分断危機下の最適なグローバルサプライチェーンとは移り変わる世界の「自動車輸出大国」、中国・メキシコ台頭の衝撃

2026年5月1日

世界の自動車貿易構造は、この数年で大きな転換点を迎えている。本稿では貿易財の中で自動車に焦点をあて、貿易データを用いて世界の自動車サプライチェーンにどのような変化が起きているかを確認する。世界の自動車産業の勢力図は、塗り替わりつつある。日本からの自動車製品の輸出は伸び悩み、世界における存在感は相対的に低下しつつある。対照的に、中国は電気自動車(EV)を武器に輸出を急拡大している。また、メキシコも米国向けを中心に自動車輸出大国としての地位を築きつつある。特に中国企業は本国からの輸出に加えて、海外投資の両輪で攻勢を強めており、日本企業のライバルとして脅威となっている。

中国、インド、ブラジルからの輸出が増加

世界の主要な自動車生産国について、2025年の自動車生産台数(注1)と自動車輸出(金額ベース)(注2)をまとめたのが表1だ。日本の自動車生産台数は前年比2.1%増の841万台と微増したが(注3)、ドルベースでの自動車輸出は0.4%減の1,175億ドルとなった。日本自動車工業会(JAMA)によれば、輸出台数は1.1%減の417万台であり、その32.3%を占める米国向けは1.7%減の135万台だった。アフリカ向け(21.3%増)、南米向け(19.9%増)は好調だった一方、大洋州向け(14.6%減)、欧州向け(10.0%減)は振るわなかった。

表1:主要国・地域の自動車生産台数・輸出統計(単位:1,000台、100万ドル、%)(△はマイナス値)注:輸出額はHS8701.20~8701.29、8702~8705の合算。
国・地域名 生産台数 輸出額
2024年
台数
2025年 2024年
金額
2025年
台数 伸び率 金額 伸び率
日本 8,235 8,410 2.1 117,925 117,451 △ 0.4
韓国 4,128 4,102 △ 0.6 70,690 71,885 1.7
中国 31,262 34,488 10.3 119,731 144,477 20.7
タイ 1,469 1,456 △ 0.9 20,913 20,139 △ 3.7
インドネシア 1,197 1,148 △ 4.1 6,357 6,844 7.7
インド 5,969 6,094 2.1 8,650 10,567 22.2
トルコ 1,365 1,419 4.0 22,613 26,080 15.3
フランス * 1,358 n.a. n.a. 37,030 38,584 4.2
ドイツ 4,069 4,149 2.0 198,238 200,129 1.0
スペイン * 2,377 n.a. n.a. 48,440 47,372 △ 2.2
チェコ 1,475 1,469 △ 0.4 36,342 40,839 12.4
カナダ * 1,343 n.a. n.a. 41,420 37,293 △ 10.0
米国 10,553 10,300 △ 2.4 88,636 75,970 △ 14.3
メキシコ 4,203 4,092 △ 2.6 98,175 91,023 △ 7.3
ブラジル 2,550 2,644 3.7 7,960 10,766 35.3

注:輸出額はHS8701.20~8701.29、8702~8705の合算。

出所:自動車生産台数はCEIC(*はJAMAに基づく)、輸出額はGlobal Trade Atlasを基にジェトロ 作成

アジアの主要な自動車生産国を見ると、中国では自動車の生産・輸出とも大きく増大した。同国の2025年の自動車生産台数は10.3%増の3,449万台、輸出額は20.7%増の1,445億ドルに拡大した。輸出台数は21.1%増の710万台と、初めて700万台の大台に達した。とりわけバッテリー式電気自動車(BEV)などの新エネルギー車(NEV)の輸出が262万台と倍増した。中国自動車工業協会(CAAM)は輸出増の要因として、(a)中国メーカーの海外市場開拓の重視、(b)中国ブランドの国際競争力の向上、(c)合弁企業の輸出拡大などを挙げる(2026年1月19日付ビジネス短信参照)。

インドでは、自動車生産台数は2.1%増の609万台と微増だったが、輸出額は22.2%増の106億ドルと拡大した。インド製自動車の主要な輸出先である南アフリカ共和国向け(26.4%増、17億ドル)、メキシコ向け(24.0%増、11億2,000万ドル)、日本向け(27.9%増、8億8,000万ドル)が伸びた。日本市場では、スズキが2024~2025年にコンパクトSUV「フロンクス」やオフロードSUV「ジムニーノマド」を発売したが、同社はこれらのモデルをインドで生産し、日本へ逆輸入している。同社のように、インドをグローバル輸出拠点として捉える動きは、今後も増える可能性がある。

