経済・気候保護省、低排出ガス車購入時の助成制度の1年前倒し終了を発表

(ドイツ)

ミュンヘン発

2023年12月25日

ドイツ連邦経済・気候保護省は12月16日、低排出ガス車購入時の助成制度「環境ボーナス(Umweltbonus)」を翌17日で終了すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同制度は2016年7月に開始されたもので、2022年12月に2024年12月末に終了予定と発表されていたが(2022年12月12日記事参照)、終了が1年前倒しされた。

経済・気候保護省は助成制度の突然の終了の理由として、ドイツ連邦憲法裁判所が2023年11月15日に連立政権の予算措置に対して違憲で無効との判決を下した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますことを挙げた。判決では新型コロナウイルス対策予算の未使用分の600億ユーロを気候変動対策などに転用することは憲法の「債務ブレーキ」(注)などに違反するとされた。そのため、「環境ボーナス」の財源となる「気候・変動基金(KTF)」の2024年度予算案の再調整が必要となった。2023年12月13日に行われたKTFに関する政府内交渉で、「環境ボーナス」の終了が決定された。「環境ボーナス」の申請受け付け終了は12月17日となった。

「環境ボーナス」を所管する連邦経済・輸出管理庁(BAFA)の統計では、同助成制度が2016年7月に導入されて以降、2023年12月1日までで累計223万3,702件の申請があった。そのうち、バッテリー式電気自動車(BEV)は142万8,243台、プラグインハイブリッド車(PHEV)は80万4,916台、燃料電池車(FCEV)は543台だった。経済・気候保護省によると、この期間中に合計約100億ユーロの助成が行われた。

ドイツ自動車産業連合会(VDA)は12月18日、「環境ボーナス」の突然の終了に対するヒルデガルト・ミュラー会長のコメントを発表した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。ミュラー会長は「われわれは、連邦政府と連邦議会に対し、顧客が乗用車の購入時に自分たちの購入予算に組み込んでいた助成を保証する解決策を、できるだけ早く見つけることを強く要求する」とコメントした。申請受け付け終了が、経済・気候保護省による正式な発表の翌日となったことについても不満を表明した。また、低排出ガス車を既に購入したが、12月17日時点でまだ新車登録手続きが完了していない購入者は助成の申請が認められないことも批判、このようなやり方では「消費者が政治への信頼を失う」とも述べた。

(注)連邦政府の債務をGDPの0.35%未満に抑えるという財政規律のルール。

(クラウディア・フェンデル、鷲澤純)

(ドイツ)

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