「次のフロンティア」アフリカを巡る世界各国・地域の動向日本とアフリカの貿易動向
輸出は増加傾向、品目は自動車が最多

2025年6月16日

今年、2025年8月に、日本が国連、アフリカ連合委員会(AUC)などと共同で開催する第9回アフリカ開発会議(TICAD9)が横浜で開催予定で、アフリカとのビジネスについて関心が高まっている。

アフリカ全体のGDPは日本の7割程度ではあるが、中古車を含む自動車の輸出先となっている。アフリカでの人気ブランドのランキング(アパレル・食品など含む全業種)でも、トヨタが7位であり、26位にソニー、67位にホンダ、84位に日産が入っている。現地の産品では、コーヒー、カカオ、ゴマなどの農産物のイメージが強いが、日本にとってアフリカは、プラチナや金属、石油・ガス、鉄鉱石などの資源の重要な供給元でもある(表1参照)。

本稿では、日本とアフリカの貿易動向、特に日本からの輸出の動きについて、「アフリカ・ビジネスデータ集(2025年4月)」の内容および各種統計をもとに解説する。

表1:アフリカ概要と日本との関係

アフリカ 概要
項目 内容
国数 54カ国
人口 2025年:約15億人、2030年予測:約17億人
人口上位国 ナイジェリア約2億3,000万人、エチオピア約1億3,000万人、エジプト約1億1,000万人
名目GDP 2兆7,800ドル(2024年)※世界4位の日本の約7割
GDP成長率 2025年予測:3.9%、2026年予測:4.0%
1人あたりGDP 1,940ドル(2024年)※ラオスと同程度
アフリカとの日本の貿易関係(2024年)
項目 内容
主要輸出先国 南ア、リベリア、ケニア、エジプト、タンザニアの順
輸出品目 自動車、船舶、一般機械など
主要輸入元国 南ア、ナイジェリア、モロッコ、ガーナ、赤道ギニアの順
輸入品目 プラチナなどの白金族、アルミニウム、石油ガス、鉄鉱石など

出所:国連、アフリカ開発銀行、IMF、財務省

輸出は近年増加傾向、輸入は資源価格で変動

財務省貿易統計(確報値、注)によると、日本から世界向けの2024年の輸出額は前年比6.2%増の107兆908億円、世界からの輸入額は1.8%増の112兆4,261億円だった。このうち、日本からアフリカへの輸出は前年比5.7%減の1兆3,107億円、輸入では9.5%減の1兆3,724億円だった。アフリカとの貿易のシェアは輸出入ともに1.2%と小さい。アフリカとの貿易収支では617億円の日本の貿易赤字だ。

日本からアフリカへの輸出の推移を見ると、2000年代に増加していたが、2010年代はおおむね横ばいで1兆円を下回る年もあった(図1参照)。為替レートなどの影響もあるが、2020年以降は増加傾向となり、特に2023年は1兆3,991億円で輸出額(円貨)は1988年以降で最多となった。

日本のアフリカからの輸入の推移を見ると、輸入額は2008年が過去最多であったが、リーマン・ショックの影響により翌2009年は減少している。アフリカからの輸入は鉱物資源の割合が多いため、資源価格にも左右され大きな変動があり、特に2010年代は増減を繰り返した。

2024年は輸出額・輸入額がともに前年比減少となったが、直近4年間は輸出額・輸入額ともに1兆円を超えており、近年、アフリカとの貿易額は高い水準で推移していることがうかがえる。

図1:日本のアフリカ輸出入推移
1988年から2022年までの推移。輸出入ともに変動があり、2008年が顕著なピークだ。

出所:財務省貿易統計

南ア輸出が最多、各国へ自動車などを輸出

国別の輸出額を見ると、前年2位の南アフリカ共和国(南ア)が最多で前年比9.7%減の3,183億円、前年首位のリベリアが2位で同35.8%減の2,524億円だった(表2参照)。次いで、ケニアが1,531億円(15.1%増)、エジプトが1,101億円(15.3%増)、タンザニアが765億円(2.2%減)の順だ。

