今こそ挑戦!グローバルサウスフルノインドネシア、航海機器市場で挑む規制対応と保守網
2026年4月10日
フルノインドネシア(PT FURUNO ELECTRIC INDONESIA)は、古野電気グループの東南アジア展開を担う拠点として、航海・通信機器の販売に加え、修理・点検・教育までを含むアフターサービスを事業の軸に据えている。販売後の支援を自社技師で担い、現場での復旧や運用支援までを含めて顧客を支える点が特徴だ。
群島国家インドネシアでは、航海・通信機器の不具合が運航の遅延や収益機会の損失に直結しやすい。インドネシアにおける輸入時の型式認証(POSTEL)や、無線機器や航海記録装置(VDR)の年次検査といった法規制の対応は不可欠であり、制度整備が追いつかない局面では、当局の解釈や要求が現場で揺れることもある。こうした市場で重要となるのは、規制要件を先回りして準備する力に加え、広い国土と寄港地を前提に、必要な地点へ技師を迅速に派遣できる体制を整えることだ。さらに、模倣品や並行輸入品が流通する環境下では、部品供給、検査対応、正規流通の実務を通じて「信頼」を具体的に示すことが、顧客から選ばれる条件となる。
本稿では同社副社長の高木省吾氏に、規制対応の実務的な要点やサービス体制、そしてインドネシア市場特有の商慣習への対応策について聞いた(取材日:2026年2月19日)。

内航船(タグボート)が主戦場、義務装備市場で存在感
- 質問:
- 貴社の概要と、グループ内での位置付けは。
- 答え:
- 当社は2016年に設立し、2017年1月から操業を開始した。従業員は2026年2月10日現在、19人だ。フルノシンガポールおよび古野電気(日本)の子会社として、インドネシアにおける販売活動とアフターセールスサービスの強化・改善を主目的に事業を運営している。信頼性と品質の高い航海・通信機器の提供を基軸に、漁業、産業、システムソリューションに関する製品・サービスも扱う。古野電気グループの海外売上比率が約70%で、国内5拠点、海外子会社32社、92カ国に代理店網を持つ体制だ(2025年2月28日現在)。
- 質問:
- インドネシアでは、どの市場・顧客が中心か。
- 答え:
- 売り上げの中心は内航船向け、特にタグボート向けの小型機器で、全体の約半分を占める。顧客は民間が9割以上だ。官庁案件(省庁や海上警察など)、国営企業向けは5~10%程度、民間のディーラーや業者を通して対応している。
- 質問:
- 製品は用途別にどのように提案しているか。
- 答え:
- 内航船(非IMO)向けは、レーダー、GPS、測深機、気象データ受信機(NAVTEX)など、義務装備品として求められる機器が中心だ。外航船(IMO)向けは、IMO要件に適合するレーダー、電子海図(ECDIS)、自動識別装置(AIS)、遭難安全システム(GMDSS)、航海データ記録装置(VDR)などを扱う。漁船向けはGPSと魚群探知機、小型のソナーなど、シンプルな構成が多く、価格感度が高い市場だ。パトロールボート向けには、マルチファンクションディスプレイなどを活用し、地図上で救難位置を即時に把握して現場へ向かう用途などで用いられている。加えて、豪雨・洪水への関心を背景に気象レーダーの提案も強化している。
POSTELと年次検査が参入障壁、技師育成と更新提案が要点
- 質問:
- 規制対応で重要なポイントは何か。
- 答え:
- 大きく2つある。1つ目はPOSTELで、電波を発する機器をインドネシアに輸入する際に求められる型式認証だ。モデルごとに試験や書類提出を行い、国内規制への適合を証明する。2つ目は年次検査で、搭載された無線機器、VDRが適切に保守されているかを、日本海事協会(ClassNK)をはじめとする各国の主要な船級協会や、BKI(インドネシアの船級協会)から認定された技師によって年1回確認するものだ。検査に通らないと出港に影響する恐れがあるため、資格を持つ技師の配置が不可欠となる。
- インドネシア国内においては、制度が整備途上で運用が先行し、当局の解釈や要求が現場で異なる場面もある。柔軟かつ粘り強い情報収集と関係者との調整を前提に、社内の対応体制を整えている。外航船においては、船舶の安全基準を管轄する船級協会の厳格な規則に基づく検査・確認が必須となるため、必要な手続き・記録を含めた運用を重視している。
- 質問:
- アフターサービスは、具体的にどこまで対応するか。
- 答え:
- 当社は、顧客の課題を聞き取り(Consult)、分析(Analyze & Assist)、解決(Resolve)、教育・トレーニング(Educate)、販売後も支えるというモットー、(頭文字をとって)「CARE+」を掲げ、単に機器を売り切るのではなく、アフターセールスを軸に事業を組み立てている。具体的な対応範囲は、設置・換装、修理・保守・ソフトウエア更新、海外拠点を通した国外におけるサービス手配、無線機器やVDRの年次検査の対応、乗組員向けの機器トレーニング(familiarization)、Type-Specific ECDIS Training(ECDISのメーカー・機種ごとの実機教育)、機器の保証対応、輸入時のPOSTEL証明書の取得と多岐にわたる。
- 質問:
- 人員配置とサービス体制の特徴は何か。
- 答え:
- 販売後のサポートを最重視しているため、人員もサービス部門を厚くしている。部門別の体制は、サービス部門 9人、営業・管理部門10人だ。これに現地副社長の高木氏を加え、計19人の体制としている(社長はシンガポールに置く)。フィールドエンジニアは今後も毎年1人程度の増員を計画し、人材の流動性も高いため、現場対応が途切れないよう一定の余力をもつことも意識している。
- 質問:
- 換装を進める上での課題と打ち手は何か。
- 答え:
