米国による国・地域別の相互関税再開なら、アフリカ経済に打撃、関税率は高水準
(アフリカ、米国)
調査部中東アフリカ課
2025年04月17日
国連貿易開発会議(UNCTAD)が4月14日に公表した貿易に関する報告書「Global Trade Update」の4月版によると、米国が国・地域別に上乗せした「相互関税」が再開した場合、アフリカ諸国を含む後発開発途上国に壊滅的な打撃を与えるという。このため、経済基盤が脆弱(ぜいじゃく)な国々は相互関税の対象外とされるべきだと指摘した。
なお、米国政府は4月2日に、全ての国に対して10%のベースライン関税、57カ国・地域には11~50%の相互関税を課すと発表し、その後、9日に中国を除いた56カ国・地域別の相互関税の措置は90日間一時停止すると発表した (2025年4月11日記事参照)。
UNCTADは4月4日、多くの低所得国は外部環境の悪化や、持続不可能な債務水準、成長の鈍化という危機的な状況に陥ると指摘した。また、米国の貿易赤字のわずか1.6%を占めるにすぎない後発開発途上国は関税高騰の影響を受けるが、米国側の貿易赤字の解消にも歳入増加にも貢献は少ないという。なお、米国の輸入額上位10カ国のみで貿易赤字の約90%を占めている。
相互関税が再開すれば、米国の貿易赤字額に占める割合が少ないアフリカ諸国でも、高関税によって輸出が難しくなり、経済悪化につながる可能性がある。
アフリカ諸国は米国向けに、米国産品では代替できない農産物なども輸出している。例えば、米国は2024年にコートジボワールから8億ドル、ガーナから2億ドルのカカオを輸入し、マダガスカルから1億5,000万ドルのバニラを輸入していた。
米国がアフリカ諸国にも高関税
前述の4月版「Global Trade Update」によると、アフリカ諸国では米国が高い関税率を課した国も多く、特にレソトは50%と最も高い。一方、米国の貿易赤字への寄与はわずか0.019%だという。
米国の相互関税の高い主なアフリカ諸国は次のとおり(かっこ内は米国の貿易赤字寄与)。
- レソト:相互関税50%(米国の貿易赤字寄与0.019%)
- マダガスカル:47%(0.054%)
- モーリシャス:40%(0.015%)
- ボツワナ:37%(0.024%)
- アンゴラ:32%(0.095%)
- リビア:31%(0.072%)
アフリカのうち8カ国が30%以上、12カ国が10~30%未満の相互関税を課されており、アフリカ成長機会法(AGOA)受益国も対象となっている(2025年4月15日記事参照)。
アフリカからの輸出に対する関税率は世界平均1.9%
3月版「Global Trade Update」によると、2023年には世界の貿易の約3分の2が無関税だ。アフリカ諸国でも先進国との特恵関税制度もあるため、2023年の世界の輸入国側の関税率は平均1.9%だった。
なお、アフリカ輸出入銀行の3月時点の予測では、アフリカの貿易は2025年に5.3%、2026年に5.4%、2027年に5.6%の成長が見込まれていた(2025年4月17日記事参照)。
(井澤壌士)
(アフリカ、米国)
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