分断危機下の最適なグローバルサプライチェーンとは貿易構造の変化から見る建設機械の供給網(世界)

2026年4月28日

建設機械の貿易構造は過去5年間で大きく変化した。米国は引き続き最大の輸入国であるものの、中東地域の伸長が顕著だ。他方、輸出に関しては国内の景気動向も受け、中国が大きくシェアを拡大し、新興のインドも成長を見せている。2025年に入ってからも、追加関税を受けて対米輸出国に変化が生じた。建設機械のサプライチェーンについて、貿易の変化を踏まえ概観する。

2024年の貿易は前年に次ぐ高水準、米国は全輸入額の15%を占める

国際貿易センター(ITC)のデータによると、世界の建設機械(注1)の貿易は増減を繰り返している(図参照)。輸入額で見ると、2024年は1,110億ドルとなった。新型コロナウイルスの影響で輸入額が大きく落ち込んだ2020年から増加基調にあり、2024年は2023年比で7.2%減と減少に転じたものの、ここ10年間で2023年に次ぐ高水準だ。内訳を見ると、完成品の輸入額は990億ドル、部品は120億ドルと、約9割が完成品となっている。

図:世界の建設機械の輸入額(2014年~2024年)
2024年の輸入額は完成品が990億ドル、部品が120億ドル。

注:「完成品」はHSコード8429、8430、8474、8479.10、「部品」はHSコード8431.42、8431.43を指す。
出所:ITCデータを基にジェトロ作成

国別で見ると米国が最大の輸入国となっており、全輸入額の14.8%を占める(表1参照)。米国の輸入の内訳を見ると完成品ではこの割合がやや高まり15.4%となる一方、部品に関しては10%程度とサウジアラビアに次ぐ2位となっている。米国の輸入先のシェアを見ると、日本が直近10年間で3割台を占めトップとなっている。2位、3位についてはドイツ、英国と欧州勢が続くものの、シェアとしては減少基調となっている。2022年にシェアを8%超まで伸ばした中国も、同年以降は減少基調にある。

他方、輸出額は中国が4分の1を占め、2位の日本(10.9%)を大きく引き離している。

表1:建設機械の輸出入上位10カ国・地域(2024年) (単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)

輸入
国名 金額 シェア 前年比
米国 16,437 14.8% △18.9%
カナダ 5,940 5.3% △15.8%
サウジアラビア 5,263 4.7% 35.8%
ロシア 4,227 3.8% △14.4%
オーストラリア 4,163 3.7% △16.5%
インドネシア 3,541 3.2% △1.4%
ドイツ 3,152 2.8% △26.4%
アラブ首長国連邦 3,020 2.7% 5.1%
英国 2,701 2.4% △20.0%
ベルギー 2,667 2.4% △27.0%
総額 111,035 100.0% △7.2%
輸出
国名 金額 シェア 前年比
中国 26,735 24.9% 5.9%
日本 11,691 10.9% △16.6%
米国 9,801 9.1% △17.3%
ドイツ 8,914 8.3% △11.8%
英国 4,815 4.5% △10.7%
イタリア 3,518 3.3% △13.1%
オランダ 3,419 3.2% △26.0%
ブラジル 2,893 2.7% △22.7%
インド 2,732 2.5% 8.5%
韓国 2,714 2.5% △37.9%
総額 107,530 100.0% △10.1%

出所:ITCデータを基にジェトロ作成

輸出は中国が台頭、輸入は中東・アフリカが拡大

より長期的な構造変化を捉えるため、2019年と2024年の貿易額をマトリクスでみていく。表2では縦軸に輸出元、横軸に輸入相手国・地域を置き、2019年の世界シェアと2024年の世界シェアを比較したポイント増減をまとめた。

