今こそ挑戦!グローバルサウスグローバルサウス市場で進める現地食の機械化提案(レオン自動機)

2025年12月23日

レオン自動機(本社:栃木県宇都宮市)は、生地で餡(あん)を包む包餡機やパン製造機など、多種多様な食品製造機を手掛ける専門メーカーだ。これまでの輸出先は130の国と地域に及び、1960年代の操業以来、一貫して「現地の食文化に寄り添う機械化提案」を軸に世界市場を開拓してきた。

同社は1970年代、中東への展開を皮切りにグローバルサウス市場に進出。現在もインド、中東、アフリカなどへの展開を強化している。この記事では、同社のグローバル戦略、競争環境、グローバルサウス市場を開拓する上での課題・展望を探る。海外販売を統括する原田一宏氏(海外販売促進部長)、神山力氏(海外販売促進部担当部長)に聞いた(取材日:2025年11月20日)。


左から、神山氏、原田氏(ジェトロ撮影)

創業期から中東へ、「現地の食を機械化する」戦略

1963年に創業した同社は、1970年代に米国とドイツに販売・サービス拠点としての役割を担う現地拠点を設立。同時期にサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、レバノン、ヨルダン、イラク、イランなど中東諸国の展示会へ積極的に出展した。当時、中東市場の製菓機械分野には競合がほとんどなく、現地販売代理店と連携しながら、地域の伝統菓子に合う機械化モデルを提案していった。神山氏は新規市場開拓のポイントについて、「新しい国に参入するときは、その地域で普段食べられているものを、どのように機械化できるかが肝要」と語る。

中東展開と並行して、1980~1990年代にはアジア市場でも事業を拡大した。特に東南アジアでは、日本企業の現地進出と日本食・日本の菓子文化が広がったタイミングが重なり、自動包餡機など同社製品の普及が一気に進んだ。


輸出実績のある130の国と地域の地図(ジェトロ撮影)

現在のレオン自動機のグローバル展開を支えているのは、ドイツ・米国・上海・台湾の海外4拠点、そして地域に根差した販売代理店網だ。ドイツ拠点では、欧州だけでなく中東・アフリカも管轄している。米国拠点は北米やメキシコ市場に注力しながら、南米もフォローしている。拠点が存在しない国での取引については引き合いベースで対応している。その際は、日本本社の海外販売促進部が営業、輸出入実務、関連商品調達を少数精鋭で支える。また、アジアは日本本社のアジア営業部が上海・台湾支店と連携しながら、東アジア・東南アジア・南西アジアを広域カバーする。

販売代理店の役割は、地域ごとに異なる。欧州では1カ国1代理店が基本だ。これに対し、中東・アフリカでは国単位の市場規模が小さく、「中東全体」「南部アフリカ」など広域で1つの代理店を設置している。中南米では展示会や顧客から紹介によって、ほとんどの国に代理店設置済みだ。レオン自動機の海外拠点がある国では、代理店は新規顧客開拓に集中する。一方、拠点から離れた国の代理店は営業だけでなく、修理や部品供給まで幅広く担う。なお、スタンダードな機械の修理はそれほど難しくない。実地での技術指導のほか、海外拠点や本社でトレーニングを提供している。

アフターフォローと新規提案で競合他社に対抗

昨今の機械製造業界では、産業多角化を進める中東地域への進出が著しい。同地域の展示会では、イタリアやオランダなどの欧米勢に加え、トルコ、インド、中国、台湾、日本など幅広い国のメーカーが出展。価格競争も激しい。とりわけ中国製の機械は、販売価格が日本製の10分の1程度になることもある。「競合他社のスピード感には正直かなわない。中国やインド、トルコの企業はまず『やってみる』ことを優先し、商談の進め方が日本と大きく異なる」と神山氏は指摘する。

中国・インド・トルコ製の機械は、確かに安価だ。また、オプションの部品を一式セット販売で売り切ることが多い。しかしその結果、使いこなせない顧客も少なくない。一方、レオン自動機は顧客と丁寧に仕様を確認し、最適な構成を提案する。結果として、高価であっても確実な指導やアフターサービスを重視する顧客は、同社製品に戻ってくるケースが多いという。

同社の強みは、「息の長いお付き合い」にある。部品供給は10~20年継続。故障時は、サポートに尽力する。食品製造機械は生産停止や規格外品による売上損失が生じるため、故障や誤差が少ない高精度の日本製機械は結果的に製造原価を下げ、顧客の長期利益に資する。

