世界の次世代燃料の生産・消費動向を追う戦時下ウクライナの次世代燃料戦略

2026年3月9日

世界的に脱炭素化やエネルギー安全保障の重要性が高まる中、電化が難しい航空・海運分野では、バイオ燃料、合成燃料(e fuel)、水素といった次世代燃料の役割が一層大きくなっている。ウクライナは農業残渣(ざんさ)や廃棄物由来の豊富な原料を背景にバイオメタンやグリーン水素などの潜在力を有しており、EU市場への統合を見据えた制度整備が進む。

短期的には、ガソリンへのバイオ燃料混合義務や熱利用といった国内での導入拡大が進むほか、バイオメタンについては既存インフラを活用したEU向け輸出がすでに開始され、一定の進展が見られる。中期的には、EU基準に沿った国家戦略の下、水素や非バイオ由来再生可能燃料(RFNBO)との整合性確保、認証・トレーサビリティー制度の構築、輸送回廊の整備などが進められており、輸出基盤形成が図られている。

一方、戦時下においてはエネルギー関連施設やインフラが攻撃対象となりやすく、生産拡大や安定供給には依然として制約がある。本稿では、戦時下のウクライナにおける次世代燃料の政策枠組み、導入動向、国際協力の状況を整理し、その特徴と今後の課題を明らかにする。

国家戦略における次世代燃料の位置付け

ウクライナは、脱炭素化、エネルギー転換、ロシアによって被害を受けたエネルギー部門の復興を同時に進めるにあたり、バイオ燃料、水素・合成燃料などの次世代燃料の導入を、EUのエネルギー市場との統合(2025年4月17日付ビジネス短信参照)を見据えて進めている。

EUもロシア産化石燃料への依存脱却と信頼できるパートナーとの新たな供給関係の構築を目指すリパワーEU計画(2022年9月1日付地域・分析レポート参照)実施の中で、ウクライナとも協力を進めている。

次世代燃料の分野を見ると、2023年2月2日、ウクライナ政府と欧州委員会は、「バイオメタン、水素、その他合成ガスを対象とする戦略的パートナーシップに関する覚書」に署名した。覚書は、ウクライナとEUが、エネルギー安全保障強化と再生可能エネルギー(再エネ)導入促進、天然ガス依存脱却、規制調和・市場統合・越境協力・研究開発を通じて再生可能ガス(バイオメタン、水素、その他合成ガス)中心のエネルギー転換と復興を共同で進めることを目指している(参考1)。

参考1:ウクライナ政府と欧州委員会のバイオメタン、水素、その他合成ガス分野の協力

  1. エネルギー安全保障・供給の安定性・インフラ強靱(きょうじん)化を重視した再建支援を行うこと。
  2. EU基準に沿ったバイオメタン、水素、その他合成ガスの導入と普及を加速させること。
  3. 天然ガス輸入の代替を早期に進めること。
  4. イノベーション技術導入のため、規模の経済を共同で発展させ、両地域のエネルギー部門の脱炭素化を図ること。
  5. バイオメタンの潜在力や既存ガスインフラを効率的に活用することで投資コストを削減すること。
  6. 再エネ分野の雇用創出や投資促進を通じて、ウクライナの経済・社会復興を支援し、バイオメタン、水素、その他合成ガスのEU向け輸出を促進すること。
  7. 持続可能な再生可能ガス部門の発展に向け、長期的で安定した制度枠組みを構築し、協定以上の規制調和を目指すこと。
  8. 特に隣接EU加盟国との間で、バイオメタン、水素、その他合成ガスに関する地域協力を強化すること。
  9. 関連市場統合や越境取引の発展を支援すること。
  10. 研究開発およびウクライナ国内の再エネ市場の成長を支援し、気候中立的なかたちで地域エネルギー網に統合する解決策を促進すること。

出所:2023年2月21日ウクライナ政府と欧州委員会が締結した「バイオメタン、水素、その他合成ガスを対象とする戦略的パートナーシップに関する覚書」からジェトロ作成