南アがアフリカ全体の24.3%、リベリアが19.3%とシェアが高い。上位5カ国で構成比の約7割を占めており、アフリカ輸出は数カ国に偏っている状況がうかがえる。

リベリア向けは、船舶輸出が多い特徴がある。船舶所有者は税や登録料が安いため、便宜上、リベリアに船籍を置くケースが多い。リベリア以外の上位輸出先は、南アなどアフリカで人口や経済規模が大きい国であり、中古車を含む自動車関連の輸出が多い。

前年から特に高い伸びを示した輸出先を見ると、上位10位では前年比24.2%増のモロッコ、36.8%増のウガンダ、31.7%増のモーリシャスなどだ。11位のアルジェリアも91.3%増と高い伸びを示した。

表2:2024年の日本のアフリカ主要国への輸出額(国別)
順位 国名 金額
(100万円)
構成比
(%)
伸び率
(前年比、%)
1 南アフリカ共和国 318,251 24.3 △9.7
2 リベリア 252,419 19.3 △35.8
3 ケニア 153,098 11.7 15.1
4 エジプト 110,110 8.4 15.3
5 タンザニア 76,502 5.8 △2.2
6 ナイジェリア 48,963 3.7 17.2
7 モロッコ 47,006 3.6 24.2
8 ウガンダ 37,834 2.9 36.8
9 モーリシャス 34,030 2.6 31.7
10 コンゴ民主共和国 24,728 1.9 6.8
11 アルジェリア 20,897 1.6 91.3
12 モザンビーク 18,578 1.4 17.4
13 ガーナ 18,228 1.4 28.2
14 ザンビア 14,783 1.1 △11.8
15 チュニジア 13,111 1.0 19.6
16 ジブチ 9,453 0.7 51.2
17 ジンバブエ 9,392 0.7 20.8
18 セネガル 9,103 0.7 △3.0
19 アンゴラ 8,038 0.6 20.5
20 エチオピア 7,819 0.6 18.8
21 コートジボワール 7,776 0.6 △32.1
22 リビア 7,654 0.6 1.1
23 スーダン 7,567 0.6 46.2
24 カナリー諸島(西) 5,246 0.4 16.9
25 ナミビア 5,179 0.4 40.9
26 カメルーン 5,022 0.4 △5.2
27 南スーダン 4,693 0.4 29.2
28 トーゴ 4,679 0.4 50.1
29 レユニオン(仏) 3,796 0.3 △7.1
30 モーリタニア 3,782 0.3 29.6

出所:財務省

過去5年の推移を見ると、リベリアと南ア向けは増減の変動が大きいが、その他の国々はおおむね増加傾向だ(図2参照)。エジプトは横ばいだった。2024年の上位10カ国の順位は、リベリアと南アの順位の交代のほかは、前年と同様だった。

2024年の上位10カ国は、2019年時点と比べると全ての国で増加しているが、特にタンザニアとモロッコ向けは2.2倍、モーリシャス向けは2.3倍、コンゴ民主共和国は3.1倍となった。なお、14位のザンビアも2019年比で3倍、17位のジンバブエは同5.6倍で高い伸びを示した。

図2:日本のアフリカ輸出先上位10カ国
2019年から2023年の推移。南アフリカ共和国が常に最多であり、他国は年ごとに輸出額に変動が見られるがおおむね増加傾向だ。エジプトは横ばいだった。

出所:財務省

日本の主要輸出品は自動車や船舶

品目別に輸出を見ると、2024年の日本からのアフリカ向け輸出では、自動車や船舶類などの「輸送用機器」が最多で過半を占める(表3参照)。これに、一般機械と鉄鋼を加えた上位3品目群で全体の約8割を占める。なお、4位の電気機器は前年比15.0%増であり、前々年からも増加を続けている。

最大品目は自動車であり、前年比6.9%増の4,600億円だ。これは、アフリカ向け輸出額の35.1%を占める。船舶類は、主にリベリア1カ国向けで2,487億円だ。鉄鋼のフラットロール製品は、インフラ整備や住宅建設などの需要の高いケニア、タンザニア、南ア、ウガンダ向けに輸出されている。

