CEマーキングの概要:EU
質問
欧州でのCEマーキングの概要について教えてください。
回答
CEマーキングは、EUで販売(上市)される指定の製品がEUの基準に適合していることを表示するマークです。CEマーキングによってその製品が分野別のEU指令や規則に定められる必須要求事項(Essential Requirements)に適合したことを示します。「CE」はフランス語の「Conformité Européenne(英語:European Conformity)」の略です。必須要求事項の大半は製品の安全性にかかわるものですが、近年では、RoHS(有害物質使用制限)指令およびエコデザイン指令に定められている製品の環境性能基準への適合を、CEマーキングによって宣言することが求められるようになりました。該当製品の製造業者(輸入者)または代理の第三者認証機関が所定の適合性評価を行い、製品、包装、添付文書に付与します。正しいCEマーキングのある製品は、EU域内の自由な販売・流通が保証されます。
I. 関連法令
EUでは80年代半ばまで、製品の技術的要件や手続き上の要件を製品別の指令で詳細に定めていましたが、1985年に技術的貿易障害撤廃を目指す「ニューアプローチ指令」(New Approach Directives)が採択されました。これにより、各指令の内容はそれぞれの製品が遵守すべき必要最低限の基準(必須要求事項)にとどめ、製品の技術的要件の詳細はEU統一規格であるEN規格(整合規格)に定められています。現在では具体的な製品の特性ごとに「機械指令」、「低電圧指令」、「医療機器指令」、「玩具安全指令」など 25の指令・規則(244KB) が規定され、それぞれの必須要求事項を満たした製品にCEマークを表示する制度となっています。整合規格の一覧は、指令ごとにEU官報(Official Journal)で公表されます。製品によっては、複数の指令に該当する場合もあるので注意が必要です。
CEマーキングの定義や一般原則、市場監視に関する規定は欧州議会・理事会規則(EC) No765/2008に定められています。また、欧州議会・理事会決定No768/2008/ECでは、CEマーク表示までの適合性評価の手続きの共通枠組みが定められ、CEマーキング認証方式がモジュール方式で定型化されています。
II. CEマーキングの手続きの流れ
CEマーキング適合対策の手続きは、おおむね以下の作業に大別されます。
- 当該製品に適用される指令・規則の確認
- 必須要求事項の確認と適合性評価基準の選択
- 第三者認証機関(Notified Body: NB)による適合性評価が必要かどうかの判断
- 製品試験・適合性評価(必要であれば第三者認証機関による検査)
- 技術文書の作成
- 適合宣言書の作成
- CEマークの表示
III. 適合性評価と適合宣言
主に、加盟国の認定を受けた第三者認証機関(NB)の認証を受ける場合と、自己宣言が認められる場合の2通りがあります。これは製品によって異なり、製造業者が選択することができる場合と、NBの関与が義務付けられている場合があります。
- 製品設計のEC型式審査(関連法規との適合性の確認)が必要な場合は、NBに製品と技術文書等を提出して認証を依頼します。生産段階では、製造品質保証や製品品質保証の承認、品質制度の監視の実施、製品の特定の側面に関する試験などで、NBが関与する場合(義務または製造業者による選択)があります。
- 自己宣言の場合には、製造者自身が規格への適合、技術文書の整備等を評価して、製造者自身が「EU適合宣言書(EU Declaration of Conformity)」を作成し、自己宣言を行います。
また、一部の製品では、製品試験や不定期の製品チェックなど一部のモジュールで、NBに代わって「認定社内適合評価機関(In-house accredited conformity assessment body)」が適合性評価を行うことが認められています。この社内機関は自社製品の設計・生産や供給・設置などの業務から独立した適合性評価の専門組織である必要があり、NBと同レベルの専門性や中立性が求められます。
「EU適合宣言書」は当該製品を販売・流通する加盟国が定める言語に翻訳する必要があります。なお、日本の製造者自身も宣言できますが、EU域内に代理人を認定し、代理人が宣言することもできます。
VI. 市場監視
EU加盟各国では管轄当局が市場監視を実施しており、罰則規定もあります。監視内容は、以下の項目などです。
- 製品に正しくCEマークが表示されているか
- 適合宣言書に関係情報がすべて含まれているか
- 製品に関して誤解を招く情報がないか
- 製品が本当に関係技術基準に適合しているか
EU域外から輸入される場合も、製品に重大なリスクがあるとみなされた場合やCEマーキングの要件を満たしていない場合などで、通関が保留されたり、調査の結果、EU市場での自由流通が禁止され、製品が廃棄処分されたりするケースもあります。
なお、製品の安全性については、消費者向け製品の安全性に関して製造業者や輸入業者の義務を定めた一般製品安全性指令(2001/95/EC)があります。同指令は市場監視の枠組みを定めている規則(EC) No765/2008などの関連法令と併せて改正が審議されており、近いうちに新たな2つの規則(消費者製品安全性規則と市場監視規則)が施行される見通しで、今後の動向に留意が必要です。
さらに、製品が設計上の欠陥によって人体への障害や物損等が生じた場合には、その製品にCEマークが表示されているか否かに関わらず、製造物責任法(PL法)の問題が発生する可能性があります。
CEマーキングの詳細については、以下の認証申請代行機関にご相談ください。
関係機関
※上記認証機関は、本記事作成にあたり収集した情報にもとづき例示したものですが、ジェトロが利用を推奨するものではありません。認証機関にはお客様から直接ご連絡をお願いします。
関係法令
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欧州議会・理事会規則(EC)No 765/2008(CEマーキングの定義や一般原則等に関する規定)
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欧州議会・理事会決定No 768/2008/EC(適合性評価の手続き等に関する規定)
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欧州議会・理事会指令2001/95/EC(一般製品安全性指令)
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理事会指令85/374/EEC(製造物責任指令)
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市場監視規則案
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消費者製品安全性規則案
参考資料・情報
- 欧州委員会(企業・産業総局):
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各加盟国のNBのデータベース「NANDO(New Approach Notified and Designated Organisations)」
- ジェトロ:
- 自己宣言のためのCEマーキング適合対策実務ガイドブック(EU)(2018年3月)
調査時点:2014年10月
最終更新:2022年1月
記事番号: S-040011
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