ウクライナはEU加盟候補国およびエネルギー共同体(注1)の締約国として、EUの「エネルギー同盟および気候対策のガバナンスに関する規則(EU)2018/1999」や再生可能エネルギー指令(RED II、REDIII)などのEU基準と整合するかたちで、エネルギー・気候対策の設計を進めている。その中核として、2024年6月25日に閣議承認された国家エネルギー・気候計画(National Energy and Climate Plan:NECP)が位置付けられ、2030年までに温室効果ガスの1990年比65%削減や、最終エネルギー総消費量に占める再エネ比率27%などの目標を掲げている(参考2、表1)。

参考2:国家エネルギー・気候計画の主な目標

  • 温室効果ガス排出量を1990年比で65%削減する。
  • 最終エネルギー消費量全体に占める再生可能エネルギー源の割合を27%にする。
  • エネルギー源と供給ルートの多様化を推進する(単一の供給元からの供給は30%以下とする)。
  • 一次エネルギー消費量は石油換算7,222万4,000トン以下、最終エネルギー消費量は石油換算4,216万8,000トン以下とする。

出所:2024年6月25日付閣僚会議指令第587-r号「2030年までの国家エネルギー・気候計画の承認について」からジェトロ作成

表1:2030年の目標を達成するために各再生可能エネルギー源から予想される総消費量(設備容量、電力生産量)(-は値なし)注:電力の安定供給のためには、供給と需要を常にバランスさせる必要があり、急速起動・停止が可能な電源を指す。
発電元別 2020年 2025年 2026年 2027年 2028年 2029年 2030年
MW GWh MW GWh MW GWh MW GWh MW GWh MW GWh MW GWh
水力発電 4,824 6,002 4,711 7,507 4,717 8,794 4,721 9,126 4,722 9,051 4,725 9,130 4,728 8,908
地熱エネルギー 5 26 10 53 20 105 40 210
太陽光発電 6,872 5,969 8,160 8,739 8,800 10,065 9,600 11,360 10,600 12,369 11,400 13,275 12,200 13,471
風力発電 1,314 3,271 2,085 5,995 3,285 9,074 4,085 12,153 5,085 14,932 5,585 16,211 6,214 17,455
バイオエネルギー 210 755 463 2,452 563 2,979 664 3,479 747 3,863 831 4,304 876 3,850
階層レベル2の項目液体バイオ燃料 107 284 278 1,379 328 1,664 379 1,930 412 2,096 446 2,289 475 2,186
階層レベル2の項目バイオガス 103 471 185 1,073 235 1,315 285 1,549 335 1,767 385 2,015 401 1,664
合計 13,220 15,997 15,419 24,693 17,365 30,912 19,075 36,144 21,164 40,268 22,561 43,025 24,058 43,894
高い調整力を有する電源(注) 248 399 606 640 736 906
エネルギー貯蔵設備 46 296 436 526 606 656

注:電力の安定供給のためには、供給と需要を常にバランスさせる必要があり、急速起動・停止が可能な電源を指す。
出所:2024年6月25日付閣僚会議指令第587‑r号「2030年までの国家エネルギー・気候計画の承認について」からジェトロ作成

このNECPを具体化する実施枠組みとして、2024年8月13日、政府は「2030年までの再生可能エネルギーに関する国家行動計画とその実施計画」(National Renewable Energy Action Plan until 2030、NREAP)を承認した。NREAPは、2030年に最終エネルギー総消費量に占める再エネ比率を27%としつつ、各部門別の見通しを提示し、38の施策を通じて再エネの導入を進めるとしている(表2)。

表2:用途別再生可能エネルギー消費量の目標(石油換算・1,000トン)(-は値なし) 注1:冷却を含む 注2:電気輸送による電力消費を除く 注3:乗数(係数)を除く
項目 2020年 2025年 2026年 2027年 2028年 2029年 2030年
熱利用(注1) 2,869 4,175 5,077 5,466 6,035 6,503 7,400
電力エネルギー(注2) 1,332 1,982 2,457 2,846 3,149 3,297 3,365
輸送(注3) 95 142 276 417 553 730 830
最終エネルギー総消費量 4,296 6,298 7,810 8,730 9,737 10,529 11,594

