今こそ挑戦!グローバルサウスサントモバイオマス、現地発で次世代燃料を開発(インドネシア)

2026年3月24日

インドネシアでは、バイオ燃料や、持続可能な航空燃料(SAF)、合成燃料など、次世代燃料の重要性が高まっている(2025年12月11日付地域・分析レポート参照)。背景には、脱炭素化とエネルギー安全保障への関心の高まりがある。豊富なバイオマス資源を生かせることから、これらの燃料の開発・導入は国家戦略の一環として進められている。

こうした流れは、将来の次世代燃料だけでなく、足元の石油代替需要にも波及している。なかでも、固形バイオマス燃料の需要は産業用ボイラーを中心に拡大している。主な原料は、パーム油生産や木材加工の過程で生じる残渣(ざんさ)であり、石炭の代替燃料として利用できることから、工場向けの需要が先行している。

サントモバイオマスインドネシア(PT Santomo Biomass Indonesia)は、バイオマス燃料の原料となるパーム・木材残渣などについて、調達・集約から品質調整、異物除去、水分管理までを一体で担う。インドネシア国内の工場需要に応えるだけでなく、日本・韓国向け輸出も視野に入れる。一方、電力向けの混焼は、価格面の制約を受けやすいという。本稿では、そうした同社の認識を踏まえ、市場ニーズ、品質・認証対応、燃料多様化の方向性について聞いた(取材日:2026年2月18日)。取材先は、以下のとおりだ。

  • 山口智市氏:サントモグループ創業者、サントモリソースインドネシア代表取締役社長
  • 星野瑠海氏:サントモバイオマスインドネシア代表取締役社長

左から山口氏、山口隼太郎氏(サントモグリーンパワーマネジメント代表取締役社長)、星野氏(ジェトロ撮影)

再エネ事業の開発を先行して実装

質問:
サントモグループが当地で担う役割と具体的な事業の柱は。
答え:
当グループの設立は2016年。インドネシアを主体に、再生可能エネルギー(再エネ)の事業開発に特化してきた。連結で社員は100人を超える。事業の柱は、(1) BaaS(Battery as a Service/電動バイクとバッテリー交換基盤の普及)、(2)バイオマス〔農林業残渣(パームや木材など)を中心に、固体・液体・気体燃料を開発〕、(3)天然ガス(2025年から供給を開始)だ。
(2)のバイオマスでは、2019年から燃料であるパームカーネルシェル(PKS)の日本向け輸出を中核事業の1つとして展開してきた。この領域の事業開発を専門に担うため、2024年にサントモバイオマスインドネシアを設立した。
当地は親日的で、日本人へのリスペクトが強い。ビジネス基盤として取り組みやすい国だ。

調達から、集約・品質調整、供給まで

質問:
バイオマス事業でどの領域を担い、どの燃料を扱っているか。
答え:
当社はパーム残渣を中心に、固形燃料だけでなく液体・気体燃料まで幅広いテーマで開発を進めている。足元の実務としては、PKSを輸出するに当たり、品質調整、異物除去、水分管理などを工程として担っている。各工場から原料を調達し、集約して顧客へ供給するのも当社の役割だ。スマトラ島とカリマンタン島でストックパイル(一時的に集積・保管する燃料・原料)を管理しており、主として国内向けに燃料・原料として供給している。
2025年には、東ジャワ州に木質ペレット工場を建設した。おがくずを調達し、木質ペレットを製造。当該ペレットは、東ジャワ州で産業用ボイラーを保有する企業向けに供給・販売している。
加えて、燃料の多様化も進めている。具体的には、当地で多く生じる米、トウモロコシ、サトウキビなどの農業残渣を原料に、新商品のペレット製品の開発を目指している。
並行して、液体燃料(バイオディーゼルやSAFなど)や気体燃料(バイオガスなど)の開発にも取り組んでいる。そのため、日本とインドネシアの大学・研究機関などと協力を進めているところだ。

