EU・中国サミット、気候変動対策への協力に合意も貿易赤字是正の具体策はなし
(EU、中国)
ブリュッセル発
2025年07月30日
EUと中国の第25回首脳会談が7月24日、中国・北京市で開催され、気候変動対策に関して、双方が協力を強化することを主とした共同声明を発表した。欧州理事会(EU首脳会議)のアントニオ・コスタ常任議長と欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が中国の習近平国家主席と会談し、李強首相とも意見を交わした(プレスリリース
)。
共同声明は、米国のパリ協定からの離脱(2025年1月22日記事参照)に言及はしていないものの、EUと中国が外交樹立50周年を迎え、パリ協定の締結から10年の節目の年に、国際環境協定に関し、双方で協力体制を確認できたことは大きな成果であるとした。また両者は、再生可能エネルギーを促進し、途上国を含む各国で質の高いグリーン関連技術・製品へのアクセスが可能となるよう協力を促進する。特に、エネルギー移行、メタン排出管理、炭素市場、グリーンおよび低炭素技術に関する協力が記された。他方、EUにとって中国は大事な貿易相手であるものの、中国政府の国家補助により安価に作られた製品がEUに流れ込むことは、公平な競争環境をゆがめており、是正を求めているが、今回の共同声明に具体的な合意事項は含まれていない。
フォン・デア・ライエン委員長は、中国からの輸出の14.5%がEU向けであるのに対し、EUからの輸出のうち中国向けは8%を占めるにすぎず、EUの対中貿易赤字は3,000億ユーロ超(2024年)となり、前回サミット開催時の4,000億ユーロ規模(2023年12月9日記事参照)よりは縮小したものの依然として不均衡な関係にあり、市場参入の障壁があると指摘。貿易が相互に利益をもたらす競争は歓迎するとし、優先的に取り組む必要のある3点を挙げた。第1は、市場へのアクセス。相互主義は簡素で明確であるべきとし、公共調達における相互主義の重要性について言及した。第2は、中国の過剰生産について。特に鉄鋼、ソーラーパネル、電気自動車(EV)、バッテリーなどの戦略的分野への補助は、中国国内市場の需要に見合っていないと指摘。中国側でも認識し、生産補助から国内消費への支援策を増やす方向性を評価しつつ、実行を求めた。第3は、中国によるレアアースや永久磁石の輸出規制に関してで、信頼できる供給者とみられることは、中国の長期的な経済利益と一致すると強調した(中国側の発表は2025年7月28日記事参照)。
また、ロシアによるウクライナ侵攻に関しては、中国に繰り返し、ロシアの軍事産業の下支えになるような物質的支援は行わないよう求めた。
(薮中愛子)
(EU、中国)
ビジネス短信 f613279b7b32abf4