世界の次世代燃料の生産・消費動向を追うトランプ政権下で加速する米バイオ燃料政策

2026年4月22日

米国では、ドナルド・トランプ大統領が「米国のエネルギーを解放する」宣言の下、国内で生産するエネルギー資源の積極的な活用を推し進める。本稿では、その1つとしてトランプ政権が需要拡大を図る米国のバイオ燃料の普及状況と、トランプ政権下で拡大する連邦政府の政策やインセンティブの動向、その背景について概観する。

バイオ燃料の需要を左右する混合基準量は過去最高に

米国環境保護庁(EPA)は3月27日、再生可能燃料混合基準制度(RFS)(注1)について、2026~2027年の混合基準量の最終規則を発表した(米国環境保護庁(EPA)ウェブサイト参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。今回最終規則化された基準では、バイオ燃料の混合総量として2026年は268億1,000万RIN(再生可能燃料識別番号、1RIN=エタノール相当ガロン)(注2)、2027年は270億2,000万RINを設定した。これは、2005年に開始されたRFS導入以来、最も高い基準量だ。各燃料の混合基準量の推移は表1のとおり。バイオディーゼルや再生可能ディーゼル、トウモロコシ以外の原料由来の先進型バイオ燃料の混合基準量が大幅に増加し、混合総量を押し上げている。混合基準量はバイオ燃料の生産動向に直結するため、今回の発表により生産量のさらなる増加に期待が高まる。

このほかの主な変更点として、バイオ燃料由来の電力による電気自動車(EV)の充電で自動車メーカーがeRINというクレジットを生成できる制度の検討を中止した。前回の最終規則発表時にも採用が見送られていた(2023年6月22日付ビジネス短信参照)が、制度自体が廃止となった。一方、2025年6月に発表した、米国以外で生産されたバイオ燃料やその原料から生成されるRINを、米国産のバイオ燃料やその原料から生成されるRINの価値の50%とする提案は(2025年6月24日付ビジネス短信参照)、2028年以後に採用が延期となった。

表1:RFSにおける各燃料の混合基準量の推移(単位:RIN、1エタノール相当ガロン)注1:セルロース系バイオ燃料は、セルロースやヘミセルロース、リグニンを原料に生産される燃料。バイオディーゼルは、バイオディーゼルや再生可能ディーゼルなどのディーゼル燃料。先進型バイオ燃料は、トウモロコシ以外の原料(例:サトウキビなど)から生産されるバイオ燃料。再生可能燃料全体の混合基準量の達成には、これら3種類の燃料以外にも、温室効果ガス削減量20%以上を満たす従来型バイオ燃料を使用することが可能。従来型バイオ燃料には、トウモロコシを原料とするエタノールなどが含まれる。 注2:各燃料の混合基準量は入れ子式になっている。表の上部の燃料ほど基準量が小さいが、下部の混合義務量を達成するため、より上部の燃料を使用することが可能。 注3:2026~2027年の混合義務量には、表2で示す最終規則で再配分が決まった小規模製油業者に対する免除分も含む。
バイオ燃料の種類 石油と比較した温室効果ガス
削減量の条件
2023年 2024年 2025年 2026年 2027年
セルロース系バイオ燃料 60%以上 0.84 1.09 1.21 1.36 1.43
バイオディーゼル 50%以上 4.51 4.86 5.36 9.07 9.2
先進型バイオ燃料 50%以上 5.94 6.54 7.33 11.1 11.32
再生可能燃料全体の混合基準量 20%以上 20.94 21.54 22.33 26.81 27.02

注1:セルロース系バイオ燃料は、セルロースやヘミセルロース、リグニンを原料に生産される燃料。バイオディーゼルは、バイオディーゼルや再生可能ディーゼルなどのディーゼル燃料。先進型バイオ燃料は、トウモロコシ以外の原料(例:サトウキビなど)から生産されるバイオ燃料。再生可能燃料全体の混合基準量の達成には、これら3種類の燃料以外にも、温室効果ガス削減量20%以上を満たす従来型バイオ燃料を使用することが可能。従来型バイオ燃料には、トウモロコシを原料とするエタノールなどが含まれる。
注2:各燃料の混合基準量は入れ子式になっている。表の上部の燃料ほど基準量が小さいが、下部の混合義務量を達成するため、より上部の燃料を使用することが可能。
注3:2026~2027年の混合義務量には、表2で示す最終規則で再配分が決まった小規模製油業者に対する免除分も含む。