主要品目(構成比1%以上)で増加した品目を見ると、農業や工業に重要な「ポンプ及び遠心分離機」が前年比43.9%増と高い伸びを示した。再輸出品(28.3%増)や電気回路等の機器(23.2%増)も大幅に増加した。一方で、船舶類(36.0%減)は大幅な減少を見せた。なお、建設用・鉱山用機械は、鉱業が盛んでインフラ整備が進むアフリカ向けに輸出が多かったが、2024年は前年比16.6%減となった。

表3:2024年の日本のアフリカへの輸出品目(△はマイナス値)
品目名 金額
(100万円)
構成比
(%)
伸び率
(前年比、%)
総額 1,310,651 100.0 △ 5.7
705 輸送用機器 781,909 59.7 △ 12.3
階層レベル2の項目70503 自動車 459,987 35.1 6.9
階層レベル3の項目7050301 乗用車 278,731 21.3 10.6
階層レベル4の項目70503011 中古乗用車 195,216 14.9 15.2
階層レベル3の項目7050303 バス・トラック 171,276 13.1 △ 0.2
階層レベル4の項目70503031 貨物自動車 131,543 10.0 12.3
階層レベル3の項目7050305 バス・トラックのシャシ 5,596 0.4 29.8
階層レベル4の項目70503051 貨物自動車のもの 1,863 0.1 △ 3.8
階層レベル2の項目70513 船舶類 248,749 19.0 △ 36.0
階層レベル2の項目70505 自動車の部分品 62,802 4.8 △ 3.4
階層レベル2の項目70507 二輪自動車類 7,063 0.5 23.1
701 一般機械 151,979 11.6 1.5
階層レベル2の項目70119 建設用・鉱山用機械 41,177 3.1 △ 16.6
階層レベル2の項目70125 ポンプ及び遠心分離機 29,028 2.2 43.9
階層レベル2の項目70101 原動機 27,856 2.1 0.0
階層レベル2の項目70127 荷役機械 14,498 1.1 2.9
階層レベル2の項目70109 繊維機械 3,746 0.3 11.8
611 鉄鋼 91,315 7.0 0.2
階層レベル2の項目61107 鉄鋼のフラットロール製品 79,828 6.1 5.6
階層レベル2の項目61117 管及び管用継手 11,228 0.9 △ 4.5
703 電気機器 70,628 5.4 15.0
階層レベル2の項目70303 電気回路等の機器 16,212 1.2 23.2
階層レベル2の項目70301 重電機器 8,885 0.7 72.3
階層レベル2の項目70327 電気計測機器 8,713 0.7 △ 17.0
階層レベル2の項目70325 自動車用等の電気機器 4,124 0.3 △ 28.3
階層レベル2の項目70331 電気用炭素及び黒鉛製品 3,774 0.3 54.8
901 再輸出品 57,403 4.4 28.3
603 ゴム製品 47,648 3.6 5.4
階層レベル2の項目60303 ゴムタイヤ及びチューブ 42,770 3.3 5.3
211 織物用繊維及びくず 28,504 2.2 16.0
階層レベル2の項目21105 人造繊維 28,333 2.2 16.2
501 元素及び化合物 10,705 0.8 30.1
階層レベル2の項目50101 有機化合物 9,122 0.7 52.5
811 精密機器類 8,089 0.6 42.9
階層レベル2の項目81101 科学光学機器 8,070 0.6 42.9
515 プラスチック 7,997 0.6 54.7
813 その他の雑製品 7,855 0.6 △ 31.1
517 その他の化学製品 7,449 0.6 △ 17.5
615 金属製品 6,963 0.5 △ 0.6
007 魚介類及び同調製品 6,635 0.5 13.6

出所:財務省貿易統計

自動車が日本からの主要輸出品目

電車や地下鉄などの公共交通機関が整備されていない地域も多いアフリカにおいて、移動手段は徒歩や乗り合いバス、乗用車などだ。まだ現地生産するまで工業化が進んでいない国も多いため、日本からも自動車を輸出している。特にアフリカ諸国では日本の中古車を見かけることが多い。

日本の自動車はアフリカ各国に輸出されており、輸出額はそれぞれ、南アに1,222億円、ケニアに855億円、タンザニアに497億円、モーリシャスに267億円、ウガンダに244億円、エジプトに215億円だった。このうち、中古車の輸出額は、多い順にケニア662億円、タンザニア350億円、モーリシャス199億円だ。日本の中古車の輸出台数に限れば、タンザニアが5位で6万6,961台、ケニアが6位で5万6,893台、南アが8位で4万4,958台だ。

