変容する中国NEV市場とその各国への影響EU、相殺関税効果は発現も、急がれる非価格基準による域内産業強化

2026年1月27日

EUでは、中国製バッテリー式電気自動車(BEV)に対する相殺関税の影響もあり、2024年の中国からのBEVの輸入額は減少した一方で、プラグインハイブリッド車(PHEV)の輸入額は増加した。EU域内メーカーは売り上げ上位に入りシェアを拡大するも、利益率の低下に直面している。バッテリーなど依然として中国依存が続く中、非価格基準に基づく域内の自動車産業の競争力強化が急がれる。

EUにおけるBEVの新車登録台数は回復傾向

EUは2050年の気候中立を目指し、自動車分野では2035年以降の新車(乗用車・小型商用車)のゼロエミッション化などの規制(注1)で、電気自動車(EV)の普及を推進した。規制に牽引されるかたちで、2019年には乗用車の新車登録台数におけるBEVのシェアは1.9%であったのに対し、2023年には初めて150万台を突破し14.6%(前年比37.0%増)となった。

同時に、中国製BEVのシェア拡大が顕著となり、中国政府の国家補助金を受けて製造されているBEVの輸入は市場を歪(ゆが)めているとして、2023年10月に反補助金調査を開始した。調査の結果、EUは2024年10月に相殺関税措置を発動した(本特集「EU、失速するEV需要の中、相殺関税措置発動」参照)。

ドイツで2023年12月に予定より1年前倒しで低排出ガス車購入時の助成制度が打ち切られた影響(2023年12月25日付ビジネス短信参照)や需要の低迷などを受け、2024年のEUにおける新車登録台数に占めるBEVの割合は13.6%に減少した。

2025年(1~9月)は回復傾向となり、BEVの割合は16.1%に再上昇(前年同期比24.1%増)した。また、PHEVはディーゼル車と同程度の9.0%(同31.1%増)、ハイブリッド車(HEV)はガソリン車を抜いて1位となった(表1、図参照)。

表1:EU、燃料別新車登録台数・割合(単位:台、%)(△はマイナス値、ーは値なし)
項目 2022年 2023年 2024年 2025年(1~9月)
台数 構成比 台数 構成比 台数 構成比 台数 構成比 前年
同期比
HEV 2,098,608 22.7 2,720,914 25.8 3,288,862 30.9 2,793,079 34.7 16.4
ガソリン 3,368,726 36.4 3,721,990 35.3 3,542,755 33.3 2,234,058 27.7 △18.7
BEV 1,123,444 12.1 1,538,106 14.6 1,447,934 13.6 1,300,188 16.1 24.1
ディーゼル 1,520,940 16.4 1,431,239 13.6 1,267,741 11.9 745,986 9.3 △24.7
PHEV 874,777 9.4 814,294 7.7 758,944 7.1 722,914 9.0 31.1
その他 277,014 3.0 321,622 3.0 326,145 3.1 261,110 3.2 4.9
合計 9,263,509 10,548,165 10,632,381 8,057,335 0.9

出所:欧州自動車工業会(ACEA)

図:EU、月別燃料別新車登録台数推移(2023年10月~2025年9月)
2025年1月124,341台に対し前年同月の2024年1月92,781台、2025年2月131,275台に対し前年同月106,166台、2025年3月157,505台に対し前年同月134,454台、2025年4月145,341台に対し前年同月108,422台、2025年5月142,776台に対し前年同月114,231台、2025年6月168,488台に対し前年同月156,369台、2025年7月142,699台に対し前年同月102,617台、2025年8月120,797台に対し前年同月92,785台、2025年9月167,586台に対し前年同月139,678台となる。2025年は回復傾向に入り、9月まででBEVの割合は16.1%に回復(前年同期比24.1%増)した。また、PHEVはディーゼル車同等の9.0%(同31.1%増)、ハイブリッド車(HEV)はガソリン車を抜いて1位となった。