表2:建設機械の世界貿易に対する各国・地域間貿易シェアの変化(2019年→2024年)(△はマイナス値)注1:太字は1ポイント以上の変化があった国・地域間。 注2:欧州はロシアCIS諸国を含む。 注3:ASEANは東ティモールを除く10カ国。
輸出元 輸入相手
世界 アジア 日本 中国 ASEAN オセアニア 米国 中南米 欧州 EU ロシア 中東 サウジアラビア アラブ首長国連邦(UAE) アフリカ
世界 0.00 △3.21 △0.15 △1.93 △0.35 △0.33 2.43 0.09 △4.78 △3.35 △0.04 2.47 1.14 0.91 2.30
アジア 9.73 △1.40 △0.01 △1.01 0.03 0.05 1.66 1.49 1.73 △0.14 1.75 2.56 0.86 0.78 2.97
日本 △1.15 △0.91 0.00 △0.29 △0.16 △0.11 0.89 0.01 △1.45 △0.75 △0.48 0.46 0.01 0.17 0.01
中国 11.82 1.60 △0.01 0.00 1.27 0.16 0.32 1.30 3.80 0.93 2.43 1.48 0.68 0.47 2.60
ASEAN △0.22 △0.86 0.03 △0.03 △0.79 0.02 0.41 0.07 △0.09 0.01 △0.06 0.11 △0.04 △0.02 0.10
インド 1.01 △0.21 △0.00 △0.01 △0.00 0.02 0.16 0.07 0.13 0.09 0.03 0.39 0.23 0.12 0.34
オセアニア △0.00 △0.04 △0.00 △0.02 △0.01 0.02 0.03 0.00 0.02 0.01 △0.01 0.01 0.01 0.01 0.01
USMCA △2.92 △0.48 △0.05 △0.14 △0.23 △0.04 0.10 △1.02 △0.98 △0.52 △0.26 △0.80 0.14 △0.02 △0.10
米国 △2.80 △0.38 △0.05 △0.11 △0.17 △0.03 0.00 △0.99 △0.88 △0.49 △0.23 △0.82 0.13 △0.01 △0.10
中南米 △0.18 △0.00 △0.02 0.02 0.01 △0.02 △0.01 △0.07 △0.17 △0.12 △0.03 0.07 0.00 0.03 △0.05
欧州 △6.56 △1.17 △0.06 △0.74 △0.11 △0.23 0.64 △0.29 △5.47 △2.41 △1.65 0.64 0.11 0.10 △0.63
EU △5.39 △1.05 △0.07 △0.67 △0.08 △0.15 0.61 △0.27 △4.43 △2.24 △1.36 0.55 0.11 0.10 △0.55
中東 0.03 △0.11 △0.00 △0.02 △0.01 △0.01 0.01 △0.02 0.16 △0.11 0.17 △0.02 0.01 0.01 0.00
アフリカ 0.03 △0.01 △0.00 △0.01 △0.02 △0.01 0.00 △0.00 △0.04 △0.03 △0.01 0.01 0.00 0.01 0.08

注1:太字は1ポイント以上の変化があった国・地域間。
注2:欧州はロシアCIS諸国を含む。
注3:ASEANは東ティモールを除く10カ国。

出所:Global Trade Atlas(S&P Global)データを基にジェトロ作成

供給側となる輸出国・地域を見ると、アジアが9.73ポイント増と伸長。中でも中国は、2019年比で11.82ポイント増と2桁増を記録し、シェアを25.76%まで高めた。中国はアジアをはじめ、ロシア(2.43ポイント増)、アフリカ(2.60ポイント増)、中東(1.48ポイント増)、中南米(1.30ポイント増)とグローバルサウス地域でのシェアを伸ばしている。また、インドも2.63%とシェアは小さいものの、中東とアフリカでそれぞれシェアを伸ばし、1.01ポイント増とアジアの伸びに寄与した。金額ベースで見ると、インドは2019年比で2倍と大きく成長し、貿易黒字も2019年の1億ドルから2024年は12億ドルと、輸出国としての地位を大きく高めている。

中国に次ぐ輸出国である日本は若干ながらシェアを落とした。米国や中東などではシェアを伸ばしたものの、中国やEU、ロシアなどの国・地域向けの減少が上回った。

約3割を占める欧州(ロシアCIS地域含む)がドイツ(2.27ポイント減)を中心に6.56ポイント減となった。EU域内向けの減少に加えて、ロシア向け輸出が1.36ポイント減となった。ロシアはウクライナ情勢を受け、2022年以降ドイツや英国、北欧諸国からの輸入が急減し、それに代わるかたちで既述の中国のほか、トルコ、カザフスタン、インドなどがシェアを伸ばしている。

需要側となる輸入国・地域を見ると、シェアを2.43ポイント高めた米国に加えて、中東(2.47ポイント増)、アフリカ(2.30ポイント増)が目立つ。内訳を見ると、米国は日本を含むアジアとEUからの増加が寄与した。中東、アフリカに関してはいずれもアジアからの増加が寄与しており、その多くを中国が占める。