価格競争の激化を背景に、同社は2025年から国・地域ごとにスペックを調整して「廉価版モデル」の販売も開始した。例えば欧州では、日本以上に安全基準が厳しい。そのため、本邦販売品を上回る高仕様にしている。一方、中東・アフリカ・中南米などでは、現地要請の低い装備を控えた廉価のモデルを投入。価格競争力の向上を図ってみた。展示会での反応も良好で、今後は地域別価格戦略をさらに細分化する考えだ。


展示会の様子(同社提供)

一方、中国企業など、競合他社で製品の品質が向上してきた。この状況を受け、同社は技術力をさらに高める必要性を強く感じている。「市場の声を聴くだけでなく、市場に新しい提案をしてリードできる製品を出し続けることが重要」と神山氏は語る。

注目市場はインド・中東・アフリカ、「長期戦」で市場形成へ

現在、同社が重点的に攻めたい市場はインド、湾岸協力会議(GCC)諸国、東西アフリカだ。

  • インド:
    インドは甘味文化が強く、お菓子用途の包餡機が堅調に売れ始めている。今後は市場規模の大きいパン製造機にも注力し、展示会出展などで認知拡大を図る。
    人口が多く、製造業市場が大きい一方、インド自体が機械製造業に力を入れている。類似するインド製食品製造機が増えている点に懸念している。
  • GCC諸国:
    近年、中東では女性の就労拡大や経済多角化に伴い自動化ニーズが急伸。市場として規模が大きい一方、競合他社も多い。高価格帯・廉価帯を使い分けた価格戦略を導入し、顧客層の幅を広げる取り組みを強化中だ。
  • アフリカ:
    「アフリカ市場では、20~30年後に自動化の波が来る」と見立て、2020年代から徐々に市場開拓を進めている。短期的な成果を求めない方針で地道に告知活動を続けている。
    南アフリカ共和国の代理店の活動状況を踏まえつつ、東・西アフリカそれぞれの展開方針を検討しているという。

アフリカ内の地域差も大きい。例えば南部アフリカでは、欧州の食文化が浸透している。一方、北アフリカでは中東食文化の影響が強く、機械化が進む。東西アフリカでは、欧州食文化の影響を受けつつ、まだ機械化できそうな伝統食を定めきれない。そのため、同社はどの食が機械化に適しているのかを見極めながら、中長期的な市場育成を進める方針だ。


本社サンプルルームには、同社の食品製造機で作った世界中の菓子・パン類が並ぶ(ジェトロ撮影)

なお、開発途上国でのパン製造機の販売は容易でない。主食になっているパンは大量生産品で、しばしば価格統制を受ける。その結果、利益率が低くなるため、同社が得意とする高品質機と相性が悪い。神山氏は「高品質を求める北米・欧州の高級パン市場とは異なり、量と価格重視の市場では他社製品や手作業のほうが効率的なケースも多い」と説明する。

価格交渉に関しても、インド・中東では値下げ要求が強い。2~3割の値引きを前提にせざるを得ない市場もある。同社の基本方針として大幅な値引きには応じないものの、市場の商習慣を考慮して価格設定している。

契約についても国ごとに異なる慣習を理解し、柔軟に対応することが求められる。インドは契約社会で、十数ページに及ぶ契約書が送られてくることも珍しくない。グローバルサウス諸国でも法務部が強化されている企業も多く、契約条件の調整には時間を要するという。また、支払い能力が低いと考えられる国によっては、全額前払いや信用状(LC)での取引を必須にしている。

また、グローバルサウス市場では国によって制度が大きく異なる。そのため、規制情報の事前調査と書類準備が欠かせない。税関で貨物が止まる事例もあり、輸出管理は年々複雑化しているという。

レオン自動機は創業期の中東市場展開、東南アジア市場への普及を経て、同社は今、インド・中東・アフリカへと挑戦の舞台を広げている。競争が激化し、ビジネス環境が複雑化する中で、丁寧な顧客支援と技術力を強みに挑む。その姿勢は、グローバルサウスで成長機会を探る日本企業にとって、これからの指針になるだろう。

企業基本情報
会社名 レオン自動機株式会社
設立 1963年3月
本社所在地 栃木県宇都宮市野沢町2-3
従業員数 1,075人 
URL https://www.rheon.com/外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

取材日:2025年11月20日

執筆者紹介
ジェトロ調査部国際経済課
馬場 安里紗(ばば ありさ)
2016年、ジェトロ入構。ビジネス展開支援部ビジネス展開支援課/途上国ビジネス開発課、ビジネス展開・人材支援部新興国ビジネス開発課、海外調査部中東アフリカ課、ジェトロ・ラゴス事務所を経て、2024年10月から現職。