出所:EPA 

小規模製油業者への適用免除分は70%を再配分

最終規則では、免除が認められた2023年以後の小規模製油業者の再生可能燃料使用義務量(RVO)のうち、70%を大規模製油業者に再配分することも決まった。EPAは、小規模製油業者に対して、RINの購入などでRVOを達成することが経済的に困難であることを証明することを条件に、RVOの免除を申請できる制度を設けている。2025年8月と11月に、EPAは2016年分以後のRVOで、免除可否の決定を保留していた191件の申請のうち、部分的な免除を含めて152件を承認した。これにより、本来ガソリンやディーゼル燃料に混合されるはずだった60億8,000万RINのRVOが宙に浮いたが、今回の決定で2023年以後のRVOのうち70%に相当する20億3,000万RINを2026~2027年の混合総量に追加した。各燃料別の追加分は表2のとおり。追加分は大規模製油業者のRVOに加えられる。この決定までには、免除分のバイオ燃料の混合を強いられる製油業界からの反発もあったが、最終的には再配分を強く要求するバイオ燃料の関連団体の意向を大きく反映し、70%という高い割合で再配分することとなった。

表2:各燃料別の混合基準量に追加されたRVO免除分(単位:RIN、1エタノール相当ガロン)
バイオ燃料の種類 2026年 2027年
セルロース系バイオ燃料 0 0
バイオディーゼル 0.21 0.25
先進型バイオ燃料 0.28 0.34
再生可能燃料全体の混合基準量 0.99 1.04

出所:EPA

OBBBAによる税額控除適用条件の改正は、北米のバイオ燃料生産者の追い風に

2025年7月に成立した2026連邦会計年度予算法「大きく美しい1つの法案法(OBBBA)」では、インフレ削減法(IRA)の下で成立した税額控除の適用条件などが改正された。クリーンエネルギー関連の税額控除の適用条件が軒並み厳格化される中、バイオ燃料の生産に係る税額控除の適用条件には、生産者にとってプラスとなる条項が多く盛り込まれた。これら改正のあった税額控除の適用条件の詳細は表3のとおり。

今回改正され、バイオ燃料の生産にプラスとなる主な項目は、(1)クリーン燃料生産クレジット〔内国歳入法(IRC)45Z〕(注3)の適用期限の2年間の延長、(2)間接的土地利用変化(注4)の、税額控除額の算出で使用する二酸化炭素(CO2)排出量の積算対象からの除外、(3)小規模バイオディーゼル生産者を対象としたバイオディーゼルおよび再生可能ディーゼルに適用する税額控除の適用延長などだ。クリーン燃料生産クレジットは北米地域(米国・カナダ・メキシコ)産の原料であることが条件として新たに設けられるなど、米国で生産するエネルギー資源の活用を優先する姿勢が色濃く現れている。

