今こそ挑戦!グローバルサウスラオスで水処理装置展開、現地パートナー通じコスト削減(トーケミ)

2026年1月29日

トーケミは1965年創業の水処理資機材メーカーで、海外ではベトナムを中心にアジアに展開している。ラオスでは浄水場での実証を通じて、現地の水処理事業を展開している。同社のグローバルサウスでの取り組みの現状と課題について、同社執行役員兼グローバルビジネス事業部長の馬場裕史氏と同部のアイメン・ハッレブ氏に聞いた(取材日:2025年12月11日)。


右から馬場氏、ハッレブ氏(ジェトロ撮影)

競合少ないラオスに注目、現地パートナーと連携しコスト削減図る

質問:
海外事業の概要は。
答え:
(馬場氏)水処理資器材のメーカーとして、水処理用のろ材や薬品注入ポンプなどのケミカル製品の供給に加え、水処理装置の設計・施工に取り組んでいる。海外については無煙炭由来のろ材を輸出していたのが始まり。ろ材市場の競争激化に伴い、1992年に原料の無煙炭が採れるベトナムに進出。翌1993年からろ材の生産工場を稼働、全世界向けに供給している。東南アジアの浄水場向けを中心に輸出している。
ケミカル製品は日本で製造し、顧客ニーズに応じて製品を輸出、納品するかたちが中心。一部ポンプについては中国で製造し、ベトナムで組み立てている。以前は中国で組み立てていたが、ベトナム国内での需要拡大に伴う事業強化を背景に、2023年よりベトナムでの組み立てに切り替えた。水処理装置については日系企業の海外拠点を中心に装置の部材となる自社製品を供給するかたちで取り組んでいる。
質問:
ラオスへの取り組みを決めた背景・現状の取り組みは。
答え:
(馬場氏)単なる部材供給にとどまらず自社として水処理装置全体を手がけたいと考えていた。そこで日本企業の進出が進んでいなかったラオスに関心を持ち、2011年に現地パートナーとともに首都ビエンチャンに協力会社ラポン(Lapon Company)を設立した。
ラオスの地方部では多くの村が点在していることから水道整備が遅れており、各地で地下水や未処理の河川水をくみ揚げて生活用水を得ている。他方、メコン川流域に位置する地域ではスコールが降ると水の濁度が増してしまう。従来はその濁質を凝固させる薬剤を利用していたが、断水しなければならないという課題があった。当社の繊維を利用した、濁質の除去能力の優れたろ材を用いた装置であれば、ごみによるつまりを防ぐことができると考え、JICAの案件化調査、普及・実証などに取り組んだ。実証ではラオス中部ボリカムサイ県に1日1,000トンの浄水が可能な浄水場を設置した。

ラオスに設置された浄水装置(同社提供)
結果的には繊維ろ材ではコストが合わず横展開までは至らなかったものの、経験を活かし、現在では砂を用いたより簡素で安価な処理装置に切り替え、展開を図っている。
課題となるコストに関しては、コア製品以外のタンクやポンプを現地で調達する体制とすることで削減すべく取り組んでいる。2022年にはJICAの水道事業運営管理能力向上プロジェクト(MaWaSU2)にも参画。現地の水道局の人材育成に取り組むとともに現地法制度の整備を働きかけている。
こうした実績もあり、北部ルアンパバーンの浄水場の拡大プロジェクトでの薬品注入設備や電気工事の業務も日系企業経由で受注できた。

