「次のフロンティア」アフリカを巡る世界各国・地域の動向日本からアフリカへの投資動向
アフリカ進出日系企業は増加傾向、投資分野は自動車、金融、鉱業など

2025年6月16日

アフリカでは、2025年に人口が14億7,000万人に達する見込みで、中国やインドと同規模になる。日本では人口は減少傾向だが、アフリカでは今後も増加が続く予測で、将来的な市場拡大が見込まれる。日本企業の進出数を見ても、インフラが整っているアフリカの都市部を中心に増加傾向にあり、2010年と比べてほぼ倍増した。日本からの投資分野では、自動車関係の輸送機械器具が多い。金融・保険分野への投資も拡大している。一方で、アフリカ諸国では治安が悪い地域や政治が不安定な国もあり、ビジネス環境には課題も多いため、注意が必要だ。

このような中、2025年8月には、日本が国連、アフリカ連合委員会(AUC)などと共同で開催する第9回アフリカ開発会議(TICAD9)が横浜で開催予定で、アフリカでのビジネスに関心が集まっている。

本稿では、日本からアフリカへの企業進出や投資の動向について、各種統計などを基に解説する。

表1:(参考)アフリカ概要と日本との投資関係

アフリカ概要
項目 内容
国数 54カ国
人口 2025年:約15億人、2030年予測:約17億人
人口上位国 ナイジェリア約2億3千万人、エチオピア約1億3千万人、エジプト約1億1千万人
名目GDP 2兆7,800ドル(2024年)※世界4位の日本の約7割
GDP成長率 2025年予測:3.9%、2026年予測:4.0%
1人当たりGDP 1,940ドル(2024年)※ラオスと同程度
日本とアフリカの投資関係
項目 内容
日系企業の拠点数 948拠点(2023年)※南アフリカ共和国、ケニア、モロッコ、エジプトの順
日本からの直接投資残高 1兆4,232億円(2024年末)、前年比24.7%増
日本からの直接投資分野 輸送機械器具、金融・保険業、鉱業など
現地進出日系企業の注目国 ケニア、南ア、ナイジェリア、エジプト、コートジボワールなど

出所:国連、アフリカ輸出入銀行、IMF、外務省、財務省、日本銀行、ジェトロ

日本企業の進出拠点数は約10年で倍増

アフリカへの日本企業の進出拠点数の推移を見ると、2010年の520拠点から増加傾向にあり、約10年でほぼ倍増した(図1参照)。新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年には減少し、2023年も948拠点で前年からは減少を見せた。進出拠点数は、TICAD8が開催された2022年が過去最多で972拠点だった。

図1:アフリカ進出日系企業拠点数の推移
2010年から2022年にかけてアフリカに進出する日系企業の拠点数が増加傾向にある。2022年には972拠点と過去最多で、2023年には948拠点となった。

出所:外務省「海外在留邦人数調査」、「海外進出日系企業拠点数調査」からジェトロ作成

国別では南ア、ケニア、モロッコの順

アフリカでの日本企業の進出拠点数を国別に見ると、2023年時点では南アフリカ共和国(南ア)が最多で255拠点、次いでケニアが118拠点、モロッコが70拠点、エジプトが65拠点の順だ(表2参照)。上位4カ国で合計508拠点と、全体の半数を超える。なお、前回のTICADが開催された2022年と比較すると、経済が低迷する南ア、債務不履行(デフォルト)となったガーナなどでは拠点数が減少した。

一方、ケニアでは日系スタートアップの進出などが増え、モロッコでは自動車関連産業の進出などもあり、拠点数の増加が目立つ。その他、エジプト、セネガル、タンザニア、コートジボワールなどでも拠点数が増加した。

表2:アフリカに進出する日系企業の拠点数(2023年、国・地域別)

国・地域名 企業拠点数
南アフリカ共和国 255
ケニア 118
モロッコ 70
エジプト 65
ナイジェリア 51
ガーナ 47
タンザニア 44
チュニジア 27
モザンビーク 25
セネガル 24
アルジェリア 23
ルワンダ 23
コートジボワール 21
ウガンダ 17
エチオピア 13
ザンビア 13
マダガスカル 12
アンゴラ 9
マラウイ 9
カメルーン 8
コンゴ民主共和国 8
ナミビア 8
ブルンジ 8
ボツワナ 6
ベナン 5
ギニア 4
ブルキナファソ 4
マリ 4
モーリシャス 4
ガボン 3
エスワティニ 2
コンゴ共和国 2
シエラレオネ 2
ジブチ 2
ジンバブエ(注) 2
南スーダン 2
モーリタニア 2
リベリア 2