注1:冷却を含む
注2:電気輸送による電力消費を除く
注3:乗数(係数)を除く
出所:2024年8月13日付閣僚会議指令第761-r号「2030年までの再生可能エネルギーに関する国家行動計画とその実施計画の承認について」からジェトロ作成

バイオ燃料:国内の再エネ熱利用・輸送部門などで活用

ウクライナは食料・飼料作物や廃棄物・農業残渣を原料に、1990年代からバイオ燃料の導入を拡大してきた歴史がある。NREAPにも、バイオ燃料の国内での拡大が盛り込まれており、熱利用の分野ではバイオエネルギーが再エネの中核を担っている。

同計画では2030年にバイオ燃料由来の熱エネルギーを年間598万4,000石油換算トン(以下、toe)まで拡大する。投資面ではバイオマス・バイオガス発電に16億8,100万ドル、再エネの熱利用(主としてバイオマス)に34億1,900万ドル、運輸部門におけるバイオエタノールの利用には4億5,000万ドル、バイオディーゼルに1,900万ドル、バイオメタンに200万ドルの投資が計画されている。

2020年時点では再エネ熱の約98%がバイオエネルギー由来だった。2030年に向けて、再エネ熱の総量は740万toeに伸びる見通しだ。その中でバイオエネルギーはバイオマスを中心に2020年比で約2倍の598万toeに拡大させる。他の再エネ熱による消費量も拡大させ、再エネの熱利用における多様化を進める(表3)。

表3:再生可能エネルギー熱利用における最終消費量見通し(石油換算・1,000トン)(-は値なし)注:バイオエネルギーはバイオマス起源の固体・液体・気体燃料の総称。本表では熱用途のためバイオマス(主に固体)とバイオガス(気体)に分けている。
項目 2020年 2025年 2026年 2027年 2028年 2029年 2030年
地熱(ヒートポンプ用低温地熱を除く) 6 13 17 21 24 27
太陽熱エネルギー 1 74 96 112 129 146 163
バイオエネルギー 2,816 3,280 3,993 4,304 4,770 5,165 5,984
階層レベル2の項目 バイオマス 2,797 3,261 3,939 4,206 4,644 4,970 5,749
階層レベル2の項目 バイオガス 19 19 54 98 126 195 235
ヒートポンプ 52 815 975 1,033 1,115 1,168 1,226
階層レベル2の項目空気熱 36 749 879 917 979 1,012 1,050
階層レベル2の項目 地熱 10 60 89 108 127 146 165
階層レベル2の項目 熱水 6 6 7 8 9 10 11
合計 2,869 4,175 5,077 5,466 6,035 6,503 7,400

注:バイオエネルギーはバイオマス起源の固体・液体・気体燃料の総称。本表では熱用途のためバイオマス(主に固体)とバイオガス(気体)に分けている。
出所:2024年8月13日付閣僚会議指令第761-r号「2030年までの再生可能エネルギーに関する国家行動計画とその実施計画の承認について」からジェトロ作成

ウクライナはNREAPで輸送部門における再エネとしてバイオ燃料の活用を位置付け(表4)、その定義・品質・認証の枠組みをEU基準(RED II)およびEUの統一規格であるEN規格に整合させている。

表4:2030年目標達成に向けた再生可能エネルギー由来、バイオ燃料の利用分野(運輸部門)(石油換算・1,000トン)(-は値なし)注1:「第2世代」は食料・飼料と競合しない廃棄物・残渣を指す 注2:「バイオガス」は元の表に記載が無いためジェトロで分類を整理
項目 2020年 2025年 2026年 2027年 2028年 2029年 2030年
運輸部門における再生可能エネルギー総消費量 95 142 276 417 553 730 830
階層レベル2の項目再生可能電力 44 141 201 262 313 403 409
階層レベル2の項目液体バイオ燃料 51 0.1 75 155 240 327 420
階層レベル3の項目バイオエタノール 51 0.1 73 152 233 318 408
階層レベル4の項目食料・飼料作物由来のバイオエタノール 51 0.1 72 150 230 314 398
階層レベル4の項目廃棄物・残渣由来のバイオエタノール(第2世代) 1 2 3 4 10
階層レベル3の項目バイオディーゼル 2 4 6 8 12
階層レベル4の項目食料・飼料作物由来のバイオディーゼル
階層レベル4の項目廃棄物・残渣由来のバイオディーゼル(第2世代) 2 4 6 8 12
階層レベル2の項目バイオガス(バイオメタン) 1
階層レベル4の項目廃棄物・残渣からのバイオメタン(第2世代) 0.5
階層レベル4の項目水素と生物起源CO2のメタン化によるバイオメタン 0.5

