世界の次世代燃料の生産・消費動向を追う歴史あるバイオ燃料業界に新販路開拓の課題(コロンビア)
2026年3月18日
コロンビアのバイオ燃料政策には、20年以上の歴史がある。サトウキビ由来エタノールとパームオイル由来バイオディーゼルの双方を生産。また、ガソリンや軽油との混合比率基準もある。
しかし、その競争環境は厳しい。まず国内市場では、米国産燃料用エタノールとの競合がある。また、バイオディーゼルを輸出するにも、インドネシア産と競争しなければならない。
当連載では、同国の次世代燃料開発について追う。その前編で、バイオ燃料導入の現状と展望について報告する。
導入から20年以上の歴史
コロンビアでは長きにわたって、バイオ燃料を導入してきた。半世紀以上の歴史を持つブラジルほどではないにせよ、だ。
国内人口50万以上の都市で、ガソリンへの酸素含有添加剤として「エタノールの混合義務を定める法律」(注1)を施行したのは、2001年にさかのぼる。2005年10月からは、実際に混合が始まった。2004年には「バイオディーゼルの生産を振興する法律」(注2)を施行、2008年1月から実際の生産と軽油への混合が始まった。混合比率は現在、エタノールもバイオディーゼルも10%まで(E10およびB10)になっている。もっとも、原料作物が不足する年には、混合比率を一時的に引き下げたこともあった。
2008年3月には、国家企画庁(DNP)傘下の国家経済社会審議会(CONPES)が「コロンビアにおけるバイオ燃料の持続的生産を促進する政策の指針」(CONPES3510号)を策定。国としてバイオ燃料の生産と導入を促進する政策方針を明らかにした。その内容は、(1)持続可能で競争力あるバイオ燃料生産を拡大すること、(2)その生産を通じ、農村開発・雇用創出の促進や、エネルギー供給の多様化を図ること、(3)国際市場で輸出国として地位を確立すること、(4)環境面の持続可能性を確保すること(GHG削減・生態系保護など)、を目指すものになっている。
そのため、省庁横断の「バイオ燃料管理インターセクター委員会」を設置。土地適性・気候・インフラを踏まえ、作付けのゾーニングを実施している。そうすることにより、生産コスト削減と効率改善を図っている。
また、国際市場に向けては、差別化を図るため環境・社会基準の認証スキームを構築。欧州の持続可能性基準などに対応した品質基準整備を目指した。
エタノールの生産地は現時点で、太平洋岸地域のバジェ・デ・カウカ県とカウカ県、オリノキア地域のメタ県にある。原料はサトウキビ。一方で、バイオディーゼルの生産は、カリブ海岸からアンデス地域にかけて分散している。原料の9割以上がパームオイルであり、一部廃食用油(UCO)を使用している。
コロンビア・バイオ燃料協会(Fedebiocombustibles/以下、バイオ燃料協会)によると、コロンビアには、燃料用エタノール工場が7カ所、バイオディーゼル工場が6カ所、存在する。バイオ燃料協会によると、輸送部門がバイオ燃料を利用することにより、2024年にはコロンビア全体でCO2排出を360万トン、削減できたという。2025年の温室効果ガス(GHG)削減効果は、410万トンに達する見込みだ。
米国産の安価なエタノールとの競合に苦慮
コロンビア・サトウキビ生産者協会(Asocaña)によると2024年、のエタノールの国内販売量(酸素含有添加剤としてガソリンに混入する用途に限る)は8億2,400万リットル。そのうち国産エタノールは3億9,950万ドルに過ぎず、輸入が4億2,450万リットルに及ぶ。
2025年1~11月の販売量は、7億9,670万リットルだった(前年同期比6.9%増)。そのうち国産が3億9,370万リットル(11.0%増)、輸入が4億290万リットル(3.1%増)だ。
国内エタノール工場7カ所の生産能力は、7億8,600万リットルもある。しかし、現実には4億リットル程度しか生産できていないのが実情だ。
注:2025年は、1~11月のデータ。なお、伸び率については、前年同期比で表示した。
出所:コロンビア・サトウキビ生産者協会(Asocaña)のデータからジェトロ作成
