今こそ挑戦!グローバルサウスタイ・マレーシアで切り開く包括型ペットケア(バディクラウド)

2026年1月15日

ペットの健康管理を「検査・診療・EC」で一気通貫に―そんな新たなサービスモデルをASEAN市場で展開しようとしているのが、2023年創業のスタートアップ、バディクラウド外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(本社:東京都中央区)だ。同社はペットの尿検査キットや世界中のペット関連商材をB2B2CおよびB2Cで国内外に販売するほか、海外向けには獣医師によるオンライン診療とペット製品の電子商取引(EC)機能を組み合わせたアプリを開発中。2026年3月の商品化を目指し、タイとマレーシアでの市場開拓を加速している。

2025年10月にタイ・バンコクで開催された東南アジア最大級のBtoB展示会「東南アジアペットフェア外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」に出展した同社の藤井峻代表取締役社長に、ASEAN市場への挑戦と今後の展望を聞いた(取材日:2025年10月30日)。


藤井社長(ジェトロ撮影)

包括型ペットヘルスケアサービスを国内外で同時展開

ペットの体調不良は、人間と比べると早期発見が難しく、症状が進行してから気づくことも少なくない。バディクラウドが提供する、自宅でできる尿検査キット「Buddy Medical Check」は、ペットの「未病」段階でのリスクを可視化する。検査結果はアプリ上で分かりやすく解説され、自宅で数値の変化を確認できる。さらに、動物病院での血液検査結果を写真から読み取り、ダッシュボードで一括管理できる機能も搭載。動物病院と連携し、獣医師が飼い主に推奨して購入してもらう販路を構築することで、獣医師にとっては信頼性を活かした販売促進や顧客関係の強化につながっている。検査データの蓄積は、診療精度の向上やサービス改善にもつながる。


尿検査キット(同社提供)

同社は創業から間もないが、国内外で同時並行的な事業展開をおこなうことで、スピード感を持って成長を続けている。日本国内では動物病院経由で尿検査キットを販売。海外では尿検査に加え、オンライン診療やEC機能を組み合わせたアプリを開発し、ペットの健康管理を包括的にサポートする体制を整えている。

急成長するタイ・マレーシアのペット市場

ASEAN市場に注力する理由について、藤井氏は「規制面での柔軟性と市場の成熟度が大きな要因」と説明する。日本ではペットのオンライン診療に関するガイドラインが厳しく、かかりつけ医による診察が必須であるなど、アプリを通じた診療の展開は困難だ。一方、ASEAN諸国では法規制上の障壁が低く、検査キットで異変を感じたらオンライン診療を受け、ECショップで療養食やサプリなどを購入するというシームレスなサービス提供が可能だ。

中でもマレー半島(マレーシア、タイ、シンガポール)はペット市場が成熟しており、商機が大きいと判断した。同社は既にタイとマレーシアで欧米製(米国、英国、カナダ、フランス、スロベニアなど)のペット用サプリメント、フード、医薬品などを小売店向けに卸売り販売している。さらに、日本企業のペット関連商材の海外展開支援にも取り組んでいる。同社で在庫を保有し、海外でのB2B取引や同社ECサイトを通じた販売など、幅広いチャネルで事業を展開できる体制を整えている。

タイ市場は「日本の20年前に似ている」と藤井氏は語る。中間所得層の増加や少子高齢化を背景に、ペット市場が急速に拡大している(2023年3月14日付地域・分析レポート参照)。マレーシアと比較すると民族の大多数がタイ族のため、消費の嗜好や単価の違いが少なく、ターゲット層の明確化が容易だという。また、タイは動物病院の市場規模も伸びており、2025年時点で獣医師は6,300人以上、動物病院は3,200院以上存在する(注1)。タイ最大の動物病院であるトンロー動物病院外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから独立した獣医師が個人病院を開業するなど、動物病院の分散化も進み、獣医師との連携余地が大きい。

一方、多民族国家のマレーシアでは、三大主要民族のうち中華系・インド系の消費単価が高く、まずはこの層をターゲットに導入を進める戦略だ。マレー系は今後の所得増が見込まれるため、将来的な展開を視野に入れる。首都のクアラルンプールの一部エリアから始め、ペナン州、ジョホール州、サバ州コタキナバル市などへの展開を目指す。また、タイではサービス業などを中心に外資規制が厳しく、規制業種では外資比率が50%以上での出資が規制されているため(注2)、マレーシアにASEAN本社としての支社設立を予定しており、登記申請を進めている。

なお、欧米では既にペット向け総合医療サービスを提供する競合他社が存在する点も、ASEANを最初の海外展開先として取り組む要因となったという。米国にはチューイ(Chewy)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますという時価総額2兆円規模の上場企業が存在する。さらに、シンガポールやインドネシアにもペット向けオンライン診療を提供するスタートアップが登場しており、競争が激化している。一方、ASEANではペット産業において単一サービスに特化する傾向があり、検査・診療・ECなどをクロスセルする発想は未発達だ。このギャップを突いた包括的サービス展開で差別化を狙う。

獣医師連携を皮切りに、サービスのインフラ化を目指す

タイやマレーシアでは、ペットの体調変化についてはペットショップで初期相談をし、改善が見られない場合に動物病院へ相談するのが一般的だった。同社はこのペットショップへ初期相談する層をターゲットに、自宅での尿検査とアプリを活用してもらうよう訴求したいと考える。そこで、動物病院での尿検査キット販売を起点に、アプリやECへの誘導を図る戦略を展開している。獣医師が推奨する商品は、飼い主からの信頼を得やすく、医療データの取得や継続的な健康管理にもつながるためだ。