米州に目を向けると、ブラジルの生産台数は3.7%増の264万台、輸出は35.3%増の107億7,000万ドルと拡大した。輸出台数は、主要輸出相手のアルゼンチン、チリ、コロンビア向けが伸び、32.1%増の53万台と大幅に増加した(2026年1月22日付ビジネス短信参照)。同国最大の自動車輸出先であるアルゼンチンで自動車販売が好調であったほか、コロンビアも同様に販売が伸びている(2026年1月21日付2026年1月15日付ビジネス短信参照)。

日本市場で中国製、インド製の自動車の存在感が増大

続いて販売側に目を向ける。世界の主要な自動車市場での国内新車販売台数と自動車輸入統計をまとめたのが表2だ。日本の2025年の販売台数は、前年比3.3%増の457万台と小幅増となった。輸入額は9.7%増の134億ドルと拡大したが、実は輸入相手はこの5年間で変化している。日本の最大の輸入相手国はドイツ(構成比:33%)で変わりないが、中国が10億4,000万ドル(同:7.8%)と2位、インドが9億2,000万億ドル(同:7.2%)と7位へ浮上した。新型コロナ禍以前、日本の自動車輸入はドイツ、英国、米国、イタリアといった欧米諸国からが中心で、中国やインドのシェア(2019年)はそれぞれ0.4%、0.6%に過ぎなかったが、現在は中国製(注4)、インド製の自動車が市民権を得ている。

表2:主要国・地域の国内自動車販売・輸入統計(単位:1,000台、100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域名 国内新車販売台数 輸入額
2024年
台数
2025年 2024年
金額
2025年
台数 伸び率 金額 伸び率
日本 4,421 4,566 3.3 12,181 13,368 9.7
韓国 1,628 1,681 3.2 13,293 14,175 6.6
中国 * 25,577 27,302 6.7 39,087 23,529 △ 39.8
インド 5,212 5,499 5.5 796 1,148 44.2
オーストラリア 1,221 1,210 △ 0.9 35,532 32,961 △ 7.2
フランス ** 2,155 n.a. n.a. 54,417 52,734 △ 3.1
ドイツ 3,192 3,208 0.5 87,021 93,430 7.4
イタリア ** 1,793 n.a. n.a. 43,997 45,528 3.5
スペイン ** 1,219 n.a. n.a. 30,587 35,547 16.2
英国 ** 2,369 n.a. n.a. 70,703 75,583 6.9
ロシア 1,651 1,349 △ 18.3 n.a. n.a. n.a.
トルコ 1,286 1,414 10.0 21,971 27,059 23.2
カナダ 1,919 1,959 2.1 66,507 63,185 △ 5.0
米国 16,333 16,675 2.1 277,394 232,393 △ 16.2
メキシコ 1,563 1,564 0.1 17,388 18,559 6.7
ブラジル 2,634 2,689 2.1 13,031 12,308 △ 5.5

注:輸入額はHS8701.20~8701.29、8702~8705の合算。ドイツは自動車新規登録台数。

出所:国内新車販売台数はCEIC(*中国は中国自動車工業協会、**はJAMAに基づく)、輸入額はGlobal Trade Atlasを基にジェトロ作成

続いて、世界最大の自動車市場である中国では、2025年の国内新車販売台数は6.7%増の2,730万台だった。他方、輸入は39.8%減の235億ドルと縮小し、2021~2022年(532~539億ドル)に比べて半分以下の規模になった。中国は電動化に伴い「国産車が強い市場」に変貌を遂げており、ドイツ、米国、日本、英国からの輸入車は、中国市場におけるシェアを急速に失いつつある。中国における自動車産業、市場の変容については、特集「変容する中国NEV市場とその各国への影響」に詳しい。

米国市場では、国内新車販売台数は2.1%増の1,668万台と微増となった(2026年2月9日付ビジネス短信参照)。税額控除が2025年9月に撤廃されたことを受け、同年10月以降はクリーンビークル(注5)を中心に販売が縮小しつつある。米国は引き続き自動車輸入市場として圧倒的な存在感を誇るが、トランプ政権による関税措置の影響が懸念されたところ、輸入は16.2%減の2,324億ドルとなった。2025年4~5月に発動した自動車・同部品に対する追加関税のコストについては、車両価格への転嫁は限定的とされる(2026年1月19日付地域・分析レポート参照)。次のパラグラフで、直近の米国の自動車の輸入統計を見ていく。

