今こそ挑戦!グローバルサウス未利用の廃棄植物活用し現地産業の付加価値向上(ヘミセルロース)

2026年1月28日

ヘミセルロース(本社:神奈川県川崎市)は2023年に設立された、天然糖類を用いて機能性素材を開発する企業で、特に未利用・非可食の植物由来糖成分「ヘミセルロース」を用いた素材製造に注力している。グローバルサウス地域では現地の未利用資源の活用と現地産業の付加価値向上に向けてアフリカ、中南米地域に注目している。同社のグローバルサウスでの取り組みについて、同社代表取締役社長の茄子川仁氏に聞いた(取材日:2025年12月22日)。


茄子川氏(同社提供)

幅広い原材料のペレット化技術に強み、ライセンス契約通じ現地にノウハウ提供

質問:
貴社の事業概要について。
答え:
関連会社である事業革新パートナーズを2009年に設立。金型・素形材サービス事業や、植物由来材料の研究開発・製造を行うバイオマス事業に取り組んでいた。2023年7月に後者のバイオマス事業を分社化、株式会社ヘミセルロースを設立した。
当社では樹木・植物を構成する未利用・非可食の多糖類「ヘミセルロース」に着目し、廃棄植物からプラスチックや接着剤、撥水(はっすい)材などの機能性素材を製造している。ヘミセルロースとともに植物を構成する成分(セルロース、リグニン)を最適な条件で抽出し、バイオプラスチックの原料となるペレットを製造、供給している。
質問:
グローバルサウス地域での取り組みのきっかけと概要は。
答え:
グローバルサウス地域では、2021年にエクアドルで象牙やしの実の利用に関心があるとして、現地の日本大使館から声をかけられたことが始まり。JICAのプログラムを利用し、現地調査を行い、象牙やしの実を原料としたバイオプラスチックを製造。そのプラスチックを利用した製品をドイツの国際プラスチックの展示会(「K外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」)で展示したところ、スウェーデンやノルウェーなど北欧諸国の企業から引き合いがあった。
2023年からは食品メーカーの明治と連携し、カカオの廃棄物からプラスチックを製造するプロジェクトに取り組んでいる。カカオのうちチョコレートに用いられる部分はわずか5%で、それ以外は焼却など廃棄されていた。カカオ農家の収入改善のためにも廃棄物からも収益を上げられないかと考え、カカオから生じる廃棄物をペレット化しプラスチックの材料とする技術を開発した。現在メキシコなど中南米、西アフリカ、マダガスカルなどアフリカのカカオ産地(カカオベルト)を中心に、ライセンス契約を通じてペレット化技術を提供するビジネスに取り組んでいる。
当社の強みはさまざまな原材料からプラスチックの材料となるペレットを製造できる技術にある。カカオ以外にも、例えばアサイーの廃棄物をペレット化する技術も開発しており、ブラジルなどでの展開を検討している。
質問:
貴社のバイオプラスチック事業の商流・ビジネスモデルは。
答え:
商流は2つのパターンがある。1つは現地の原材料から製造したペレットを当社が買い取り最終製品を製造するパターン。もう1つは現地で最終製品まで製造するパターン。原材料をペレット化する工程と、ペレットから最終製品を製造する工程は別であり、現地のパートナーの性質に合わせて分けている。最終製品を製造する工程は製造業としての色が強く、パートナーが農業関係などの場合は難しいことが多いことから、当社で最終製品を製造している。
ペレット化技術のノウハウ・知財はライセンス契約の下で現地に提供するかたちになるので、生産高に応じたマージンが収益の1つとなる。現地で生産したペレットについても当社で販路開拓を支援している。 物流は、現地からエンドユーザーに直接販売している。これまで原材料を輸出していた現地企業がパートナーとしてペレットまたは最終製品を製造し混載で輸出するため、輸出自体へのハードルは高くない。

