世界の次世代燃料の生産・消費動向を追う広東省のバイオディーゼル産業の進展と企業動向(中国)
2026年4月28日
中国政府が2025年10月28日に発表した第15次5カ年(2026~2030年)規画に関する建議では、化石燃料の安全で秩序ある代替を進め、エネルギー消費のグリーン化・低炭素化を推進することが掲げられた。また、交通運輸やエネルギーなどの重点分野のグリーン・低炭素転換を進める方針も示されており、排出削減目標などの達成に向けて、交通分野におけるエネルギー転換の重要性が改めて強調された。こうした輸送部門の脱炭素化を進める上で重要な役割を担うのが次世代燃料である。
「転換を迎える中国の次世代燃料市場」(2026年3月11日付地域・分析レポート)では、中国の次世代燃料の中でも、エタノールは穀物系原料の制限や新エネルギー車(NEV)の普及によるガソリン需要の縮小で政策自体がトーンダウンしている一方、バイオディーゼルや持続可能な航空燃料(SAF)については、国内の豊富な原料資源を生かしつつ、輸出先の多角化や政策支援を通じた国内市場の拡大が進められていることを明らかにした。
その中で、広東省は南沙区を中心に国際海運物流ハブとしての機能を有し、加えて豊富な廃食用油(UCO)を持つことから、バイオ燃料のうちバイオディーゼル分野において国内で先行した取り組みが展開されてきた。本稿では、広東省におけるバイオディーゼルの発展状況や政策動向、主要企業の取り組み、そして直面する課題について概観する。
広東省で船舶向けバイオディーゼルの活用が先行
まず、中国全体におけるバイオディーゼルの動向を見ていく。中国ではNEVの普及による国内のガソリン消費量の減少などを背景に、豊富なUCOを活用して精製したバイオディーゼルを欧州などへ輸出する動きが強まった。中国国際貿易促進委員会(CCPIT)によれば、国内生産された製品の9割以上が輸出向けとなっていた。しかし、中国から安価なバイオディーゼルの輸入が急増したことを受け、欧州委員会は2023年12月から中国産バイオディーゼルに対するアンチダンピング(AD)調査を開始し、2024年8月に暫定AD税(12.8~36.4%)、2025年2月に正式な課税(10~35.6%)を導入した。その結果、中国からEUへのバイオディーゼルの輸出は大幅に減少した。
その一方で、広東省からの輸出はむしろ増加した。中国の海関(税関)のデータによると、中国産バイオディーゼル(HSコード382600)の輸出量は2025年1~11月で約81万8,800トンとなり、AD調査開始前の2023年1~11月の輸出量と比べて55.1%減少した。それに対し、広東省の2025年1~11月の輸出量は2023年同期比で58.8%増加し、中国全体に占める割合も2023年の5.7%から2025年には20.2%へと大幅に上昇した(表参照)。
| 省 | 2023年1~11月 | 2025年1~11月 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 輸出量(トン) | 構成比(%) | 輸出量(トン) | 伸び率(%) | 構成比(%) | |
| 福建省 | 403,214 | 22.1 | 264,251 | △ 34.5 | 32.3 |
| 河北省 | 208,835 | 11.5 | 242,229 | 16.0 | 29.6 |
| 広東省 | 104,068 | 5.7 | 165,273 | 58.8 | 20.2 |
| 江蘇省 | 176,200 | 9.7 | 58,420 | △ 66.8 | 7.1 |
| 浙江省 | 279,125 | 15.3 | 42,494 | △ 84.8 | 5.2 |
| 全国 | 1,822,200 | 100 | 818,800 | △ 55.1 | 100 |
注:2025年1~11月の輸出量上位5省と全国を掲載。
出所:税関総署のデータを基にジェトロ作成
また、企業情報データベース「企査査」で「バイオディーゼル」を検索した結果、中国全国の関連企業数は7,497社(2026年1月16日時点)で、そのうち広東省内の企業数は1,134社となり、全体の15.1%を占めた。この数は、バイオディーゼルの輸出量が最も多い福建省(973社)を上回っている。全国最多の飲食店舗数を誇る広東省は飲食産業が集積しており、UCOを豊富に確保できることから、同省にバイオディーゼル関連企業が多く集中したとみられる。
中国がEU向け輸出の減少を受けて輸出先の多角化や国内での利用拡大に向けた取り組みを進める中(「転換を迎える中国の次世代燃料市場」参照)、国際海運物流ハブとしての優位性と豊富なUCOを持つ広東省では、船舶向けバイオディーゼルの活用が先行して進められている。
2023年9月には広東省広州市で国内初となる保税低硫バイオ燃料油(注1)の国際航行船舶向け給油が実施され、技術的な操作や監督管理モデルの検証が行われた。しかし、広州市商務局によれば、当時は現行政策の制約により、華南地域での給油は船舶用燃料油とバイオディーゼルを香港で混合した後に再度保税輸入する必要があり、コスト増が課題となっていた。そのような背景の中、広州市は2023年11月に国家能源局が発表した「バイオディーゼル普及応用パイロット示範の通知」に申請し、審査を経て2024年3月に全国22件のバイオディーゼル普及パイロットプロジェクトの1つとして正式に選定された。