中でもサウジアラビア、アラブ首長国連邦(以下、UAE)は2024年の輸入額でそれぞれ3位、8位となっており、2019年(11位と13位)から存在感を増している。両国では輸送やエネルギーをはじめとするインフラや都市開発のプロジェクトが進行しており、需要が高まっていることが影響しているとみられる。アフリカでは南アフリカ共和国が2019年比で3割増と伸びた。2024年の同国向けの投資では、再エネや情報通信といったインフラへの投資額が大きかった。

米関税の影響受ける日独、メキシコは対米輸出拡大

最大市場である米国による追加関税の賦課は2025年の貿易に影響を与えている。建設機械やその部品については、第2次トランプ政権下で一部が1962年通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミニウムに対する追加関税措置の対象とされている。具体的にはHSコード8431.42が2025年3月12日より、8429、8431.43、8474.90が8月18日より対象となっており、含有する鉄鋼・アルミ材の価格に対して50%の関税が賦課された(注2)

これらの動きも受けた2025年の米国の輸入額の変化を見ていく。建設機械のうち追加関税の対象となっている品目(以下、対象品目)の輸入額は前年比22.2%減の約100億ドル。建設機械全体でも輸入額は前年比で減少しているが、対象品目の減少分はその9割に寄与している。

対象品目の輸入を国・地域別に見ると、日本で2割、ドイツで4割減となった。他方、米国向けに大きく輸出額を伸ばしたのがメキシコだ。第1四半期は前年同期比で2割減となったものの、第2四半期以降はそれぞれ2桁増を見せ、通年で11.2%増の3億ドルとなった。部品の伸びが寄与した。インドネシアやタイ、シンガポールなどの東南アジアの国々も2~4割増となった。

自動車・同部品に対する追加関税と異なり、鉄鋼・アルミに対する追加関税については、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の原産地規則を満たしていることによる適用免除は設けられていない。ただし、232条の対象は鉄鋼・アルミ材のみで、それ以外の部材に関しては2026年2月24日までは国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく25%関税、2月24日以降は1974年通商法122条による10%の課徴金が適用される。従い、鉄鋼・アルミ以外の部材に関してはUSMCAの原産地規則を満たしている場合、適用除外となるため、関税率の面では他国に比べると優位性が高い。

関税への対応として調達先の変更で対応する事業者もみられる。米国の建設業者の業界団体AGCが会員企業への調査に基づき2026年2月に公表した報告書では、関税への対応として約3割の企業がプロジェクトオーナーへの価格転嫁や調達の前倒しを挙げる。相対的に低い割合ではあるものの、13%が国内サプライヤーへの切り替えと回答している。

日本企業では、大手建設機械メーカーのコマツが2025年12月の事業説明会で、米国の追加関税への対応に言及した。短期的には鉄鋼・アルミの含有量の調査や、米国経由で輸送していたカナダ・中南米向けの製品の直送化、米国工場の部品調達先の変更、USMCAの適用拡大などに取り組むとした。中期的には関税率の変化に対応した完成車・部品のソースチェンジ、長期的には製品競争力の向上で対応するとしている。

国内売上の減少受け海外へ拡大する中国企業

個別企業の動向を見ていく。英国の建設業界メディアKHLグループが公表している世界の建設機械メーカーの売上上位50社(2025年版)を見ると、トップは米キャタピラーで、売上は約378億ドル、15.9%のシェア(注3)を占める(表3参照)。2位はコマツ(同シェア11.2%)で、上位2社を合わせて25%を超えるシェアを誇っている。

表3:世界の主要建設機械メーカー(売上上位10社) (単位:100万ドル)

2015年注:太字は中国企業。
企業 売上高
キャタピラー(米国) 28,283
コマツ(日本) 16,877
日立建機(日本) 7,790
ボルボ・コンストラクション・エクイップメント(スウェーデン) 7,785
テレックス(米国) 7,309
リープヘル(ドイツ) 7,129
ジョン・ディア(米国) 6,581
XCMG(中国) 6,151
SANY(中国) 5,424
斗山インフラコア(当時)(韓国) 5,414
2025年注:太字は中国企業。
企業 売上高
キャタピラー(米国) 37,844
コマツ(日本) 26,624
ジョン・ディア(米国) 12,956
XCMG(中国) 12,769
リープヘル(ドイツ) 12,420
SANY(中国) 10,834
日立建機(日本) 9,104
ボルボ・コンストラクション・エクイップメント(スウェーデン) 8,353
JCB(英国) 7,411
サンドビック・マイニング・アンド・ロックテクノロジー(スウェーデン) 6,974

