今こそ挑戦!グローバルサウスエジプトでプラスチック成形の資源循環に挑む(松井製作所)
2026年3月17日
松井製作所(本社:大阪府大阪市)は、プラスチック成形工場向けの周辺設備(樹脂乾燥機、輸送機、金型温調機、配合機、粉砕・リサイクル機器など)の製造・販売を手掛ける。「成形工場のfactor4(注1)を実現する」ことを使命に、設備単体の提供にとどまらず、工場診断と省エネルギー・省資源提案を組み合わせたソリューションを展開している。成形工場における資源消費量を半分に削減し、生産量の増大と製品の付加価値を向上することで、「地球環境とお客様の豊かさを両立する」ことが目標だ。
松井製作所のソリューション展開は、全世界に広がる。代理店も合わせると、世界26カ国に90以上の拠点を持つ。最近では、新たな市場として中東・アフリカ(MEA)地域に注目している。MEA地域も管轄する欧州統括拠点として、2025年1月、スペインのバルセロナに現地法人(Matsui Solutions Europe S.L.)を開設した。現時点ではドイツの駐在員事務所とともにMEA市場をカバーしているが、将来的にはオペレーションをスペインに集約する計画だ。ジェトロでは、スペインの現地法人で執行役員を務める笹原一樹氏と、ドイツ駐在員事務所で次長を務める山下拓馬氏に話を聞いた。本稿では、同社の北アフリカ市場での取り組みを、主にエジプトに焦点を当てて紹介する。

北アフリカ市場で「ファーストカマー」目指す
- 質問:
- MEA地域の中でも、特に注目している国はあるか。
- 答え:
- 北アフリカ市場に注力している。中でも、モロッコとエジプトでの事業展開を積極的に進めている。
- モロッコは欧州市場向けの製造拠点として、自動車産業が大きく成長している。自動車産業向けのプラスチック製品需要が高まっていることから、松井製作所としてのプライオリティーも高い。自動車に使用される製品は品質や耐久性、耐用年数などの要求水準が高く、高機能な機械のニーズがある。当社のソリューションが受け入れられやすい市場だ。
- 対するエジプトのプラスチック産業は、家電向けが主力だ。地場のエルアラビや中国の美的集団(Midea Group)、ハイセンスなどが製造を拡大しており、一大産業になっている。また、包装・食品容器関連など、パッケージ分野も伸びている。特にPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂を用いた食品容器は、材料のハンドリングや金型の温度調節など高度な技術が求められる。こうした分野で当社のソリューションが生きる。
- 質問:
- 北アフリカ市場に挑戦する背景は。
- 答え:
- 前述のとおり、プラスチックの需要産業が伸びている点に加え、先行者利益を狙えるのではないかとの見立てがある。例えば、欧州でプラスチック成形が盛んなドイツ、イタリア、フランスなどは競合が多く、CEマーク〔貿易・投資相談Q&A(CEマーキングの概要:EU)参照〕取得のための規制対応も必要で、これから参入するのは難易度が高い。他方で、モロッコやエジプトは需要もありつつ、参入障壁は欧州ほど高くない。「ファーストカマーになれる市場はどこか」を考えた結果、この2カ国が浮上した。
エジプトの成形工場で資源循環を促進
松井製作所は2026年1月、エジプト・カイロで開催された中東・アフリカ地域最大級のプラスチック関連製品展示会「PLASTEX 2026
」に日本企業として唯一出展した(2026年2月13日付ビジネス短信参照)。ここからは、PLASTEXの手ごたえと、エジプトでの取り組みについて聞いた。
- 質問:
- PLASTEXには前回(2024年)も出展されていたが、今回は比較してどうか。手ごたえはあったか。
- 答え:
- 展示会のプレゼンスが上がってきていると感じる。出展企業の割合としては引き続き中国企業が圧倒的だが、今回はインドとトルコの出展企業も増えた。
- インド企業に関しては、材料や機械、加工業など、幅広い分野で出展が増えた。インドとエジプトの経済的なコネクションは強いと感じる。エジプトが北アフリカのハブということもあり、インド企業の進出が増えている。なお当社でも、エジプト市場向けにはインド拠点で製造した機器を納入する(注2)。地理的な近接性に加え、インド拠点では英語対応が可能である点も強みだ。当社のインド拠点にはアフリカ市場担当の営業もおり、PLASTEXでもともにブースに立った。