さらに2024年6月には、第53回世界環境デー(中国では第10回環境デー)に合わせて、中国国有企業の招商局集団傘下の招商局港口(華南)運営センターが管轄する蛇口港で、中国国営の海運大手・中国遠洋海運集団(COSCO)のコンテナ船事業を統括する中遠海運集装箱運輸の「新アジア」号に対し、3,850トンのバイオ燃料油(B24、24%のバイオディーゼルを混合)が給油された。これは国内最大規模の単一船舶への給油となった。
バイオディーゼル普及への動き
こうしたパイロットプロジェクトや導入事例が進む中、広東省ではバイオディーゼルに関連した政策も相次いで打ち出された。広東省政府は2024年12月5日、「新エネルギーの科技イノベーションを強化し、エネルギー産業の発展を促進するに係る実施意見(中国語)
」(粤弁函〔2024〕315号)を発表した。同意見では、エネルギー産業のイノベーションと育成を加速するため、バイオ燃料を含む次世代燃料分野の研究開発を強化するとした。具体的には、バイオマスエネルギー(注2)の転換利用などの研究開発を重点的に推進し、企業・研究機関が連携した共同研究体制を構築することで、新型エネルギーシステムの構築や産業化を加速するとした。
また、同年12月23日に「広東省2024-2025年省エネと炭素削減アクションプラン(中国語)
」(粤府〔2024〕80号)が発表された。同アクションプランでは、交通分野における化石燃料の代替を加速させるとし、先進的なバイオ液体燃料やSAFの普及を推進することが明記された。
さらに2025年1月22日には、「広東省のバイオ製造産業のイノベーション高地(影響力のある場所)の建設を促進するためのアクションプラン」(中国語)
(粤弁函〔2025〕6号)が発表された。同アクションプランは「バイオ製造+エネルギー」分野において、バイオ燃料・バイオ天然ガス・バイオ水素製造の研究開発と産業化を加速するとした。具体的には、バイオディーゼル、SAF、燃料エタノールなどのバイオ燃料技術を高度化し、交通や農業分野での利用拡大を図ることが盛り込まれた。
「転換を迎える中国の次世代燃料市場」でも指摘したとおり、バイオディーゼルの国内市場はまだ限定的であるものの、こうした政策的な後押しもあり、広東省内でもバイオディーゼルの研究開発を進めるなど、普及に向けた動きが見られつつある。
バイオディーゼル生産販売企業の動向
こうした状況下で、広東省における関連企業は国内外での事業展開をどう模索しているのか。ジェトロは広東省でバイオディーゼル生産販売を行う深セン市朗坤科技(以下、朗坤科技)に話を聞いた(取材日:2025年12月3日)。
朗坤科技は2001年に設立し、「バイオマス資源再生」と「合成バイオ製造」という2軸のビジネスを展開する深セン市発のイノベーティブ企業だ。同社は、既述の広州市主導のバイオディーゼル普及パイロットプロジェクトにも参加した実績がある。
同社のバイオマス資源再生事業は創業以来の基盤事業で、バイオテクノロジーを活用した有機廃棄物の資源化に特化したビジネスを特徴とする。具体的には、レストランでの廃棄物、一般家庭から出るUCO、生ごみなどの多様な有機廃棄物を収集して、「バイオマス資源再生センター」において、バイオ酵素や微生物発酵技術で分解・変換し、バイオディーゼルやグリーン電力などのグリーンエネルギーを生産する。
同社は中国国内に「バイオマス資源再生センター」を30拠点以上設置し、京津冀(北京市、天津市、河北省)、珠江デルタ(広州市、東莞市、深セン市、恵州市、仏山市、中山市、珠海市、江門市、肇慶市)、長江デルタ(上海市、江蘇省、浙江省、安徽省)などの経済圏に集中的に展開している。そのうちの5拠点では、1日あたり1,000トンの有機廃棄物の処理能力を有している。2023年には、処理量による炭素削減が122万6,000トン、バイオディーゼル生産による炭素削減が77万7,000トンを達成した。
このように国内でバイオディーゼルの生産を手掛ける同社は、バイオディーゼルの国内市場が限定的であることについてどう見ているのか。同社は、市場が停滞している要因としては価格の高さなどを挙げた。バイオディーゼルの価格は普通ディーゼルよりも高く、政府によるバイオ燃料の強制混合といった法制度の整備や補助金などの政策的支援がなければ、普及は困難だという。
さらに、NEV推進政策もバイオディーゼル市場に影響を与えている。前述のとおり、バイオディーゼルの国内需要は低く、90%以上が輸出に依存している。中国のバイオディーゼル価格は世界最安水準であるものの、AD税導入の影響で輸出量は約半減した。こうした市場環境の変化を受け、同社は海外販売ルートの確保が課題となっており、欧州や東南アジアでの工場設立を含め、海外市場の開拓も視野に入れている。
広東省は、国際海運物流ハブとしての機能や豊富な原料という強みを背景にバイオディーゼル関連企業が集積し、国内でもいち早く国際航行船舶向けにバイオディーゼルの活用を進めてきた。しかし、バイオディーゼルは中国全体として輸出に依存しており、国内での普及に向けては課題が残る。そのような中、広東省では交通分野での利用拡大に向けてパイロットプロジェクトや関連政策が打ち出されている。今後、制度整備や政策的支援が進めば、同省は国内のバイオディーゼル産業を牽引するモデル地域となり得るのか、引き続きその動向に注目したい。
- 執筆者紹介
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ジェトロ・広州事務所
梁 梓園(リョウ シエン) - 2017年、ジェトロ・広州事務所入所。





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