EU、GHG排出量削減を牽引も、注視される域内産業の競争力強化との両立
(EU)
ブリュッセル発
2025年09月22日
欧州委員会の共同研究センター(JRC)は9月9日、世界の温室効果ガス(GHG)排出量が2024年に過去最高を記録した中、EUは削減傾向を主導したと発表した(プレスリリース)。
同年の世界のGHG排出量は二酸化炭素(CO2)換算で53.2ギガトン〔1ギガトン=10億トン、土地利用・土地利用変化と林業(LULUCF)を除く〕となり、前年比1.3%増加した。世界のGHG排出量は、2009年の金融危機、2020年の新型コロナウイルス禍以外、増加傾向にある。主な要因は、中国やインドなどの新興国での化石燃料由来のCO2排出の増加による。1990年以降、年平均1.5%の割合で増加し、2024年の排出量は1990年比で65%の増加だった。
2024年のGHG排出量では、中国(29.2%)、米国(11.1%)、インド(8.2%)、EU(5.9%)、ロシア(4.8%)の5カ国・地域で世界の約6割近くを占めた。排出量が1%以上を占める18カ国・地域の中で、排出量を前年比で削減したのはEU(1.8%減)、日本(2.8%減)、ドイツ(1.6%減)、韓国(0.3%減)だった。
EU27カ国のうち、ドイツ(21.3%)、フランス(11.9%)、イタリア(11.7%)、ポーランド(11.0%)、スペイン(9.0%)の5カ国でEUの排出量の65%を占めた。前年比排出量が増加した国は9カ国だった。分野別では、運輸と建物を除いて前年比で減少し、1990年比では35%の削減となった(添付資料表参照)。2030年までにGHG排出量を55%削減する目標までは、引き続き大幅な削減が必要だが、欧州委は各国から提出された国家エネルギー・気候計画(NECP)を分析した結果、同目標は達成の見込みとしている(2025年6月13日記事参照)。
欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が9月、欧州議会本会議で一般教書演説を行った際、欧州議会の複数会派は、米国との関税合意のうち、2028年までに米国から天然ガスなどを総額7,500億ドル相当購入する費用は域内のクリーンへの移行や、競争力強化に向けられるべきとの主張が見られた(2025年9月12日記事参照)。各会派の意見、主張が分かれている中、引き続き競争力強化と脱炭素の両立に向けた実行が注視される。
(薮中愛子)
(EU)
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