表3:OBBBAにより改正されたバイオ燃料の生産に係る税額控除の適用条件

IRC45Z:クリーン燃料生産クレジット 注:燃料の生産過程でのライフサイクルGHG排出量を基に、燃料の種類によって排出割合を設定し、排出割合を基にした式で排出係数が計算される。税額控除の金額は、1ガロンあたりの税額控除額と排出係数の積に、燃料の体積を乗じた金額となる。
条項の内容 OBBBA制定前 OBBBA制定後
税額控除の適用時期 2027年12月31日まで 2029年12月31日まで
原料条件 なし 米国・カナダ・メキシコ産原料のみに適用
排出係数の算出方法(注) 燃料の生産過程でのライフサイクル温室効果(GHG)排出量がマイナス値になった場合も、そのまま排出係数の計算に使用可能。
  • 燃料の生産に使用する原料の排出割合がマイナス値の場合は、原料の排出割合を0に切り上げて、排出係数を計算するよう変更。ただし、動物性たい肥を原料とする燃料は除く。
  • 燃料の生産過程での排出割合の計算から、間接的土地利用変化の影響を除外。
SAFのボーナスクレジット 最大1.75ドル/ガロン 最大1ドル/ガロン
特定の外国法人に関する制限 なし
  • 特定の外国事業体については、2025年7月4日以降、税額控除の付与を禁止。
  • 外国の影響を受ける事業体は、2027年7月4日以降、税額控除の付与を禁止。
税額控除の二重適用の禁止 なし 45Zで税額控除を適用し生産した燃料を原料に生産した燃料には適用不可。
IRC40A:燃料として使用されるバイオディーゼルと再生可能ディーゼルに関するクレジット 注:燃料の生産過程でのライフサイクルGHG排出量を基に、燃料の種類によって排出割合を設定し、排出割合を基にした式で排出係数が計算される。税額控除の金額は、1ガロンあたりの税額控除額と排出係数の積に、燃料の体積を乗じた金額となる。
条項の内容 OBBBA制定前 OBBBA制定後
税額控除の適用時期 2024年12月31日まで 2025年7月1日~2026年12月31日まで
※小規模バイオディーゼル生産者のみ対象
税額控除額 10セント/ガロン 20セント/ガロン
原料条件 なし 米国・カナダ・メキシコ産原料のみ適用

注:燃料の生産過程でのライフサイクルGHG排出量を基に、燃料の種類によって排出割合を設定し、排出割合を基にした式で排出係数が計算される。税額控除の金額は、1ガロンあたりの税額控除額と排出係数の積に、燃料の体積を乗じた金額となる。

出所:米国連邦議会資料などからジェトロ作成

背景には共和党州を中心に広がる原料生産地と農業団体の後押し

これら政策は、トランプ大統領が2025年1月に発表した「 国家エネルギーの非常事態宣言外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」「米国のエネルギーを解き放つ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」大統領令に基づく(2025年1月22日付ビジネス短信参照)。同令では、国内のエネルギー資源の活用を妨げる全ての措置を特定するよう命じ、石油、天然ガスなどの化石燃料とともにバイオ燃料も活用を推進すべきエネルギーの1つとして挙げている。同令で触れているエネルギー安全保障の強化やEVへの優遇撤廃の文脈は、RFSやクリーン燃料生産クレジットの原産地要件の導入、eRINの廃止という内容に強く反映されている。

バイオ燃料の活用推進を促す政策の背景には、原料となるトウモロコシや大豆の一大生産地で、共和党の支持基盤である中西部の州や農業団体の存在がある。トウモロコシや大豆は、中西部を中心に広がるコーンベルトやソイビーンベルトと呼ばれる地帯に、生産量の多い州が集中している。これらの州の多くは、2024年の大統領選で共和党が勝利を収めた州だ。一方、2005年のRFS導入によりエタノールやバイオディーゼルの生産量は増加したが、近年では頭打ち感が否めず、生産可能な最大量に届いていない。さらに大豆やトウモロコシはブラジルなどの生産国の台頭により世界的なシェアを失いつつあることで、作物需要を牽引する輸出の拡大が制限される可能性が出てきた。

生産増加を喚起する需要が求められる中、2025年1月のトランプ大統領就任以降、バイオ燃料の取引組合であるグロースエナジーやエタノールの業界団体である再生可能燃料協会(RFA)、 全米油糧種子加工業者協会(NOPA)といった複数の団体は、混合基準量の引き上げを求めていた。EPAが過去最高となる混合基準量案を発表した2025年6月には、中西部の共和党州の知事や議員が称賛の声明を相次いで発表した。こうした動きから、トランプ政権がこれら共和党州や関連団体に配慮し、今後もバイオ燃料の需要拡大を促す政策を積極的に打ち出す可能性がある。