注:計上単位が拠点数ではなく、法人数であるもの。
出所:外務省「海外在留邦人数調査」、「海外進出日系企業拠点数調査」からジェトロ作成

直接投資の推移、新型コロナ禍で下落後、回復

前述の進出拠点数には駐在員事務所など調査目的の拠点も含まれるため、次に実際の日本からの投資の動きを見る。日本からアフリカへの対外直接投資残高の推移(ドル価)では、1990年代以降、2013年までは直接投資残高は増加傾向だった。2013年末時点が過去最多の121億ドルとなり、それ以降は2020年末まで減少傾向だった。新型コロナ感染が拡大した2020年は大きく落ち込んだが、2021年以降は回復し、増加傾向だ。

アフリカ諸国の中では、特にアフリカでは経済大国の南ア向けが圧倒的に多い(財務省の統計は国別ではアフリカで南アの数値のみ公表)。南ア向けの推移を見ても、アフリカ全体とおおむね同様の傾向だ。

なお、アフリカへの投資にも深く関連する歴史的な政治や経済の動きについては、「世界はアフリカとどう向き合ってきたか:独立から現在まで」も参照。

図2:日本からアフリカへの直接投資残高の推移
1996年から2023年末までの推移。南アを含む全体と南ア単独の金額が棒グラフで比較しており、いずれも2020年以降は増加傾向だ。

出所:財務省の統計を基にジェトロ作成

投資残高は増加、南アへの輸送機械機具が最多

次に直近の対外直接投資残高の動向を見る。日本銀行が2025年5月27日に発表した統計によると、2024年末時点の日本の対外直接投資残高(世界向け合計)は前年比14.2%増の331兆137億円だった(2025年5月30日付ビジネス短信参照)。このうちアフリカ向けは同24.7%増の1兆4,232億円だ。

分野別では、2024年は輸送機械器具、金融・保険業、鉄・非鉄金属の順に多い。約10年前と比べると、いずれも増加している。

国別の対外直接投資残高を見ると、アフリカでは南アが前年比22.3%増の7,008億円で最多だった。南アには輸送機械器具(3,150億円)や卸売・小売業(872億円)、ゴム・皮革(320億円)の投資が多い。

図3:2014年と2024年のアフリカへの投資残高業種
2024年は輸送用機器が最も多く、保険・金融、鉱業、卸売・小売が続く構成である。

出所:日本銀行

なお、日本から世界各国向けでは、米国向けが最大で同21.7%増の121兆9,244億円、次いでオランダ(23兆7,411億円)、中国(19兆9,881億円)が続いた。アフリカ向けはまだ規模が小さいことがうかがえる。

世界からの日本向けの投資を見ると、2024年末時点の日本への対内直接投資残高は前年比2.8%増の32兆4,946億円だった。このうちアフリカ諸国からは前年から37.8%増加したものの、343億円とまだ少ない。

対外直接投資フローも増加

年間の投資額の動きを見ると、日本銀行の統計では、2024年の日本から世界全体への対外直接投資フローは30兆9,362億円だった。このうちアフリカ向けは1,709億円だ(2025年5月1日付ビジネス短信参照)。国別では、アフリカで2024年はモーリシャスが1,215億円で最多だった。

2024年の日本からの直接投資フローの上位は次のとおり(かっこ内は金額が最多の業種)。

  • モーリシャス:1,215億円(金融・保険業など)
  • 南ア:1,003億円(輸送器具など)
  • ナイジェリア:53億円(食料品など)
  • リビア:35億円(卸売・小売業など)
  • エジプト:32億円(化学・医薬など)
  • ケニア:15億円(金融・保険業など)
  • ウガンダ:12億円(建設業、運輸業など)
  • アルジェリア:8億円(建設業など)

投資や進出の分野として、以前から大手商社などによる石油・天然ガス、金属や鉱物資源、鉱山開発やプラント建設、建設機械など、鉱業・資源・エネルギー分野が多かった。その他、トヨタが南アに工場を持ち、関連企業も進出している。住友ゴムがタイヤ生産に投資しているほか、一部の国では小規模な組み立てや委託生産を含む自動車の組み立て生産も開始されている(2024年7月1日付地域・分析レポート「自動車販売・生産、日本からの輸出動向(アフリカ)」参照)。

日本企業各社の進出動向については、2024年12月4日付地域・分析レポート「日本企業のアフリカへの進出動向、拠点数は増加傾向」、日本企業の具体的な活動については、特集「アフリカでのビジネス事例」を参照。