注1:「第2世代」は食料・飼料と競合しない廃棄物・残渣を指す
注2:「バイオガス」は元の表に記載が無いためジェトロで分類を整理
出所:2024年8月13日付閣僚会議指令第761-r号「2030年までの再生可能エネルギーに関する国家行動計画とその実施計画の承認について」からジェトロ作成

国内でのバイオ燃料の主な活用動向を見ると、自動車用ガソリン分野ではEUと市場統合を見据え、制度導入と調整が進んでいる。2025年5月1日から、国内で販売される自動車用ガソリンに、体積比5%(E5)のバイオエタノールの混合が義務化された。ウクライナ政府は、この混合比率をEUの標準であるE10(7~10%)水準へと引き上げる方向で議論を進めている。背景には欧州産のE5はE10より調達コストが高いこと、E5だと国内バイオエタノール需要拡大という国内政策目的を十分に果たせないことなどが挙げられる。

ウクライナ産バイオ燃料の輸出動向を見ると、EUの支援を受けながら国内でバイオエタノール工場の建設やEUへのバイオメタンの輸出を進めている。ウクライナ財務省は、2024年8月1日付財務省令第380号(同年9月9日施行)によりバイオメタンのパイプライン輸出に係る関税制度を整備した。2025年2月にはEU向けの輸出が開始され、6万7,000立方メートルを輸出した。 ウクライナ・バイオエネルギー協会(UABio)によると、ウクライナは2030年に350億立方メートルのバイオメタン生産能力を持ち、2050年にはEU需要の最大20%を供給し得るとしている。

表5:ウクライナにおけるバイオ燃料の主な国際協力・投資動向(2024~2025年)
日付 分野 主な内容
2024年6月 バイオエタノール 欧州復興開発銀行(EBRD)は、バイオ燃料の開発・製造を行うウクライナ企業ラン・オイルに対し6,000万ユーロの融資を決定。EUの再エネ指令(RED III)に準拠したバイオエタノール工場建設を支援し、戦時下における民間主導のバイオ燃料投資案件となる。
2025年2月 バイオメタン 農業大手ビタグロが、ウクライナ産バイオメタンを初めてEU向けに輸出。ウクライナ‐スロバキア国境経由でドイツに約720MWh(約6.8万立法メートル相当)をパイプライン供給。ウクライナによるEU向けバイオメタン輸出の初事例。
2025年5月 バイオメタン ウクライナの農業・食品大手MHPが、液化バイオメタン(Bio‑LNG)の商業生産を開始し、EUパートナー向けに初出荷。これに先立ち、2月には気体バイオメタンをパイプライン経由でドイツに輸出している。

出所:各種報道からジェトロ作成

水素・合成燃料は制度・インフラの整備段階

水素および水素由来の合成燃料に関する制度・インフラの整備も進んでいる。 ウクライナは、まず合成燃料の生成に必要な水素の生産と、将来的なEUへの輸出を掲げている。国内の水素戦略については議論が続いているが、エネルギー省は2024年2月に「2050年までのウクライナ水素戦略の承認およびその実施のための措置に関する運用計画の承認について」の案(注2)を発表した。この戦略ではウクライナにおける低炭素水素の生産量を2035年に最大130万トン、2050年には最大300万トンと想定している。ウクライナ水素協議会が2023年に発表した「未来を動かす:ウクライナの水素イニシアチブ」によると、ウクライナには年間約4,495万トンのグリーン水素を生産できる潜在力がある。

