今こそ挑戦!グローバルサウスウズベキスタンで浄化槽システム導入に取り組むテラオライテック

2025年12月17日

テラオライテックは1966年創業の企業で、設備工事や電気工事などの事業に取り組んでいる。海外ではカンボジアやブータンで上下水インフラの整備に取り組んできた。現在もウズベキスタンとウガンダで浄化槽の導入に向けた実証を進める。同社のグローバルサウスでの取り組みの現状と課題について、ウズベキスタンを中心に、同社海外事業部田嶋健氏(ウズベキスタン担当)と廣瀬遥氏(ウガンダ担当)にそれぞれ聞いた(取材日:2025年11月5日)。

二重内陸国のウズベキスタンでのニーズに注目

質問:
ウズベキスタンにおける事業概要と経緯は。
答え:
(田嶋氏)現地で水インフラ整備を通じた地域貢献型事業を推進している。カンボジア、ブータンでは取り組みを行っていたが、6年ほど前にウズベキスタンでも事業検討を開始。ウズベキスタン現地のパートナーを活用し浄化槽を設置し、現地事務所も設立した。当初は国営上下水道局へのデモンストレーションもかねて譲渡の形で浄化槽を設置した。その後は、外務省の草の根・人間の安全保障無償資金協力を用いて大型浄化槽を西部ウルゲンチの学校に設置。この実績が、国連開発計画(UNDP)の導入試験につながった。
UNDPの導入試験では西部ヌクスの主要公共施設に浄化槽システムを導入。現在オペレーションを開始しており、今後評価が行われる予定。この実証で問題がなければ2026年中にウズベキスタン国内に約30基を設置する。
質問:
ウズベキスタンでの取り組みを決めた背景は。
答え:
(田嶋氏)カンボジアでの井戸設置やブータンでの浄化槽設置などグローバルサウス諸国での経験が生かせると考えた。ウズベキスタンは中央アジア5カ国(同国のほか、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン)において、地理的・経済的な中心だ。二重内陸国(注1)でもあり水環境への意識が高い。
都市部にはソ連時代の下水道があり、大型の処理場があるものの、老朽化が進んでいる。都市部以外の地域については下水処理にあたってパイプを敷設する必要があることから、大型の処理場はコストが大きくなってしまう。現場(オンサイト)で水処理が可能な浄化槽であれば、インフラ整備のコストが抑えられ、有効な手段としてニーズがあると考えた。
質問:
既に現地事務所も設立しているが、現地で重要なパートナー選定のポイントは。
答え:
(田嶋氏)日本とつながりのある人を選ぶこと。当社の現在のパートナーは日本にいたことがあり、日本への理解がある。そのおかげで現法の設立や事業運営をスムーズに進めることができている。
物流企業も重要。ウズベキスタンでは輸送費が最大の課題となっている。以前は製造元であるインドネシアから中国、カザフスタン経由で輸送していたが、浄化槽そのものの価格と同じくらいの費用が掛かっていた。物流会社を切り替え、現在のルートに変更したことで半分程度のコストまで削減できた。
質問:
市場の見通しや競争環境、課題は。
答え:
(田嶋氏)現在の顧客は公的機関のみだが、民間部門からの受注も目指していきたいと考えている。都市部はソ連時代の下水道を利用しているが、地方部に関してはオンサイト型のもので対応している。トルコ、ロシア、中国勢が官民両方に卸しており、競合となっている。以前はウクライナ製のものも人気があったが、ロシアによる侵攻の影響を受けて現在は低調。いずれの国の製品も膜技術を使ったものでメンテナンスが必要になるが、オペレーションがうまくいっていないように感じている。当社の製品は構造が比較的シンプルでメンテナンスも容易であり、処理能力の高さが競合と比較した際の強みと考えている。まずは実証を通じて性能を理解してもらい、市場を形成していきたい。
質問:
輸送費以外の課題は。
答え:
(田嶋氏)関税、価格競争も課題になる。価格については現地では最も重視される要素と感じている。
規格は国家標準規格(GOST)が用いられている。浄化槽に接続するパイプの径が異なるなど対応が必要な場面もあったが、そこまで苦労はしなかった。標準策定も含め、現地政府と連携して日本の浄化槽法と類似の法整備を働きかけていきたいと考えている。
質問:
今後の目標は。
答え:
(田嶋氏)年間100基を中央アジアに展開することが目標。ウズベキスタンに関しては現地政府とともに、日本と同様の法制度の整備や標準の策定を働きかけていきたい。また、ウズベキスタンを起点に他の中央アジア諸国や、復興の際にはウクライナへと展開していきたい。現在のパートナーと連携し拡大することを考えている。

