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特集:外国人材と働く右肩上がりのベトナム人材、活用のカギは相互理解

2019年11月29日

近年、日本で働く外国人の増加を牽引するのがベトナム人だ。日本に在留するベトナム人は37万人を超え、技能実習生の数は国籍別でベトナムが最多だ。日本で人材不足の懸念が高まる中、外国人材の活用に動く企業が増え、多くの活用事例が生まれているが、同時にその課題も顕在化している。日本とベトナムが相互に利益を享受するため、まずはベトナム人の実態を認識し、ベトナム人はどのような思いを持って日本で働こうとするのか、理解を深める必要性が高まっている。

ベトナム国内での収入拡大には限界も

ベトナムの人口は推計9,470万人で、毎年1%前後増加している(注1)。15歳以上の労働人口は5,535万人で、都市部で32.6%(1,804万人)、地方部で67.4%(3,731万人)となっている。人口構成をみると、長期的には高齢化が進んでいくが、しばらくは労働人口は安定的に推移する見込みだ(図1参照)。

図1:ベトナムの人口ピラミッド(2016年)
ベトナムの人口は推計9,470万人で、毎年1%前後増加している。15歳以上の労働人口は5,535万人で、都市部で32.6%(1,804万人)、地方部で67.4%(3,731万人)となっている。人口構成をみると、長期的には高齢化を辿っていくが、しばらくは労働人口は安定的に推移する見込みだ。

出所:統計総局「The 1/4/2016 time - point population change and family planning survey」

失業率は2.2%と低いものの、15歳から24歳までの若年層に限ると6.9%と高くなり、失業者の約半分は若年層が占めている。大学や専門学校の増加とともに、高校卒業後に進学する若者も増えたが、希望職種と産業界の求める人材の能力は必ずしも一致するわけではなく、日本のように新卒を一括採用する慣習もないため、卒業後すぐに希望する職種に就きにくい環境といえる。

ベトナム人の平均年収は2,058ドルと推定され、月額に換算すると171.5ドルだ。2019年の月額法定最低賃金は、ハノイやホーチミンなどの大都市部では183ドル相当、産業の発展が最も遅れている地域では128ドル相当と決められている(注2)。在ベトナム日系企業の月額基本給は、製造業の作業員で227ドル、マネジャークラスでも931ドルで、稼ぎの見込める海外での就労を希望する人が多い。

日本で働くベトナム人が増加、技能実習生は国籍別1位に

ベトナム労働・傷病兵・社会問題省傘下の外国労働管理局によると、2018年の外国への労働者派遣は前年比6%増の14万2,860人となり、派遣先の首位は日本で6万8,737人だった(図2参照)。2位以下は台湾(6万369人)、韓国(6,538人)、そのほか、サウジアラビアやルーマニア、マレーシア、アルジェリア、クウェートにも派遣されており、今後は東欧にも需要があるとされている。ベトナム人労働者の派遣分野は看護や農業、水産業、IT分野など多岐にわたるという。

図2:ベトナム労働者の外国派遣先内訳(2018年)
ベトナムの労働傷病兵社会省傘下の外国労働管理局によると、2018年の外国労働者派遣は前年比6%増の14万2,860人となり、派遣先の首位は日本で6万8,737人だった。2位以下は台湾(6万369人)、韓国(6,538人)、そのほかサウジアラビア、ルーマニア、マレーシア、アルジェリア、クウェートにも派遣されており、今後は東欧にも需要があるとされている。

出所:ベトナム労働・傷病兵・社会問題省外国労働管理局の発表からジェトロ作成

日本の法務省出入国在留管理庁によると、日本に在留するベトナム人は2019年6月末時点で37万1,755人(前年末より12.4%増)で、国籍別では中国人、韓国人に次いで3番目に多い(図3参照)。ベトナム人は2012年と比べると7倍に増え、2016年にはブラジル人、2017年にはフィリピン人を上回った。

図3:日本在留外国人数の推移(国籍別の上位5カ国)
日本の法務省出入国在留管理庁によると、日本に在留するベトナム人は2019年6月末時点で37万1,755人(前年末より12.4%増)で、国籍別では中国人、韓国人に次いで3番目に多い。ベトナム人は2012年と比べると7倍に増え、2016年にはブラジル人、2017年にはフィリピン人を上回った。

出所:法務省出入国在留管理庁の発表資料(2019年6月末の速報値)からジェトロ作成

在留ベトナム人のうち、技能実習生の割合が高く、18万9,021人と国籍別で最も多い(図4参照)。2018年末から2019年6月末の間に14.9%増加し、日本の技能実習生全体の過半を占めるに至った。特に製造業でベトナム人技能実習生の占める割合が高い。ベトナムと日本は2019年7月、特定技能制度に係る協力覚書を交換しており、ベトナム人が日本で就労する機会は今後さらに拡大するだろう。

図4:ベトナム人の日本在留資格内訳(2019年6月末時点)
在留ベトナム人のうち、技能実習生の割合が高く、18万9,021人と国籍別で最も多い。2018年末から2019年6月末の間に14.9%増加し、日本の技能実習生全体の過半を占めるに至った。

