今こそ挑戦!グローバルサウス急成長するグローバルサウスのペット市場と販路変化
タイを事例に
2026年4月8日
グローバルサウス(注1)でペット関連市場が拡大している。背景には、所得水準の上昇や中間層の拡大、都市化の進展に加え、単身世帯や共働き世帯の増加による飼育機会の広がりがある。近年は、ペットを家族の一員として捉える「ペットの家族化(ヒューマニゼーション)」が広がり、フードの品質や健康機能、利便性を重視する消費傾向が強まっている。
ペットフードの普及余地が大きいグローバルサウス市場
グローバルサウス主要国・地域のペット関連市場は2030年に向けてさらに拡大が見込まれる(図1参照)。国・地域別で見ると、ペット関連市場の2026年の売上高が110億ドルを超えるブラジル(本特集「世界第2のペット市場大国へ(ブラジル)」参照)はグローバルサウス諸国の中で最も市場規模が大きく、2026年から2030年にかけて年平均成長率(CAGR)7.8%で成長すると予測されている。同様に、ASEANの中で最もペット関連市場規模の大きいタイにおいては、CAGR 7.5%が予測される(注2)。一方、日本は市場規模こそ相対的に大きいものの、CAGRは2.3%にとどまる。新興国・地域を中心にペット関連需要が急拡大していることが分かる。
品目別に見ると、各国・地域ともペットフードが売り上げの大半を占める一方、ペット用品・衛生用品、ペット用医薬品(OTC医薬品を含む)も着実に拡大している。ペットの家族化や健康志向の高まりが、グローバルサウスのペット市場の成長を後押ししている。
(2026年・2030年)
注1:国・地域の選定は、グローバルサウスに中国・日本を加えた構成であり、Statistaの2030年全体売上高ランキング上位20位に属する国・地域から抽出した。カッコ内順位は、同ランキングに基づく国・地域別順位。
注2:売上高は予測値。
出所:Statista Market Insightsを基にジェトロ作成
グローバルサウスのペット市場拡大のポテンシャルとして、残飯や自家調理食から、市販のドライフードやウェットフードへ移行する余地が大きい点が挙げられる。図2で主要国・地域の犬・猫別のペットフード普及率を見ると、日本では犬92.9%、猫95.5%といずれも高く、市販ペットフードが飼育の標準として定着している。一方、東南アジアや南アジア、中南米の一部では、国によってばらつきがあるものの、市販フードの普及率がなお低い国が少なくない。ベトナム(注3)やインド、フィリピンなどでは、家庭の残飯や自家調理による餌やりが依然として主流であることが示唆され、普及余地は大きい。これは足元では市場の未成熟さを示す一方、所得向上や流通網の整備、飼い主の栄養知識の浸透に応じて、市販フード需要が拡大する余地が大きいことも意味する。ユーロモニターによると、犬猫一頭当たりのフード年間支出金額がグローバルサウスを含む全地域で増加している(注4)。低価格帯の商品から市場に入り、需要の高度化に合わせて機能性商品やプレミアム品へ展開していく余地があると考えられる。
図2:主要国・地域における犬・猫フード普及率(2025年)
出所:ユーロモニター「Pet Care, Prepared Gap」からジェトロ作成
さらに、犬と猫で市場の見え方が異なる点にも注目したい。図2では、メキシコ、マレーシア、アルゼンチン、アラブ首長国連邦(UAE)、チリなどで、猫用ペットフードの給与率が犬用を上回る傾向がみられる。宗教・文化的理由に加え、飼育コストや手間の比較的かからない猫の人気上昇や、猫向け商品のプレミアム化が背景にあるとみられる。実際、ユーロモニターも世界のペットケア市場において、猫関連需要が昨今の成長を牽引していると指摘している(注5)。グローバルサウスでも、都市化や住環境の変化が進むにつれ、犬中心だったペット市場で猫向け市場の存在感が高まる可能性がある。

タイはペットフード輸出国として急速に成長
需要拡大と並んで、供給サイドでも変化が起きている。犬猫用ペットフードの世界輸出額は2019年から2024年にかけて1.6倍と大きく伸びた(図3参照)。注目されるのは、供給拠点の構図が変化しつつある点だ。従来は欧米の存在感が大きかったが、近年は生産拠点としてタイが急速に台頭している。タイ政府広報局(注6)によると、同国は2024年にペットフード輸出額約27億ドルを記録し、米国を抜いて世界第2位の輸出国となった。輸出先の上位には米国、日本、オーストラリア、イタリア、マレーシアが並ぶ。タイが、アジア域内のみならず、先進国・地域市場向けの供給基地としても機能していることが分かる。
注1:HSコードは2309.10(Dog And Cat Food, Put Up For Retail Sale)。
注2:国別の目盛りは左軸、全体の目盛りは右軸。
出所:Global Trade Atlasからジェトロ作成(2026年2月26日時点)