また、「インフラとしてサービスを導入してもらうためには、消費者からのニーズを喚起しつつ、ロビー活動とキーパーソンの確保が不可欠」という。タイやマレーシアなどでは、トップダウン型のアプローチが効果的で、現地の省庁や獣医学会と連携し、制度的な後押しを得ることが重要だ。同社は獣医師学会に出てサービスを紹介したり、獣医師をオンライン診療にリクルートしたりしている。

EC機能については、東南アジアの代表的なECプラットフォームである、ショッピー(Shopee)やラザダ(Lazada)と比較して、ペット製品に特化して取り扱い商品の幅やラインナップで差別化しつつ、定期便で届ける仕組みを構築中だ。さらに、サービスをインフラとして定着させることを目指し、大手プレーヤーとの連携によるスケール戦略も模索している。例えば、現地の保険会社と連携し、検査キットとペット保険の商品を組み合わせた新サービスの開発について協議している。さらに、米国のチューイは現地の小売店を買収し、垂直統合型のビジネスモデルを構築するなど、ECとリアル店舗の両面から市場を押さえる動きが進んでいるため、このモデルを参考に将来的な大手小売業との連携可能性も視野に入れている。代表的な大手小売業としては、シンガポールのペットショップ大手チェーンのペットラバーズセンター外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが挙げられ、タイにも多数の店舗を展開している。


バンコクのペットラバーズセンター(ジェトロ撮影)

競争激化するASEANペット市場、ローカライズと信頼構築で差別化

経済連携が盛んで、隣国からの商品・サービス流入が容易なASEANでは、一国での成功が他国に波及する可能性がある一方で、文化・宗教・人種による価値観の違いへの対応が不可欠だ。藤井氏は「ペットヘルスケアへの投資意識や購買行動は国や宗教、人種によって異なる。インドネシアではイスラム文化、マレーシアは複数の民族が存在」と話す。こうした背景を踏まえ、同社はローカライズ戦略を重視。商品は共通でも、導入方法やマーケティングは国ごとに最適化する方針だ。SNSマーケティングでは、TikTokなどを活用し、人種や文化に応じた訴求方法を工夫している。 また、日本と比べてペット市場の歴史が浅く、ペットを失う経験をした人が少ない。とはいえ、ペット・ヒューマニゼーション(ペット家族化)のトレンドはタイでも広がっており、ペットオーナーはペットの健康維持や治療にも投資を始めている。ペットの高齢化や長寿化に伴い、ペットヘルスケア市場の成熟が期待されるという。

海外ビジネスの成功のヒントとして藤井氏が挙げるのは、「ウェットな人間関係の重視」だ。「東南アジアでは、ビジネスライクな関係よりも信頼関係を築くことが重要。現地に入り込み、文化を理解する姿勢が不可欠」と語る。藤井氏は日本とタイ・マレーシアを行き来する3拠点生活を続けている。また、同社は現地イベントやペットショップへの参加や関与を通じて、消費者のリアルなニーズを把握することを重視している。

2022年に初開催された「東南アジアペットフェア」では、欧米勢に加え、中国、韓国などのパビリオンが年々拡大しており、競合の勢いを強く感じるという。東南アジアのペット市場では、欧米からの高品質な商品と、現地や中国の低価格な類似品が混在しており、ブランドによる差別化が難しい状況だ。藤井氏は「ASEAN市場は競争が激しく、スピード感のある意思決定が求められる。特にペット業界はビジネスモデルや製品の模倣が容易で、顧客との信頼関係の構築が競争優位性の鍵となる。現地に深く入り込み、信頼を築くことが成功の鍵」と語る。バディクラウドの挑戦は、ペットヘルスケアの新たなスタンダードを日本からASEAN、そして世界へ広げる第一歩となりそうだ。

企業基本情報
会社名 株式会社Buddy Cloud
設立 2023年11月
本社所在地 東京都中央区日本橋茅場町1丁目8-1
従業員数 10人(業務委託含む) 
URL https://www.buddycloud.co.jp 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

取材日:2025年10月30日

参考情報:タイ、マレーシアの基礎情報(2024年)
項目 タイ マレーシア
面積(平方キロメートル) 514,000 330,855
人口(万人) 6,595 3,406
実質GDP成長率(%) 2.5 5.1
1人当たりGDP(米ドル) 7,492 12,541
消費者物価上昇率(%) 0.4 1.8
失業率(%) 1 3.3
主要産業 製造業、農業、観光業 製造業(電気機器)、農林業(天然ゴム、パーム油、木材)および鉱業(錫、原油、LNG)

出所:外務省
人口:タイ内務省、マレーシア統計局
実質GDP成長率、消費者物価上昇率:タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)、マレーシア統計局
1人当たりGDP、失業率:IMF


注1:
ユーロモニター「Number of vets」、「Veterinary Clinics for Pets」のデータ参照。
注2:
タイの外資に関する規制については、ジェトロの制度情報を参照。
執筆者紹介
ジェトロ調査部国際経済課
馬場 安里紗(ばば ありさ)
2016年、ジェトロ入構。ビジネス展開支援部ビジネス展開支援課/途上国ビジネス開発課、ビジネス展開・人材支援部新興国ビジネス開発課、海外調査部中東アフリカ課、ジェトロ・ラゴス事務所を経て、2024年10月から現職。