合成燃料は、再生可能電力で製造した水素を原料とするRFNBOに分類される。EUは2023年に委任規則2023/1184でRFNBOの基準を策定し、域外輸入品にも適用した。ウクライナからEUへ合成燃料を含む水素を原料として合成された燃料や化学品を輸出するには、EU基準に適合した第三者認証によるRFNBO適合証明と、UDB(Union Database for Biofuels)により原産地から最終消費者に至るまで確認するトレーサビリティーへの対応が必要だ。しかし、これらの要件は投資コストやオフテイク(買い手)の確保に影響するため、EU内でも運用の柔軟化を求める議論が続いている。ウクライナ側は水素製造、供給においてもEU基準の採用を進める意向を示しているが、水素製造のコストの高さ、戦時下における地政学リスク、EUのオフテイク市場の要求に対応するための法律の未整備が指摘されている。

水素の開発を巡る動きを見ると、2024年4月にウクライナと韓国の企業がリウネ州での再エネ由来水素・アンモニアの国内製造構想を発表した。11月には米・日・韓・ウクライナによるクリーン燃料パイロットへの資金支援が進展し、供給・実証の基盤づくりが進んだ。2025年1月に「ウクライナ–EU水素回廊」覚書により、既存パイプラインの改修、規制整合、越境トレーサビリティーなどの検討が始まり、2030年以降のEU輸出に向けた道筋が明確化した(表6)。

表6:ウクライナにおける水素輸出を巡る主な国際協力・投資動向(2024~2025年)
日付 分野 主な内容
2024年4月 水素・アンモニア(再エネ由来) ウクライナ西部リウネ州において、肥料・チタン・ガスを中心に欧州・アジアで事業を展開するグループDFインターナショナルと、韓国の現代エンジニアリングが化学インダストリアルパーク構想を発表。再エネ由来の水素・アンモニアを国内で製造する計画であり、関連インフラ整備を視野に入れる。
2024年11月 水素・アンモニア 米国主導の「FIRST」(小型モジュール炉技術の責任ある利用のための基盤インフラ)イニシアチブの枠組みで、水素・アンモニアなどクリーン燃料関連のパイロット事業3案件に対し、総額3,000万ドルの協力を表明(COP29)。日・韓・米・ウクライナによる多国間連携。
2025年1月 水素(再エネ電力由来) ウクライナのガス輸送事業者(Gas TSO of Ukraine)などが、「ウクライナ・EU水素回廊」に関する覚書を締結。2030年以降を視野に、スロバキア、チェコ、オーストリアを経由してドイツへ輸送するパイプライン構想について、規制協調や投資協力の枠組みを定めた。

出所:各種報道からジェトロ作成

戦時被害の規模とエネルギー部門への打撃

ウクライナ政府は、国家エネルギー・気候計画(NECP)実現のため415億~500億ドルの投資を必要とすると見積もっている。

2025年2月25日に発表された第4次迅速被害・ニーズ評価(RDNA4)によれば、ウクライナの国内発電能力の過半が破壊されたとされ、エネルギー部門だけでも約205億1,000万ドルの直接被害が生じたと推計される。そのため、分散型再エネ(分散型太陽光発電・バッテリーエネルギー貯蔵システム・バイオマスなど)導入により、公共インフラのエネルギー効率と強靭性を高めることが急務となっている。

以上の状況を踏まえ、次世代燃料政策は、短期的にはバイオ燃料のガソリン混合義務や熱利用など消費側制度の整備と、発電や熱利用への投資による生産・供給能力の拡大を進める。中期的には水素・RFNBOの認証整合化とEU向けの輸出基盤の構築を進め、これらを実行する上でEU基準への整合化、オフテイク確保、投資資金の調達が要点となる。


注1:
エネルギー共同体とは、市民や中小企業、自治体が共同で再エネを生産・管理・消費し、低コストのエネルギー利用や効率化を通じて地域の経済・社会的メリットを生み出す仕組み。 本文に戻る
注2:
2024年に公表されたドラフト版であり、2026年2月時点では未承認。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部欧州課ロシアCIS班 課長代理
小野塚 信(おのづか まこと)
2021年、民間企業勤務を経て、ジェトロ入構。