今こそ挑戦!グローバルサウス好調の釣り具輸出、ハヤブサの戦略は「リアルな感動」の共有

2026年1月22日

日本の釣り用品の輸出は、2010年代前半の約200億円から2024年には約500億円に増加した。中国などの構成比が高いが、今後の所得増、人口拡大が見込まれるグローバルサウス諸国の市場にも注目したい。釣り用品の輸出では、単なる製品供給ではなく、現地事情やトレンドに応じた戦略が不可欠だ。釣り用仕掛けなどで国内トップシェアを誇るハヤブサは、欧州でのブランド確立を起点に、アフリカや中南米などでの情報収集と流行に応じた商品投入を徹底する。さらに、代理店との緊密な協業や実際に釣れる「リアルな感動」を現場で伝えるプロモーションを強化し、ブランド浸透を図る。同社の歯朶(しだ)由美代表取締役社長、芝直幸海外販売管理室長にグローバルサウス開拓の要点を聞くと、データと現場感覚を融合した柔軟な対応にヒントがありそうだ。(取材日:2025年12月22日)


(右から)ハヤブサの歯朶社長、芝室長(ジェトロ撮影)

拡大する釣り用品の輸出、ASEANを中心にグローバルサウス市場も成長

近年、日本の釣り用品の輸出が急増している。2010年代前半では約200億円の規模だったが、2022年~2024年では500億円に迫る規模まで拡大した(図参照)。2025年1~10月では前年同期比7.4%増の425億4,754万円と堅調に伸びており、海外市場における日本の釣り用品への需要が引き続き高い状況だ。

図:日本からの釣り用品の輸出額推移(2010年~2025年10月)
2010年代前半では約200億円の規模だったが、新型コロナ禍を経て、2022年~2024年では500億円に迫る規模まで拡大した。2025年1~10月では前年同期比7.4%増の425億4,754万円と堅調に伸びている。釣り用リールが224億4800万円、釣り竿が79億6200万円、釣り針が70億600万円、その他(釣り糸・ネット等)が51億3100万円。

注:釣り用品はHS9507。釣り用リールはHS9507.30、釣り竿はHS9507.10、釣り針はHS9507.20、その他(釣り糸、ネット等)はHS9507.90。
出所:Global Trade Atlasからジェトロ作成

日本の釣り用品の輸出先(2022年~2024年の平均)をみると、中国が152億6,800万円と、構成比で32%を占めて最大の市場となっている。5年前と比べて、中国向けが約4倍に大きく拡大している。また、米国やEUも各12~13%を占めているが、本稿ではグローバルサウス市場(注1)に着目したい。まだ市場規模は小さいながら、今後の拡大が期待される地域だからだ。地域別にみると、日本からASEANへの釣り用品の輸出は、5年前に比べて35.5%増加し、構成比では13.9%を占め米国やEUを上回っている(表参照)。アフリカ、中東、中南米、南アジアは、現状は構成比1%未満の小さな市場だが、伸び率では2桁増と拡大している。将来的な所得増に加え、人口も増えるグローバルサウスでの市場獲得が、これからの釣り用品輸出のカギを握るとも言えそうだ。

表:日本の釣り用品の輸出(仕向け地別、3カ年平均の比較)(単位:100万円、%)注:仕向け地によっては、年によって金額の変動が大きいため、3ヵ年の平均額で比較した。
国・地域名 2017~19年 2022~24年
金額(平均) 金額(平均) 伸び率 構成比
中国 3,836 15,268 298.0 32.0
ASEAN10 4,891 6,628 35.5 13.9
米国 3,696 6,037 63.4 12.7
EU28 3,989 5,903 48.0 12.4
韓国 3,727 3,951 6.0 8.3
台湾 1,453 2,802 92.7 5.9
香港 2,312 2,445 5.7 5.1
アフリカ 325 441 35.7 0.9
中東 248 302 22.1 0.6
中南米 188 292 55.3 0.6
南アジア 123 138 12.9 0.3
その他 2,455 3,518 43.3 7.4
世界全体 27,243 47,725 75.2 100.0