タイが輸出拠点として存在感を高めた背景としては、主に2点が挙げられる。第1に、厚みのある食品加工産業と国内原料基盤を有する点だ。Thai Pet Food Trade Association(TPFA)によると、ペットフードに使用される原材料の95%が国内で調達可能という(注7)。第2に、グローバル企業向け受託生産などを通じた製品の品質と基準対応が輸出競争力につながっている点だ(前掲の注6参照)。こうした供給面の強みが、タイの生産・輸出拠点としての地位を高めている。
ペットフード業界最大手のマース(本社:米国)やネスレ(本社:スイス)などのグローバル企業は、タイにも輸出志向の製造拠点を設けている。ペットフードをタイで製造するいなばペットフードは2025年6月、タイ第4工場を竣工した。同年8月、タイ第5工場の建設計画を発表し、2029年に竣工予定だ(注8)。さらに、タイではローカルブランドの存在感も増している。現地の主要なペットフード製造企業はドライフード、ウェットフード、トリーツ(おやつ)など多様な犬・猫用フード製品を、アジア、米国、欧州をはじめとする各国市場へ輸出している。主な製造企業としては、i-Tail
、パーフェクトコンパニオングループ
(ブランド:SmartHeart、Me-O)、アジアンアライアンスインターナショナル
(同:Hajiko、Monchou)、インターナショナルペットフード
(JerHigh)、Hi-Qフードプロダクツ
(同:Felina Canino)などが挙げられる(注9)。また、多くのメーカーは、プライベートブランド契約のもとでグローバルブランド向けに製造するほか、OEM(相手先ブランド製造)として、海外企業が自社ブランドとして販売する製品の生産も担っている。
制度対応と成長するEコマースへの対応が日本企業の課題
ペットフードの輸出については、各国の制度・規制への対応が欠かせない。例えばタイにおいては、犬猫用ペットフードは2015年の飼料品質管理法上の「特定管理飼料」に該当する。完全栄養食、スナック・おやつ、療養食、サプリメントが対象。輸出にあたり、タイ側の輸入者が許可を取得し、製品登録および、輸入通知を行うことが必要だ。日本側で準備する書類としては、(1)飼料分析証明書、(2)輸出国当局による衛生証明書、(3)原産地証明書、(4)自由販売証明書が挙げられる(注10)。
また、ペット関連用品の販売チャネルでは、一部のグローバルサウス諸国でオンラインチャネルの比重が高まっている点も重要だ。ユーロモニターによると、アジア太平洋地域では、2020~2025年の間、ペットケア市場のEコマース(EC)販売比率はCAGR約12%で成長している(前掲の注4参照)。主要国・地域を見ると、インド(2025/26年度、金額ベース)では、ペットショップが45%、スーパーマーケット・ハイパーマーケットが9%、オンラインが20%、動物病院が26%となっており、オンラインや動物病院経由での販売比率が比較的高い(注11)。タイ(2024年、金額ベース)では、ペットショップが50%、スーパーマーケットなど現代型小売店が30%、オンラインが10%、動物病院が10%となっている(注12)。米国農務省(USDA)報告(前掲の注9参照)では、タイのペットフード市場ではECと実店舗を融合したオムニチャネル化が急速に進展していると説明している。即時配送を特徴とするクイック・コマースの拡大が市場成長を牽引している。また、ペットラバーズセンター
のような大手小売業者は、実店舗を当日配送やクリック&コレクトの拠点として活用するほか、ロイヤルティプログラムの統合や自動販売機を導入する企業もみられるなど、新たな販売・流通モデルの構築が進んでいる。
また、若年層を中心に、ライブコマースや、SNS・インフルエンサーを活用した商品認知も広がっている。ペット市場では安全性や栄養面への信頼が重視されるため、専門チャネルでブランド認知を築きつつ、ECで継続購買につなげる戦略が有効になりやすい。実際に、筆者がバンコクにて実施した日本企業へのヒアリング(注13)では、販売チャネルについて「タイのインフルエンサーが商品を紹介してから、ECでのオーダーが増えた」「獣医師からの後押しを得て、動物病院での製品販売を起点に、アプリやECでの購入に誘導する」といった声も聞かれた(本特集「タイ・マレーシアで切り開く包括型ペットケア(バディクラウド)」参照)。一方、「インフルエンサーを活用したマーケティングは関心があるものの、コストがかかるため検討中」「ASEANではECの影響力も高く、ショッピー(Shopee)への掲載にも取り組みたい意向はあるものの、コストの観点でまだ取り組めていない」といったコストへの懸念も聞かれた(本特集「犬猫のオーラルケア文化をASEANへ(マインドアップ)」参照)。日本企業がグローバルサウス市場を開拓する際には、単に店頭に商品を並べるだけでなく、どのチャネルで信頼を形成し、どのチャネルで継続購買につなげるかを国ごとに設計する必要がある。
