欧州委、乗用車・バンのCO2排出基準規則の一部改正案を発表

(EU)

ブリュッセル発

2025年04月07日

欧州委員会は4月1日、新車の乗用車・小型商用車(バン)の二酸化炭素(CO2)排出基準に係る規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます一部改正案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

同規則では2025~2029年までは、CO2排出量を2021年比で15%削減し、排出上限値を1キロ当たり93.6グラムと定めている。順守できなかったメーカーには、新車登録台数1台につき、超過排出量1グラム当たり95ユーロの罰金が科される。しかし、2024年の電気自動車(EV)需要の低迷を受け、メーカーの基準未達に伴う巨額の罰金の負担を懸念した産業界の要請もあり(2025年1月24日記事参照)、欧州委は3月5日、「自動車部門に関する産業行動計画」(2025年3月13日記事参照)で、改正案を提案するとしていた。

改正案では、排出基準は維持するが、2025~2027年に限り、単年ではなく3年間の平均値で順守状況をみる。欧州委は、今回の時限的な緩和措置は、2030年以降の排出基準の厳格化(2023年3月30日記事参照)に向け排出量削減を進めつつ、企業の脱炭素化に向けた投資能力を維持するためと説明した。今後、欧州議会とEU理事会(閣僚理事会)での採択を経て施行される見込みで、欧州委は両機関に早期合意を要請した。

欧州自動車工業会(ACEA)は同じ4月1日付の声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、改正案を歓迎する一方で、EVの普及には効果的な購入インセンティブ実施や充電インフラの拡充も必要と指摘した。また、脱炭素化に向けた次の一歩として、必要に応じ、目標ではなく取り組み方の修正に焦点を当て、大型車部門も含めた全体的な進捗状況を徹底的に評価するよう提言した。

廃車のリサイクルに係るカルテルを認定、ACEAなどに制裁金を賦課

欧州委は同1日、ACEAおよび16社による廃車(ELV)のリサイクルに係るカルテルの存在を認定し、総額4億5,800万ユーロの制裁金を賦課すると発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。16社のうち6社は日系メーカー。ACEAなどは、2002年5月から2017年9月にわたり、ELV指令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにおいてメーカーが負担すべきと規定されている廃車の解体費用を業者に支払わないことや、消費者に対し廃車のリサイクル率などに関する情報提供を積極的に行わないことで合意を形成していた。16社のうち、メルセデス・ベンツは欧州委に同カルテルに関する情報提供を行った見返りに制裁金の減免が受けられるリニエンシー制度により制裁金が免除され、調査に協力したステランティス(傘下のオペルを含む)、三菱自動車およびフォードの3社は20~50%減額された。

欧州委のテレサ・リベラ執行副委員長(クリーン・公正・競争力のある移行、競争政策担当)は、自動車など主要産業でのリサイクル推進は、循環型経済における最重要目標とし、廃棄物やCO2排出量の削減だけでなく、原材料のEU域外への依存低減や生産コスト削減、また持続可能で競争力のある産業モデルの構築につながると強調した。

(滝澤祥子)

(EU)

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