている。個別許可は、両用品目輸出管理条例第15条において、「個別許可は輸出者が輸出許可証に明記された範囲、条件と有効期間内に、単一のエンドユーザーに特定の両用品目を一回輸出するのを許可する。個別許可の有効期間は1年を超えないものとし、有効期間内に輸出を完了したならば、輸出許可証は自動的に失効する」と規定されている。このような内容の許可であるため、日本企業からは個別許可では、「今回の輸出貨物は許可が取得できたが、次回の輸出貨物については許可がとれるか、許可取得までにどの程度時間を要するのか定かではない」ため、予見性が担保できないという指摘がある。日本企業の声を借りれば「サプライチェーンが断絶しないための綱渡りの状態」がつづいている。

企業がサプライチェーン上の予見性を確保する上で、包括許可(中国語で「通用許可」、英語で「General License」、日本語で「一般許可」と訳することもある)の取得がカギとなると考えられる。包括許可は、両用品目輸出管理条例第15条において「包括許可は輸出者が輸出許可証に明記された範囲、条件と有効期間内に、単一または複数のエンドユーザーに特定の両用品目を複数回輸出するのを許可する。包括許可の有効期間は3年を超えないものとする」と規定されている。

登録・情報記入方式による輸出証明書の取得については、「輸出者は毎回特定の両用品目を輸出する前に国務院の商務主管部門で登録手続きを行い、規定に基づいて関連情報を忠実に記入して輸出証明書を取得した後、輸出証明書に基づいて自ら輸出しなければならない」と規定されている。なお、登録・情報記入方式による輸出証明書の取得については、2026年2月時点では運用が開始されているか不明な状況となっている(表1参照)。

包括許可についての課題

この包括許可について、本稿執筆時点では、運用が限定的であることに加え、申請の条件が必ずしも明確ではないことが取得の障害となっている。申請の条件について、両用品目輸出管理条例第16条においては、「輸出者が両用品目輸出管理内部コンプライアンス制度を構築し、かつ運用状況が良好で、関連する両用品目輸出記録と比較的固定した輸出ルートとエンドユーザーを持っている場合、国務院の商務主管部門に包括許可を申請できる」と規定されている。

表1:両用品目輸出許可の種類
種類 申請・取得要件 有効期間
個別許可 単一のエンドユーザーに特定の両用品目を1回輸出する場合 1年を超えない
包括許可 次の(1)(2)の両方に該当する場合
(1)輸出事業者が両用品目輸出管理内部コンプライアンス制度を構築し、かつ運用状況が良好で、関連する両用品目輸出記録、比較的固定的な輸出ルートおよびエンドユーザーを有するとき
(2)単一または複数のエンドユーザーに特定の両用品目を複数回輸出するとき
3年を超えない
登録・情報記入方式による許可 次の(1)(2)(3)(4)(5)(6)のいずれかに該当する場合
(1)国内で点検修理、試験または検査を行った後、合理的な期間内に元の輸出地の元のエンドユーザーに再び輸送するとき
(2)国外で点検修理、試験または検査を行った後、合理的な期間内に再び国内に輸送するとき
(3)国内で開催される展示会に参加し、展示会終了後、速やかに元の状態で元の輸出地に再び輸送するとき
(4)国外で開催される展示会に参加し、展示会終了後、速やかに元の状態で再び国内に輸送するとき
(5)民間航空機部品の国外修理、備品・スペアパーツの輸出
(6)商務部が規定するその他の状況

前項で規定した特定の両用品目の輸出要素に変更が生じた場合、輸出者は改めて登録・情報記入を行い、新たな輸出証明書を取得する、または本条例第16条の規定に基づいて個別許可または包括許可を申請しなければならない。

輸出者は輸出が本条第一項に規定した状況に一致しなくなったことを知っている、または知っていたはずである場合、または国務院の商務主管部門の通知を受けていた場合、速やかに輸出を停止し国務院の商務主管部門に報告しなければならない。
1回のみ

出所:商務部発表からジェトロ作成

なお、実際に、商務部の両用品目輸出申請システムにログインし、申請を試みた企業によると、包括許可に関連するページにおいて表示される包括許可の取得条件として、「両用品目輸出許可証の初回取得から2年間以上経過しており、累計の申請件数が40件以上の企業」といった条件などがあったとの声が届いている。