バイオ燃料協会によると、輸入の大半が、トウモロコシを原料にする米国産のエタノールだ。同国産トウモロコシは、安価なことで知られている。コロンビアは、米国政府がトウモロコシ農家とエタノール業界に長年にわたって公的支援(補助金・税制優遇など)を与えていると認識。2020年5月以降、米国産トウモロコシの輸入に相殺関税(CVD)を賦課している。しかし、それでも内外の価格差は埋められない。E10の需要を満たすためには安価な米国産エタノールの輸入に依存せざるを得ない状況という。
内外価格差の背景には、コロンビア国内の政策の影響もある。コロンビアの燃料用エタノール価格は自由市場価格ではない。2012年エネルギー規制委員会(CREG)決議180643号に基づいて、政府規制価格(上限制)になっている。当該価格は、生産者最低保証価格、砂糖の市場価格、化石燃料の価格などを反映して決定する。これらは実際のエタノールの市場価格とはかけ離れていることが多い。その結果、国産エタノールの調達が割高になる要因になっている。
国内のエタノールの生産拠点としては、バジェ・デ・カウカ県(太平洋岸)が有名だ。同県は、国産サトウキビの96%を生産している。また、国内で12カ所ある製糖工場のうち、11カ所が同県にある。国内エタノール工場7カ所のうち、6カ所が同県にある。その結果、エタノール生産量は全国の98%に及ぶ。
当地では、エタノール生産に必要な電力と熱量の99%を賄うのが、バガスなどの廃棄物を用いたバイオマス発電だ。そのため、炭素強度(CI)値は非常に低い。こうした低CI値は、持続可能な航空燃料(SAF)の原料として利用する上で、大きな魅力になる。そのため、ガソリンの酸素含有添加剤として利用するには価格競争力の問題があるにもかかわらず、検討対象になりつつある。実際、当地のSAF製造計画の多くが、アルコール・トゥ・ジェット(ATJ)製法によりエタノールを原料にするものだ。
当地でのSAF製造に向けた動きについては、当連載後編で報告する。
環境面に配慮したバイオディーゼルを生産
バイオ燃料協会によると、当地のバイオディーゼル販売量は2025年、前年比5.7%増の72万6,300トンに達した。エタノールとは異なり、全量が国産だ。国内6カ所のバイオディーゼル工場の年間生産能力は合計で78万4,850万トン。余剰分は一部を輸出に回している。
出所:コロンビア・バイオ燃料協会データから作成
全国アブラヤシ生産者協会(Fedepalma)によると、コロンビアはパームオイル生産で世界第4位(米州で首位)。世界全体の2.3%を生産している。
その原料、アブラヤシを栽培する国内地域は4カ所。合計62万5,000ヘクタール(ha)に及び、農作物としてはコーヒーに次いで栽培面積が広い。生産者は6,000人。しかし、その75%が栽培面積20ha以下の小規模農家。また、女性が32%を占める。パーム油の生産や、輸送・流通までの間接雇用を合わせると、パーム油業界は24万人の雇用を創出する。
2025年には、バイオディーゼルの原料としてパーム油を192万トン生産した。31%が輸出向け、69%が国内向けだ。パーム油の抽出工場は78カ所、バイオディーゼルの工場は6カ所ある。バイオディーゼル工場では一部、UCOを原料に用いている。 コロンビアは、2004年から持続可能なパーム油に関する円卓会議(RSPO)に参加。一方、国内では2021年、持続可能なパーム油協同組合(APSCOLOMBIA)を組織した。土地の間接利用(ILUC)(注3)に関する生産者単位の調査を2020~2024年に実施した。
また、国際的なサステナブル認証(CO、RSPO、ISCCのいずれか)(注4)を取得した生産者が2025年時点で、390社に上った。パーム油生産量の32%、アブラヤシ栽培面積の32%が、当該認証取得済みの事業者によるものだ。欧州の協力により、1,800万ha(コロンビア全領土の16%)を衛星によりリアルタイムで監視している。さらに、当地アブラヤシ生産地(61万ha)の99%で、植林伐採のないことを衛星により確認済みだ。