なお、中古車輸出台数が19万8,944台で2位のアラブ首長国連邦(UAE)が、アフリカへ日本製中古車・部品(およびその他、古着含む中古品)を再輸出する拠点になっているともいわれる(「アラブ首長国連邦における中古市場(中古自動車、古着)」参照)。

もちろん中古車のほか、新車の乗用車および、バス・トラックも輸出されている。また、二輪自動車は、まだ少ないが増加傾向だ。

南アやエジプトなど、自動車を生産する国では、現地製造業の育成を支援するため、中古車輸入を規制する措置がしばしば取られ、仮に輸入自体が禁止されていない場合でも、年式(製造からの年数)の制限や、右ハンドル車(ないし左ハンドル車)の公道走行規制を講じる国もある。

アフリカでの自動車生産・販売および貿易の概要については、2024年7月1日付地域・分析レポート「自動車販売・生産、日本からの輸出動向(アフリカ)」を参照。

主要品目は輸送機器関連

日本からアフリカへの輸出主要品目(構成比3%以上)を見ても、一貫して自動車や船舶が多い(図3参照)。自動車輸出について1988年以降の推移をみると、2000年代は金額、台数とも増加傾向だった。しかし2010年代以降は、増減を繰り返した。なお、2020年に落ち込んだのは、新型コロナ禍の影響が大きい。2021年以降は、改めて増加傾向を示している。一方で、2008年の過去最高額を超えるまでには至っていない状況だ。

また、組立用やスペアパーツなどの自動車の部分品の輸出は、近年、おおむね増加傾向だ。自動車に関連して、南アなど向けに「ゴムタイヤ及びチューブ」の輸出も多い。船舶も、建設機械も鉱山用の建機も、鉄鋼フラットロールも、自動車用に使われている可能性があるため、輸出の主力のほとんどは輸送機器関連ともいえる。

アフリカでは高所得者層はまだ少ないが、人口が急増しており、経済成長も続けば、輸送機器以外の品目を輸出するチャンスも拡大するだろう。

図3:日本からアフリカへの輸出主要品目推移
主要品目(構成比3%以上)の推移。一貫して自動車輸出や船舶が多い。自動車輸出について1988年以降の推移は、2000年代は金額、台数とも増加傾向だった。しかし2010年代以降は、増減を繰り返した。

出所:財務省貿易統計

輸入は南アが圧倒的

日本の国別輸入額を見ると、日本で自動車部品に用いられるプラチナなど白金類の南アからの輸入が圧倒的だ。2024年の輸入額上位5カ国は南ア8,859億円(前年比13.3%減)、ナイジェリア1,218億円(72.0%増)、モロッコ494億円(17.4%増)、ガーナ325億円(64.1%増)、赤道ギニア301億円(30.3%増)の順だ(表4参照)。南アがアフリカ全体のシェア64.6%となり1カ国で大半を占めた。上位5カ国で8割以上を占め、輸出と同様に、輸入も南アなど特定の国が突出している。

輸入品目と輸入元国をあわせて見ると、南アからは白金、ロジウム、パラジウムなど銀および白金族5,029億円、鉄鉱石701億円、石炭684億円、自動車411億円などが輸入された。

資源の輸入も多く、ナイジェリアから液化天然ガス(LNG)やアルミニウム類、赤道ギニアからLNG、マダガスカルからニッケル類などが輸入された。その他、食品の輸入もあり、ガーナからカカオ、ナイジェリアからゴマ、エチオピアやタンザニアからコーヒー、モーリタニア、モロッコ、チュニジアからタコやマグロの輸入が多かった。

輸入の前年からの増加率を見ると、ナイジェリア、ガーナ、赤道ギニアのほか、エチオピア(20.3%増)、ガボン(約2倍)、コートジボワール(約4倍)などで増加幅が大きい。

