フランス、欧州製EVへの補助金を再拡充

(フランス、EU)

パリ発

2025年10月02日

フランス政府は、欧州域内で製造された電気自動車(EV)に対する支援策を強化する。EUで組み立てられ、欧州経済領域(EEA)域内で製造されたバッテリーを搭載したEVを購入またリースする場合、10月1日から、「個人向け電気自動車支援金」(注1)に1,000ユーロの追加補助の適用を開始した。これにより、条件を満たす車両の購入またはリースに最大5,200ユーロを支援する。個人への補助額は2024年12月に減額されていたが、再び拡充されることになる(2024年12月5日記事参照)。

今回の新たな措置は、9月5日付けの省令(アレテ、外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますフランス語)に基づいて導入するもので、2025年7月から運用が始まったエネルギー節約証書(CEE)制度(注2)が財源となる。全ての世帯が対象となり、所得に応じて支援額を決定する。フランス環境エネルギー管理庁(ADEME)が定める環境スコアの基準を満たす車両が補助対象となる。対象車種の一覧はADEMEの公式サイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(フランス語)で公開し、毎月更新する予定だ。

この制度は、2024年にマリオ・ドラギ欧州中央銀行(ECB)前総裁がEUの競争力強化に向けて提言した「Made in Europe」基準の確立を反映したもので、欧州委員会が推進する「欧州優先」政策の一環として位置づけられている(2024年9月19日記事参照)。8月に開催されたフランスとドイツの合同閣議(2025年9月5日記事参照)でも、この方針を再確認しており、フランス政府は域内産業の戦略的自立と雇用創出を目指す姿勢を鮮明にしている。

加えて、フランス政府は9月30日から、所得の低い家庭向けにEVの公的リース制度を再始動する。これは、環境負荷の少ない移動手段を低所得層に提供することを目的とした施策で、2024年の初回実施時には約5万件の契約が成立するなど、大きな反響を呼んだ。

今回の制度では、CEE制度を財源に約3億7,000万ユーロの予算が割り当てられており、対象者は課税対象年収が1万6,300ユーロ以下で、職場まで15キロメートル(km)以上の通勤、または業務で年間8,000km以上走行している個人とされる。さらに、大気汚染の改善が求められる地域に居住または勤務する人々には、5,000台以上の車両が優先的に提供される。

リース契約期間は最短3年間で、月額料金は車種によって異なるが、全てのリース業者は月額140ユーロ未満の車両を1台以上提供する義務がある。全車両のリース料は月額200ユーロ未満に抑えられており、その他の補助金制度との併用はできないものの、手頃な価格設定によって低所得層のEV利用を促進する効果が期待されている。

(注1)2025年7月1日から、それまでの環境報奨金は、エネルギー節約証書(CEE)制度を財源とする「個人向け電気自動車支援金」に置き換えられた。EVの新車購入またはリース契約に対して、所得水準に応じて最大4,200ユーロの補助金が支給されていた。

(注2)エネルギー節約証書(CEE)制度とは、エネルギー供給者(電力会社やガス会社など)に対して、エネルギー消費を削減する義務を課す制度。エネルギー供給者はエネルギー消費を削減するためのプロジェクトを実施するか、他の企業や個人が実施したエネルギー節約プロジェクトからCEEを購入することで目標を達成する。

(山崎あき)

(フランス、EU)

ビジネス短信 d515197bcb2e034c