これに関し、包括許可の申請条件について詳細な規定を定めた「両用品目と技術の包括輸出許可管理弁法」(商務部令2009年第8号。以下「包括輸出許可規則」という)においては、表2のとおり、事業者が満たすべき条件が示されている。これによると、「両用品目と技術の輸出事業歴が2年以上」、さらに、甲類包括許可の取得にあたっては、「連続する2年以上の期間において両用品目と技術の輸出許可証年間交付数が40件以上」、乙類包括許可の取得にあたっては、「連続する2年以上の期間において両用品目と技術の輸出許可証年間交付数が30件以上」といった条件が示されている。なお、同弁法について2025年12月時点において、その有効性を当局に確認したところ、現行有効との回答であった。

表2:包括許可の申請条件の比較(‐は記載なし) 注:表中の(1)~(29)の番号は本稿中での説明のためにジェトロが記載したもの。
項目 両用品目輸出管理条例 包括輸出許可規則
事業者が満たすべき条件 (1)  合法な対外貿易事業者であること。
(2)  両用品目輸出に関する内部コンプライアンス制度を樹立しており、かつ良好に運用していること。 (3)  両用品目と技術の内部統制体制を樹立していること。
(4)  関係する両用品目の輸出記録を有すること。 (5)  両用品目と技術の輸出事業歴≧2年。
(6)【甲類包括許可】 連続する2年以上で両用品目と技術の輸出許可証年間交付数≧40件。
【乙類包括許可】連続する2年以上で両用品目と技術の輸出許可証年間交付数≧30件。
(7)  比較的固定的な輸出ルートとエンドユーザーを有すること。 (8) 比較的固定的な両用品目と技術の販売ルートとエンドユーザーを有すること。
(9)  輸出事業者もしくは同事業者における両用品目輸出に関係する責任者個人が、両用品目輸出管理の違法行為に起因する刑事罰を受けていないこと。
(10)  5年内に両用品目輸出管制の違法行為に起因して情状が重大な行政罰を受けていないこと。
(11)  直近3年間で刑事罰または関係当局からの行政罰を受けていないこと。
(12)  商務部の「輸出管理コントロール リスト」に掲載されている中国国内の輸入者、エンドユーザーによって中国国内に設立された完全子会社、代表機構、分支機構ではないこと。
(13)  その他商務部が定める事由。
申請に必要な提出書類 (14)  申請者の法定代表者、主要経営管理者および担当者の身分証明書。
(15)  両用品目の輸出に関係する契約書の副本または他の証明資料。
(16)  両用品目と技術の包括輸出許可申請表。
(17)  合法的な対外貿易事業者であることを証明する資料。
(18)  直近3年間で刑事罰または関係当局からの行政罰を受けていないことの誓約書。
(19)  両用品目の技術説明書または検査報告書。 (20)  申請する包括輸出許可の対象となる品目と技術の種類および関係する技術説明資料。
(21)  両用品目輸出に関する内部コンプライアンス制度の運用状況の説明書。
(23)  両用品目のエンドユーザーとエンドユースを証明する資料。
(24)  両用品目輸出許可証の申請・交付・使用の状況の説明書。
(25)  両用品目の輸出ルートとエンドユーザーの状況に関する説明書。
(22)  両用品目と技術の内部統制体制の樹立と運用状況に関する説明書および関係する証明資料。
(26)  各契約の履行までに、エンドユーザーから発行される、関係する誓約書またはエンドユーザー・エンドユースに関する説明資料の誓約書。
(27)  従事する両用品目と技術の輸出事業の状況の説明書(含:直近2年間の両用品目と技術の輸出許可証の申請・交付・使用の状況に関する説明、両用品目と技術の販売ルートとユーザーの状況に関する説明[取引の各関係者との関係性、取引の状況および輸入者とエンドユーザーに関する説明を含む])。
(28)  その他商務部から提出を求められた資料。 (29)  その他管轄当局から提出を求められた資料。

注:表中の(1)~(29)の番号は本稿中での説明のためにジェトロが記載したもの。
出所:商務部発表からジェトロ作成

「包括輸出許可規則」第5条によると、「甲類包括許可」は複数の国家(地域)における複数のエンドユーザーに対する複数の両用品目と技術を複数回輸出できる許可証であるのに対し、「乙類包括許可」は1つの国家(地域)における固定のエンドユーザーに対する特定の両用品目と技術のみを複数回輸出できる許可証となっている。