表4:日本のアフリカの主要国からの輸入額(国別)(△はマイナス値)
順位 国名 2024年
金額
(100万円)
構成比
(%)
伸び率
(前年比、%)
1 南アフリカ共和国 885,902 64.6 △13.3
2 ナイジェリア 121,815 8.9 72.0
3 モロッコ 49,404 3.6 17.4
4 ガーナ 32,533 2.4 64.1
5 赤道ギニア 30,138 2.2 30.3
6 マダガスカル 30,018 2.2 △42.3
7 チュニジア 20,109 1.5 7.5
8 モーリタニア 19,672 1.4 △32.6
9 エチオピア 19,633 1.4 20.3
10 タンザニア 17,771 1.3 6.3
11 モザンビーク 15,110 1.1 △42.5
12 アルジェリア 13,949 1.0 △79.2
13 ケニア 12,513 0.9 4.3
14 ガボン 11,369 0.8 108.7
15 エジプト 10,933 0.8 △66.3
16 コートジボワール 8,277 0.6 304.5
17 セーシェル 8,264 0.6 △3.3
18 リベリア 8,060 0.6 164,098.3
19 シエラレオネ 6,639 0.5 35.8
20 カメルーン 6,556 0.5 448.8
21 ブルキナファソ 6,098 0.4 △15.8
22 セネガル 5,250 0.4 △6.2
23 トーゴ 4,161 0.3 83.1
24 ウガンダ 3,263 0.2 32.1
25 コンゴ民主共和国 3,247 0.2 △36.2
26 ジンバブエ 2,734 0.2 △4.9
27 ニジェール 2,554 0.2 2,209.4
28 マラウイ 2,194 0.2 △15.5
29 スーダン 1,734 0.1 △11.8
30 ギニア 1,553 0.1 △17.2

出所:財務省貿易統計

輸入が圧倒的な南アを除いた、上位10カ国の5年間の輸入額推移を見ると、ロシアのウクライナ侵攻があった2022年は、資源や肥料の高騰や、世界的なロシアからの輸入産品の切り替えの影響もあり、資源を輸入するナイジェリア、肥料用のリンを輸入するモロッコなどからの輸入が特に伸びている。マダガスカルからは2022年、2023年にニッケル類の輸入が急増した。なお、ガーナや赤道ギニア、チュニジアからの輸入も近年、増加傾向だ(図4参照)。

図4:日本のアフリカ輸入上位国の輸入額推移
2019年から2024年の推移。ナイジェリアが最も多いが、年ごとに変動が見られる。ガーナや赤道ギニア、チュニジアからの輸入は近年、増加傾向だ。

出所:財務省

主な輸入品目は白金族、金属、ガスなど

輸入品目を見ると、日本の対アフリカ輸入では、銀及び白金族 が大半を占める「非鉄金属」が全体の45.0%を占め最多だ(表5参照)。「金属鉱及びくず」と「天然ガス及び製造ガス」を合わせた上位3品目群で全体の6割を超えた。

主要品目(構成比1%以上)で増加した品目を見ると、アルミニウム及び同合金が前年比29.5%増、非鉄卑金属くずが61.4%増、ココア(カカオ)が97.3%増、その他の採油用種子が24.3%増、植物性原材料が20.2%増と高い伸びを示した。なお、構成比は0.5%だが、りん鉱石は約2.2倍となった。一方で、ニッケル及び同合金、石炭、自動車、石油製品などは前年から大幅に減少した。