注:仕向け地によっては、年によって金額の変動が大きいため、3ヵ年の平均額で比較した。

そうした観点から、グローバルサウスへの釣り用品の輸出に取り組む、ハヤブサの歯朶社長、芝室長に、市場の動向や市場開拓のヒントについて聞いた。同社は、高性能な釣り針や釣り仕掛けを主力製品とする釣り用品メーカーで、近年ではフィッシング・アパレルやペット用品なども展開している。サビキ仕掛け(注2)では国内でのトップシェアを誇る。


人気の「リアルシラス」など、国内でトップシェアを誇るサビキ仕掛け(ジェトロ撮影)

グローバルサウス諸国の市場開拓、特性の把握とトレンド情報の収集がカギ

質問:
歯朶社長は2009年に就任以来、海外販売に力を入れている。これまでの海外市場開拓の経緯は。
答え:
釣りをはじめとするアウトドアスポーツの楽しさ、ペットと暮らす幸福といった価値観は世界共通だ。当社理念として、自社技術を活かした高品質・高機能製品を世界中の人々に使って頂き、より楽しく心を豊かにして頂けることを目指している。海外売上は5年前に比べて1.6倍に拡大した。日本製の釣り針は、その鋭さとかかりの良さから、特に小型の釣り針が評価されている。その大部分は、兵庫県の当社周辺地域で生産されている。
海外市場では当初、パッケージなしで針のみ(空針)での販売が多かった。空針をバルク梱包(こんぽう)し、輸出する取引が中心だった。この取引では「ハヤブサ」というブランドが認知されず、広がりがないことに気づいた。まず、欧州を中心に色々な国に赴き、パッケージ商品の販売を強化し、ブランドを確立することに取り組んだ。次第に欧州で販売が増え、それを見た周辺国やグローバルサウス諸国のバイヤーにも「ハヤブサ」の認知が広まっていった。中南米や東南アジアのバイヤーから「ハヤブサの針が欲しい」という引き合いが来るようになった。
質問:
グローバルサウス市場をどうみているか。
答え:
グローバルサウスには、漁業を含めて第1次産業に強い国・地域が多数ある。今後の市場ポテンシャルは高い。グローバルサウス諸国には、当社は従前から製造拠点を有しており、生産拠点としての役割が大きかった(注3)。現在、当社製品の約8割はベトナム工場で製造している。また、ベトナムの前にインドでの生産に取り組んだこともあった。他方、販売市場としてとらえ始めたのは最近のことだ。全世界の方々に釣りを楽しんで頂き、感動を与えるという目標を掲げるなか、グローバルサウス市場もしっかり攻めていくつもりだ。
質問:
グローバルサウス市場の中で、特に販路拡大に力を入れている国・商品は。
答え:
直近では、アジア圏、特にインドに注目している。バングラデシュ、スリランカも含めて南アジアは気になる市場だ。人口が増加し、富裕層も拡大している。しっかり取り組めば伸びていく市場とみる。