出所:ACEA

EU域内メーカーのシェア拡大も厳しい利益率

2025年(1~9月)の新車登録台数(乗用車)を主要メーカーグループ別に見ると、シェア上位10位のうち、フォルクスワーゲン(VW、前年同期比4.8%増)、ルノー(6.6%増)、BMW(6.0%増)、メルセデス・ベンツ(2.0%増)、上海汽車(SAIC、37.3%増)は増加した(表2参照)。シェアは依然として全体の1%にとどまるも、比亜迪汽車(BYD)は著しい伸び(約3.5倍)を見せた。一方、テスラは大幅減(38.7%減)となりシェアも落とした(0.9ポイント減)。

登録台数の伸びの一方で、営業利益率の低下がみられる。1位のVWは2025年1~9月の売上高が前年同期比で0.6%微増したのに対し、営業利益率は前年同期の5.4%から2.3%にとどまった。3位のルノーは2025年1~9月の売上高が前年同期比3.7%増だったのに対し、2025年通年の営業利益率見込みは6.5%にとどまっている(2024年通年の営業利益率は7.6%)。

表2:EU、主要メーカーグループ別新車登録台数と市場シェア(乗用車)(単位:台、%)(△はマイナス値)
グループ名 2024年(1~9月) 2025年(1~9月) 前年同期比
台数 シェア 台数 シェア
フォルクスワーゲン(VW) 2,112,817 26.5 2,213,854 27.5 4.8
ステランティス 1,375,287 17.2 1,276,468 15.8 △7.2
ルノー 858,203 10.7 915,147 11.4 6.6
現代 637,951 8.0 609,463 7.6 △4.5
トヨタ 630,704 7.9 598,422 7.4 △5.1
BMW 528,644 6.6 560,233 7.0 6.0
メルセデス・ベンツ 403,868 5.1 411,839 5.1 2.0
フォード 236,093 3.0 232,904 2.9 △1.4
ボルボ 210,752 2.6 177,011 2.2 △16.0
上海汽車(SAIC) 112,933 1.4 155,055 1.9 37.3
日産 152,407 1.9 151,623 1.9 △0.5
スズキ 135,119 1.7 115,953 1.4 △14.2
テスラ 181,572 2.3 111,328 1.4 △38.7
マツダ 104,301 1.3 85,746 1.1 △17.8
BYD 23,216 0.3 80,807 1.0 248.1
ジャガー・ランドローバー 48,788 0.6 42,033 0.5 △13.8
三菱自動車 45,399 0.6 34,341 0.4 △24.4
ホンダ 30,427 0.4 33,340 0.4 9.6

出所:ACEA

相殺関税導入で中国製BEVは減少、域内取引が活発化

2025年1~7月のEV(BEVおよびPHEV)の販売台数をブランド別で見ると、前年同期比で多くの入れ替わりがみられる(表3参照)。BYDは相殺関税の対象ではないPHEVの伸びで9位に入った。相殺関税は中国メーカーに限らず、中国で製造している外国メーカーにも影響したとみられる。2024年の同時期に2位のテスラ「モデル3」、3位のボルボ「EX30」は、それぞれ8位と17位に大きく後退した。EU域内での生産車が上位に並び、スポーツ用多目的車(SUV)タイプのVWの「ID.4」、シュコダの「エンヤック」や新たに導入した「エルロク」と、ハッチバックタイプ(注2)のルノーの「ルノー5」が上位を占めた。

表3:EU、EV販売台数上位20ブランドの推移 (単位:台)(ーは値なし)

2024年1~7月
順位 ブランド BEV PHEV
1 Tesla Model Y 112,659
2 Tesla Model 3 65,379
3 Volvo EX30 46,601
4 Audi Q4 e-tron 41,443
5 MG 4 37,049
6 Skoda Enyaq 34,057
7 Volvo XC60 33,597
8 VW ID.4 33,501
9 VW ID.3 32,470
10 BMW iX1 29,815
11 Volvo EX/XC40 26,257 2,082
12 BMW i4 29,815
13 Peugeot 208 EV 26,278
14 Ford Kuga 25,047
15 Mercedes GLC 24,499
16 Kia Niro 17,210 7,160
17 Renault Megane EV 22,178
18 Mercedes EQA 21,953
19 Hyndai Kona EV 21,467
20 Fiat 500e 21,462
2025年1~7月
順位 ブランド BEV PHEV
1 Tesla Model Y 75,499
2 VW ID.4 47,400
3 Renault 5 (Alpine A290含む) 45,366
4 VW ID.3 44,102
5 Skoda Enyaq 43,482
6 VW ID.7 43,412
7 Skoda Elroq 42,898
8 Tesla Model 3 42,443
9 BYD Seal U 6,148 34,175
10 Kia EV3 39,901
11 BMW iX1 37,992
12 Volvo XC60 34,394
13 Audi Q4 e-Tron 34,086
14 VW Tiguan 30,996
15 Audi Q6 e-Tron 30,252
16 Ford Kuga 27,381
17 Volvo EX30 26,362
18 BMW i4 25,561
19 Toyota C-HR 23,350
20 Cupra Born 25,222