アフリカ向け投資はまだ少ない

日本企業の進出は増えているものの、日本からアフリカへの直接投資はまだ少ない。日本から世界の地域別の対外投資額残高は、北米、欧州、アジアの順に多く、1990年代以降は増加傾向だ(図4参照)。欧米は所得が高くビジネス環境が整った先進国が多い。アジアは地理的に日本から近い市場で、製造拠点としての進出が多い。一方、アフリカではビジネス上の課題が多く、高所得者層が少ないほか、日本からの距離が遠いため、投資へのハードルがあり、他の地域と比べて投資はわずかだ。なお、日本企業の欧州子会社など在外法人からアフリカ向けに間接的な投資もある。

図4:日本の直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)
1996年から2023年末までの地域別直接投資額。アジアが最も多く、アフリカや中東は比較的少額で推移している。

出所:財務省統計を基にジェトロ作成

投資コストは安いが、状況は各国によって様々

アフリカの1人当たりGDPは1,940ドルで、世界の他の地域と比べると、高所得者層が少ない。一方で、南アのヨハネスブルクのように、アジア諸国と比べて一般職工の人件費などが高いこともある。一般職工の人件費で比べると、アフリカ各国でも状況はさまざまで、ナイジェリアのラゴス、ガーナのアクラなどでは、アジア主要都市よりも低い水準だ(図5参照。なお為替状況や調査の年度が異なり、現地の調査自体が古いケースもあるため、単純比較ができない点には留意)。

その他、賃料や公共料金、法人税率など、投資関連のコスト情報はジェトロの「投資関連コスト比較調査」を参照。

図5:アフリカとアジアのワーカー(一般工職)人件費(月額)
ナイジェリア・ラゴスが低く31ドル、南ア・ヨハネスブルグはアジア主要都市より高く1,545ドルである。

出所:ジェトロの2023年度、2024年度の投資関連コスト比較調査から作成

また、投資コストが低いアフリカ諸国でも、製造業に関する人材やインフラが整っているとは限らない。高度な技術を持つ職人などが少ないケースや、条件に見合う人材の人件費が高額になるケースもある。アフリカ開発銀行(AfDB)によるアフリカの工業化に関する2021年時点の報告書では、工業化指数は、南ア、モロッコ、エジプト、チュニジア、モーリシャスの順に高いが、他の国では製造業に関する人材育成が必要になることもある。人口も市場規模や労働人材を確保する際に参考になる。アフリカの人口上位は2024年時点で、ナイジェリア2億3,268万人、エチオピア1億3,206万人、エジプト1億人1,654万人、コンゴ民主共和国1億928万人だ。

ビジネスの課題も多い

前述のとおり、アフリカでは投資コストが低い国々もあるが、ビジネス上の課題も多いのが実情だ。ジェトロの「2024年度海外進出日系企業実態調査(アフリカ編)」によると、投資環境面の課題を聞いたところ、「規制・法令の整備、運用」との回答が多く、中でも「行政手続きの煩雑さ」が最多で73.7%だった。「財政・金融・為替面」との回答も多く、中でも「不安定な為替」が約7割だった。ほかにも、「政治リスク」と「治安」が課題との回答もある。

また、投資環境面で改善した点を聞いたところ、「課題はあるが、何も改善していない」との回答が最も多い57.5%だった。課題が山積していることがうかがえる。一方で、改善すべき課題がないと答えた企業がモロッコで23.5%、ガーナでは8.3%で、両国はアフリカの中では比較的課題は少ないようだ。

進出日系企業は黒字が6割、拡大の意欲も高い

2024年度海外進出日系企業実態調査(アフリカ編)によると、黒字を見込む日系企業はアフリカ全体で59.8%と約6割だ。世界平均の黒字割合(65.9%)を下回り、アフリカでの赤字見込み企業は23.8%だった。

それでも、日系企業の拡大意欲は高い。アフリカの日系企業で、今後1~2年の事業展開について「拡大」と答えた割合は、前年の同様の調査から3.0ポイント増の57.0%で、世界の地域と比べても、南西アジアに次いで高い数値だ。事業展開を拡大する理由として、「現地市場ニーズの拡大」の回答が6割超えだった。なお、「拡大」と回答した企業の約7割が「販売」機能を拡大すると回答した。