ただ、グローバルサウスと言っても、国・地域によって市場特性はまるで異なる。高性能なルアー(注4)が売れる国もあれば、サビキ仕掛けが売れる国もある。そのため、情報収集が最も大事だ。欧州やオセアニア市場は直接取引をしているが、アジア圏は日本国内の海外専門商社経由での取引が多いため、商社からの情報がカギとなる。各市場でどういう釣りが流行しているのか。趣味の釣りなのか、漁師のようなプロのユーザーなのか。また、どの魚種がどの時期に釣れるのか、といった情報だ。
インドでは、引き合いがくるなか、同国での釣りのトレンド情報を日々キャッチしている。同国も広大であるため、地方によって特性が異なる。南部ではイカやハタ類が釣れるが、川や池などの内水面でのライギョやナマズ狙いの釣りが盛んな地域もある。ただ、台湾や中国と異なり、インドでは日本ブランドがあまり通用しない。独自の感性があるように感じる。
質問:
各グローバルサウス市場の動向や特性について。
答え:
  • アフリカ:北部は、地中海を挟み先進国やトルコに面しており、釣り文化が成熟している。地中海沿岸では付加価値をつけたサビキ仕掛けやルアーが売れており、リビアやアルジェリアも同様だ。他方、南アフリカ共和国など南部では、内水面での釣りが中心だ。ルアー用のセットフック(針)、トレブルフック(イカリ状の針)が売れる。アフリカ中部では取引自体が少ないものの、欧州系のフライ(毛バリ)メーカーの生産拠点となっている。
  • 中東:湾岸協力理事会(GCC)諸国では、北アフリカと同様にサビキ仕掛けやルアーが売れている。以前から販売促進に力を入れている地域であり、長い時間をかけて、徐々にブランドが広まっている。
  • 中南米:太平洋側では、チリなどで販売が好調だ。主力製品のメタルジグ(注5)シリーズ「ジャックアイ」を使ったルアー釣りが広まっている。ヒラメなどを狙った釣りでは、岸から投げる小さめのルアーといった商品が好まれている。ジャックアイは、陸からの釣りが盛んな地域で売れる傾向にある。一方、大西洋側をみると、ブラジルは海岸線が長いものの、岸から釣りができる場所は意外に多くない。海岸が整備されていなかったり、水深が急に深くなっている。岸からの釣りは敬遠される傾向にあるようだ。そのため、アマゾン川でのボートに乗った釣りなど、内水面での釣りが盛んで、プラグ(注6)が売れる市場だ。よって、当社が得意とする海用の仕掛けやルアーは売れにくい。アルゼンチンも同様だ。
  • 東南アジア:当社製品が比較的強くない地域だ。ベトナムには工場があるが、輸出向け工場のステータスとなっているため、制度上、一旦日本に輸出してから仕入れなおす必要があり、関税を含めると高額になる。数量があまり出にくく、単価が高いものは売れないため、もう10年程度はかかる市場とみる。ミャンマーも同様で、内水面ではライギョなども釣れるようだが、市場で売れている値段と当社の希望価格帯が合っておらず、向こう15年くらいは厳しいと予想する。