出所:欧州代替燃料観測所(EAFO)

2024年のEUのEV(BEV、PHEV、HEV)の輸入シェアは台数ベースでは前年比1.1ポイント減の43.2%であった。一方、輸入金額は前年比12.2%減の424億ユーロで、うちBEVは152億ユーロと32.9%減少した(2025年10月24日付ビジネス短信参照)。

BEVの最大輸入元国である中国からの輸入金額別内訳を見ると、BEVは前年比24.7%減なのに対し、PHEVは2.0%の微増、HEVは6.2倍に増加し(表4参照)、相殺関税対象のBEVに代わりPHEV、HEVに輸出をシフトしはじめたともみられる。なお、BEVの輸入元国上位5カ国はいずれも前年比減となった。

表4:EU、2024年のEV輸入実績(金額ベース、BEVの輸入上位5カ国)

(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値、ーは値なし)注:*は乗用車(HS:8703)合計に対して、EV(BEV、PHEV、HEV)の各項目の占めるシェア。
項目 2024年合計 中国 韓国 日本 米国 英国
輸入額 シェア* 前年比 輸入額 シェア* 前年比 輸入額 シェア* 前年比 輸入額 シェア* 前年比 輸入額 シェア* 前年比 輸入額 シェア* 前年比
BEV 15,231 20.0 △32.9 8,315 65.4 △24.7 2,460 31.1 △43.8 1,390 11.3 △7.2 1,377 16.4 △29.1 1,112 10.1 △54.8
HEV 18,437 24.3 13.2 1,147 9.0 516.7 2,240 28.3 37.4 5,651 46.1 24.5 179 2.1 △64.7 4,300 39.0 △7.1
PHEV 8,770 11.5 △6.1 1,087 8.6 2.0 656 8.3 △13.6 1,401 11.4 △18.6 1,970 23.4 △26.2 2,319 21.0 13.5
EV合計 42,438 55.9 △12.2 10,549 83.0 △14.2 5,357 67.8 △20.8 8,442 68.8 8.8 3,526 41.9 △31.1 7,731 70.1 △15.4
8703合計 75,981 △8.2 12,713 △12.1 7,906 △21.7 12,271 6.7 8,418 △14.7 11,021 △15.4

注:*は乗用車(HS:8703)合計に対して、EV(BEV、PHEV、HEV)の各項目の占めるシェア。
出所:EU統計局

EUが2024年7月に暫定的な相殺関税措置を発表して以降の輸入額推移を月別で見ると、中国からの輸入は同措置の本採択を前に駆け込み需要があったと想定される2024年10月の後はいずれも減少しており、相殺関税措置発動前の数字には戻っていない(表5参照)。一方で、EU域内貿易は拡大しており、新車登録台数の伸び率を後押ししていると考えられる。

表5:EU、BEVの輸入上位5カ国の金額推移(2024年7月~2025年8月)(単位:100万ユーロ)(ーは値なし)
国・地域名 2024年 2025年
7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月
中国 689 616 578 1,486 372 364 474 619 494 336 558 577 495 573
韓国 138 147 85 192 244 242 360 266 340 375 352 342 370 280
日本 180 83 91 56 113 130 201 117 156 94 144 137 83 49
米国 98 91 120 84 164 107 88 64 106 146 116 134 129 93
英国 113 81 78 62 161 58 137 77 104 54 85 78 81 51
EU域外合計 1,280 1,062 988 1,935 1,089 956 1,303 1,178 1,261 1,062 1,340 1,336 1,276 1,091
EU域内合計(参考) 3,457 3,390 4,852 4,367 4,495 3,502 3,531 4,107 4,887 4,390 4,901 5,078 4,063