- インドネシアの船主には事後保全、すなわち「壊れてから直す」志向が根強く、古い世代の機器が長く使われる例も少なくない。船自体も長期使用を前提にすることがあり、船齢を踏まえると高額な換装投資をためらうケースもある。そのため、予防保全、すなわち「壊れる前に替える」という考え方が浸透しにくい点が課題だ。そこで、サポート期限(保守対応可能期間)を見えるかたちで早期に周知し、提案することで、計画的な換装につなげる取り組みを強化している。
群島国家で広域保守、正規流通の価値を実務で可視化
- 質問:
- 群島国家で販売網とサービス網をどう構築しているか。
- 答え:
- 当初はジャカルタ中心であったが、現地訪問や展示会での接点を起点に、協力先を開拓して販売チャネルを広げてきた。重点地域の1つがカリマンタン島で、石炭産業を背景にタグボート需要が大きいエリアだ。ここではトレーニングや販促素材の提供を通じて販売を伸ばしている。もう1つがスラバヤで、造船業が盛んであり、ジャカルタに次ぐ重要な港の拠点であるため、フィールドエンジニア1人を常駐させて即応性を高め、主要船社への定期訪問も行っている。
- 質問:
- 現地向けに製品や運用で変えている点は何か。
- 答え:
- 地域や気候に合わせてハード仕様を変えることは基本的にしていない。一方で、現地ユーザー向けには、機器のメニュー表示をインドネシア語に対応させるなど、言語面のローカライズを進めている。また、カタログ類も英語からインドネシア語に翻訳して提供している。外航船ユーザーは英語対応が可能な場合が多いため、セグメントによって運用を分けている。
- 質問:
- 競合製品、模倣品、並行輸入への対応はどうしているか。
- 答え:
- 価格面では中国製が2~3割程度安いケースがある。旧世代機のデザインを模した模倣品が流通することもあり、外観が似ているために選ばれてしまう場合がある。こうした環境では、購入価格だけでなく、故障時のダウンタイム(稼働停止)による損失リスクも含めて説明している。併せて、POSTEL適合などの規制面や、部品供給、現場修理まで一体で提供できる点を訴求している。結果として、運航停止が致命的になり得る商用船では、信頼性と保守の確実性が選定理由になりやすい。
- 質問:
- インドネシア市場の魅力と、事業運営上の留意点は何か。
- 答え:
- 日本製品や日系企業のサービスに対する評価は、耐久性だけでなく、部品供給、規制適合、年次検査対応、現場での即応まで含めた総合力として受け止められている。こうした要素を一体として提示できることが、商談の入り口としての強みになっている。群島国家で人口も多く、長期的には市場機会が広がる期待がある。
- 一方で、規制が先行して現場運用が追いつかない場面があること、模倣品・価格競争、広域でのサービス体制構築、人材確保などは継続的な課題だ。また、入札案件などで現地調達比率(ローカルコンテンツ)要件(一部の政府案件では、特定割合以上のインドネシア国内生産・国内調達が求められる)が課される場合があり、要件強化の動きが強まれば、供給体制の見直し判断を迫られる可能性もあるため、政策動向は注意して見ている。
- 質問:
- 今後の注力分野と成長の見通しはどうか。
- 答え:
- 短期的には、石炭関連の内航船需要が追い風になっており、2026年から2027年にかけては比較的強い見通しだ。一方、2027~2028年以降は市況次第で不透明な面もあるため、内航船主・外航船主の双方に対し、定期メンテナンスや換装提案を通じた深掘りを進めたい。併せて、気象レーダーや沿岸監視(レーダーとAIS、ソフトウエアを組み合わせたソリューション)など、海運以外の分野でも案件化を進め、官公庁や港湾向けのシステム領域での展開も狙っている。
インドネシア市場への期待
現在では海外売り上げが7割に達する古野電気は、自らを「グローバル・ニッチ」企業と位置付けているという。高品質の航海機器・通信機器の販売だけでなく、自社人員の半数をアフターセールスサービスに充て、手厚いサポートをポリシーに顧客の信頼を獲得してきた。インドネシアは規制の複雑さが指摘されるが、各種規制への対応を含めた丁寧な対応を心掛けている。例えばPOSTEL認証への対応は、以前は代理店任せだったが、現在は自社で対応しているとのこと。
「欧米ではメイド・イン・ジャパンが通用しなくなってきている中で、インドネシアでは日本製品、日系企業のサービスに対する信頼は今も厚い」と高木氏。現状、やや経済の伸び悩みが指摘されるものの、ASEANの中で人口増加が続くインドネシアには、今後も日系企業にビジネスチャンスがあると期待感を示した。
| 会社名 | フルノ・エレクトリック・インドネシア |
|---|---|
| 設立 | 2016年 |
| 所在地 |
Ravindo Tower, 14th floor, JL Kebon Sirih Kav. 75, Jakarta Pusat 10340, Indonesia |
| 従業員数 | 19人 |
| URL |
https://www.furuno.id/ |
- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部国際経済課長
安田 啓(やすだ あきら) - 2002年、ジェトロ入構。海外調査部国際経済課、公益財団法人世界平和研究所(現・中曽根康弘世界平和研究所)研究員、ジェトロ・ブリュッセル事務所次長、調査部欧州課長などを経て、2025年から現職。
- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部アジア大洋州課
八木沼 洋文(やぎぬま ひろふみ) - 2014年、ジェトロ入構。海外事務所運営課、ジェトロ北九州、企画部企画課、ジェトロ・ジャカルタ事務所を経て、2025年11月から現職。





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