米国向けの自動車サプライチェーン、メキシコへの集中傾向が強まる

米国市場への自動車輸入相手のシェア推移を見ると(図1参照)、際立ってくるのがメキシコの存在だ。2015年や2016年の時点では、カナダや日本も2割程度のシェアを占めていたが、この10年でメキシコのシェアが上昇し、35%を超えるようになった。韓国のシェアも上昇し、直近1~2年は日本やカナダに並ぶようになっている。

図1:米国の自動車輸入相手国シェアの推移
米国市場への自動車輸入相手のシェア推移をみると、際立ってくるのがメキシコの存在だ。2015年や2016年の時点では、カナダや日本も2割程度のシェアを占めていたが、この10年でメキシコのシェアが上昇し、35%を超えるようになった。韓国のシェアも上昇し、直近1~2年は日本やカナダに並ぶようになっている。

注:輸入額はHS8701.20~8701.29、8702~8705の合算。
出所:Global Trade Atlas(S&P Global)を基にジェトロ作成

また、米国への車体を含む自動車部品(HS8707、HS8708)の輸入を見ると、メキシコのシェアが際立って拡大していることが分かる(図2参照)。2015年時点のシェアは33%だったのが、2025年では43%まで拡大した。こうした動きは、メキシコが米国市場への自動車サプライチェーンの供給基地としての役割を、一層強めたことを示している。

図2:米国の自動車部品(車体含む)輸入相手国シェアの推移
米国への車体を含む自動車部品(HS8707、HS8708)の輸入をみると、メキシコのシェアが際立って  拡大していることが分かる。2015年時点のシェアは33%だったのが、2025年では43%まで拡大した 。

注:HS8707(車体)、HS8708(自動車部品)の合算データ。USMCAは、メキシコとカナダの合計。
出所:Global Trade Atlas(S&P Global)を基にジェトロ作成

メキシコへの集中が加速する理由は、やはり米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の効果と考えられる(特集「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を取り巻く環境」参照)。企業がサプライチェーンを見直す際、特に自動車・同部品メーカーにおいては、市場への近さ(地産地消)に加えて、関税や自由貿易協定(FTA)といった通商面を重視する企業が相対的に多いからだ。ジェトロが2025年11~12月にかけて日本本社向けに実施した「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査PDFファイル(2.9MB)」では「新たな調達先を検討するにあたり重視する要素」を聞いているが、品質や価格といった要素に加えて、自動車/同部品/輸送機器メーカー(有効回答36社)では「生産地・販売先との関係でのリスクの低さ(安定性の高さ)」(66.7%)、「生産地・販売先への地理的近接性」(55.6%)の回答比率が高かった。加えて「FTAなどの制度上のメリットの豊富さ」(47.2%)、「米国による関税措置の影響の小ささ」(27.8%)の2項目については、どの業種よりも回答比率が高かった。

トランプ関税も、メキシコからの輸入品の優位性を相対的に高めている可能性がある。USMCAは、トランプ政権の各種関税措置において数少ない例外措置となっているからだ。自動車関連企業においては、同協定の活用は必須と言ってもいい環境になっている。USMCA原産地規則を満たした製品は、(a)122条課徴金の適用除外となる、(b)自動車・同部品はそのうち非米国産材料価格にのみ追加関税が適用される、といった例外措置が設けられている(詳細は特集「米国関税措置への対応」を参照)。こうした事由により、米国市場向けの自動車関連サプライチェーンは、よりUSMCA域内に集中する傾向が強まっている(注6)。米国の自動車部品輸入相手を見ると、メキシコとカナダの合算値は2025年で過半を占めており、この比率は年々上昇している。

自動車、自動車部品の輸出大国として中国とメキシコが台頭

続いて、中長期の貿易統計から、世界の自動車・同部品の輸出フローの変化を見る。国際貿易センター(ITC)の「Trade Map」データベースから、世界の乗用車(HS8703)の輸出国シェアを20年間にわたって見ると、かつてはドイツと日本が二大自動車輸出大国だったが、近年では中国、韓国、メキシコが台頭していることが分かる(図3参照)。特に中国のシェア拡大は目覚ましく、2005年時点では0.2%で、2016年まで1%にも満たなかったが、2024年では9.4%に拡大した。韓国は2005年では5.6%だったが2024年に7.1%へ、メキシコは2.8%から6.4%へ、それぞれ拡大した。こうした変化の背景には、電動化および中国企業等の新興メーカーの競争力増大、FTA締結による生産ネットワークの最適化、地政学リスクの高まりによるサプライチェーンの安定性や地理的近接性の重視などの要素があり、世界の自動車貿易構造の再編に影響をもたらしている。