出所:EU統計局

2024年のEUのEV(BEV、PHEV、HEV)の輸出シェアは台数ベースで前年比1.0ポイント増の27.3%となり、輸出金額では前年比6.9%減の582億ユーロだった。うち、BEVは272億ユーロ(8.1%減)で、金額別で最大の輸出先である英国向けは17.4%増だった。BEVの輸出先のうち中国が占める割合は1.4%と小さいが、前年比55.0%減(表6参照)となった。2025年も、中国への輸出額は相殺関税前の水準を下回っている(表7参照)。

表6 :EU、2024年のEV輸出実績(金額ベース、BEVの輸出先上位3カ国および中国)(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値、ーは値なし)注:*は乗用車(HS:8703)合計に対して、EV(BEV、PHEV、HEV)の各項目の占めるシェア。
項目 2024年合計 英国 米国 ノルウェー 中国
輸出額 シェア* 前年比 輸出額 シェア* 前年比 輸出額 シェア* 前年比 輸出額 シェア* 前年比 輸出額 シェア* 前年比
BEV 27,193 16.2 △8.1 8,483 24.2 17.4 6,295 15.9 △9.6 2,868 83.8 △8.2 383 2.6 △55.0
HEV 18,821 11.2 △17.0 5,197 14.8 8.2 3,450 8.7 △32.2 114 3.3 9.5 2,701 18.4 △36.9
PHEV 12,166 7.3 19.3 3,675 10.5 6.2 3,776 9.5 68.3 117 3.4 △59.5 270 1.8 △59.3
EV合計 58,180 34.7 △6.9 17,356 49.4 12.0 13,521 34.1 △5.4 3,099 90 △11.9 3,354 22.8 △42.2
乗用車(HS:8703)合計 167,443 △5.5 35,127 5.4 39,659 △2.4 3,443 △12.6 14,683 △24.4

注:*は乗用車(HS:8703)合計に対して、EV(BEV、PHEV、HEV)の各項目の占めるシェア。
出所:EU統計局

表7:EU、BEVの輸出金額推移(上位3位および中国、2024年7月~2025年8月)(単位:100万ユーロ)(ーは値なし)
国・地域名 2024年 2025年
7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月
英国 689 771 879 998 995 573 817 1,010 865 861 948 932 739 679
米国 403 231 486 606 687 533 614 619 647 522 277 184 332 56
ノルウェー 222 284 282 305 326 203 169 209 324 261 306 571 343 242
中国 44 24 23 36 10 25 15 24 27 6 6 13 2 12
EU域外合計 2,215 2,102 2,460 2,811 2,819 1,876 2,279 2,533 2,652 2,634 2,790 2,650 2,516 1,549
EU域内合計(参考) 3,207 3,298 5,105 4,100 4,139 3,160 3,302 3,887 4,840 4,131 4,481 4,976 3,670

出所:EU統計局

また、例えばVWグループの2025年第1~3四半期の販売台数を見ると、中国への販売台数は前年同期比4.0%減であった(2025年11月7日付ビジネス短信参照)。中国製BEVを対象とした相殺関税の導入も一部要因となり、中国市場でのシェア低下を懸念していたドイツメーカーに影響が出たとも考えられる。

中国企業が欧州で生産を始めるための投資の拡大も確認された。中国から欧州(EU27カ国および英国)への投資の59%を占めたグリーンフィールド投資は2024年、前年比21%増の59億ユーロとなった。うち、83%を占める49億ユーロはEVまたはバッテリー工場向けだった(2025年10月21日付地域・分析レポート参照)。EV関連の最大投資先国はハンガリーで全体の62%を占めた。一方、2024年に新規に発表された中国によるEVプロジェクト(注3)は79%減少し、2022年、2023年の平均150億ユーロから31億ユーロとなった。