組織体制重視しパートナー選定、資金調達も選定の基準に

質問:
進出国の選定およびパートナー選びの基準は。
答え:
当社の技術でしか対応できない原材料を有する、日系・外資系の競合が少ないアフリカ、中南米諸国に注目している。事業を軌道に乗せるには、一定規模の原材料を回収・加工する必要があることから、資金力や運営基盤が必要。現地の産業を変える取り組みであることから、地域を巻き込んでいくことのできるパートナーが重要になる。その観点でパートナー選びの際には規模を問わず、組織がしっかりしている企業を選ぶようにしている。主となる事業責任者がいること、複数年の中・長期的な視点で事業をたちあげられること、などがポイントとなる。商談は直接会わないと決まらないことが多いため、年間で3~4回訪問するようにしている。企業の選定にあたっては第9回アフリカ開発会議(TICAD)で行われた「Business Expo & Conference(TBEC)」への出展のほか、エクアドルではJICAのTSUBASA(注)プログラムなどを利用しリストアップを行っている。
質問:
グローバルサウス地域で事業を行うにあたっての課題は。
答え:
現地情報の収集。アフリカであれば政治リスクなど、想定外のリスクに直面することもあり、広く情報網を構築する必要があると感じている。現地の大使館やJICAなどの政府機関や、現地在住の日本人からも情報収集を図っていく。他方、政治的な動きも活用していく必要は感じており、民間部門だけでなく閣僚や政府と関わることも重要と考えている。金利の高さも課題となる。市中銀行から借りると採算が合わないこともあるため、政府系金融機関の有無など資金調達のしやすさも考慮している。例えばエクアドル、メキシコでは、国家的なプロジェクトとして位置付けてもらえるよう閣僚に働きかけているほか、米州開発銀行(IDB)からの支援も得たいと考えている。
他方、汚職のリスクは感じていない。代金回収のリスクについても、ライセンス事業という性質上長期間の契約交渉になることから、その中で取引先候補のリスクの判断ができる。また、複数の会社と同時に交渉するなど、リスク分散に向けた取り組みも行っている。

逆張りで競合と差別化、最終製品に応じた原材料を検討

質問:
バイオプラスチック分野における競合企業および貴社の強みは。
答え:
グローバルサウスに限った話ではないが、バイオプラスチックに関しては中国企業と競合することが多い。コスト面では劣後するので、さまざまな原材料に対応できる技術を強みとして取り組んでいる。幅広い原材料を用いてペレットを製造できる企業は当社のみであり、他社が取り組んでいない分野に注力することですみ分けている。世界的には画一的な規格でさまざまな用途向けの製品を製造することが主流。他方、当社は逆張りで最終製品の用途に応じて原材料を使い分け、最適な配合で製造している。例えば、剛性(変形のしにくさ)や耐熱性が求められる自動車部品など産業用途向けは、物性を高めるセルロース成分を多く活用する。一方、リサイクルされることが多い食品・飲料包装容器向けは、薄肉化し材料数量を最小化しやすいヘミセルロース成分を活用するなど、材料ごと・製品ごとにカスタマイズしている。

バイオプラスチックペレット(左上、左下は樹木由来、右上はカカオ由来、右下は大麦由来のもの)
(同社提供)
質問:
今後の目標は。
答え:
日本で製造能力を確立するとともに、エクアドル、メキシコ、ブラジルなど中南米と、ケニアなどアフリカで生産設備の現実化をしていく。各国からは現地製造への期待も寄せられているとともに、各国内でのサプライチェーンを評価していただいていることから、取り組みが機能することを見せていきたい。
企業基本情報
会社名 株式会社ヘミセルロース
設立 2023年7月
本社所在地 〒212-0032 神奈川県川崎市幸区新川崎7-7 AIRBIC A05
従業員数 15人
URL https://hemicellulose.jp/外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

取材日:2025年12月22日

表:エクアドルの基礎情報(△はマイナス値)
項目 データ
面積(平方キロメートル) 256,370
人口(万人) 1,814
実質GDP成長率(%) △2.0
一人当たりGDP(米ドル) 6,874.70
消費者物価上昇率(%) 1.5
失業率(%) 3.5
主要産業 鉱工業(石油、鉱産物)、農業(バナナ、カカオ、コーヒー)、水産業(エビ) 

出所:面積:世界銀行(2023年)
人口、実質GDP成長率、1人当たりGDP:世界銀行(2024年)
消費者物価上昇率:IMF(2024年)
失業率:国際労働機関(ILO)(2024年)
主要産業:外務省


注1:
IDBのイノベーションおよびベンチャーキャピタル部門(IDBラボ)と連携し、中南米・カリブ地域における持続可能な開発目標(SDGs)への貢献を目指す日本のスタートアップを支援するオープンイノベーションプログラム。本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部国際経済課
山田 恭之(やまだ よしゆき)
2018年、ジェトロ入構。海外調査部海外調査企画課、欧州ロシアCIS課、ロンドン事務所を経て2025年8月から現職。