今こそ挑戦!グローバルサウス世界第2のペット市場大国へ(ブラジル)
事業者の重税負担解消などに課題
2026年3月12日
ブラジルペット産業事業者協会(ABEMPET)によると、2024年のブラジルにおけるペット飼育頭数は約1億6,470万頭に達した。中国(約4億3,800万頭)、米国(約2億9,000万頭)に次いで世界第3位の規模だ。また、同年のペット関連小売市場の売上高は754億レアル(約2兆1,866億円、1レアル=約29円)。前年比9.6%増と高い伸びを示した。
本稿では、当地ペット関連市場の現状と、流通再編やペットテック企業、今後の展望について報告する。
新型コロナ禍を機に成長し「家族化」が進展
当地でペット飼育頭数は、増加基調にある(図1参照)。2024年の構成比をみると、犬を飼育する割合が最も多い(38.7%)。以下、鳥(23.3%)、猫(19.6%)、魚(13.7%)、爬虫(はちゅう)類・小哺乳類(1.8%)が続く(図2参照)。

出所:ABEMPETからジェトロ作成
出所:ABEMPETからジェトロ作成
前年比増加率でみると、2024年は猫(4.5%増)と爬虫類・小哺乳類(3.6%増)の伸びが最も高い(表1参照)。ABEMPETは、「狭い環境に適応しやすく、飼い主との頻繁な接触を必要としない点が支持されている」と分析している。 ブラジル零細・小企業支援サービス(SEBRAE)は、当地で「ペットの家族化」が進展していると指摘。ペットフードだけでなく、付加価値サービス(ペットホテル、ペット用の葬儀、医療保険など)の需要が拡大していると分析している。こうした動きは新規ビジネスの創出につながり、市場の成長を後押しする可能性が高い。
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ペットの 種類 |
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 頭数 | 前年比増加率 | 頭数 | 前年比増加率 | 頭数 | 前年比増加率 | 頭数 | 前年比増加率 | 頭数 | 前年比増加率 | 頭数 | 前年比増加率 | |
| 犬 | 55.1 | 1.7% | 55.9 | 1.5% | 58.1 | 3.9% | 60.5 | 4.1% | 62.2 | 2.8% | 63.7 | 2.4% |
| 鳥 | 40.0 | 0.5% | 40.4 | 1.0% | 41.0 | 1.5% | 41.6 | 1.5% | 42.8 | 2.9% | 43.3 | 1.2% |
| 猫 | 24.7 | 3.3% | 25.6 | 3.6% | 27.1 | 5.9% | 29.2 | 7.7% | 30.8 | 5.5% | 32.2 | 4.5% |
| 魚 | 19.4 | 1.6% | 19.9 | 2.6% | 20.8 | 4.5% | 21.8 | 4.8% | 22.2 | 1.8% | 22.6 | 1.8% |
| 爬虫類・小哺乳類 | 2.4 | 4.3% | 2.5 | 4.6% | 2.5 | 0.8% | 2.6 | 2.8% | 2.8 | 7.7% | 2.9 | 3.6% |
| 合計 | 141.6 | 1.7% | 144.3 | 1.9% | 149.6 | 3.7% | 155.7 | 4.1% | 160.9 | 3.3% | 164.7 | 2.4% |
出所:ABEMPETからジェトロ作成
マクロ経済の逆風と重税の壁
飼育頭数の増加に伴い、関連市場が急成長している。
ABEMPETによると、2020年以降は新型コロナ感染拡大により外出規制があったことも、影響。その結果、ペット関連用品やサービスの需要が大きく拡大した。もっとも2024~2025年は、(1)ブラジル国内のインフレ、(2)現地通貨レアル安、(3)これらに伴う消費活動の低迷などにより、増加率が鈍化している。
なお、ABEMPETの分析は、名目ベースの売上データに基づく。とはいえ同様の傾向は、英国ユーロモニターインターナショナルの統計(インフレ調整後の)でも確認できる(図3参照)。
(単位:100万ドル、2025年固定価格)ペット小売
出所:ユーロモニターからジェトロ作成
特に懸念材料になっているのは、国内ペットフード産業への影響だ。
米国農務省(USDA)が2025年8月に発表したレポートによると、ブラジルのペットフード消費量は米国や中国と比べて依然低い水準にある。それだけに、「成長余地が大きい」という分析になっている。
ペットフードはペット関連市場全体の5割超を占める。その原材料は、輸入依存度が高い。現地通貨レアル安の影響を受けて、生産量が近年減少傾向にある(図4、5参照)。
なお、当地の貿易統計によると、輸出量に明確な傾向がみられない一方で、輸入量は2023年以降増加している。国内生産事業者の競争力低下が指摘されている(図6参照)。
注:予想値に基づく。
出所:ABEMPETからジェトロ作成
出所:ABEMPETからジェトロ作成
出所:ブラジル開発商工サービス省からジェトロ作成
また、高い税負担が市場発展の大きな阻害要因になっている。
ABEMPETによると、当地ペット関連事業者の税負担率は、輸入関税を含むと平均50%に達する。米国(7%)中国(17%)、欧州(18%)と比較して極めて高い。USDAの2024年6月付レポートでも、同趣旨の指摘がある(ブラジルは51%、米国は7%、欧州は17%の税率)。
一方で2023年12月には、憲法改正法第132号を公布。消費税制を簡素化するのがその狙いだ。基礎的生活用品については免税または通常税率の6割減を導入していた(2024年3月21日付地域・分析レポート参照)。ABEMPETは、ペット関連品を基礎的生活用品と位置づけ、輸入関税も含む税率の6割減を適用するよう求めている。この減税が実現した場合、ペット関連品の年間生産量は900万トン増加するという。