図3:世界の乗用車輸出国のシェア推移(2005~2024年)
かつてはドイツと日本が二大自動車輸出大国だったが、近年では中国、韓国、メキシコが台頭している。特に中国のシェア拡大は目覚ましく、2005年時点では0.2%で、2016年まで1%にも満たなかったが、2024年では9.4%に拡大した。韓国は2005年では5.6%だったが2024年に7.1%へ、メキシコは2.8%から6.4%へ  、それぞれ拡大した。

注:HS8703のデータ。
出所:「Trade Map」(International Trade Centre)を基にジェトロ作成

世界の自動車部品(HS8708)の輸出国シェアについても推移を見ると、2005年ではドイツ、米国、日本の3カ国が中心だったが、中国、メキシコの台頭により変化がみられる(図4参照)。2024年の自動車部品の輸出大国としての地位は、ドイツ(14.2%)、中国(12.5%)、米国(9.9%)、メキシコ(9.1%)の4カ国へと移り変わりつつある。日本(5.7%)は、ポーランド(4.2%)や韓国(同)といった第二グループへと退潮しつつある。これは日本の自動車部品メーカーが地産地消を目指し、海外進出先で現地生産を進めた結果とも言えるが、日本の自動車市場が大きく伸びない中で、日本の自動車部品の生産・輸出のシェアも、引き続き漸減していく方向となりそうだ。

図4:世界の自動車部品輸出国のシェア推移(2005~2024年)
2005年ではドイツ、米国、日本の3カ国が中心だったが、中国、メキシコの台頭により変化がみられる。2024年の自動車部品の輸出大国としての地位は、ドイツ(14.2%)、中国(12.5%)、米国(9.9%)、メキシコ(9.1%)の4カ国へと移り変わりつつある。日本(5.7%)は、ポーランド(4.2%)や韓国(同)といった第二グループへと退潮しつつある。

注:HS8708のデータ。
出所:「Trade Map」(International Trade Centre)を基にジェトロ作成

貿易マトリクスを通じた変化、中国はロシア・CIS、EU、中東向けが増大

最後に、自動車輸出国としての変容について詳しく分析するため、ジェトロが独自推計した貿易データから作成した、世界の乗用車輸出のマトリクスを紹介したい(注7)。このマトリクスでは、輸出国・地域×輸入国・地域の関係性の変化(2019年→2024年)を確認することができる。

表3は、2024年の乗用車(HS8703)の輸出元国と仕向け地別のシェアが記載されている。日本は世界の乗用車輸出でシェア11.2%を占めている。主な輸出フローは、日本→米国(世界輸出に占める構成比:4.1%)、日本→アジア(1.6%)、日本→中東(1.3%)、日本→EU27(1.2%)などだ。一方、中国はシェア9.5%で、中国→ロシア・CIS(2.5%)、中国→EU27(1.7%)、中国→中東(1.4%)が大きい。メキシコのシェアは6.8%で、その大部分がメキシコ→USMCA(5.9%)となっている。ドイツのシェアは18.4%と世界最大であり、ドイツ→EU27(8.1%)、ドイツ→USMCA(3.3%)、ドイツ→アジア(2.7%)などが大きい。

表4は、乗用車輸出におけるシェアについて、2019年と2024年の比較を行っている。前述したとおり、特に輸出国としてシェアを拡大したのが中国で、8.3ポイント増となった。中国→ロシア・CIS(2.4ポイント増)、 中国→EU27(1.6ポイント増)、中国→中東(1.3ポイント増)のフローが増加した。韓国も1.8ポイント増となっており、韓国→米国(1.6ポイント増)の拡大が寄与した。

表5は、ハイブリッド車(HV、HS8703.40~8703.50)の世界輸出のマトリクスとなっており、HVに関しては日本からの輸出が世界シェア21.4%を占めて首位である。英国(11.7%)やドイツ(9.1%)をはじめ欧州各国も高いシェアを占めているが、表6の2019年→2024年への変化では、日本は15.6ポイント減と大幅にシェアを減らした。他方、英国(5.4ポイント増)、スペイン(3.7ポイント増)、中国(3.4ポイント増)が拡大した。

表7は、プラグイン・ハイブリッド車(PHV、8703.60~8703.70)の輸出マトリクスだ。世界の輸出シェアではドイツが25.8%と高く、中国(11.7%)、日本(9.9%)が続く。表8の2019年→2024年の変化では、日本が7.6ポイント減、ドイツが6.6ポイント減とシェアを減らしている。一方、中国(8.1ポイント増)、スペイン(3.8ポイント増)、ベルギー(3.2ポイント増)が増加した。中国を起点とする輸出フローでは、中国→ロシア・CIS(4.3ポイント増)が拡大している。なお、ロシアのみならず、アゼルバイジャン、カザフスタン、キルギス向けが増加している。