Fedepalmaによると、国産パーム油を使用してSAFを製造した際のGHG削減効果は一般に、(1)パーム油搾油廃水(POME)の嫌気性処理池が野外で密閉などしていない場合でも、化石燃料比で平均32%、(2)密閉している場合には58%に上った(注5)。特にコロンビア東部地域に限ると、(1)密閉していない場合で73%、(2)密閉した場合で110%に及んだ(当該地域ではヤシの植林によるCO2吸収効果が高いため、このような結果になった)。ただし、密閉した嫌気性POME処理池は、2025年時点で20カ所しかない。つまり、発生するバイオガスの5割が無駄になっている。
国際的な認証を巡っては、別の問題もある。国際民間航空機関(ICAO)のカーボンオフセット削減制度(CORSIA、本特集「次世代燃料導入の現状(2)国際的枠組み整備と技術革新に期待」参照)で、当国産パーム油を用いたSAFにILUCのデフォルト値がないことだ(注6)。既述のとおり、当地産パーム油はCI値が非常に低い。その利用を促すため、SAF原料としてコロンビア産を用いた場合のデフォルト値を設定するよう、コロンビア民間航空庁がICAOに申請中だ。
このデフォルト値設定は未了なものの、原料(パーム粗油)サプライヤーとしてコロンビア企業3社が、既にISCCのCORSIA認証を取得済みだ(注7)。
国内市場の拡大に課題、有力企業は新市場開拓を志向
当地産品には、確かにCI値が低いという強みがある。しかし、パーム油を原料とするバイオディーゼルは、国内需要は満たせても、輸出市場で他国産と国際的に競争するには不十分だ。
バイオD(BioD/バイオディーゼル国内供給量の3割を占める大手)は東部オリノコ地域に、アブラヤシのプランテーションを18カ所、抽出工場(ミル)を8カ所、擁する。さらに、首都ボゴタの近郊でパーム油とUCOを原料に、バイオディーゼルを生産している。2024年時点の生産能力は年間24万4,000トン。製品の大半は軽油に混合する用途で、国内市場向けだ。一方、UCOを使用した第2世代バイオディーゼルの一部を、船舶燃料としてクルーズ船運航会社に輸出している。ちなみに、同社のバイオディーゼルは全て、ISCCなどのサステナブル認証を取得している。
同社の新事業開発マネジャー、カロリーナ・ベタンクール氏によると、パーム油が原料の第1世代バイオディーゼルの場合、国際市場での競合に勝てないという。インドネシア産が極端に安価なためだ。従って、UCOを利用した船舶燃料向け以外には輸出がないという。
業界は、エタノールやバイオディーゼルの混合比率を現在(10%)より引き上げることで、国内市場が拡大することを望んでいる。しかし、原料の安定供給や供給インフラの観点から、課題もある。引き上げは容易でない。また、内外の市場で安価な他国産との競合に打ち勝つためには、政府による支援が不可欠と指摘する声もある。
現状では、事業者がバイオ燃料を生産するのを支援する施策が限定的だ。目下、需要促進面のインセンティブ((1)付加価値税の免除、(2)炭素税の免除、(3)バイオ燃料の混合で化石燃料の使用量を下げることによる両税の課税ベース削減、など)くらいしかない。換言すると、生産者のコスト削減につながる所得税減免のような措置を導入していない(注8)。SAFの生産者に所得税のインセンティブを与える法案は、既に国会提出済みだ。しかし、当該措置も自動車用燃料向けには適用できない。
一方で政府は、「バイオエネルギー国家計画」の策定を進めている。その政策的な狙いは、低開発地域で雇用促進やエネルギー転換を進めるところにある。2026年5月にも、草案を発表する予定だ。しかし、現在想定する促進策は、バイオガスに関するもの〔バイオマス(農業廃棄物など)からメタンガスを抽出してエネルギーとして利用〕といわれる。液体バイオ燃料の促進が同計画に盛り込まれるかどうかは不明だ。
いずれにせよ、SAFや次世代船舶燃料など、国際的規制の枠組みに応じて市場形成が進んでいく。バイオ燃料業界としては、政府支援を見込める分野で市場開拓を今後強化していく意向だ。
- 注1:
-
「エタノールの混合義務を定める法律」は、2001年の法律693号。人口50万以上の都市で、ガソリンへのエタノール混入を義務化した。法律施行後5年が経過するまでに、人口の多い都市から段階的に導入すると規定していた。