業界大手が統合し、デジタルエコシステムが進展
ペッツ(当地のペット小売り最大手)とコバシ(当地小売り2番手)は2025年、合併を発表した。売上高約70億レアル、店舗数500店以上を誇る小売りチェーンが誕生したかたちだ。ちなみにこれは、中南米地域最大規模に当たる。
この統合の狙いは、物流網の統合によるコスト削減だけではない。膨大な顧客データを一元化し、マーケティング精度を劇的に向上することも重要だ。巨大チェーンとの取引関係構築が、今後のサプライヤーにとって市場攻略の最重要課題になりそうだ。
一方で市場の成熟に伴い、既存の商習慣を打破する「ペットテック」領域への投資が活発化している。その一例を挙げると、次のとおり。
- プラメヴ・ペット
ブラジルの動物医療費は年々高騰。それに伴い保険ニーズも急増した。
同社は2013年に創業した地場企業で、ペット向け健康保険サービスを展開。予防医療に重点を置いて、ヘルスケア・プランを提供している。
ちなみに近年は、企業の福利厚生としてペットケアプランを導入するB2B2Cモデルも新たに登場するようになってきた。 - ペットラブ
当地最大級のペットテック企業が当社だ。デジタル専業として存在感を増してきた。しかし単なるeコマース(EC)企業にとどまらず、ECでペット用品を販売。加えて、ペット保険、獣医師管理システムなどを垂直統合して、スーパーアプリ戦略を展開。ペットケアの総合デジタルプラットフォームを提供している。
その結果、当テック分野でもサブスクリプション(定期購入)モデルが普及してきた。これが、顧客のリテンション(維持)率が強力に高まる結果につながった。 - ペットパーカー
2018年にサンパウロ州で創業。スーパーマーケットや薬局の店外に「スマートペットキャビン(IoT搭載の犬小屋)」を設置して、事業展開している。
当地では、保健省傘下の国家衛生監督庁(ANVISA)の規制により、食品を扱う店舗にペットが入店するのは原則として禁止だ。しかし、飼育数増加に伴い、ペットとの外出機会が増えた。その中で同社は、温度管理機能や監視カメラ、アプリ連動のスマートロックを備えたキャビンを店舗外に設置。飼い主にしてみると、買い物中に安心してペットを預けることができる。
同社のジョージス・エベル最高経営責任者(CEO)は「このサービスは飼い主の利便性を向上させるだけではない。導入店舗からも、顧客の滞在時間の延長や来店頻度の増加をもたらすリテールテックとして高い評価受けている」と述べた(2026年1月21日聴取)。
またアプリを通じて取得した利用データは、新たなマーケティング施策にも活用可能だ。同社は、単にハードウエアを提供するにとどまらず、新たなビジネスモデルの確立を目指している。
日系企業にも市場参入の期待
ユーロモニターは、ペット関連小売市場の売り上げで、2030年にブラジルが中国を上回ると予測。米国に次いで世界第2位になるとしている(表2参照)。
| 国名 | 2025年 | 2026年 | 2027年 | 2028年 | 2029年 | 2030年 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 米国 | 86,432 | 90,389 | 94,545 | 98,950 | 103,598 | 108,449 |
| ブラジル | 9,979 | 11,234 | 12,480 | 13,871 | 15,402 | 17,099 |
| 中国 | 13,500 | 14,199 | 14,877 | 15,549 | 16,198 | 16,821 |
| 日本 | 6,067 | 6,391 | 6,639 | 6,945 | 7,278 | 7,578 |
| ロシア | 5,042 | 5,349 | 5,623 | 5,903 | 6,191 | 6,496 |
出所:ユーロモニターからジェトロ作成
日系企業の動きをみると目立つのが、いなば食品だ。ブラジルで独自のポジションを築きつつある。
特に同社製品「CIAOちゅ~る」は、猫の飼育頭数増加なども相まって、プレミア価格帯で販売するのに成功している。きっかけは、SNSでの拡散だった。今では、特別な日の贅沢(ぜいたく)として消費者が受容するに至っている。
同社は2022年から、ブラジル市場に製品をローンチ。2023年に現地法人を設立した。2025年には、当地のペット用品卸売業者協会(Andipet)(注)が選出するペット業界の最優秀企業に選出。「CIAOちゅ~る」が、おやつ部門で最優秀賞を受賞した。受賞の際、エリアニ・コレヤス氏(同社の当地オペレーション責任者)は、社の目的は「明確」と言明。「決してまねず、決してまねされない」ことと強調した。ブラジル国内でインフレが進む中でも、代替品のない同社製品の需要は大きい。
ブラジルは、グローバルサウス諸国のペット市場の中でも最先端で、モデルケースの1つといえるだろう。現地の有力なプレイヤーと戦略的なパートナーシップを築くことで、日系企業にも参入余地が十分にありそうだ。
- 執筆者紹介
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ジェトロ・サンパウロ事務所
中山 貴弘(なかやま たかひろ) - 2013年、ジェトロ入構。機械・環境産業部、ジェトロ三重、ジェトロ・サンティアゴ事務所、企画部海外地域戦略班(中南米)、内閣府などを経て、2023年7月からジェトロ・サンパウロ事務所勤務。
- 執筆者紹介
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ジェトロ・サンパウロ事務所
エルナニ・オダ - 2020年、ジェトロ入構。現在に至る。






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