EUウクライナ・ビジネスサミット開催、民間企業による投資促進へ議論
(EU、ウクライナ)
ブリュッセル発
2025年04月17日
欧州委員会は4月10~11日、EUウクライナ・ビジネスサミットをウクライナ政府、EU理事会(閣僚理事会)議長国ポーランドなどとの共催で、ブリュッセルで開催した。
サミットの冒頭、欧州委のマルタ・コス委員(EU拡大、東方近隣政策担当)は、ウクライナは厳しい戦禍にあっても、EU加盟交渉に向けたビジネス環境の改革を続けており、引き続きの改革を期待すると述べた。同時に、ウクライナのEUエネルギー市場への統合を加速させるとし、「2027年初めにはEUの電力市場への統合が予定されている」と説明した。民間企業における電力網、再生可能エネルギー関連プロジェクトでの連携や、ウクライナ企業の革新的な防衛策のEUの安全保障への貢献に期待するとともに、「民間企業の投資リスク回避を支援し、住居、道路、港などのEU基準での再建を支援する」と強調した。
ウクライナのデニス・シュミハリ首相は「ウクライナは水素や欧州最大のガス貯蔵容量に加え、重要原材料を有しており、政府の手続きはデジタル化されている。ウクライナへの投資は、EUの産業競争力の強化への投資につながる」と述べた。
ウクライナ復興に向けた長期投資の必要性を話し合うセッションでは、ウクライナのアリョーナ・シュクルム地域社会・領土開発第1次官は、戦禍にあっても水や道路などのインフラは必要で、国境付近地域の再建に取り組んでいると説明した。欧州投資銀行(EIB)からの支援では申請から承認まで2年かかるが、その期間にも再建は必要だとし、民間企業による投資の必要性も強調した。同時に、民間企業の投資を保証する重要性を述べ、対ロシア制裁の一環としてEUが凍結するロシア中央銀行の資産から得られる収益を民間企業の投資資金の保証に活用する新たな案に期待すると話した(2024年5月27日記事参照)。
欧州ビジネス協会(EBA、注)は、約1,000社のメンバー企業のうち7割はウクライナでのビジネスを継続、うち7割はウクライナにとどまると回答していることや、ドイツのライフサイエンス企業バイエルによる6,000万ユーロの投資などを例に挙げ、戦禍でも欧州企業の投資は継続していることを紹介した。同時に、戦禍は特にリスクが高く、民間企業の投資を支援する公的資金、渡航時の警備手配など旅行保険の必要性を強調した。また、EU加盟交渉に向けたウクライナ政府の改革の一例として、企業は税関当局の対応改善を実感していると話した。
(注)ウクライナで事業展開する約900社が加盟する企業連合。欧州委員会が活動を支援しており、EUとウクライナの関係構築にも貢献。国内外の投資家の権利保護や政府・企業間の関係構築、ビジネス環境に関する情報提供などの活動を行う。
(薮中愛子、柴田哲男)
(EU、ウクライナ)
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