ゼロエミッション化への課題

EUは2050年の気候中立目標に向け、2024年までに温室効果ガス(GHG)の排出を1990年比で35%削減し、2030年までに55%削減する目標は達成見込みとしている。しかし運輸部門のみ、GHG排出は増加している(2025年9月22日付ビジネス短信参照)。

2025年10月16日にEU専門誌「ユーラクティブ」が開催したセミナーで、欧州委員会の気候行動総局の担当者は、乗用車のゼロエミッション化への取り組みは、運輸部門のGHG排出削減、輸入に依拠するガソリンの利用減少によるエネルギー安全保障、自動車産業の競争力強化に資する、と話した。同時に、バッテリーの域内生産やデジタル技術への対応の遅れも指摘。需要喚起策として策定された自動車部門に関する産業行動計画(2025年3月13日付ビジネス短信参照)については、EVの需要創出には消費者が手の届く価格帯にすることが重要で、マスマーケットへの浸透により販売量が拡大すれば、利益率の改善が見込まれ、技術革新への投資が可能になると提起した。

欧州自動車工業会(ACEA)の担当者は、気候中立をどう達成するかが課題であり、現状16.1%のBEVのシェアでは2035年に目標を達成できない、と話した。加えて、中国への依存度が高いBEVのみで目標を達成することはEUの強靭(きょうじん)性の面でも問題であり、現在見直されているCO2排出基準規則に、戦略的自律の観点からEUが得意とするPHEVが含まれるべきとした。他方で、自動車の電化率は地域に偏りがあり、フィンランド、ノルウェー、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクなどではBEVの市場シェアが30~90%なのに対し、フランス、ドイツ、ポルトガル、オーストリアでは18~23%、中・東欧諸国では普及率は10%未満にとどまっている。需要喚起のための購入支援などを通じてマスマーケットを形成することがGHG排出削減にもつながる、とした。また、現実に即した規則の見直しで短期的な不確実性が生じる方が、達成困難な目標によって、結果として需要が喚起されず罰金を支払うリスクに直面するより良い、と述べた。

環境団体Transport & Environment(T&E)は、CO2排出基準規則の一部改正はEUにおけるEV化のペースを減速させると指摘する。バッテリー価格の低下により、既発表ベースで、2万5,000ユーロ以下の手頃なEVは2027年までに19モデルの上市が予定されており、うち3分の2はEU域内で生産される予定だという(表8参照)。また、新興国における2025年上半期の販売に占めるBEVの割合はメキシコ(5%)、インドネシア(13%)、タイ(24%)、中国(30%)、ベトナム(42%)と高まってきており、世界のEV競争でも後れをとることになると指摘している。

表8:EUで導入予定の手頃な価格帯のEVモデル(2万5,000ユーロ以下)(単位:ユーロ)(ーは値なし)注:太字は中国生産、そのほかは欧州生産。*は欧州、中国以外での生産。一部は中国生産。
項目 2024年 2025年 2026年 2027年
モデル New Dacia Spring Skyworth Q Dacia A-segment VW ID.1
価格帯 16,900 22,500 18,000 20,000
モデル Leapmotor-Stellantis T03 BYD Dolphin Surf** Renault Twingo MG 2
価格帯 20,000 29,990 20,000 23,000
モデル Dongfeng Nammi Box Renault R5 Opel Nissan Wave
価格帯 23,000 24,900 25,000 20,000
モデル Citoroen e-C3 Kia EV2
価格帯 23,000 25,000
モデル Hyundai Inster* VW ID.2
価格帯 <25,000 25,000
モデル Fiat Grande Panda Cupra Raval
価格帯 25,000 24,500
モデル Skoda Epiq
価格帯 ~25,000

注:太字は中国生産、そのほかは欧州生産。*は欧州、中国以外での生産。**一部は中国生産。
出所:T&E(2025年5月時点の報道ベース)

注視される対中関係と非価格基準に基づく域内産業強化策

欧州委と中国政府は、相殺関税措置発動後も協議を継続しているが、最低輸入価格を設定する価格約束(2026年1月19日付ビジネス短信参照)に関しては大きな進展はみられない。2025年7月のEU・中国サミット(2025年7月30日付ビジネス短信参照)においても、第2次トランプ政権発足(2025年1月)後の関税措置への対応もあり、中国の過剰生産について指摘するにとどまり、貿易赤字の解消に向けた具体策などに関しては合意に至らなかった。