人気ルアー「ジャックアイ」(ジェトロ撮影)

釣れることを「リアルな感動」をもって伝える

質問:
各市場でパートナーの存在が重要になるが、どのように選んでいるのか。
答え:
情報発信力や取引の信用度が高く、当社と競合する商品の取扱いが少ない企業から、(1)ディストリビューターとしての販路、EC、実店舗ともに多くの販売網を持っている企業、(2)地域に根差した地元密着型の企業、という優先順位で選んでいくことが多い。新型コロナ禍以降、多くの国でECでの販売が増加したものの、当社製品の販売促進のためには、実店舗を併せ持っている方が望ましいと考えている。
パートナー探しには、国内外で開催されるフィッシングショーを活用してきた。欧州のフィッシングショーに長年出展し、そこで出会った企業が代理店となった例がある。近年では、日本で開催されるものにも、多くの海外バイヤーが訪れるようになっている。特に、多くの釣り具問屋(卸売)があり、トレンドの発信地となっている大阪で開催されるショーへの来訪が多い。当社も「フィッシングショー大阪」で各国のバイヤーと知り合った。
質問:
代理店との協業体制について。
答え:
多くの国で一国一代理店制(代理店に独占販売権を与えるかたち)を採っている。ただし、メリット、デメリットが併存し、慎重に判断している。メリットは、代理店が販促活動に注力する動機づけになるということ(代理店にとっては、販促活動の成果が自社売上の増加に直結する)。一方、デメリットとしては、商流管理に気を配る必要が出てくるということがある。日本国内や独占代理店のない隣国から入ってきた並行輸入品によって、代理店の売上が阻害されるケースもしばしば発生しており、時に取引停止になってしまうことがある。
当社としては、できれば独占販売権を与えず販売網を広げていきたいと考えており、このようなかたちを採っている国もある。しかし、候補企業が独占販売権を要求してくることも多いのが実態だ。契約条件に年間最低販売額を盛り込み、独占販売権を商品全般ではなく商品ジャンルごとに分割して与えるなどして、個別に対応している。
質問:
課題は。
答え:
ブランドの保護、認知度向上。例えば、他社に先駆けて販売を開始した商品でも、1年後には安価な類似品が現れる。商標保護にも取り組んでいるものの、対象魚種ごとにブランドがあるため数が多く、費用もかさんでしまうのが悩み。
また、ブランドの認知度を高めることは、市場獲得のために極めて重要な課題だと考えている。当社ではかつて、ブラックバス用製品に「FINA」のブランドを冠して販売していた。1994年の立ち上げ以降、日本国内では十年以上かけて多くのユーザーを獲得してきた。しかし、海外市場への展開を本格的に検討した際、国際水泳連盟(注7)と同じ略称になってしまうことが判明。このブランド名では訴求力に欠けると判断し、それまでの成功を捨てて2018年に「Hayabusa Bass」として再始動した過去もある。
質問:
ブランド力の浸透、市場獲得のためのポイントは。
答え:
代理店への提案営業、消費者へのプロモーションで分けて考えているが、共通するのは「当社の製品を使って釣れた、そのリアルな感動をいかに伝えるか」という点だ。
代理店への提案営業については、できるだけ一緒に釣行し、実際に釣ってもらうことを心がけている。例えば、それまでサビキ仕掛けの販売実績がない代理店でも、当社のサビキ仕掛けが強烈に釣れることを体験すれば、その後、自信を持って販売できる。反対に、代理店からのフィードバックを基に、水の色や潮流の速さなど現地の釣り場環境に合わせたオリジナル商品を開発することもできる。
消費者へのプロモーションは、基本的には代理店主導で展開している。現地の消費者に「刺さる」ためには、やはり現地の言葉で、現地のやり方でプロモーションを行う方が効果的と考えているためだ。
伝え方は異なれど、釣り人がたくさん魚を釣りたいのは万国共通。また、どの国であっても同じ魚種であれば習性はさほど変わらないため、日本の魚を相手に培ってきた技術を応用できる。これからもリアルな感動を世界中に広め、ブランドを浸透させていくつもりだ。

国内の釣り針産業の集積地に立地するハヤブサ本社(ジェトロ撮影)
企業基本情報
会社名 株式会社ハヤブサ
設立 1970年4月
本社所在地 〒673-1116 兵庫県三木市吉川町大畑341-23番地
資本金 5,000万円
従業員数 約160人
URL https://www.hayabusa.co.jp/
https://hayabusaglobal.com/(グローバルサイト)

注1:
本稿では、ASEAN、南アジア、中東、アフリカ、中南米をグローバルサウスとしている。 本文に戻る
注2:
サビキ釣りに使う仕掛け。サビキ釣りは、釣り針にスキンなどを付けて加工された擬餌(ぎじ)針となっており、これを生き餌のように見せるため上下に動かして使う。 本文に戻る
注3:
ハヤブサは、中国、ベトナム、ミャンマーに生産拠点を有している。 本文に戻る
注4:
小魚や甲殻類に似せて作られた擬餌のことで、動かして使う。 本文に戻る
注5:
鉛などの金属で作られた魚のような形をしたルアー。 本文に戻る
注6:
ルアーの一種で、木やプラスチックなどの素材でできており、小魚の形をしているルアーの総称。 本文に戻る
注7:
Fédération Internationale de Natation。現在の世界水泳連盟(World Aquatics)。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部国際経済課 課長代理
北見 創(きたみ そう)
2009年、ジェトロ入構。海外調査部アジア大洋州課、大阪本部、カラチ事務所、アジア大洋州課リサーチ・マネージャーを経て、2020年11月からジェトロ・バンコク事務所で広域調査員(アジア)として勤務。2024年10月から現職。
執筆者紹介
ジェトロ海外ビジネスサポートセンターグローバルサウス課 課長代理
母良田 政秀(ほろた まさひで)
2009年、ジェトロ入構。農林水産・食品調査課、サンティアゴ事務所、ジェトロ・アジア経済研究所、ジェトロ名古屋などを経て、2024年8月から現職。