- 当社のブースには幅広い来場者が訪れた。例えば、新たに成形機を購入する予定の人が付帯設備を見に来たり、ブロー成形から射出成形(注3)への事業拡大を検討している人が相談しに来たりした。ブースでのやり取りがきっかけで、現地企業の工場視察に向けた調整も決まった。
- 中東湾岸諸国からの来場者が増加した印象で、当社もイエメンやバーレーン、サウジアラビア、クウェートなどの企業から引き合いがあった。中東湾岸諸国では、経済多角化のため製造業を振興しており、それに伴ってプラスチック加工業を発展させたい意向があると考えられる。こうした各国の動向を知ることができたのもよかった。
-

左から山下氏、インド拠点のサイエド氏、
アクシャイ氏(ジェトロ撮影)
松井製作所のブース(ジェトロ撮影) - 質問:
- エジプトのプラスチック産業における課題と、貴社のソリューションの強みは。
- 答え:
- 日本では、プラスチックの成形工程において出る端材や不良品を仕分けしてリサイクルしている。他方で、エジプトでは端材が他の廃棄物と混在した状態で収集されるためリサイクルが難しく、工程に還元できていない。背景には、エジプトの工場がオペレーション重視のデザイン・プロセスになっており、リサイクルやリデュースを前提にしていないことがある。現状では「成形できれば良い」という意識で、企業がリサイクル・リデュースの必要性に気付いていないことが課題だ。
- しかしながら、端材と不良品のリサイクルはプラスチック廃棄物を減らし、二酸化炭素(CO2)排出量削減に資するだけでなく、成形工場にとってのメリットにもなる。製造コストの約7割が材料コストとされるプラスチック製造業において、端材と不良品を効率よく還元していくことが利益の源泉になる。当社は、成形工程で発生する端材と不良品をリサイクルし、工程に戻していくためのソリューションを提供している。例えば、当社の粉砕機は、射出成形後に不要となる「スプルー」や「ランナー」と呼ばれる部分を粉砕し、再資源化する。従来の粉砕機をリサイクルに使用する際の成形不良発生の可能性や、清掃の手間といった課題も克服できる。
- 資源の無駄を省き、コスト削減や生産性の向上を図るためには、そのほかにもあらゆる工程で見直すべきポイントが存在する。特に、材料の準備段階が品質を左右する。こうした中、個別の工程・機械に特化した競合他社はいるが、当社はプロセス全体をデザインし多岐にわたる製品を複合的に提供できるのが強みだ。また、中国や米国の企業は代理店を通じて機器の販売を行っているケースが多く、顧客の現場を知らない。当社では、成形工場を実際に診断し、顧客が気づいていない問題点や改善点を指摘しながらソリューションを提案している。
エジプトビジネス成功に向けて
- 質問:
- エジプトでビジネスを進める上での課題は。
- 答え:
- エジプトでは2年間営業活動を行ってきた。欧州拠点からの出張で対応してきたが、出張ベースではなかなか成果が上がらない。エジプト人のパートナーやエージェントとのつながり、もしくは専任の自社スタッフを置くことの必要性を感じている。
- 特に、言語の壁が課題だ。松井製作所には世界全体で千人以上の従業員がいるが、アラビア語が話せる人材は1人もいない。また、モロッコを始め、フランス語が不可欠なアフリカ諸国は多いが、フランス語人材も1人だけだ。現地語ができると、現地メディアから情報を得たり、ネットワーキングに有利に働いたりと、営業活動の幅が広がる。いくつかの企業や個人とエージェント契約について話をしているが、同時に、これらの言語ができる人材を「松井マン」(松井製作所の従業員)として採用していきたいという思いも強い。自社スタッフであれば、例えばエジプトで経験を積んだ人が次はサブサハラの営業に挑戦するなど、別の拠点でまた活躍してもらえる。今後、アラビア語・フランス語人材をスペインの拠点で増やしていきたい。
- 質問:
- エジプトでのビジネス展開を目指す日本企業に対して、アドバイスは。
- 答え:
- 日本企業がエジプトビジネスを始める上でのカギは、「まず現地に来ること」。インターネット上で情報を集めたり、コンサルティング企業などに調査を委託したりしても、実際に来ないとわからないことは多い。