包括輸出許可の申請条件について、「両用品目輸出管理条例」と「包括輸出許可規則」の項目を比較すると、関係性として、次のパターンがある(表2参照)。

  1. 片方にのみ存在する項目(例:第(12)~(15)項)
  2. 両者が共通する項目(例:第(7)項≒第(8)項)
  3. 両者が矛盾する項目(例:第(9)項「全期間刑事罰前科無し」 と 第(11)項「直近3年間刑事罰前科無し」)
  4. 「包括輸出許可規則」が「両用品目輸出管理条例」を補完する項目(例:第(5)~(6)項の輸出事業歴と輸出許可証交付件数が、第(4)項における「関係する輸出記録」の細則となりうる)

前述の各パターンにおいてどの項目が適用されるかについて、商務部からの詳細な説明は把握していない。これに関し、金誠同達法律事務所(JT&N)は、「一般論として、『両用品目輸出管理条例』は『包括輸出許可規則』の上位法(日本の政令に相当する国務院条例>日本の省令に相当する商務部規則)であり、公布日も前者のほうが新しいため、基本的には前者を優先的に適用すべきである」という。その上で、「前者の解釈が不明な場合に、後者がその補完となりうると解される。その証左として、2025年3月28日に商務部の公式サイトで公表された『両用品目輸出許可申請要領』において、包括輸出許可の申請条件は基本的に『両用品目輸出管理条例』の内容に沿って解説されている」と説明する。

さらに同事務所は、「例外として、今回の質問対象である第(5)~(6)項の輸出事業歴と輸出許可証交付件数については、前述のdに該当するため、たとえその内容が『両用品目輸出管理条例』に記載されていなくても、適用できる。同様の例として、図表9の第(27)項も第(24)~(25)項の補完となるため、第(24)~(25)項の説明書を作成する際に、第(27)項が参考になりうる」との見解を示した。

これを踏まえた実務上の考え方のポイントは、商務部が「包括輸出許可規則」に規定する条件をどの程度厳格に適用するか、によって日本企業が自ら包括許可の申請主体となることができるかに大きな差異が生まれるという点だ。日本企業の多くは2025年4月4日のレアアース7種の輸出管理強化以降、初めて両用品目の輸出許可を取得し始めたという状況だ。特に、「連続する2年以上の期間において両用品目と技術の輸出許可証年間交付数が30件以上」といった実績に係る期間および量的な条件が適用された場合、包括許可の申請が可能となるまでの実績づくりが必要となる。

内部コンプライアンス体制構築のポイント

日本企業が自ら包括許可の申請主体とならず、取引先の中国企業等(例:中国資本の磁石メーカー)が申請主体(輸出事業者)となる場合には、その企業に「両用品目輸出管理内部コンプライアンス制度を構築し、かつ運用状況が良好である」という条件を満たしてもらうということが包括許可の申請の前提条件となる。

両用品目輸出管理内部コンプライアンス制度については、商務部が 2021 年 4 月 に「両用品目輸出事業者の輸出管理内部コンプライアンス体制確立に関する商務部の指導意見」およびその附属文書「両用品目輸出管理内部コンプライアンスガイドライン」を発表している(注)。2022 年 6 月 には、商務部開設の関連サイトにおいて、企業から寄せられた質問について回答や説明がなされた FAQ コンテンツ「輸出事業者の輸出管理内部コンプライアンス体制構築に関する問題(一)~(三) 」が掲載された。

このうち、「ガイドライン」では、輸出管理内部コンプライアンス体制を敷くための、9 つの基本要素(ポリシーステートメントの策定、担当部署・組織の構築、リスク評価、審査手続きの確立、緊急対応措置の制定、教育研修の実施、コンプライアンス監査の充実、資料・文書の保存、管理マニュアルの作成)を定めており、これらを満たすことが求められている(表3参照)。

例えば、ポリシーステートメントの策定に関して、輸出事業者には、最高管理者による署名を伴う方針声明の作成と公表が求められている。声明には、輸出管理関連法令の順守と、商業活動に先立つ輸出管理リスクの評価・審査の実施が明記される。ガイドラインでは、声明の構成要素、作成時の留意点、参考となるサンプルが示されている。

