2024年にアフリカで世界のリチウムの11%、銅の17%、コバルトの7割を生産

(アフリカ、南アフリカ共和国、ザンビア、ジンバブエ、コンゴ民主共和国、中国、世界)

調査部中東アフリカ課

2025年05月30日

国際エネルギー機関(IEA)は5月21日、グリーン分野などで利用されるクリティカルミネラル(重要鉱物)に関する報告書「Global Critical Minerals Outlook 2025外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。報告書によると、アフリカ全体では2024年に世界全体のリチウム生産量の11%、銅生産量の17%、コバルト生産量の7割を占めた(同報告書の「重要鉱物のアフリカのシェア」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照)。そのほか、アフリカではグラファイト(黒鉛)、マンガン、ボーキサイト、プラチナの埋蔵量も多い。

国別では、コンゴ民主共和国は1カ国で世界のコバルト生産量の66.5%を占める。南アフリカ共和国(南ア)は、プラチナなど白金族金属の世界供給のシェア55.3%と高く、マンガンもシェア49.3%で、クロムの生産国でもある。なお、日本のアフリカからの輸入では、南アから白金族の輸入が多い(2025年1月31日記事参照)。

アフリカでリチウムの供給増加

リチウムは、2024年に世界の需要が前年比30%と伸びたが、生産量も35%以上増加した。中国やオーストラリアなど主要生産国の生産増加もあるが、新規生産量の約30%はアフリカだ。特にジンバブエで急増し世界シェア9.0%を占めるようになり、そのほか、ナミビアでも増加した。

一方で、リチウムは供給過剰に傾き、価格は2022年のピークを大幅に下回った。なお中国、韓国、日本などでの電気自動車(EV)バッテリー向け需要が多い。

2030年までリチウム供給の予測を見ると、特にジンバブエとマリで成長するとの予測だ。報告書では、各種重要鉱物の採掘や精製は中国のシェアが高く、リチウムにおいても、マリのグーラミナ・プロジェクトを含む多くのアフリカ案件は中国企業が運営していると指摘する。

重要鉱物の投資増加、市場も拡大

同報告書によると、アフリカでは中国やアラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビアを含む中東からの鉱業関連の投資が増えている。

また、アフリカの重要鉱物生産の市場規模は、2024年に採掘で約500億ドル、精製で約160億ドルのところ、2040年までに合計830億ドル程度まで拡大するとの予測だ。

採掘では、主にコンゴ民主共和国での銅とコバルトの成長が牽引し、マダガスカルとモザンビークの黒鉛でも成長が見られる。精製では、アフリカは2040年までに世界市場の約4%を占めるようになり、コンゴ民主共和国での銅精製、南アとマダガスカルでのニッケル精製が成長の主な原動力となる。

アフリカでは、重要鉱物の採掘・生産は多いが未加工での輸出が多いため、現地での精製や加工産業が進展すれば、利益や税収の増加、雇用創出につながると指摘する。

各種規制の動きも

報告書によると、アフリカ各国は鉱業関連の政策にも力を入れている。コンゴ民主共和国は、世界のコバルト供給過剰による価格低迷のため、2025年にコバルト輸出を一時停止した。さらに、紛争から鉱業を保護するため、米国と安全保障に関する協力を模索している。ジンバブエでは、リチウム産業育成のため採掘・加工・輸出の規制や、鉱物販売への課税なども導入した。ザンビアでは、採掘ライセンス管理の透明性向上のためのデジタルプラットフォームの導入を開始した。

(井澤壌士)

(アフリカ、南アフリカ共和国、ザンビア、ジンバブエ、コンゴ民主共和国、中国、世界)

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