- また、現地を知る上では、ビジネス面だけに集中しすぎないことも重要。日本企業に大切なのは文化的な相互理解だと思っている。特に、MEA地域は日本人にとってなじみが薄く、歴史や宗教、文化について誤解や偏見が生じやすい。現地の商習慣を理解し、ビジネス上のコミュニケーションを円滑に進める上で、相手の根底にある価値観を知ることは重要だ。予備知識があると、現地の人から「よく知っているね」と喜ばれたり、会話の「つかみ」として盛り上がったりする。日本のビジネスマンは目先の成果を重視する人が多いように思うが、現地でネットワークを築きながらビジネスをしていく中で、より本質的に重要なのはこうした相互理解に向けた努力だと感じる。
- 質問:
- 北アフリカ(エジプト、モロッコ)以外で今後取り組みたい国はあるか。
- 答え:
- ナイジェリアに注目している。現地の購買力があること、英語圏であることなどが魅力だ。パッケージング分野で需要があると見ている。当社としては、インド拠点にナイジェリアに5年住んでいたインド人社員がいることも強みになる。
- 日本企業が「ファーストカマー」になれる市場はほかにもまだあると思う。市場から求められているのであれば、積極的に出ていきたい。
| 会社名 | 株式会社松井製作所(マツイセイサクショ) |
|---|---|
| 設立 | 1967年(創業1912年) |
| 本社所在地 | 〒540-0001大阪府大阪市中央区城見1-4-70 OBPプラザビル17F |
| 資本金 | 2億円(単体) |
| 従業員数 | 1,300人(連結) |
| URL |
https://matsui.net/ |
取材日:2026年1月11日、1月12日
| 項目 | 2024年 |
|---|---|
| 面積(平方キロメートル) | 1,001,450 |
| 人口(万人) | 10,780 |
| 実質GDP成長率(%) | 2.4 |
| 1人当たりGDP(米ドル) | 3,570 |
| 消費者物価上昇率(%) | 33.3 |
| 失業率(%) | 7.4 |
| 主要産業 | 製造業、卸売・小売業、農業、建設業、不動産・ビジネスサービス |
出所:面積:国家情報サービス(SIS)
人口:エジプト中央動員統計局(2025年6月30日)
1人当たりGDP、実質GDP成長率、消費者物価上昇率、 失業率:IMF
主要産業:外務省
- 注1:
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factor4は、1995年、エイモリー・B・ロビンスらによって提唱された。ある一定量の資源から、どれだけの財やサービスを作り出せるかという「資源生産性」を4倍にすることにより、企業の豊かさを2倍にし、資源消費は半分にできるという考え方。
- 注2:
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製造拠点は日本(大阪府枚方市)、中国(上海と張家港の2拠点)、韓国、タイ、米国、インドの7拠点。世界共通の基本仕様を基に、世界各地でローカライズ対応を行っている。
- 注3:
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ブロー成形と射出成形は、プラスチック製品の成形手法。ブロー成形はボトルやタンクなど中が空洞の製品に、射出成形は複雑な形状や精密な部品の大量生産に適している。前者は空気を吹き込み、後者は高圧で金型に樹脂を注入する。
- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部国際経済課
宮島 菫(みやじま すみれ) - 2022年、ジェトロ入構。調査部調査企画課を経て、2023年6月から現職。
- 執筆者紹介
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ジェトロ・カイロ事務所
塩川 裕子(しおかわ ゆうこ) - 2016年、ジェトロ入構。展示事業部、ジェトロ富山、企画部(中東担当)を経て2022年7月から現職。






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