変容する中国NEV市場とその各国への影響BYD、ウズベキスタンでシェア・生産体制を拡大
2026年2月20日
ウズベキスタンにおいて電気自動車(EV)(注1)の普及が進んでいる。その主役は中国の比亜迪(BYD)だ。躍進の背景にはウズベキスタン政府によるEV普及に向けた支援がある。直近では販売に弾みがつくだけでなく、BYDはウズベキスタンでのEV生産を本格化させるなど、ウズベキスタンでEVの生産拠点や近隣国への輸出基地としての体制を整えている。
本稿では、ウズベキスタンにおけるEV市場を概観するとともに、BYDによるウズベキスタンでの生産の進展や消費者の評価、購買層を見ていく。BYDはウズベキスタン市場で着実に存在感を増す一方、現地調達の拡大、輸出への準備なども進め、ウズベキスタン政府も一体となった運営が見て取れる。
輸入車はEVが過半、販売台数・シェアも伸長
2025年1~11月のEVのウズベキスタンの輸入台数は5万1,856台、金額ベースでは6億1,220万ドルに上る(「ウズデイリー」12月10日)。2024年の同期間での輸入台数が2万4,091台、金額が2億2,470万ドルであったことを踏まえると、2倍以上に増えた。内燃機関車の2025年1~11月の輸入実績は、台数ベースで1万6,985台、金額ベースで3億3,650万ドル。EVの輸入台数が内燃機関車と比べ2倍以上となっており、ウズベキスタンにおける輸入自動車市場はEVが主役であるといっても過言ではない。2025年の同期間におけるハイブリッド車(HV)の輸入実績は台数ベースで2,728台、金額ベースで6,920万ドルであり、EVの輸入が圧倒的に伸びていることが分かる(図1、図2参照)。
出所:「ウズデイリー」(12月10日)からジェトロ作成
出所:「ウズデイリー」(12月10日)からジェトロ作成
ウズベキスタンへのEVの主要輸出国は中国だ。前述とは情報源が異なるが、ウズベキスタン国家統計委員会の発表によると2025年1~9月のEVの輸入台数は4万345台。そのうち中国からは3万9,798台と、98.6%に上る圧倒的なシェアを誇る(表参照)。
| 国・地域名 | 台数 |
|---|---|
| 中国 | 39,798 |
| 香港 | 249 |
| 韓国 | 165 |
| ドイツ | 43 |
| 米国 | 25 |
| その他 | 65 |
出所:ウズベキスタン国家統計委員会
なお、バッテリー式電気自動車(BEV)に政府が課す廃車料金、いわゆる廃車税が2025年5月1日から大幅に引き上げられた(2025年6月17日付地域・分析レポート参照)。ウズベキスタン国内で生産されたBEVは2029年末まで引き続き廃車税が免除となることから、EV輸入への一定の影響が予想された。しかし、廃車税の引き上げ後もEVの輸入に大きなブレーキがかかる様子は見られない。
国内市場ではBYDがEVで強い存在感を放つ。2023年頃からウズベキスタンでの本格的な販売を始めたBYDのEVは2025年も好調な販売を記録。ウズベキスタン自動車産業公社(ウズアフトサノアト)の分析によると、2025年1~9月のBYD車の販売台数は1万6,846台。前年同期の販売台数は1万1,580台であり、約1.5倍に増加した。乗用車新車市場のシェアを3.8%から5.7%に伸ばしている。自動車市場のコンサルタント会社Focus2Moveの分析によると、2025年上半期のウズベキスタンEV市場においてBYDが占めるシェアは87.4%に及ぶ。
EV、特にBYD車の急速な普及の背景には、グリーン経済を志向するウズベキスタン政府による関税優遇などの措置がある(2024年12月17日付地域・分析レポート参照)。さらに政府は2025年12月28日、2023年9月に成立した戦略「ウズベキスタン2030」(注2)の追加措置・目標の草案を発表。本草案で、2030年までに乗用車セグメントにおけるEV比率を10%に引き上げる目標を掲げた。EV普及を推進する政府が、新たに数値目標を設定したことでその動きは一層加速することが見込まれる。
消費者によるEVへの評価と購入の動機
ウズベキスタンにEVが本格的に現れてからおよそ3年が経過した。消費者の動向についても見ていきたい。
BYDウズベキスタンがウェブ上で行っている消費者向け調査(注3)によると、「ウズベキスタンにおけるEV市場の発展への評価」の設問に7割以上が「判断保留」と回答している。さらに「自国生産されたEVの信頼性に対する評価」へも、「判断できない」との回答が7割以上を占めた(図3、図4参照)。
出所:BYDウズベキスタンウェブサイトからジェトロ作成(2025年12月26日)
出所:BYDウズベキスタンウェブサイトからジェトロ作成(2025年12月26日)