注:太字は中国企業。
出所:KHL

他方、KHLが別途発表した2015年~2025年の収益の年平均成長率を見ると、中国の徐工集団(XCMG)と三一重工(SANY)が7%を超える成長を見せている。両社の2024年の海外売上高のシェアはそれぞれ約45%、約64%と2022年から増加を続けている(調査レポート「中国企業のASEAN展開に関する動向把握」参照)。他方で中国国内での売り上げは近年減少しており、それを補うかたちで国外でのビジネスを拡大しているといえよう。注力市場は異なり、XCMGは「一帯一路」の主要国でシェアを獲得している一方、SANYはアジア、オーストラリア、アフリカといった地域での売り上げを伸ばしている。中国国外の生産拠点も、SANYは米国、インド、ドイツ、インドネシアとなっている一方、XCMGは欧米印に加えて東欧やブラジル、ウズベキスタンなど、より幅広い地域に生産拠点を有する。

米国による関税への対応にも違いがみられる。XCMGは2025年4月、米国関税への対応として、リソースの分散と現地生産を進めることを検討しているとした(「コンストラクション・ブリーフィング」2025年4月24日付)。他方でSANYは、同社にとって米国市場の重要性が高くないことを踏まえ、関税による影響は限定的との見方を示している(「コンストラクション・ブリーフィング」2025年8月8日付)。

米国関税、インド、中東がトピックに

最後に、建設機械のサプライチェーンに関するトピックについて触れる。

まず、米国による鉄鋼・アルミに対する追加関税措置の見直しだ(2026年4月3日付ビジネス短信参照)。米国は2026年4月に関税措置の簡素化を発表した。同月6日以降、HSコード8429、8431.42、8431.43については25%、8474.90については2027年末までは15%(注4)と、いずれも追加関税率が引き下げられた。さらに、関税算出の基礎となる価格についても、含有する鉄・アルミ材料の価格から、そのほかの部材も含む製品の輸入申告価格全体へと変更されている。

2点目は繰り返しにもなるが、生産国としてのインドの地位の高まりだ。既に触れたとおり、輸出を大きく伸ばし貿易黒字も拡大する同国だが、2025年も引き続き成長を続けている。同国の輸出先上位は米国をはじめ、UAEや南アフリカ共和国などの中東・アフリカ地域、オーストラリア、メキシコ、英国などの欧州と地理的にも分散しており、複数市場の成長を取り込める状況にある点も同国の強みといえるだろう。国内市場が米中に次ぐ市場規模にまで拡大していることからも、国内販売向けも含めた生産拠点として注目を集めることが予想される。

3点目が2026年3月のホルムズ海峡の事実上の封鎖の影響だ。アイルランドの建設コンサルタントであるラインサイトは、封鎖を含めた中東情勢が建設資材価格に及ぼす影響を分析した。湾岸諸国が世界生産の約9%を占めるアルミニウムや、エネルギー価格の影響を受けやすいセメント、銅鉱の加工に必要な硫黄などのコモディティ価格への影響により、資材価格が高まるリスクがあると指摘している。

海峡の封鎖は建設機械そのものの貿易にも影響を与え得る。アジアから中東向けに建設機械を輸出する際には海上輸送が中心となることを考えると、物流の混乱に伴う影響を受けやすいといえるだろう。特にUAEに関しては、一部の建機メーカーがドバイを中心に中東・アフリカ向けのハブとして販売・物流拠点を有しており、影響が懸念される。


注1:
HSコード8429、8430、8431.42、8431.43、8474、8479.10を指す。うち「完成品」は8429、8430、8474、8479.10、「部品」は8431.42、8431.43を指す。 本文に戻る
注2:
HSコード8431.42に関しては、2025年6月4日までは25%の追加関税が適用されていた。 本文に戻る
注3:
売上上位50社の合計売上額に占めるシェア。 本文に戻る
注4:
詳細は2026年4月3日付2026年4月8日付ビジネス短信参照本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部国際経済課
山田 恭之(やまだ よしゆき)
2018年、ジェトロ入構。海外調査部海外調査企画課、欧州ロシアCIS課、ロンドン事務所を経て2025年8月から現職。