今こそ挑戦!グローバルサウス犬猫のオーラルケア文化をASEANへ(マインドアップ)

2026年1月7日

1991年創業のオーラルケア用品メーカー・マインドアップ(本社:山梨県甲府市)は、人間向けで培った歯科ケア技術を基盤に、犬猫のオーラルケア市場にいちはやく参入してきた。国内生産を徹底し、品質を守りながら、アジアを中心に海外販路の開拓を進めている。

2025年10月にタイ・バンコクで開催された東南アジア最大級のBtoB展示会「東南アジアペットフェア」に出展した同社の山村敏代表取締役会長に、ASEAN市場での取り組みについて聞いた(取材日:2025年10月29日)。


左から山村会長、陳マネージャー(ジェトロ撮影)

国内で磨いた技術をペット市場へ、専門性と誠実さで差別化

マインドアップが犬猫向けのオーラルケアに本格参入したのは、犬用「犬口ケア」シリーズを発売した2006年、猫用「猫口ケア」を投入した2008年にさかのぼる。いずれも、人間の歯科ケア用品づくりで培った知見を応用して開発したもので、ブラシの硬さや毛量、ヘッドの角度など、細部までこだわり抜いた設計が特徴だ。製造は日本国内の委託先工場で行い、高い品質基準を保っている。

中でも柔らかいブラシは、他社が採算性の面で敬遠しやすい製品だが、同社はあえてラインアップを充実させてきた。「犬猫の歯は人間以上に繊細で、当て方や力加減で嫌がることも多い。だからこそ、用途に応じた選択肢を揃える必要がある」と山村氏は話す。猫専用の歯ブラシや歯石除去用のスケーラー(注1)など専門性の高い製品も扱っているが、市場規模が小さく、販売は容易ではない。それでも、猫や特定の歯の汚れをピンポイントで取りたいという飼い主の声が確実に存在し、同社はそのニーズに誠実に応え続けていることで、競合他社である韓国・中国企業などへの優位性を保っている。


同社の犬猫用歯ブラシ(ジェトロ撮影)

犬猫のオーラルケア文化の普及は、日本国内でも途上だ。飼い主のうち歯磨きを習慣化しているのは2割程度とされ、世界ではさらに低い国も多い。しかし、所得が上がり生活の質を求める層の増加とともに、犬猫の健康維持に対する関心は年々高まっている。「家、車、ペット」の順に消費意識が広がるアジアでは、犬猫を家族の一員とみなす考え方が浸透しつつあり、新型コロナ禍以前からこのトレンドが顕著になっていたという。タイでは少子化が進んでおり、カップルが子どもの代わりに犬の世話をする例も多い。こうした社会変化が、同社の事業機会を確実に押し広げている。

アジアを起点に広がった海外展開、多様な市場と向き合う

同社が海外へ本格展開をはじめたのは2013年だ。香港のペット展示会に出展したことで、東南アジア・中国・中東などから問い合わせが増え、海外販路拡大が一気に進んだ。

タイ市場には2015年頃から取り組んでおり、現在は代理店を設置しているものの、販売量の拡大にはもう一段のコミットメントが必要だと考え、総代理店契約の模索を始めた。販売規模は年間200万円程度だが、潜在的ニーズは大きい。「タイは消費を楽しむ文化があり、展示会で積極的に声をかけて対話をするとまとめ買いにつながる。市場はもっと伸びるはず」と山村氏は期待を寄せる。

シンガポールや台湾の代理店は、いずれもドイツのインターズー外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますという大規模展示会で出会った企業だ。ASEAN 諸国のバイヤーは欧州の展示会に積極的に参加する傾向があり、こうした国際展示会がビジネスマッチングの場になっているという。台湾では注文が伸び悩んでいた元々の代理店から変更し、2024年に新たな企業と総代理店契約を締結。信頼関係を築いたうえでの長期的な販売戦略を描いている。

表:同社がこれまで出展したペット関連の代表的な展示会と2026年の開催時期
イベント名 国・地域(都市) 今後の開催時期
Global Pet Expo 米国(オーランド) 2026年3月25~27日
Inter Pet Fest ベトナム(ハノイ) 2026年4月17~19日
Interzoo ドイツ(ニュルンベルク) 2026年5月12~15日
Petfair Vietnam ベトナム(ホーチミン) 2026年6月10~12日
Singapore Pet Festival シンガポール  2026年7月31~8月2日
SuperZoo 米国(ラスベガス) 2026年8月12~14日
PET FAIR ASIA 中国(上海) 2026年8月19~23日
Inter Pet Fest ベトナム(ホーチミン) 2026年8月28~30日
Indonesia International Pet Expo インドネシア(ジャカルタ) 2026年9月4~6日
PET ZOO EURASIA トルコ(イスタンブール) 2026年10月7~10日
PET FAIR South East Asia タイ(バンコク) 2026年10月28~30日

注:2025年12月16日時点情報。
出所:マインドアップのウェブサイトおよび各展示会公式サイトからジェトロ作成

同社はイスラム圏での展開も力をいれている。インドネシアでは宗教的背景(注2)から犬向け製品の市場規模が小さいのではないかとの懸念があったが、展示会への出展を通じて犬用歯ブラシについても一定の需要を確認できた。非ムスリム人口が4,000万人程度いることも追い風だ。マレーシアでは犬や猫を自宅から動物病院やペットサロンまで送迎するペット専用配車サービス(注3)が誕生するなど、ペット関連サービスの急成長を見込み、代理店との販売拡大を進めている。トルコでは2025年10月に開催したペットズーユーラシア外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに出展したが展示物の通関ができず、展示会で製品を十分に見せられなかった反省も残るが、獣医からの問い合わせがあるなど潜在需要の手ごたえは得ている。