ヌクスの公共施設への浄化槽設置の様子
(左から2人目が田嶋氏)(同社提供)

設置した浄化槽の説明の様子
(同社提供)

ウガンダでは国営企業に出向者を派遣

質問:
ウガンダでの事業概要は。
答え:
(廣瀬氏)2025年7月より国家上下水道公社(NWSC)に派遣され、現地の状況を調査している。首都カンパラは起伏が激しい地形で、水道の接続率が低くオンサイトの浄化槽のニーズがあると考えている。並行してカンパラ首都省庁(KCCA)、NWSC、マケレレ大学と連携し経済産業省のJパートナーシップ補助金(注2)を用いて浄化槽を用いた生活排水処理の改善につき実証している。
質問:
現地での市場の状況は。
答え:
(廣瀬氏)現地ではトルコ、中国、インドの腐敗槽およびバイオ・ダイジェスターメーカーの製品が進出してきており、オンサイトの水処理における競合となっている。競合の製品についてはメンテナンスを含めたオペレーションが不十分と感じている。KCCA、マケレレ大学の浄化槽の専門家と連携し現地での事業展開に取り組んでいく。
質問:
課題は。
答え:
(廣瀬氏)輸送費と基準。輸送費に関しては、現状日本から輸送しケニアのモンバサ港経由で陸送を予定しているものの、コストが高い。現在進めている実証の中で現地生産の可能性を検討する。排水の水質基準については現行制度があるものの、一部の項目が厳しい一方で別の項目は緩やかなど、基準に統一感がなく実用的でないと感じている。現地の環境管理局(NEMA)に対してさらなる整備を働きかけていく。
質問:
今後の方針は。
答え:
(廣瀬氏)公共施設に加え、資金力のある不動産のオーナーやディベロッパーを開拓する。そうした層には中東系が多いことからビジネスの仕方を変える必要はあるものの、メンテナンスも含めてニーズがある。民間部門への展開のためにもまずは現在の実証を成功させ、2026年中に1基のテスト設置を実現する。今後、ウガンダでの現地法人設立も含め、事業展開を検討していく。

カンパラ首都省庁との会談(左端がテラオホールディングCEOの寺尾氏、右端が廣瀬氏)(同社提供)

ウガンダでの水質検査の様子(同社提供)
企業基本情報
会社名 テラオライテック株式会社
設立 1966年3月
本社所在地 〒915-0806 福井県越前市本保町第8号5-1
従業員数 40人
URL https://www.teraolitech.jp/外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

取材日:2025年11月5日

参考情報:ウズベキスタン、ウガンダの基礎情報

ウズベキスタン
項目 2024年
面積(平方キロメートル) 448,900
人口(万人) 3,754
実質GDP成長率(%) 6.5
1人当たりGDP(米ドル) 3,113
消費者物価上昇率(%) 9.8
失業率(%) 5.5
主要産業 綿繊維産業、食品加工、機械製作、金、石油、天然ガス

出所:面積:ウズベキスタン政府
人口、実質GDP成長率、1人当たりGDP、消費者物価上昇率、失業率:ウズベキスタン大統領府付属統計庁
主要産業:外務省

ウガンダ
項目 2024年
面積(平方キロメートル) 241,600
人口(万人) 5,002
実質GDP成長率(%) 6.1
1人当たりGDP(米ドル) 1,073
消費者物価上昇率(%) 3.3
失業率(%) 2.9
主要産業 農林水産業、製造・建設業、サービス業など

出所:面積:ウガンダ政府
人口、実質GDP成長率、1人当たりGDP、消費者物価上昇率、失業率:世界銀行
主要産業:外務省


注1:
海に出るために少なくとも2つの国境を越えなければならない国。
注2:
新興国・開発途上国の社会課題の解決につながる、日本企業による製品・サービスの開発や実証・評価など、事業開発を支援する補助金。
執筆者紹介
ジェトロ調査部国際経済課
山田 恭之(やまだ よしゆき)
2018年、ジェトロ入構。海外調査部海外調査企画課、欧州ロシアCIS課、ロンドン事務所を経て2025年8月から現職。