表5:2024年の日本のアフリカからの輸入品目(△はマイナス値)
品目名 金額
(100万円)
構成比
(%)
伸び率
(前年比、%)
総額 1,372,363 100.0 △ 9.5
615 非鉄金属 617,526 45.0 △ 12.0
階層レベル2の項目61501 銀及び白金族 502,923 36.6 △ 12.5
階層レベル2の項目61507 アルミニウム及び同合金 76,962 5.6 29.5
階層レベル2の項目61505 ニッケル及び同合金 24,206 1.8 △ 48.9
215 金属鉱及びくず 160,667 11.7 6.6
階層レベル2の項目21501 鉄鉱石 73,676 5.4 △ 2.3
階層レベル2の項目21505 非鉄金属鉱 62,076 4.5 11.7
階層レベル2の項目21507 非鉄卑金属くず 23,487 1.7 61.4
305 天然ガス及び製造ガス 99,642 7.3 15.3
階層レベル2の項目30501 石油ガス類 99,642 7.3 15.3
301 石炭、コークス及び練炭 70,586 5.1 △ 32.3
階層レベル2の項目30101 石炭 70,586 5.1 △ 32.3
015 コーヒー・茶・ココア・香辛料類 67,589 4.9 41.9
階層レベル2の項目01503 ココア 34,176 2.5 97.3
階層レベル2の項目01501 コーヒー 29,420 2.1 14.9
007 魚介類及び同調製品 54,157 3.9 3.6
階層レベル2の項目00701 魚介類 53,942 3.9 3.6
203 採油用の種・ナット及び核 47,891 3.5 24.3
階層レベル2の項目20309 その他の採油用種子 47,281 3.4 24.3
705 輸送用機器 42,986 3.1 △ 30.5
階層レベル2の項目70501 自動車 41,724 3.0 △ 31.2
613 鉄鋼 33,897 2.5 △ 9.4
階層レベル2の項目61303 合金鉄 31,844 2.3 △ 11.7
605 木製品及びコルク製品(除家具) 31,316 2.3 △ 0.8
階層レベル2の項目60503 パルプウッド等 31,212 2.3 △ 0.6
011 果実及び野菜 16,988 1.2 8.8
階層レベル2の項目01101 果実 14,020 1.0 18.4
807 衣類及び同附属品 16,921 1.2 6.5
階層レベル2の項目80701 衣類 12,385 0.9 9.8
階層レベル2の項目80705 メリヤス編み及びクロセ編み衣類 4,311 0.3 △ 0.8
217 その他の動植物性原材料 14,264 1.0 20.0
階層レベル2の項目21703 植物性原材料 14,189 1.0 20.2
303 石油及び同製品 13,943 1.0 △ 77.9
階層レベル2の項目30303 石油製品 12,563 0.9 △ 79.3
901 再輸入品 10,072 0.7 70.9
213 粗鉱物 9,336 0.7 46.6
階層レベル2の項目21301 りん鉱石 6,458 0.5 118.7
511 肥料 8,483 0.6 73.6

出所:財務省貿易統計

アフリカの成長を取り込めるか

2025年4月以降、米国の新たな関税政策によるマクロ経済の冷え込みがあるほか、世界の貿易における不確実性も増している。米国はアフリカ諸国にも高関税を課すと発表しており(2025年4月17日付ビジネス短信参照)、貿易に影響を与えうるが、米国の相互関税の一時停止が続けばアフリカの輸出入は増えるとの見込みもある(2025年4月24日付ビジネス短信参照)。

引き続きアフリカの経済成長は続くとの予測だ(2025年4月25日付ビジネス短信参照)。また、日本では人口減少が続くが、アフリカでは人口が急増するため、今後、日本産品の輸出が拡大しうる。アフリカの成長を取り込んで、日本もともに成長できる可能性がある。

アフリカには石油・天然ガスなど資源が豊富だ。グリーン分野で利用される重要鉱物もリチウムの11%、銅の17%、コバルトの7割と多く生産している(2025年5月30日付2025年6月2日付ビジネス短信参照)。中国や米国もアフリカの鉱物資源に注目するなか、資源が少ない日本にとって、引き続きアフリカは輸入元としても重要だ。

2025年8月には、アフリカの開発を議論する国際会議であるTICAD9が開催される予定であり、ビジネスイベントも行われる。TICAD9を契機に、さらなる日本とアフリカの経済関係の強化が期待される。

アフリカの主要国の市場や現地事情、法制度などの情報収集には「アフリカ」ページを参照。

アフリカの人口増加および貿易動向については、2024年8月19日付地域・分析レポート「アフリカの人口急増と物流・貿易動向―日本の2023年の輸出額最多、課題も多数―」や2023年3月3日付地域・分析レポート「新アフリカ争奪戦」と日本のアフリカビジネスの可能性」も参照。


注:
財務省貿易統計では「確々報値」も公表しているが、本レポートでは主に「確報値」を使用。
執筆者紹介
ジェトロ調査部中東アフリカ課 課長代理
井澤 壌士(いざわ じょうじ)
2010年、ジェトロ入構。農林水産・食品部農林水産企画課、ジェトロ北海道、ジェトロ・カイロ事務所を経て、現職。中東・アフリカ地域の調査・情報提供を担当。