出所:法務省出入国在留管理庁の発表資料(2019年6月末の速報値)からジェトロ作成

ベトナム人学生、卒業後に日本で就職も

日本に留学するベトナム人も8万2,266人と、中国人に次ぐ多さとなった。出入国在留管理庁によると、2018年に日本企業などに就職したベトナム人は5,244人で、留学を機に日本での就職を希望する学生が増えていると推察できる。

ベトナムでトップクラスのハノイ貿易大学で日本語学部長を務めるチャン・ティ・トゥ・トゥイ氏は、日本に良いイメージを持っている学生は多いという。ベトナムは親日国で、もともと日本文化にも興味を持っている人が多いこともあるが、日系企業や日本製品の評判が良いことも影響しているようだ。トゥイ学部長は「日系企業はベトナムで長期的に法令順守した経営をしており、従業員への教育もしっかりしているということで、尊敬されていることが多い。このような良い評判は、親族や先輩から若者に自然と伝わり、日本に興味を持つ学生は一定数いる」と述べた。優秀でチャレンジ精神のある学生は卒業後、日本での就職を目指すことが多く、「実際に日本語学部卒業生のうち1割ほどが日本で就職している。日本は賃金が高いことも魅力だが、成長できる機会にもなる。なじみのベトナム人コミュニティーが形成されていることも安心感につながる」と説明した。

一方、日本で働くに当たり、ベトナム人にはなじみのない慣習もある。トゥイ学部長は「日本ではまだ長時間働くことが美徳という考えが残っているようだが、ベトナム人はワーク・ライフ・バランスを大切にする。仕事よりも家族や友達との関係を優先するため、残業や接待よりも家族の誕生日を優先することは珍しくない」と指摘した。また、ルールに対する意識の違いを挙げ、「日本人はルールを守ることが目的になっているように映ることもある。ベトナム人は仕事に熱心であるがゆえ、ルールを順守するより、効率的に成果を出すことを重視する面がある。互いにコミュニケーションを取って、なぜそのルールを守る必要があるのかを確認し合うとよい」と述べた。

日本の技能実習制度は人気を維持

技能実習生への渡航前研修など日本語教育の事業を中心に展開するITMのチャン・アイン・チュン社長は、日本での技能実習生は近年人気を維持しているという。チュン社長は「就労面では韓国への派遣も人気だが、韓国政府は失踪者の多発を問題視しており、受け入れ枠が日本よりも小さい。台湾に働きに行く人も多いが、習得した言語や技能をベトナム帰国後に生かせる機会が限られている」と説明した。同時に、日本の技能実習生について「ベトナム帰国後、身に付けた技能を活用する場が限られており、就職先探しで苦労する人も多い。仮に同様の技能を生かす職場があったとしても、日本に近い収入を得られるわけではなく、日本語能力の高い人材は、歩合制で稼げる技能実習生の送り出し機関の営業などに流れてしまう」と問題点を挙げ、「技能実習帰りのベトナム人が日系企業で働けるよう、追加のトレーニングのほか、人材紹介といった取り組みが重要だ」と強調した。そのほか、直面している課題として、技能実習生の増加に伴って日本語講師が不足していることを挙げ、「しっかりとした講師の育成には費用がかかるため、講師育成に係る助成などが求められる」と訴えた。また、チュン社長は両国政府による悪質な人材派遣・受け入れ機関の取り締まりに感謝するとともに、さらなる取り締まり強化に期待を示した。

コミュニケーションを怠らず、相互理解促進

ベトナム人を雇用する日本企業の現場にも意識改革が求められる。ITMで営業を担当する常川竜司氏は、日本で技能実習生の受け入れをしていた自身の経験も踏まえ、「ベトナム人を雇用する日本企業には、ベトナム人の置かれた状況や、どのようなプロセスを経てベトナム人が派遣されるかをしっかり理解してほしい。ベトナム人は家族と離れ、費用を負担して厳しい日本語教育を受けるなど、苦労して日本に来ている。そうした状況を理解することで、互いに尊重できるようになる」と訴えた。また、日本人とベトナム人では受けてきた教育が違うため、日本のやり方が当たり前だと思わず、ベトナム人の作業をチェックする習慣が必要だという。注意しなければならない例として、日本のある会社で働く技能実習生の1期生は順調に育ったのに、2期生以降は同様に成長しない事例を挙げた。常川氏は「同じベトナム人だからといって、1期生に2期生以降の教育を一任してしまうと、日本語能力が育たなかったり、会社の方針が伝わらなかったりと、問題が後々生じる。職場に同じベトナム人がいることは安心感にはつながるが、やはり日本人がベトナム人と直接向き合う姿勢が求められる」と指摘した。


ベトナム送り出し機関VTCでの日本語教育の風景(ジェトロ撮影)

注1:
ベトナム統計年鑑を参照。人口、失業率、平均月収は2018年の推計値。
注2:
法定最低賃金は近年、毎年改定されている(2018年12月17日付ビジネス短信参照
執筆者紹介
ジェトロ・ハノイ事務所
庄 浩充(しょう ひろみつ)
2010年、ジェトロ入構。海外事務所運営課(2010~2012年)、横浜貿易情報センター(2012~2014年)、ジェトロ・ビエンチャン事務所(ラオス)(2015~2016年)、広報課(2016~2018年)を経て、現職。

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