国別では、ケニア、ガーナ、コートジボワールでは6割以上が「拡大」と回答し、前年に半数割れしたエジプトも6割に迫った。

図7:日系企業の今後1~2年の事業展開の方向性

地域別
アフリカ全体では今後1~2年の事業展開について「拡大」と答えた企業が前年から3.0ポイント増 の57.0%。南西アジアに次いで高い。
国別・業種別
ケニア、ガーナ、コートジボワールでは6割以上が「拡大」と回答。エジプトも6割に迫った。製造業では「拡大」が12.8ポイント増加し約7割となった。

注:各地域の定義や、世界全体の調査結果の詳細については、「ジェトロ2024年度 海外進出日系企業実態調査(全世界編)」を参照。
出所:2024年度海外進出日系企業実態調査(アフリカ編)

また、同調査でアフリカ進出済みの日系企業に注目国を聞いたところ、ケニア、南ア、ナイジェリアの順に割合が高かった。

表3:日系企業の今後の注目国(複数回答)上位と企業コメント(n=197)
順位 国名 割合
(%)
注目点(企業コメント)
1 ケニア 41.6 東アフリカのビジネスハブ、人口増加、市場拡大、日系企業の進出、自動車、ODA案件、コーヒー、電力、デジタル、経済特区開発、湖上輸送、大型医療機器
2 南アフリカ共和国 34.5 電力、小売業、オフィス機器、市場規模、事業環境、製造拠点、内需、為替、金融政策、地下資源、宅配需要、ヘルスケア、重工業
3 ナイジェリア 33 人口規模、市場拡大、天然ガス、為替の安定、英語圏、ビジネスの復活(市場のリカバリー)、二輪車、米、船外機
4 エジプト 24.4 人口増加、自動車、市場拡大、水素、再生可能エネルギー、地政学的重要性、健康意識、中東からの投資、宅配需要、日用消費財(FMCG)、ローカルマーケット
5 コートジボワール 23.9 市場拡大、経済成長、資源開発、インフラ開発、農業、投資機会、西アフリカのハブ機能、投資格付け格上げ、フランス企業ネットワーク、自動車政策、スタートアップ、ODA案件
6 タンザニア 22.8 人口増加、資源、電力、下水処理、ODA案件、天然ガス開発、二輪車、日本車、競合の少なさ、省エネ規制、経済の安定、大型医療機器、湖上輸送、港湾インフラ
7 ガーナ 21.8 西アフリカのビジネスハブ、市場拡大、自動車、農業、インフラ、教育水準、マクロ経済、競合の少なさ
8 モロッコ 19.8 再生可能エネルギー、製造業、経済発展、北アフリカのビジネスハブ、水素、自動車、小麦粉
9 エチオピア 18.3 人口規模、電力、鉱物資源、市場拡大、コーヒー(豆)、消費市場、ビジネスの復活
10 コンゴ民主共和国 17.8 人口増加、鉱物資源、競合の撤退、森林事業、インフラ案件、ODA案件

注:自由記述回答には、回答意図を明確にするため、原文の趣旨を損なわない範囲で追加修正などを加えている。
出所:2024年度海外進出日系企業実態調査(アフリカ編)

アフリカへの展開にTICADも活用可能

これまで見てきたように、アフリカでは課題も多いが、黒字の日系企業の割合は約6割であり、多くの企業が事業を拡大する意向だ。実際に、日本からの進出拠点数は増加している。アフリカでは人口の急増に伴い、現地市場の拡大が見込まれ、日本との貿易が盛んになる可能性もある。(2024年8月19日付地域・分析レポート「アフリカの人口急増と物流・貿易動向」参照)。

前述のとおり、アフリカでは日系企業の進出先も投資先も南アが多い。一方、アフリカには54カ国もあり、それぞれの特色があるため、業種や分野によって有望市場は異なる。出張に高頻度で行けない場合、現地事情を把握することが難しい側面もあるが、TICAD9では、治安などの関係で出張に行くことが難しい国を含むさまざまな国の政府関係者と現地企業、アフリカでのビジネスを行う日本企業が横浜に集まり、情報交換や商談を行う予定だ。TICAD9では、アフリカでのビジネスを見つけるチャンスがある。

また、アフリカの主要国の市場や現地事情、法制度などの情報収集には、ジェトロ「アフリカ」ページを参照。

執筆者紹介
ジェトロ調査部中東アフリカ課 課長代理
井澤 壌士(いざわ じょうじ)
2010年、ジェトロ入構。農林水産・食品部農林水産企画課、ジェトロ北海道、ジェトロ・カイロ事務所を経て、現職。中東・アフリカ地域の調査・情報提供を担当。