表9はBEV(HS8703.80)の輸出マトリクスだ。世界シェアでは、ドイツ(28.7%)と中国(22.6%)で過半を占める。ベルギー(8.8%)、メキシコ(7.2%)、韓国(7.1%)が続く。表10は2019年→2024年の変化だが、米国が26.2ポイント減、ベルギーが12.5ポイント減と大幅に縮小した。一方、中国(21.0ポイント増)、ドイツ(13.8ポイント増)、メキシコ(7.1ポイント増)が拡大した。特に顕著に伸びている輸出フローは、ドイツ→EU27(10.0ポイント増)、中国→EU27(7.8ポイント増)、メキシコ→米国(5.7ポイント増)、中国→ASEAN(2.2ポイント増)、中国→中東(2.2ポイント増)などである。

自動車業界の対外グリーンフィールド投資、中国からが最大に

マトリクスや本稿の各貿易データを通じて明らかになったことは、(1)自動車の輸出国として中国やメキシコが台頭し、(2)日本市場においても中国やインド製の自動車が市民権を得ていること。そして(3)世界最大の自動車の輸入市場である米国では、ますますメキシコの重要性が増していること。(4)中国はPHVでロシアCIS向け、BEVでEUやASEAN、中東向けの輸出を拡大している、といった変化がみられることだ。

特に中国の自動車産業の隆盛は驚異的で、ドイツを抜いて世界最大の輸出国となる日も遠くないかもしれない。加えて、自動車業界では中国メーカーによる対外投資も活発だ。世界の自動車・同部品業界でのグリーンフィールド投資件数を見ると、同業界において世界で最も活発に対外投資を行っている国は中国となっている(図5参照)。

図5:世界の自動車・同部品業界でのグリーンフィールド投資件数の推移(投資元国別)
自動車業界では中国メーカーによる対外投資も活発だ。世界の自動車・同部品業界でのグリーンフィールド投資件数をみると、2025年では中国が106件と、同業界において世界で最も活発に対外投資を行っている国は、中国となっている。

出所:fDi Markets(Financial Times)を基にジェトロ作成

中国からの投資先は、北米を中心に投資を進める日本や韓国とは異なり、欧州やアジア大洋州、中南米などである(図6参照)。中国企業は輸出に加えて、現地生産も見据えたサプライチェーンの構築を世界各地(北米を除く)で進めており、日本の自動車関連企業のライバルとして大きな脅威となるだろう。こうした動きは、今後の中国企業との競争の軸は、中国本土からの輸出車との競争から、中国メーカーの現地生産車、中国メーカーが中国本土以外の第3国で生産した輸出車との競争に移りつつある可能性を示唆している。

図6:世界の自動車、自動車部品業界でのグリーンフィールド投資 投資先シェア(投資元国別)
中国からの投資先は、北米を中心に投資を進める日本や韓国とは異なり、西欧が24.6%、アジア大洋州が23.9%、中南米が21.8%、アフリカが10.1%、東欧・中欧が9.1%などとなっているが、北米は3.5%に留まっている。

注:2023年1月~2026年3月の合計。
出所:fDi Markets(Financial Times)を基にジェトロ作成


注1:
各国の生産台数、販売台数については、乗用車と商用車の合算。 本文に戻る
注2:
輸出、輸入統計における「自動車」は、貿易分類上のHS8701.20~8701.29、8702~8705と定義した。 本文に戻る
注3:
認証不正問題による生産停止影響があった2024年からの反動増などで、プラスに転じた。(2026年3月2日付日刊自動車新聞) 本文に戻る
注4:
中国からの輸入車は、主にテスラ(上海工場)や吉利汽車傘下のボルボなど欧米ブランドが主であるとみられ、必ずしも「中国ブランド」が日本市場に浸透しているとはいえない。 本文に戻る
注5:
バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグイン・ハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)の総称。 本文に戻る
注6:
2025年5月13日の自動車部品メーカーなどへのヒアリングによる。 本文に戻る
注7:
本貿易マトリクスはジェトロが独自で推計した貿易データから作成しているため、ITCの数字と若干差異が生じる可能性がある。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部国際経済課 課長代理
北見 創(きたみ そう)
2009年、ジェトロ入構。海外調査部アジア大洋州課、大阪本部、カラチ事務所、アジア大洋州課リサーチ・マネージャーを経て、2020年11月からジェトロ・バンコク事務所で広域調査員(アジア)として勤務。2024年10月から現職。