また、担当部署・組織の構築に関しては、輸出管理内部コンプライアンス体制を担う専任部署を設け、その権限と職責を明確化する必要がある。特に「一票拒否権」に代表される独立性の確保が強調され、疑義ある取引の禁止または主管当局への照会権限が付与される。ガイドラインは、経営レベルの委員会と実務レベルの専門部署の二層構造を例示し、事業部門がその指導のもと体制を順守する仕組みを示している。

このほか、審査手続きの確立に関して、輸出事業者は、内部コンプライアンス管理が実施されるべき経営プロセスを明確化し、管理品目が未審査のまま輸出されないよう制度的手続きを整備する。審査の要点には、品目の管理リスト該当性、法令適合性、最終ユーザーの所在国、最終用途の合理性、支払方法、輸送経路の妥当性などが含まれる。企業の実態に応じたフローチャートの整備や、取引承認・キャンセル・一時停止基準の設定も求められる。

表3:内部コンプライアンス体制の基本要素
項目 主な内容
ポリシーステートメントの策定
  • 輸出事業者は、最高管理者または主要責任者が署名した誓約の性質を有する方針声明(ポリシーステートメント、輸出管理関連法令の順守、商業活動に先立ち輸出管理リスクについて評価審査を行うことの誓約など)を作成して公表する。
  • ガイドラインにおいて、方針声明の主要内容および作成・公表の際の注意点が示されており、また、作成の際に参考となるサンプルも提供されている。
担当部署・組織の構築
  • 輸出事業者は、輸出管理内部コンプライアンス体制の担当部署・組織を構築し、主管部門および人員の職責を明確にする。
  • 担当部署・組織の構築については、「一票拒否権」、つまり、独立性の原則に従い、専任の責任者に対し、あらゆる疑義ある輸出関連行為について、これを禁止する権限、または政府主管部門に意見を求める権限を付与することが強調されている。
  • ガイドラインでは、担当部署・組織のサンプルとして、経営陣レベルでは輸出管理コンプライアンス委員会、実務レベルでは輸出管理コンプライアンス部門をそれぞれ設置し、各事業部門が輸出管理コンプライアンス部門の指導の基に、社内の輸出管理コンプライアンス体制を順守、執行するという仕組みが示されている。
リスク評価
  • 輸出事業者は、自身の規模、業種、経営方式などの状況に基づき、自身に存在する可能性のある輸出管理リスクについて、定期的に「全面的な」評価を行い、違反リスクの発生しやすい業務プロセス、段階を識別し、リスクのレベル、等級に応じた対応措置を講じる。
  • 評価の対象としては、(a)経営品目の状況、(b)顧客の状況、(c)技術および研究開発の状況、(d)輸出先国および地域の状況、(e)内部の運営状況、(f)第三者提携パートナーの状況、(g)リスク防止措置などが挙げられている。
  • ガイドラインでは、これら(a)~(g)の評価対象項目ごとに具体的な評価対象内容などが示されている。
審査手続きの確立
  • 輸出事業者は、輸出審査手続きを確立し、経営過程において内部コンプライアンス管理を実行する必要がある段階を明確にし、手続き化、制度的管理を通じて、管理品目が内部審査を経ることなくみだりに輸出されることを防止する。
  • 審査の要点としては、(a)経営する品目が国の輸出管理リストによる管理品目であるか、(b)経営行為が国の輸出管理法令に合致するか、(c)最終利用者の所在国が国連の制裁を受けている国またはその他の要注意国であるか、(d)最終ユーザーおよび最終用途にリスクが存在するか、(e)最終用途に合理性があるか、(f)顧客の支払方法が一般的な商習慣に合致しているか、(g)輸出輸送経路が合理的であるかなどが挙げられている。
  • ガイドラインでは、審査実施の要点として、管理品目の最終ユーザーおよび最終用途を厳格に管理すること、各種の取引を網羅的に審査対象とし、かつ取引の全プロセスに対して審査・監督管理を行うこと、企業の状況に応じて審査プロセスのフローチャートを作成することや「取引承認」「取引キャンセル」「取引一時停止」の基準を設けることなど、多様な措置を採用してリスク評価の実施を進めることが規定されている。
緊急対応措置の制定
  • 輸出事業者は、緊急対応措置として、(a)内部通報窓口および(b)不審な事項の調査プロセスを設ける。
  • ガイドラインでは、緊急対応措置の主要内容を列挙しており、また、緊急対応措置の実施の要点として、通報者の身元や通報内容の秘密保持などの通報者の安全の確保、コンプライアンス管理業務に積極的に参加した従業員を奨励し、違反従業員を処罰する賞罰制度の実施、救済措置の適時の実行などを示している。
教育研修の実施
  • 輸出事業者は、定期または不定期の研修計画を制定し、多様な研修形式を採用して全員研修を実現する。
  • 輸出管理研修を従業員の業績考査の指標とし、研修は、従業員が国の輸出管理法令を遅滞なく理解すること、内部コンプライアンス体制の要求を有効に実行すること、関連人員が輸出管理問題を適切に処理できるようになることなどを目的に研修教育を実施するとされている。
  • ガイドラインでは、(a)一般従業員、(b)輸出管理と関わりのある従業員、(c)輸出管理コンプライアンス部門の従業員に対し、従業員の部署に応じて適切な研修を実施することなどを規定している。
コンプライアンス監査の充実
  • 輸出事業者は、定期的に輸出管理内部コンプライアンス体制の合理性、実行可能性、有効性などについて監査し、具体的な業務プロセスのコンプライアンス運用の規範性を評価する。
  • 監査の内容には、主に、(a)各種両用品目の取引過程において審査プロセスを順守しているか、(b)担当部署・組織の運営が順調であるか、(c)不審な事項の調査が有効であるか、および(d)コンプライアンス業務に改善を要する点が生じているかなどが挙げられている。
  • ガイドラインでは、監査の形式として、輸出管理内部コンプライアンス体制全体に対する監査と特定部門(例えば販売部門、生産部門など)または特定の輸出段階(例えば出荷手続き、記録保存など)が挙げられている。
資料・文書の保存
  • 輸出事業者は、輸出管理と関わりのある資料・文書を漏れなく正確に保存する。
  • ガイドラインでは、分類保存する必要のある資料・文書が詳細に挙げられている。
管理マニュアルの作成
  • 輸出事業者は、輸出管理内部コンプライアンス体制の管理マニュアルを作成し、上記項目の基本要素の内容を網羅する。また、国の輸出管理法令およびコンプライアンス制度を周知し、従業員がマニュアルを通じてこれを遅滞なく理解し、有効に実行できるようにする。
  • ガイドラインでは、管理マニュアルに含まれるべき内容が詳細に示されている。