- 注2:
-
「バイオディーゼルの生産を振興する法律」は、2004年の法律第939号。バイオディーゼルの導入に向け、商業生産までに時間がかかる永年性作物〔カカオ、ゴム、アブラヤシ、柑橘(かんきつ)類などの果樹、など〕の栽培に税制インセンティブを導入する内容。
ただし、所得税の免除については、法律施行後10年間の時限を設けた。 - 注3:
-
土地の間接利用(ILUC)とは、バイオ燃料やバイオマスの生産を拡大する際、直接的な農地転換だけでなく、他の土地利用に間接的な影響を与える現象のこと。 例えば、食料・飼料用の農地をバイオ燃料原料の生産に転換すると、不足した食料を補うため、森林や湿地を農地に新規開墾することにつながり得る。そうした現象は、炭素吸収源の破壊やCO₂放出を引き起こす。
- 注4:
-
言及した認証は、それぞれ次のとおり。
- RO(リジェネラティブ・オーガニック)認証
2020年設立の包括的な国際農業認証制度。3分野(土壌の健康、動物福祉、社会的公平性)で、高い基準を設けた。 - RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証
環境・社会問題に配慮して生産したパーム油(CSPO)であることを国際的第三者機関が保証する制度。 - 国際持続可能性カーボン認証(ISCC)
バイオマスやリサイクル原料などの持続可能性を、原料調達から製品製造までのサプライチェーン全体で保証する世界的な認証制度。(1)全産業・市場向け(PLUS)、(2) EU市場向けバイオ燃料(EU)、(3)航空業界向けのカーボンオフセットおよびGHG削減スキーム適合(CORSIA)、に分かれる。
- RO(リジェネラティブ・オーガニック)認証
- 注5:
-
POMEには、高濃度の有機物を含む。そのため、放置すると温室効果の高い大量のメタンガスを大気中へ放出してしまう。
しかし、嫌気性処理池を密閉してバイオガスとして回収・精製し、カーボンニュートラルな燃料として再利用すると、GHG排出を大きく抑えることができる。 - 注6:
-
ICAOは、SAFの製造工程・原料・原産国に応じて、ILUCのデフォルト値を設定している。デフォルト値がない場合、(1)既設定国の値、(2)グローバル値、いずれかを使用する、あるいは(3) ILUCゼロを、実測値として文書で証明するしかなくなる。ちなみにパーム油の場合、(1)はインドネシアとマレーシアの例を引くことになる。また(2)について、パーム油にグローバル設定は存在しない。
コロンビア産パーム油の場合、ILUCはインドネシアやマレーシアより低いとみられる。そのため、デフォルト値の設定が実現すると、SAFに当国産パーム油の利用を促しやすくなる。 - 注7:
-
ISCCは、当該企業3社がCORSIA制度で定めるha単位の生産性向上と持続可能性の基準を満たしたことを認証した。
- 注8:
-
2004年の法律第939号では、バイオディーゼル用原料生産者に対して所得税のインセンティブを定めていた。しかしこの制度は、既に失効済みだ(注2参照)。
なお、エタノール工場やバイオディーゼル工場は、フリートレードゾーンに立地することが多い。その場合、フリートレードゾーンのインセンティブを享受することは可能になる。詳細については、ジェトロの外資に関する奨励(コロンビア)を参照。
- 執筆者紹介
-
ジェトロ調査部米州課主幹(中南米)
中畑 貴雄(なかはた たかお) - 1998年、ジェトロ入構。貿易開発部、海外調査部中南米課、ジェトロ・メキシコ事務所、海外調査部米州課を経て、2018年3月からジェトロ・メキシコ事務所次長、2021年3月からジェトロ・メキシコ事務所長、2024年5月から調査部主任調査研究員、2025年4月から現職。単著『メキシコ経済の基礎知識』、共著『グローバルサプライチェーン再考: 経済安保、ビジネスと人権、脱炭素が迫る変革』、『NAFTAからUSMCAへ-USMCAガイドブック』など。






閉じる





