中国、戦略的鉱物資源の違法な輸出に対する取り締まりを強化

(中国)

調査部中国北アジア課

2025年05月12日

中国商務部の発表によると、中国国家輸出管理業務調整メカニズム弁公室は5月9日、商務部、公安部、国家安全部、海関(税関)総署、最高人民法院、最高人民検察院、国家郵政局などの政府部門を組織して戦略的鉱物資源の違法な輸出の取り締まりに関する会議を広東省深圳市で開催した。

会議では、戦略的鉱物資源に対する輸出管理の強化は国家の安全および発展の利益に係るものであることをあらためて強調した。その上で、中国がガリウム、ゲルマニウム、アンチモン、タングステン、中・重希土類(レアアース)などの戦略的鉱物資源について輸出管理を実施して以降(注1、注2)、一部の域外のエンティティ(企業など)が域内の犯罪者と結託して違法な輸出の手口を絶えず生み出し、打撃を逃れようとしていると指摘した。

こうした戦略的鉱物資源の違法な流出を回避し、密輸を抑制するとともに、国家の安全を維持しつつ適法な貿易を促進して産業・サプライチェーンの安定を保つ上で、戦略的鉱物資源の違法な輸出を取り締まることは現在差し迫った重要な任務であると位置づけた。

会議では、各政府部門に対して、戦略的鉱物資源分野を重視し、根本の管理を強化し、連携して取り締まりに当たること、特に虚偽の報告や隠ぺい、個人携帯による密輸、第三国・地域経由での輸出などの典型的な規制回避行為の取り締まりに注力することを強く求めた。違法な輸出案件の法に基づく処理と公開を速やかに行うとも表明した。

さらに、会議では、各政府部門が法執行対応を強化し、取り締まりの成果をあげること、法執行のスマート化・システム化を進めること、部門間や地域間の執行における連携を強化することを求めた。大陸と香港・マカオの税関の法執行協力の強化も求めた。

(注1)中国はこれまで、ガリウム、ゲルマニウム、黒鉛(グラファイト)、アンチモン、超硬質材料、タングステン、テルル、ビスマス、モリブデン、インジウム、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムなどに対する輸出管理を実施している(2023年7月4日10月26日2024年8月19日2025年2月4日2025年4月7日記事参照)。特に米国に対しては輸出管理を強化しており、2024年12月3日から、米国の軍事関連企業向け、および軍事用途の両用品目の米国向け輸出を禁止したほか、ガリウム、ゲルマニウム、アンチモン、超硬質材料に関連する両用品目の対米輸出は原則として許可せず、黒鉛の両用品目の対米輸出は、エンドユーザーや最終用途についてより厳格な審査を実施している(2024年12月6日記事参照)。このほか、個別の米国企業を輸出管理コントロールリストに掲載し、両用品目の輸出を禁止している(2025年4月11日記事参照)。

(注2)輸出許可申請の詳細については、商務部が「両用品目輸出許可」のページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを設け、申請フローや申請資料、そのフォーマットなどを記載しているほか、3月28日には「両用品目輸出許可申請記入に関するガイドライン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」も公表し、申請時の確認用チェックリスト、よくある質問とその回答などを掲載している。ジェトロ調査レポート「両用品目輸出管理条例PDFファイル(401KB)」も参照。このほか、商務部は産業安全・輸出入管制局のウェブサイトにおいて、両用品目の輸出に関するQ&Aなどを不定期に公表している外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます2025年4月18日記事4月28日記事参照)。今後も輸出管理許可要否の判定などの実務対応を行う上で参考となる情報が掲載される可能性があるため、同ウェブサイトを随時参照することが推奨される。

(小宮昇平)

(中国)

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