出所:ジェトロ調査レポート「両用品目輸出事業者の輸出管理内部コンプライアンス体制の構築に関する指導意見の概要」から作成

輸出事業者が中国企業(例:中国資本の磁石メーカー)であることを想定した実務上のポイントとしては、取引先の中国企業にこれらの条件を満たすための取り組みを実施してもらう必要があるということだ。そのためには、日本企業から取引先に対し、包括許可のメリットやリスクを十分に理解してもらう働きかけをすることが重要だ。これらのコンプライアンス体制の構築には一定の時間がかかることにも留意が必要となる。

また、包括許可の取得にあたっては、個別許可取得時に比べ、より詳細なサプライチェーンや技術の情報提出を求められる可能性や、政治的・恣意(しい)的な運用となるリスクが指摘されている。包括許可取得の検討においては、こういった観点も踏まえた経営判断が必要になるだろう。


注1:
ジェトロ調査レポート「両用品目輸出事業者の輸出管理内部コンプライアンス体制の構築に関する指導意見の概要PDFファイル(415KB)」「『両用品目輸出事業者の輸出管理内部コンプライアンス体制の構築』に関する実務動向PDFファイル(362KB)」「両用品目輸出事業者の輸出管理内部コンプライアンス体制の構築に関する指導意見の実務上のポイントPDFファイル(416KB)」「両用品目輸出事業者の輸出管理内部コンプライアンス体制の構築に関する指導意見の概要PDFファイル(415KB)」参照。本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部中国北アジア課 課長代理
藤原 智生(ふじはら ともき)
2009年にジェトロ入構後、海外調査部中国北アジア課、企画部企画課、北京事務所などでの業務に従事。
現在は中国大陸、香港、台湾関連の調査を担当。ジェトロの媒体などで経済動向や制度情報などについて、情報発信を行う。

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