さらに、ベトナム、フィリピン、カンボジア、インド、カザフスタンなど、新たな可能性を持つ国々との接点も広がっている。特にインドは富裕層が増え、ペット産業が急伸している。ベンガルールは学園都市で若年層や高度人材の集積が厚く、新しい文化を受け入れやすいと考え、現地展示会への出展も視野に入れている。

海外で評価されるポイントは、やはりメイド・イン・ジャパンへの厚い信頼であり、その信頼を守る姿勢だという。特にASEANのバイヤーは親日家である場合も多く、品質を維持し、誠実に情報を開示する企業姿勢そのものが同社の競争力につながっている。「海外は、良い製品は自然と売れる。日本のように営業マンが足しげく通う文化ではない」と山村氏。だからこそ、展示会で製品の品質の高さを丁寧に説明し、ウェブサイトや電子商取引(EC)サイトのレビューを通じて口コミを広げることが重要だという。

長期的なパートナーと犬猫オーラルケア文化を育てる

同社の海外代理店(注4)との関係づくりでは、展示会で「製品を扱いたい」と申し出た企業と丁寧に対話することから始まる。これまでの経験を通じ、単に受注量だけでなく、誠実さや長期的な姿勢を重視した選定が必要だと痛感しているという。海外では契約に対する意識が日本以上に厳格で、メーカー側が想定する販売目標に達しなかった場合、即代理店契約終了というケースも珍しくない。そうした中で同社は短期的な成果だけで判断するのではなく、長期的な関係を構築できるように努めている。具体的には、前金100%取引と半年ごとの注文頻度の設定をすることで、リスクを最小限に抑えながら継続的にフォローアップできる体制を整えている。

販売チャネルとしては、日本と同様にペットショップが中心だ。ASEANではECの影響力も高く、ショッピー(Shopee)への掲載にも取り組みたい意向はあるものの、コストの観点でまだ取り組めていない。タイでは保健省食品・医薬品局(FDA)に製品登録済みだが、通関の遅れや保管料の発生など、実務面の課題も多い。また、ECでは販売者が返品に対する送料を負担したり、返金対応をしたりするケースが一般的だが、ASEANでは返品が日本や米国などの他国に比べて少ない。そのため、今後EC戦略を進める余地は大きいと感じているという。

また、海外のBtoC展示会では一般消費者がその場で製品を購入し、その様子を見たバイヤーが「自国でも売りたい」と申し出るケースが多いという。こうした現場感のある売り方は、犬猫のオーラルケアがまだ新しい概念である国々では特に有効だ。現地語で制作した紹介動画を流すなど、ペットオーラルケアの文化の啓発を含めたコミュニケーションを重視している。

山村氏は、「犬猫も人間と同じで、自分の歯で食べられれば食事が美味しいし、長生きできる。ペットの歯を大切にする文化を世界に広げたい」と語る。模倣品や通関リスクなど海外展開ならではの課題がある中でも、同社は品質と誠実さを軸に、着実にパートナーを広げながら市場の育成に挑み続けている。

企業基本情報
会社名 株式会社マインドアップ
設立 1991年3月15日
本社所在地 山梨県甲府市下飯田2-4-20
従業員数 14人
URL https://mindup.co.jp外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

取材日:2025年10月29日

参考情報:タイ、マレーシア、インドネシア、シンガポールの基礎情報(2024年)
項目 タイ マレーシア インドネシア シンガポール
面積(平方キロメートル) 514,000 330,855 1,892,410 735.7
人口(万人) 6,595 3,406 28,444(注) 603.7
実質GDP成長率(%) 2.5 5.1 5 4.4
1人当たりGDP(米ドル) 7,492 12,541 4,960 90,674
消費者物価上昇率(%) 0.4 1.8 1.6 2.4
失業率(%) 1 3.3 4.9 2
主要産業 製造業、農業、観光業 製造業(電気機器)、農林業(天然ゴム、パーム油、木材)および鉱業(錫、原油、LNG) 製造業、卸売・小売、農林水産業、鉱業、建設、物流・倉庫、情報・通信、金融・保険 製造業(エレクトロニクス、化学関連、バイオメディカル、輸送機械、精密機械)、ビジネスサービス、運輸・通信業、金融サービス業

注:インドネシアの人口は2025年時点。
出所:外務省
人口:タイ内務省、マレーシア統計局、インドネシア中央統計庁、シンガポール統計局
実質GDP成長率、消費者物価上昇率:タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)、マレーシア統計局、インドネシア中央統計庁、シンガポール貿易産業省
1人当たりGDP、失業率:IMF、インドネシア中央統計庁


注1:
スケーラーとは、歯石を削って除去する道具。先端が釣り針のようにカーブしていて刃物になっており、刃の部分で歯石を擦って削り落とす。
注2:
イスラム教で犬が不浄な動物とされており、一般的にイスラム教徒から敬遠されているとされる。
注3:
マレーシアのペット用タクシーサービスには、ジョジョペッツタクシー外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますなどがある(2022年12月16日付MediaOutReach記事参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。そのほか、タイのバンコクでは、大手配車サービスのグラブがグラブペット外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますというペットと同乗できる配車オプションを提供している。
注4:
同社の代理店情報はマインドアップウェブサイト参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
執筆者紹介
ジェトロ調査部国際経済課
馬場 安里紗(ばば ありさ)
2016年、ジェトロ入構。ビジネス展開支援部ビジネス展開支援課/途上国ビジネス開発課、ビジネス展開・人材支援部新興国ビジネス開発課、海外調査部中東アフリカ課、ジェトロ・ラゴス事務所を経て、2024年10月から現職。