他方、EVの保有者は買い替えローテーションが早い傾向が浮き彫りになりつつある。ウズベキスタンの経済研究改革センターは、中古EVの売買データを基に、消費者のEVの平均保有期間は2.5年であると算出。内燃機関自動車の平均保有期間が5~6年である点と比べると、バッテリー技術の進化などにより短期での買い替えが進んでいると分析している(「UPL.UZ」2025年12月23日)。
では、EVを購入する消費者はEVに何を期待しているのか。ジェトロがタシケント市内のBYDディーラーにインタビューしたところ、同社ブランドEVを消費者が購入する主な動機は「走行距離あたりのEVの充電費が、内燃機関車の燃料費よりも安い点である」と語った。加えて購入層も幅広く「年齢は25~60歳で、金銭的に多少余裕のある層が中心。用途はビジネスやタクシー、家庭用とさまざまだ」と話す。BEVを購入する層は「1日の走行距離が100~150キロメートルに収まり、タシケント市内のみを走行する層が中心だ。それ以上の走行距離を求める消費者は内燃機関車かハイブリッド車を選ぶ」と述べた。なお、ジェトロが2026年1月にディーラー店頭販売価格を確認したところ、「E2」は2億3,660万スム(約308万円、1スム=約0.013円)、「Chazor」は2億7,577万スム、「Song Plus」は3億7,410万スムであった。
生産開始から現地調達・輸出へ
BYDは2024年6月にウズベキスタンでEVの生産を始めた(2024年7月4日付ビジネス短信参照)。今後は生産体制を増強し、ウズベキスタン市場、そして近隣国市場を開拓する構えだ。
2024年の生産台数は4,004台だったが、2025年1~10月の生産台数は約1万5,000台に達した(「UPL.UZ」2025年11月25日)。現時点の年間生産能力は5万台で、段階的な投資を通じて生産能力を拡充し、2030年には年間50万台の生産を目指す。
部品の多くは外国からの輸入とみられる。BYDウズベキスタン工場のシャフカトベク・アリモフ副社長は、ウズアフトサノアトのユーチューブ番組(2025年11月24日)において、同工場で現地調達している部品はシート、ガラス、外装プラスチック、フロアマットなど60種類以上に及ぶと答えている。一般的にEVの部品点数が約2万点であること、現地調達部材もバッテリーやモーター、インバーターといった基幹部品ではないことを考慮すると、質・量ともに部品のほとんどを中国など他国からの輸入に頼っていることは間違いないだろう。前述のタシケント市内のBYDディーラーも、修理用部品は中国から取り寄せていると述べた。ただしアリモフ副社長はインタビューで、徐々に部品の現地調達を進め、将来的にはバッテリー生産の現地化なども進める意向を示している。
アリモフ副社長はウズベキスタン工場で生産されたEVの輸出を「近いうちに」始めると述べている。具体的な輸出先や予定についての言及はないものの、地域大国のカザフスタンやEVの普及を段階的に進めるキルギス、首都ドゥシャンベでEVタクシーを導入するタジキスタン(2024年6月13日付ビジネス短信参照)など、近隣の中央アジア諸国が有力輸出先とみられる。
これらの現地調達の拡大による地場産業育成、および第三国への輸出による外貨獲得は、ウズベキスタン政府の意向が相当に反映されているとみられる。BYDがウズベキスタン市場で政府から支援を受けていること、合弁企業であるBYDウズベキスタンの出資比率がウズアフトサノアト60%、BYDヨーロッパ40%であることを考慮すると、ウズベキスタン政府とBYD、二人三脚での運営が今後も見込まれる。
- 注1:
-
電気自動車の生産に対する国家支援策を規定した大統領決定PP-443号(2022年12月19日付)では、電気自動車(EV)を、電気自動車(HSコード8703 80)およびプラグインハイブリッド車(HSコード8703 60、8703 70)と定義している。2024年のウズベキスタンのEVなどの新車販売台数については、2025年6月17日付地域・分析レポート参照。
- 注2:
-
2023年の大統領令で定めたウズベキスタンの包括的な発展目標。上位中所得国入りや国際基準を満たす教育・医療・社会保障の提供などを目指す。
- 注3:
-
ウェブ上で回答できるため、調査結果は変動する可能性がある。本稿では2025年12月26日にアクセスした際のデータを利用。
- 執筆者紹介
-
ジェトロ・タシケント事務所長
一瀬 友太(いちのせ ゆうた) - 2008年、ジェトロ入構。ジェトロ熊本、展示事業部アスタナ博覧会チーム、ジェトロ・サンクトペテルブルク事務所長などを経て2024年7月から現職。






閉じる