発電用混焼は価格が制約要因

質問:
国内販売と輸出の現状、輸出先、需要業種はどのように見ているか。
答え:
木質ペレットについては、工場立ち上げ直後で生産量がまだ安定していないため、現時点では国内向けが中心である。ただし日本・韓国向けの引き合いがあり、生産が安定すれば輸出を増やす方針だ。
輸出先は韓国と日本が中心で、(取材時点では)引き合い・出荷とも韓国向けが多い。欧州からの引き合いもあるが、輸送コスト上昇の影響でいったん止まっており、当面は韓国と日本を優先する。国内では、繊維・食品業界の工場向け需要が中心で、主な用途は産業用ボイラーでの利用である。脱炭素を意識する日系企業やグローバル企業の工場を主要ターゲットにしている。一方、韓国ではたばこメーカーや発電所、日本ではバイオマス発電所の需要が大きい。
質問:
発電分野の混焼需要について、ポテンシャルと制約をどう捉えているか。
答え:
需要規模の観点では、大きなポテンシャルがあると見ている。当社の見立てでは、インドネシアの発電向け石炭使用量は年間約1億2,000万トン程度ある。従って、石炭との10%混焼が進めば、需要は概算で約1,000万~1,200万トン規模に達する可能性がある。
一方で、最大の制約は価格である。インドネシアでは電力価格は統制色が強く、電力事業者が赤字を抱え、その一部を政府補填(ほてん)で支える構造にあると理解している。そのため、例えばPKSの日本向けFOB(本船渡し条件)価格は1トン当たり約95ドル程度が相場感となる。しかし、当地の電力事業者の支払い可能水準は1トン当たり約70ドル程度(石炭調達価格)にとどまる。この価格差がある限り、供給は広がりにくい。こうした事業から、足元では発電用よりも産業用ボイラー燃料としての利用が相対的に多くなる。

原料確保が品質を左右する

質問:
当地需給の量感と、貴社の取扱規模は。
答え:
当社の見立てでは、PKSの国内発生量は年約1,300万トン規模で、輸出は日本と韓国向けが中心になる。このうち、日本向けは年約500万~600万トン程度と見ている。
当地から韓国向けの木質ペレット輸出は年約100万トン程度で、国内消費は100万トン未満、50万トン程度と見ている。当社のPKSの取扱量は年間20数万トン規模で、これまではその大半が対日輸出だった。足元では引き合いも増えてきており、原料開発から最終製品までを見据えた研究開発も活発になってきている印象だ。
質問:
新設した東ジャワ州(グレシック)の工場の稼働状況と、調達・品質管理の要点は。
答え:
当社は2025年秋、東ジャワ州に木質ペレット工場を稼働させた。最大生産能力は月1,000トン。立ち上げ直後のため、まだ調整・試行錯誤の段階にある。3シフト操業を想定しているが、現時点では1~2シフトに抑え、あえて稼働率を半分程度にとどめている。
設備はドイツ製である。スペアパーツは初期に大量購入するのではなく、実運転を通じて部品寿命や原料との適合性を確認し、必要量を見極めたうえで拡充している。
品質管理の要点は原料にある。原料になる乾燥おがくずの品質や粒度が重要であり、複数の製材工場から調達しながら試作とブレンドを重ねてきた。要求品質に合う原料を長期的かつ安定的に確保することがカギである。
木質ペレットは、目安として4,000kcal/kg以上、水分10%以下、灰分3%以下の品質を確保し、要望に応じた調整も可能である。日系顧客からのサンプル評価は高く、品質が安定しているとの評価を得ている。

認証・信頼性がカギ、連携して高度化へ

質問:
認証の位置づけについて、どのように整理しているか。
答え:
国内取引では認証が不要なケースもあれば、国内認証を求める顧客もいる。欧州・日本・韓国などと国際取引するには、認証がないと話が進まないケースが多い。認証はコストが大きく、売り先が確実でないローカル企業は取得をためらいがちだ。当社は国際的な取引を前提に必要な認証を取得し、毎年更新している。具体的には、Green Gold Label(バイオマス特有の持続可能性認証)やISCC EU(注1)、ISCC PLUS(注2)、SVLK(注3)、FSC(注4)などの取得を進め、運用している。
質問:
参入障壁については。
答え:
参入障壁としては、まず限られた期間の中で取引先との信頼関係を構築しなければならないことが挙げられる。日系企業では、駐在員の任期が一般的に3~5年程度であるため、日系企業向けに新たに販路を新規開拓する場合、その任期中に関係構築を進める必要があり、そこに難しさがある。
また、再エネやバイオマス分野は不確実性が高く、案件や事業者を適切に見極める専門的な判断が求められる。信頼性に乏しい事業者も一定数存在する中で、日本式のマネジメントを生かしながら選別を行い、顧客が安心して採用できる商材として整えていくことが重要になる。
質問:
日本企業との連携に何を期待し、今後どの方向へ展開する考えか。
答え:
当社と特に相性が良いのは、バイオマス由来原料を製造工程やエネルギー用途で活用できる企業や、バイオマスエネルギーの技術開発を担う企業である。アイシン高丘が好例だろう。同社とはパーム由来原料を用いてバイオコークスを製造し、自動車部品製造に必要となるコークスを置き換える案件で連携した。この案件では、アイシン高丘と現地企業が出資する工場向けに、バイオコークス製造に必要な原料としてPKSを供給している。加えて、製造に必要なガス燃料としてLNGなどを輸送・供給するための設備を建設し、供給を開始した。
今後は、固形燃料の供給拡大に加え、未利用残渣の高度化を進める。具体的には、次のような取り組みを実施、検討している。
  • 空果房(EFB:Empty Fruit Bunch/パーム空果房):
    NEDOの国際実証事業で進むインドネシア国内のバイオマス発電所向けに供給を開始する予定である。高付加価値な燃料への活用に向け、事業性調査を進めている。
  • パームの古木(OPT:Oil Palm Trunk/パーム古木):
    広島大学やBRIN(インドネシア国家研究イノベーション庁)と連携し、水熱炭化による利用可能性を検証している。
  • もみ殻
    農業残渣の中でも、まだ回収・活用が十分に進んでいない。2026年中にもみ殻を原料とするペレット工場を建設し、石炭代替燃料として供給したい考えだ。
  • トウモロコシの芯、サトウキビバガス、コーヒー残渣など
これらを含め、多品種のバイオマスペレットを試作も計画している。
液体・気体燃料にも取り組んでいる。具体的には、パーム工場廃液(POME)などを原料にしたバイオガスの生産に加え、それを高品質化したバイオCNG(注5)として活用する事業の可能性を検討している。 さらに将来的には、固形バイオマスからSAFを製造する事業開発も視野に入れ、ガス化とFT合成、水熱液化などの技術を活用した検討を進め、より価値の高い原料・製品にシフトしていく考えだ。