スウェーデンを拠点とする環境団体The Environment and Public Health Institute(ephi)は、2013年の中国産太陽光パネルに対する措置(注4)2013年12月16日付ビジネス短信参照)の経験から、価格約束は解決策にならない、と指摘する。その理由として、価格約束は過剰生産に支えられた人為的に低く設定された市場価格をベースとしたものであり、また中国企業にとっては最大64.9%の関税を支払ってでもEUに輸出する方が魅力的だったことを挙げた。2018年の措置終了後、EUは域内生産支援への転換を試みたものの中国の国家補助の規模に勝る策はなかった。2023年時点でEUは太陽光パネルの95%を輸入し、うち98%は中国からの輸入であるなど、中国依存がさらに高まったという。EU域内産業の強化には中国を見倣い、戦略的な部品、サプライチェーン上必要なもののEU域内現地調達率を高めるべきであることを提言している。

欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、2023年9月に行った一般教書演説で中国産EVに対する反補助金調査の実施を発表したが、2025年9月10日の一般教書演説の中での中国への言及は限定的であった。気候中立と域内産業の競争力強化の両立に向け、手頃な価格帯の域内産小型EV(注5)の開発支援を発表した際にも、自動車産業を中国に制覇されてはならないと言及したのみであった。9月12日に開催された第3回「欧州自動車産業の将来に関する戦略的対話」で確認されたCO2排出基準規則の見直し(2025年12月25日付ビジネス短信参照)と需要喚起策としての社用車のグリーン化(2025年9月16日付ビジネス短信参照)の具体化が注視される。

欧州経済を専門とするブリュッセルのシンクタンク、ブリューゲルは、EVの普及促進に加え、価格以外の要素で評価・判断する非価格基準に基づいた需要措置が持続可能性やサプライチェーンの強靭化につながるとする。自動車需要の6割を占める社用車のグリーン化策において非価格基準が導入されれば、インパクトは大きいとする。また、フランスのように加盟国による購入インセンティブの導入(2025年10月2日付ビジネス短信参照)も促進すべき、と提言している。

欧州議会各会派の主張が分かれ(2025年9月12日付ビジネス短信参照)、加盟国の意見も異なる中、CO2排出基準規則の見直しや、ライフサイクルを通じた環境配慮、域内付加価値比率といった非価格基準に基づく需要喚起策の策定・実施などが急がれる。


注1:
新車の乗用車・小型商用車(バン)の二酸化炭素(CO2)排出基準に関する規則(2023年3月30日付ビジネス短信参照)。同規則では2025~2029年の間は、CO2排出量を2021年比で15%削減し、排出上限値を1キロメートル当たり93.6キログラムと定め、順守できなかった場合は、新車登録台数1台につき、超過排出量1グラム当たり95ユーロの罰金を定めている。2024年のEV需要の低迷を受け、2025~2027年に限り、単年ではなく3年間の平均値で順守状況を見ることに一部改正(2025年4月7日付ビジネス短信EU2025/1214外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照)した。本文に戻る
注2:
後部ドア(バックドア)が跳ね上げ式になっており、車室と荷室が一体化しているボディータイプの乗用車。本文に戻る
注3:
計画ベースでの投資金額。本文に戻る
注4:
2013年12月の中国産の太陽光パネルに対するアンチダンピング(AD)調査および相殺関税調査の最終措置に言及している。ドイツをはじめとした加盟国の半数がAD課税に反対していたことも受け、最終措置は価格約束を締結しない中国企業を対象に最大64.9%の関税率を設定したもの。EUへの輸出を行う中国の太陽光関連企業の約75%は価格約束を締結。本文に戻る
注5:
環境に配慮し・高燃費・軽量(Environment)で、手頃な価格帯(Economical)の域内生産(European)のE-Carを目指すと発表。本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ・ブリュッセル事務所 次長
薮中 愛子(やぶなか あいこ)
2001年、ジェトロ入構。展示事業部、ジェトロ・カイロ事務所、BOP班、国際博覧会課長(ドバイ万博日本館)などを経て、2023年3月から現職。