今後の課題は、さらなるエタノールの需要拡大か

エタノールの需要拡大には課題もある。2005年のRFS導入をきっかけに、米国で販売するガソリンのほとんどはエタノールを10%混合したE10となった。しかし、10%を超えてエタノールを混合するE15は、現状の燃料タンクやディスペンサーなどのインフラで供給するには耐久性の確保が必要との指摘がある。ゆえに、E15の普及は限定的で、エタノールの混合割合は10.5%(2025年10月時点の12カ月平均値)にとどまる。これは「10%ブレンドの壁」とも呼ばれ、エタノールの生産量・消費量ともに2010年代半ば以降、頭打ちの状態が続いている(図)。

図:米国におけるエタノールの生産量と消費量の推移
2005年は40億5900万ガロン。2024年は162億2500万ガロン。消費量は、2005年は39億400万ガロン。2024年は142億4500万ガロン。

出所:米国エネルギー省を基にジェトロ作成

一方、第2次トランプ政権の発足以降、E15の需要拡大を後押しする動きは活発化している。EPAは3月25日、エタノールを15%混合したE15ガソリンの夏季販売を解禁すると発表した(注5)。E15ガソリンは、高温下の使用では光化学スモッグを発生させる危険性があるため、夏季の使用を基本的に禁止している。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻や中東での紛争に起因するガソリンの供給不足に対処するため、バイデン前政権下の2022年から例外的にE15ガソリンの販売を認めていた。第2次トランプ政権では、自身の政策と結びつけるかたちでこれを継承し、2025年にも夏季販売を認めている。

また、農務省は2025年3月、E15ガソリンをはじめ再生可能燃料の供給設備の導入に係る29州の543件のプロジェクトに対して、総額5億3,700万ドルの助成〔高混合燃料インフラ・インセンティブ・プログラム(HBIIP)〕を行うと発表した。販売を奨励する政策と供給インフラの整備というソフト・ハードの両面から、E15の需要拡大を狙う格好だ。さらに、共和党議員を中心に、E15の通年販売実現に向けたタスクフォース設立に関する動きもある(ロイター1月23日)。

RFSの最終規則発表を受け、バイオ燃料業界に再び注目が集まる。エタノールの需要の拡大を狙う政策も続々と動き出す中、今後もその動向に注視が必要だ。


注1:
大気浄化法に基づいて2006年に導入されたRFSでは、製油業者および輸入・輸出業者に対し、ガソリンまたはディーゼル燃料に、4種類のバイオ燃料(セルロースバイオ燃料、バイオディーゼル、先進型バイオ燃料、従来型バイオ燃料)を再生可能燃料使用義務量(RVO)として一定量混合することを義務付けている。製油業者および輸入業者は自身に割り当てられたRVOを達成するか、達成できない場合などは再生可能識別番号(RIN)と呼ばれる市場で取引可能なクレジットの購入を求められる。RVOの値は、業者や燃料の種類によって異なる。 本文に戻る
注2:
1エタノール相当ガロンは約3.8リットル。バイオディーゼルや再生可能ディーゼルのRINはエタノールを基準にしたエネルギー含有量を基に計算し、バイオディーゼルや再生可能ディーゼル0.78ガロンあたり1RIN(1エタノール相当ガロン)が生成されると設定。2026~27年の混合義務量には、表2で示す最終規則で再配分が決まった小規模製油業者に対する免除分も含む。 本文に戻る
注3:
輸送用燃料を生産・販売した場合に、賃金・見習い要件(2024年6月21日付ビジネス短信参照)を満たす場合、最大で1ガロン(約3.8リットル)当たり1ドルの税額控除を付与すると定めた条項で、同要件を満たさない場合には、最大0.25ドルとなる。 本文に戻る
注4:
大豆などの作物をバイオ燃料の原料として利用することで、原料に商品作物としての価値が付加されることで、農地の拡大を招くという考え方。 本文に戻る
注5:
3月25日の公示では、5月1~20日までE15ガソリンの販売を解禁した。大気浄化法では、1度の公示で設定できる販売解禁期間は20日が上限となる。20日を超えるたびに公示を行うことで、販売解禁期間を延長することが可能。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部米州課
小谷田 浩希(こやた ひろき)
2022年、ジェトロ入構。企画部国内事務所運営課を経て、2025年から現職。

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