単一国で突出した専門性を追求するのも「あり」

サントモバイオマスインドネシアは日系企業ではあるが、同時に、インドネシアを起点にする現地発スタートアップ企業という側面もある。現地でのネットワークを活かし、日系・地場含めパートナーを巻き込みながら成長している。農作物残渣を扱う現地事業者の中には「怪しげな人もいる」と言い、その見極めも含めて経験が必要であり、現地に根付いて活動してきた同社グループの強みが活かされているという。

日本企業が海外展開を進める上では、複数の候補国をにらんでグローバルサウスを目指す戦略ももちろん有益だ。一方で、サントモグループのように、単一の国を拠点に特定分野に特化した専門性を目指すのも「あり」だろう。

企業基本情報
会社名 サントモバイオマスインドネシア
設立 2024年(グループ設立は2016年)
グループ本社所在地 〒100-6213 千代田区丸の内1-11-1 パシフィックセンチュリープレイス13
従業員数 100人(連結)
URL https://santomobiomass.com/ 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
表:インドネシアの基礎情報
項目 データ
面積 189万2,410平方キロメートル(2025年、日本の約5倍)
人口 2億8,444万人(2025年)
実質GDP成長率(%) 5.0(2024年)
1人当たりGDP(米ドル) 4,960(2024年)
消費者物価上昇率(%) 1.6(2024年)
失業率(%) 4.9(2024年)
主要産業 製造業、卸売・小売業、農林水産業

出所:インドネシア中央統計庁


注1:
ISCC とはInternational Sustainability & Carbon Certificationの略称で、国際持続可能性カーボン認証を指す。ISCC EUは、EU域内のバイオ燃料市場を対象とした認証スキーム。 本文に戻る
注2:
ISCC PLUSは、EU域外を含む全世界で適用される持続可能性認証制度。 本文に戻る
注3:
SVLK(インドネシア語名:Sistem Verifikasi Legalitas Kayu、英語名︓Indonesian Timber Legality Assurance System)と称される⽊材合法性証明システム。インドネシアの⽊材⽣産・流通・加⼯・取引に関する事業者は、国家認定機関(KAN)から認定を受けた⺠間の独⽴審査認定機関(LPVI)の審査を受け、持続的森林管理証明書(S-PHPL)⼜は⽊材合法証明書(S-LK)を取得する必要がある。 本文に戻る
注4:
国際的な非営利組織であるFSC(Forest Stewardship Council:森林管理協議会)が定めた規格をもとに、適切に管理されていると認められた森林から生産された林産物や、その他のリサイクル資源または管理された供給源から調達された林産物を使用した製品にFSCラベルを付け、認証製品として販売できる制度。 本文に戻る
注5:
バイオCNGとは、バイオガスから不純物や二酸化炭素を除去し、圧縮天然ガス(CNG、Compressed Natural Gas)と同等の品質に高品質化したガス燃料。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部国際経済課長
安田 啓(やすだ あきら)
2002年、ジェトロ入構。海外調査部国際経済課、公益財団法人世界平和研究所(現・中曽根康弘世界平和研究所)研究員、ジェトロ・ブリュッセル事務所次長、調査部欧州課長などを経て、2025年から現職。
執筆者紹介
ジェトロ調査部アジア大洋州課
八木沼 洋文(やぎぬま ひろふみ)
2014年、ジェトロ入構。海外事務所運営課、ジェトロ北九州、企画部企画課、ジェトロ・ジャカルタ事務所を経て、2025年11月から現職。

この特集の記事

今後記事を追加していきます。