グローバルサウスのペット市場では、需要面と供給面の両方で競争が本格化しつつある。日本企業にとって重要なのは、飼育頭数や所得水準だけでなく、ペットフード普及率、販売チャネル、価格帯別需要、輸入規制や認証・表示制度への対応まで含めて国・地域ごとの市場段階を見極めることだ。
- 注1:
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本稿では、東南アジア、南アジア、中東、アフリカ、中南米をグローバルサウスと定義した。
- 注2:
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タイのペット市場については、地域・分析レポート「急成長するペット関連市場」参照。
- 注3:
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ベトナムのペット市場については、トレンドレポート「ベトナムにおけるペット用品市場調査」参照。
- 注4:
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ユーロモニター講演資料「Pet care: Trends & opportunities in Asia Pacific」および「再編するペットケア市場の勢力図中国企業の拡大と東南アジア攻略の鍵」参照。
- 注5:
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ユーロモニター「Pet care market experiences shift as ‘feline favouritism’ drives growth
」参照。 - 注6:
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タイ政府広報局「Thailand's pet food exports shine 7 months of 2025 worth US$1.68 billion
」参照。 - 注7:
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Petfood Industry記事「Thailand pet producers aiming to please 'pet parents'
」参照。 - 注8:
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PR TIMESウェブサイト「いなばペットフード タイのペットフード第4工場が6月末竣工
」「いなばペットフード タイ第5工場建設を決定 全世界へ供給拡大と高品質製品を提供
」参照。 - 注9:
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米国農務省(USDA)「Thailand's Pet Food Market 2025
」参照。 - 注10:
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制度対応については、「ペットフードの輸入規制、輸入手続き(タイ)」参照。
- 注11:
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Bonafide Research・インド国際ペットトレードフェア(IIPTF)提供資料から算出。
- 注12:
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タイPet Product Industry Association (TPIA)のPET FAIR SOUTH EAST ASIAでの講演資料(2025年10月)から引用。
- 注13:
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2025年10月28日~11月1日にタイ・バンコクで開催された東南アジア最大級のBtoB展示会東南アジアペットフェア
内にて行った。
- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部国際経済課
馬場 安里紗(ばば ありさ) - 2016年、ジェトロ入構。ビジネス展開支援部ビジネス展開支援課/途上国ビジネス開発課、ビジネス展開・人材支援部新興国ビジネス開発課、海外調査部中東アフリカ課、ジェトロ・ラゴス事務所を経て、2024年10月から現職。





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