人柄重視でパートナー選定、関係性に応じた手法でリスクを管理

質問:
ラオスでビジネスを行う上でのポイント、留意点は。
答え:
(馬場氏)現地の水道公社との関係構築がポイント。現地パートナーとのつながりを活かし、各浄水場にアプローチした。実証を行ったボリカムサイ県の水道公社も、事業のよきパートナーになってもらっている。
ラオス人は人付き合いを大事にする国民性と感じており、現地を訪問する機会があれば、業務後の懇親の場にも参加している。その裏返しとして、人事交代が課題。新任者とも良好な関係を築けるかがポイントになる。
ラオス全体の課題は水道普及率の向上であり、その課題解決に向けて水道公社と連携しながら小規模な浄水場を官民パートナーシップ(PPP)の形で展開していく。長期的には水道料金で回収していくビジネスモデル(建設・運営・移転、BOT)になる。投資回収には時間を要するが政治的には安定しているので、その観点ではリスクは小さいと考えている。
質問:
ラオスにおける競合は。
答え:
(馬場氏)中国、韓国、ベトナム、タイの企業が競合となる。特に中国、韓国との競合が熾烈。現地側も処理設備の設置にかかるコストが低いものを重視する傾向にあり、競り負けてしまうこともある。当社としては現地協力会社を通じたメンテナンスの提供を差別化の要素として打ち出していく方針。
質問:
ラオスも含め、グローバルサウス市場を開拓する際のコツは。
答え:
(馬場氏)信頼できるパートナーを探すことと、優秀な人材を確保すること。
ラオスのほか、ベトナム、マレーシア、インド、インドネシアでは運よく信頼できるパートナー・代理店と関係を構築できた。人柄を重視しており直感に基づいて決めることもある。ラオスのパートナーは日本企業で実務経験のある現地人材で日本語にも精通している。
パートナーは販路開拓の観点でも非常に重要。例えばベトナムに関しては現地の鉱山とコネクションのある人物と連携していた。その企業で副社長を務めていた人材が、退職後に当社現法の代表となっている。
人材確保という観点では、同席しているハッレブはABEイニシアティブ(注)出身者で、在学中に当社で半年間のインターンを体験した。
質問:
多くのパートナーと連携しているが、リスクにはどのように対応しているのか
答え:
(馬場氏)新規の顧客については前払いにしてもらっている。また懇意にしている代理店は後払いを認めるなど、関係性に合わせて対応を分けている。大きな案件については顧客と直接やり取りし、実際に案件が進んだ段階で代理店に対し手数料を支払うという契約にしたこともある。納品を分割し、1回目の支払いが確認できた段階で次の製品を発送するなどの対応もある。幸運なことに大きなトラブルには巻き込まれていない。

北アフリカにも注目、現地製造視野にコスト削減図る

質問:
今後の取り組み、注目国は。
答え:
(馬場氏)ラオスに関してはさらなるコスト削減が必要と考えており、小規模なコンテナ型の浄水装置の展開を図っている。先ほども触れたとおり、多くの村が点在していることから、大規模な処理場よりも小規模で分散型の処理設備のニーズが高いと感じている。ベトナムの協力企業の技術も用いてコスト削減を目指している。
次の市場としてはアフリカに注目。ラオスと同じくコンテナ型の浄水装置の展開を検討している。コアとなる部品は日本から輸出するが、コンテナ、タンク、パイプなど汎用(はんよう)品については現地で製造する方針で、パートナーを探しているところ。2025年8月に行われた第9回アフリカ開発会議(TICAD9)でのテーマ別イベント「TICAD Business EXPO & Conference(TBEC)」にも出展した。ハッレブ氏がチュニジア出身であることから北アフリカ地域を念頭に事業を検討する。

TICAD9で展示されたコンテナ型浄水装置(同社提供)
答え:
(ハッレブ氏)アフリカについてはチュニジアで処理水の再利用に関心のあるパートナー探しをしている。また、現地の学生を当社にインターンとして受け入れ、技術を知ってもらうとともに現地の水事情に関する情報交換を行っている。潜在的なパートナーになりうる人材でもあり、非常に重要。
アジアではネパール、バングラデシュにも注目。ネパールでは水に含まれるマンガンや鉄の除去が課題になっており、当社として2024年にネパール人留学生と連携し現地での水質改善に関する実証を実施した。バングラデシュについてもJICAの調査に参加し、水処理における市場機会や排水処理に関する市場調査を行った。これらの活動を通じ、現地の大学や関連機関との関係を構築することで、現地のパートナー候補を特定するようにしている。
企業基本情報
会社名 株式会社トーケミ
設立 1965年8月
本社所在地 〒532-0021 大阪府大阪市淀川区田川北1丁目12番11号
従業員数 200人(2025年4月現在)
URL https://www.tohkemy.co.jp/ 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

取材日:2025年12月11日

参考情報:ラオスの基礎情報
項目 2024年
面積(平方キロメートル) 236,800
人口(万人) 765
実質GDP成長率(%) 4%
1人当たりGDP(米ドル) 2,066
消費者物価上昇率(%) 23.1
失業率(%) 1.2
主要産業 サービス業、農業、鉱工業・エネルギー

出所:面積:ラオス統計局
人口:ラオス統計センター
実質GDP成長率:アジア開発銀行
1人当たりGDP:IMF
消費者物価上昇率:ラオス計画投資省
失業率:世界銀行
主要産業:ラオス計画投資省


注:
アフリカの産業人材育成と、日本とアフリカのビジネスをつなぐ人材の育成を目的として若者を日本に招き、日本の大学での修士号取得と日本企業などでのインターンシップの機会を提供するJICAのプログラム。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部国際経済課
山田 恭之(やまだ よしゆき)
2018年、ジェトロ入構。海外調査部海外調査企画課、欧州ロシアCIS課、ロンドン事務所を経て2025年8月から現職。